第五話  「風と雷」


浄水場の異変はアカデミーに帰る途中に警備に伝えて急行した。
まぁ彼らをいつまでも浜風にさらしておくのも気が引けるからな
因みに塔に帰るまでにまたまた無謀な学生諸君が襲ってきたんだけど
アンジェリカが不機嫌にふっ飛ばしまくり。まぁ先急いでいるんだしねぇ
ともあれ、死体の世話をしつつ彼女に部屋まで連れてった。
その頃には折り良く法王組みも部屋にいたので別室にて彼らの残留思念の解読へ・・
あいつらも何か掴んだらしいんだけど先ずはそっちが先決だ。
「お疲れ様、お茶を入れたわ」
「サンキュ、とりあえずはあの二人の解析待ちか。何だか検死官みたいだな」
専門的な事はパ〜ス!しばらくくつろがせてもらいます
「この島じゃ・・落ち着けるのはここぐらいなんですね」
「そうね、まぁ早く事件を終わらせて貴方も故郷に帰りなさい。
・・あまり長くいたらストレスにやられるわ」
「大丈夫です、それに・・クロムウェルさんやフィート君、アンジェリカさんだっているんですから」
こんな状態でもエネは純粋だ。
・・俺達とは違って戦いは不得手だが別の意味でもたくましい
「・・良い子ね」
「まっ、それなりの逆境は経験しているからな。心は強いってことだ」
「はい♪フィート君に色んな逆境を味あわせてもらったので・・普通じゃ満足できません♪」
・・・・そういうつもりで言ったんじゃない!
っうか逆境と呼べるくらいのことをフィートがやらかしたのか!
聞きたい、聞きたいぞ!
・・でも、何か怖えぇよ・・。エネの事だから普通に応えそうだし
「・・ふふっ、貴方が少し羨ましいわ。それはそうと、クロムウェル。
浄水場で下層から放電音が聞こえたんだけど・・あれは貴方の仕業?」
「ああっ、鮫相手に殴り蹴るってたってなかなか決定打にはならないだろう?
以前教わった雷の魔法でビビッとキめたのさ♪」
「ふぅん・・貴方みたいなのが魔法をねぇ・・」
「・・な・・なんだよ!俺がそんなことしちゃ悪いか!」
「別に、退屈しのぎに少し見せてよ」
ああっ?見せ物じゃねぇんだけどなぁ・・。
まぁ暇だし・・自慢はしたい!!
「任せなさい!『ライトニングブレイカー』!」
気合いとともに腕に電雷が纏う。
以前よりも正確に発動できるようにはなってきたな
「・・ふぅん」
「クロムウェルさん!すごい!」
流石はエネだ!アンジェリカ!貴様も感心しろ!
「どうだ!俺様の新たなカードは!」
「・・よく発動できたわね。魔導論もメチャクチャよ?・・ちゃんと学んでないでしょう?」
・・俺が、学校に行って学ぶとでも?
「とある人物から教わったんだよ。気孔と同じような感覚で・・ってな」
「・・それでにわか仕込みで発動ができた・・。天才ね」
おっ!アルマティの教師に魔法のことで褒められちまったよ!流石俺♪
「まぁ、気合いがあれば何でもこなしてしまうデタラメ人間・・って意味よ。」
「うっ・・だがこの術を使える人間なんてそうはいないだろう!」
「いるもいないも・・そんな接近戦補助の魔法を魔術師が唱えるわけないでしょう・・。
基本的な雷の魔法を憶えておけば応用はできるし・・。
まぁパーティの補助にたまに使う程度ね」
・・辛口チェック、ありがとう・・
「ちぇっ、どうせおいらは筋肉馬鹿だよ〜。ふ〜んだ!」
「いい歳してすねないの。・・まったく、見ていて飽きないわねぇ」
「俺は見物かっての!これでも必死に覚えたんだぜ?」
「まぁまぁ、貴方にとっては有効な魔法よ。良い物を選択したと思うわ」
「へっへ〜ん!だろ?俺のライバルも雷を使うからな〜!
これで五分五分ってわけだ!」
「・・貴方っておだての弱いのね」
「!?・・おだてていたのね・・」
「ふふっ、冗談よ」
ちっ、遊ばれているよ俺・・、女遊びのプロにして女性が敬うこの俺が・・
「でもアンジェリカさん。クロムウェルさんと話をしている時って何だか楽しそうですね」
「・・あら、そう?でも・・そうかもね。
こんなに感情の起伏が激しくてお馬鹿な男を見るのも久しいし・・ね」
「誰が馬鹿やねん!」
「貴方」
「むっきぃぃ!!あったまきた!いずれ絶対襲っちゃる!」
「・・ふふっ、可愛い・・」
「クロムウェルさん、悪ガキ見たいですね♪」
・・なんか、怒っているのが逆に恥ずかしく感じてきた
・・フィート、早く帰ってきてくれ〜・・

