第八話  「風を操る者」


爆発が起こるアカデミー、しかし建物にゃ全然ビクともしない
それ以上に不自然なのがそれだけ大きい音がしているのに生徒とかは何やっているんだろな・・、
まぁ興味がないのか日常茶飯事なのか・・
もしくは皆殺し?

「街って言っても広いからな・・、暴れているのなら探しやすいか・・」
アカデミー塔の前は結構広い公園になっているその向こうが街になっているだけに
向こうの様子がよくわからん・・加えて音も塔からの爆音があるからな・・
「手分けして探すのは厄介・・、でも遭遇したら対処は難しいですねぇ」
「・・、でもその前にウォームアップができそうね」
・・確かに、公園の中から一斉に黒フードの魔術師達が出てきやがった・・
この街占拠されている?
「じゃあ、先生も暴れたことですし・・僕も暴れさせてもらいましょうか!
先輩、エネをお願いします!」
「おう、じゃあここは任せるぞ。
大多数の魔術師と殴りあうにゃ俺は不向きだからな」
それでも負ける気はないんだけど・・、後がありそうだからな。
「じゃあ私も暴れさせてもらおうかしら・・」
おおう、アンジェリカもフィートに並んだ。
魔女みたいな黒い法衣に黒いミニスカート、そして黒いつば広帽を軽く持ち優雅に立つ
・・これは見物だな
「アンジェリカさん・・、ならばアカデミーを代表する風術師二人がどのような力量か
・・披露させてもらいましょうか」
「同感ね・・。さぁ、かかっていらっしゃい・・先に仕掛けさせてあげる」
挑発する二人・・、それに黒魔術師の皆様一斉に魔法弾を連射しだす・・!!

ドォン!ドォン!ドォン!ドォン・・・・・・・・・・!!

無数の爆発音、そして砂煙が二人を包み姿が見えなくなった・・、
おいおい、全く防御もしていないぞ・・?
「フィ・・フィート君!!」
エネも思わず心配して声を出している・・・んだが・・
煙に二人の影が映ってきてエネも安堵の息をついている
「安心しなよ、エネ。このくらいの魔法弾・・僕達には蚊が刺した程度にもならないよ」

ゴウ!

余裕たっぷりのフィートの声とともに爆風が起こり煙をかき消した・・
「結界を破るくらいの魔法弾くらい出して欲しいものね、これじゃあ煙を起こす魔法よ・・」
同じく余裕たっぷりなアンジェリカ、不敵だ・・
それは相手の集団も同じようで全く効果がないことに驚きを隠せない様子だ
「いいですか、レイアードの三流魔術師の皆さん・・魔法ってのはこうするんですよ・・『狂風』」
「まぁ、手本になればいいんだけど・・『疾空』」
二人が軽く言うと見えない弾丸が波紋を描き一斉に飛び出す!
フィートの狂風は正しく見えない凶器、すごい速度で魔術師達の体を貫通させる
対しアンジェリカが放ったのは白い空気の弾、フィートの狂風とは違い一気に20個ぐらい放ち
それが蛇腹を描きながら正確に魔術師達を吹き飛ばしている・・
どっちもすごいんだけど・・二人とも全く簡単そうだね
ともあれ、一気に倒される魔術師達・・俺の出番ってほんとないねぇ・・
「先輩〜、出番ですよ?」
「へっ・・?」
相手いないやん・・、何言っているの・・?

ドォン!!

うおっ!いきなり目の前にごっついゴリラみたいなクリーチャーが!!
俺が気付かなかっただと!?
「塔の側面で様子を見ていたようね・・。全く・・本気でアルマティを潰す気ね・・」
「って、呑気に言ってないで加勢する気はないのかよ・・」

ゴウ!

俺達の間に割り込んできたゴリラさん、
問答無用で俺にのみ襲い掛かる・・こういうのに好かれるのかな・・俺って
ゴリラは黒い鱗のような皮膚を持っており見るからに頑丈そう、
多少知性があるのか手にはぶっきらぼうな鉄の棍棒を持ちそれを力任せに振り回してくる・・
俺はなんてことないがエネが危ない
「しっかり掴まっていろよ!エネ!」
「はい!」
エネを抱きかかえ棍棒の間を縫うようにかいくぐる!
流石にでかい図体だけあって鈍いもんだぜ
「ほいよ!フィート!妻は自分の手で守りなさい!」
「わかってますよ、エネ・・先輩に変な所触られなかった・・?」
「・・お尻を少し・・」
「お盛んね」
って!何か俺が悪いことしたように言ってんじゃねぇ!
「万が一おっことしたら危ないからしっかり持っただけだろが!」
「って先輩、前、前・・」
へ・・うおっ!何時の間にか方向転換して棍棒振り上げていやがる!
回避は間に合わない・・なら!

ゴウ!!

ガァン!!

