第十話  「究極と呼ばれる生物」


全く持ってキリがない・・
市街地の火柱に向かって走る俺とアンジェリカだが
途中その妨害にあのゴリラモドキがウゾロウゾロと出てきて時間のロスになる。
すでに周囲の建物は半倒壊で住民の姿はない・・逃げたのだろうか?
因みにゴリラモドキは俺の感覚が察知できる範囲より
外から飛んできたりするからいちいち面倒だ
「まだ火柱が上がったポイントまで距離はあるわね・・建物が倒壊しているとなると・・」
風の魔弾を連射しながらゴリラモドキを仕留めるアンジェリカ、数の多さに苛立っている・・
「急いだほうがいいんだけれどな・・、しっかしここまで生物兵器を増産していたとは・・」
「失態ね。まぁ街はいくら潰れても関係ないわ・・まだ大丈夫?」
「もちろん♪このくらいでバテていられないってばよ!」
魔力も体力もまだまだ!アルティメットウェポンとやらの
面を拝むまでは早々使うわけにもいかないからな!
「流石ね・・、体力が消耗したら魔法で回復してあげる。
前衛はこのまま貴方に任せるわ」
「了解だ。ったく・・おっさんもフィートも遅いからな・・・」

ドォン!ドォン!ドォン!ドォン!!

おっと、そう言っているうちに四方からまたゴリラモドキが飛んできやがった
・・大した跳躍力だぜ。だけど囲まれたのは少々痛いか・・?
「アンジェリカ、援護を頼むぜ!」
「わかった、『グランプレス』」
腰のポーチより何やら本を取り出しつつアンジェリカが魔方陣を展開する
・・その規模はかなりの大きさだが・・
まさかフィートの『ウィリーウィリー』ばりの竜巻作るんじゃねぇだろうな・・

ズゥン!!

!?
発動したかと思うとゴリラモドキの動きが止まった・・?
手先が細かく震える程度で一歩も動かなくなった
「今よ、クロムウェル!」
「お・・おう!」
どうやら動きを抑える魔法みたいだ・・ならば効果が薄れないうちに仕留める!
「行くぜ!『ライトニングブレイカー』!!」
電撃を帯びた一撃で急所を一点突破だ!!

ザシュ!

「グオオオオオ・・!!」

ズボッ!

「ゴオオオオ!!」

ピプー!!

「ゲボォォォ!!」

雷撃の手刀で首を跳ね、心臓を抉り経絡秘孔だと思うところを突く!
正しく一撃必殺ってな!
最後の一匹・・だが・三匹目から少し距離が離れてしまった・・
「グォア!」
ちっ・・おまけにアンジェリカの術も時間越えのようだ!
こうなったら!!
「『サンダーショット』!」

ヘロヘロヘロヘロ〜・・

「・・何しているの?クロムウェル?」
「雷の魔弾を出している・・つもり・・」
アンジェリカさん、ため息一つに軽く風の魔法を詠唱
・・塔の前での『疾空』と呼ばれる風魔法か、
あの白い弾丸の雨がゴリラモドキを蜂の巣にしてズッタズタに・・
・・あんさんがメインでやればええやん・・
「こうやるのよ。貴方のは速度もなければ方向も明後日・・猫騙しにすらならないわ」
「・・うう・・射撃は苦手なんだよ・・」
「センスはいいんだからコツだけ教えておくわ。速度を上げるのは魔力をためること、
照準を正確にするのは目的を意識すること。
叩きのめすつもりで力んでいたらぶれるし距離が離れていたらそれだけ変な方向に飛ぶわ」
・・流石は教師さん、わかりやすく詳しい・・
「なるほど・・よし、実戦を通じてやってみよう!
でもアンジェリカ、あの術は・・?それに本・・?」
こいつの本気っぽいんだけれども・・変わっているよな、魔術師なんて杖が基本だろうし
「これが私のスタイルよ、杖などは精神集中しやすいために加工されたもの。
この本は魔力消費を抑える補助方陣と発動速度を上げる高速展開方陣が
自動的に展開するように工夫がされているの・・まっ、邪道らしいけどね」
・・なるほど、本を開きながら魔力を注いだら恐ろしいまでに魔法を連発できるようになるのか
「邪道っても便利だなぁ・・。俺も使える?」
「・・・本気?」
「・・ウソです。それであの動きを止めた術もお前のオリジナルか?」
「そうよ、前に見せた風の衝撃で吹き飛ばす術の本来の形。
風で相手を抑え付けて動きを封じる術よ。
重力で縛らないからピンポイントで押さえられるのが利点ね・・
まぁあのゴリラ数体相手だと限界があったらしいけれども・・」
なるほど、フィートみたいに派手にかますわけじゃないが中々便利な術だな
「援護だと心強いな、不意打ちもそれで押さえてくれそうだし・・」
「そうね、まぁ貴方の背後は守ってあげる・・さぁ、先を進みましょう」
タイムとは違う意味で頼りになるぜ。
とにかく、またぞろぞろ増援が現れる前にさっさと先を進もう