・・・・・・

しばらくしたらフィートとリーのじっちゃんが帰ってきた
二人とも少々お疲れのようだ
「おう、待たせたな。大収穫だぜ?」
「・・何かわかったのか?」
「ええっ、彼らは間違いなくレイアードの諜報員ですね。
あの施設を制圧してから作業員に成りすまして
アルマティ進入への足がけとしていたようです」
・・まぁ、海に面しているからな。場所としちゃ最適ってわけだ
「それで、ここで何をしようっていうの?」
「禁呪書物の残留思念も調べました。
痕跡が残さないように細工もしてましたが逆にそれが目印になりましたよ・・」
「で・・・で、何を見ていたんですか?」
「お嬢ちゃんにゃちょいと難しいかもしれないが・・
まっ、細胞の増幅、進化を促す法とキメラ合成の秘術関係だ。」
「裁縫の進化〜?先生!わかりません!」
「おう坊主!思った通り出来の悪いお頭だな!」
「うるせぇ!禿げ術師!」
「やるか!?若いの!」

「二人とも!そのくらいにして!」
・・アンジェリカさん・・怒らなくても・・、おおっ、おっさんもビビッている・・
「細胞の増幅や進化っていうのは簡単に言えば体を自分の思うように進化させたり
傷口を瞬時に回復させる能力の事よ」
「・・それとキメラ合成・・って・・ひょっとして・・」
「ええっ、レイアードの連中の計画はアルマティの秘術を応用した生物兵器の作成・・ですね
貴族達の依頼で行っていたのでしょう。
さらにタチの悪い話ですがそれの試作品をアルマティ内で生成しているらしいのですよ」
「・・つまり、とんでもなくタフな化け物がこの島のどこかで作られているってわけか」
「おうよ、さらに連中はその仕上げにアルマティの魔術師達で確認させるつもりだ。
街中に解放させて手当たり次第暴れさせる
・・その間にレイアードの人間は浄水場から島を脱出して
皆殺しにした後に回収ってな手はずだったとよ」
「・・そ・・それじゃあ・・無差別じゃないですか!」
「そうだ。まぁ利益しか考えてない連中にゃ当然なのかもな・・、
まぁ浄水場の連中を捕らえたことはキメラを管理している奴等にもこたえたと思うが・・な」
「・・だったら街の連中にも散策の協力させるか?
いくらなんでも自分らの命が危ないかもしれないから・・」
「無駄ね、妬みの対象である法王の言葉なんて誰も信じないでしょう。
ましては貴方達余所の人間も同様・・」
ちっ、なんとも厄介な街だな!
「じゃあ・・アカデミーの関係者は・・」
「無理だね、禁呪管理はアカデミーの責任。
それが部外者に観覧されてそれを行使するってことは彼らは何としても認めたくないことだ。
実際事が起こらないとしらばっくれるよ。
まぁ事が起こってもしらばっくれるかもしれないけれども・・」
「結局、俺達がどうにかするってわけか。
まぁキメラ退治は引き受けてもいいけれどもこの島の住民を護れだなんて俺は嫌だぜ?」
周りを考えない奴は助けられる資格もない・・、
俺はそこまで綺麗な心でもないんでね
「そこらへんは気にしなくてもいいですよ。
護っていてもどさくさに紛れて闇討ちに遭いますよ」
「違いねぇ。ともかく急いだほうがいいな・・」
キメラ相手だけでなく街のお馬鹿さん達の相手もしなきゃならなさそうだなぁ・・
いっそのことキメラを暴れさせて静かになってから動いたほうがいいか?

ドンドン!

・・んっ?部屋を誰かがノックしている。・・ここの生徒か?
「開いているわ、どうぞ・・」

ガチャ!!

アンジェリカの声を無視するように勢い良く扉が開き、警備兵が数人駆け込んできた
・・浄水場のお礼か?
「フィート=オーキシン以下数名、浄水場破壊容疑で逮捕する!」

・・・な・・・な・・なんですとぉ!!?


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