ゴリラ相手に真っ向力勝負!!
棍棒だろうがこっちにはブラックダイアを使った『崩天』を装備しているんだ、
得物だけでも勝っていらぁ!
「グォ・・!」
ほらな?俺の渾身のストレートが棍棒をへこましてゴリラをよろめかした
「・・相変わらず化け物ですねぇ、先輩・・」
「うるせい、こっちゃ戦闘中だっての!」
ケダモノ相手に時間はかけていられねぇ!いくぜ!!

「あーーーーーたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたたた!!!
ほあっちゃ!!」

北○百烈拳・・ウソ・・
「おみゃあはもう・・死んでいるだぎゃあ」

ズゥン・・・・

怒涛のラッシュによりゴリラモドキ轟沈!
まっ、急所を含めデカイ図体に思う存分殴ったからな。
表面の皮膚がちょいと硬いがその分中に衝撃が伝うってもんだ
「無茶な戦い方ね。こんなクリーチャーを殴り殺すなんて・・」
「これが俺の戦い方だ。倒れるまで殴り蹴る、基本だろ?」
「魔術師にはわからないことね。でも豪快なのは認めてあげる」
なんか・・アンジェリカってやたらと俺の事を褒めるな・・

ズズズズ・・・

おっ、倒したゴリラモドキ。完全に死んだのか体が泡のようになって消えていった
どういう仕掛けだ?
「これは用意周到ですね、クリーチャー技術を解読されないように死亡したら即消去とは・・」
「学者の考えるような戦いだな・・ともかく、障害が取り除いた事だし・・街の様子を見に行こう」
「待って。私達にもアルティメットウェポンの対策を練る必要があるわ」
「・・?対策・・ですか。確かに再生する相手に通常魔法で対抗するのは厄介ですね。
完全に消滅させる魔法も僕はありますが・・・リスクが高いですね」
「俺も陽気で消滅させる方法はあるけれど・・効くかどうか不安だなぁ」
再生能力が強い相手ってのはほんと厄介だからな
「そう、そこでフィート君。貴方にこれを託すわ。
悔しいけれども・・私では扱えないの」
腰の小物入れから何か古ぼけた本を渡すアンジェリカ・・こんな時に読書か?
「これは・・」
「風の皇女『シルフィスティア』を憑依光臨させる秘術について記されているわ。
・・クリスティア先生が秘蔵していた風の奥義書よ」
「・・・、あの女はそのような物まで持っていたのですね」
・・・フィートが今まで見せたことのないような苦い顔をする・・
それから想像するにたぶんそのクリスティアってのは
フィートが殺したあの恩師・・だろうな
「遺品をまとめた時に見つけてね。
私が体得しようと思って隠し持っていたんだけど・・無理だったわ。
法王の貴方ならばそれも可能でしょう・・」
「それがアルティメット戦でも有効・・だと言うのですか?
僕はそんなものに頼らなくても・・」
「相手の力を侮ると手痛い目に合うってことはわかっているでしょ?
下手すればエネちゃんを失うわよ?」
「・・フィート君・・」
「・・・・・・、ふぅ。それもそうですね。いい加減過去にこだわるのも止めにしますか」
「じゃあ貴方に委ねるわ。風の集う場所にて儀式を行いなさい。
それが終わるまでにはめぼしい相手は掃討しておく」
「わかりました。じゃあエネ・・一緒にきてくれるかな?」
「うん、守って・・くれる?」
「もちろん。何があっても守ってあげるよ♪」
「フィート君・・うん♪」
今更だけど・・本命だよな〜、熱くて見てられないや・・って
俺とタイムも端から見たらこんな感じなのかな?
「それじゃあ先輩、僕は儀式に取り掛かります。街の方は任せますよ」
「ああっ、二人っきりだからって青空の中イケナイことしたら駄目だぞ?」
「・・も・・もう!クロムウェルさんったらぁ!!」
「・・・・駄目ですか?」
「「はい?」」
フィートぉ!何考えている!!?てエネも本気かい!!
「冗談ですよ♪じゃあ少しお任せしますね」
笑いながら本を持ちそこから立ち去るフィート・・全くもって余裕だなぁ・・
「ともかく、じゃあ街の魔術師とアルティメットなんとかの足止めは俺たちの仕事ってわけだな
二人だが・・お前の援護があれば楽勝か」
「買いかぶるわね、・・まぁ頼りにしてもいいわよ。私も貴方を頼りにしているんだし」
「ははっ、そりゃがんばらなければならないな。だけどあの本・・やはり・・」
「そう、フィート君が殺した風魔術師クリスティア先生が所有したものよ。
超高位の聖霊と交信する正しく究極の風魔法が記された秘蔵書・・。
簡単に伝授できないように何重にもガードされている物でね、
それを全て解除して内容を解読しないと習得できないの。
私も何度か挑んだけれどもガードの解除ですら途中で断念せざるおえなかったわ」
・・本当にぶっそうなものなんだなぁ・・
「それを・・フィートが体得できるのか?」
「今のあの子ならば大丈夫よ。それよりも・・」

ドォン!!

!?・・街の方向から巨大な火柱が上がった!!?
「動き出したか!?」
「ええ、行きましょう!」
生物兵器とのご対面と行くか!フィートが来るまでせいぜい暴れさせてもらうぜ!


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