・・・・・・
・・・・・・

火柱が起こったポイントまで敵襲なく何とか辿り着けた
連中の戦力も無限ってわけじゃないらしい・・だけど、アルマティの住民が本当にいない。
まぁ血痕がないから・・安全なところまで逃げたんだろうな・・
日ごろの訓練の成果を試す気はないのかっての
ともあれ、火柱が起こったと思われる場所はクレーターになっていた。
それもかなりの規模で上空から象が墜落したかのような感じ?
地面も焼けて黒くなっているよ
「ここらが一番被害があるわね。・・危ない臭いもするわ」
確かに、周りの店やら家やらは全倒壊っときたもんだぜ・・
「大した被害だな。・・で・・囲まれちゃった?」
クレーターにいを取られていたらあちらこちらから気配が・・
ゴリラモドキを筆頭に黒魔術師の群れが円を描いている・・っていうか!何人いるんだよ!!
アルマティの住民の3分の1はこいつらの関係者か?
「大した戦力です。よもや二人だけで我が軍勢を跳ね除けるとは・・」
一歩前に出て大層な口調で話すじいさん。学長の・・一人だな
「大した魔法も使えない三流魔術師と腕力が全てのゴリラモドキじゃ役不足ね」
「右に同じ。数で押し切ろうって考えをしている連中は決して勝てないぜ?」
「ふっ、流石はアカデミーの教師と傭兵公社の拳闘士ですね」
・・ほう、俺の事を調べたか・・。
まぁ意識がつながって存在が複数あるならその時間もあるだろうな
「一騎当千という奴だな。さっさと諦めな」
「それはどうですかね、これだけの戦力に対してそちらは二人・・
良い勝負になるとは思いますが・・」
ちっ、ま〜だ数に頼ってやんの!
「二人・・?いえ、三人よ」

”その通り!!”

おおっ、天空に轟く更年期の声!これは・・!!
「ちっ・・もう来ましたか。予想以上ですね・・・」

ドォン!!

包囲の一角に爆発が起こりそこにゆうゆうと立つ道着姿の陰陽師リー
「待たせたな!!」
「じいさん!学長相手にてこずったか!?」
「まぁ、塔を崩壊させるわけにゃいかなかったからな!加減するのも大変だったぜ、おい!
学長の一人よぉ!!」
・・間を空けるとより一層下品なしゃべりですねぇ・・
「忌々しい・・かかれ!」
学長の命令に一斉に詠唱を開始する連中、
今回はゴリラさんが先陣に立つから少しは戦法になっているな
「あめぇ!屋外ならば遠慮しなくていいんだよ!どらぁ!!」

チュドォォォォォォォン!!

放たれる強烈な炎の弾・・ゴリラなんか炭になっているし黒魔術師なんて吹っ飛びまくっている
・・荒いなぁ・・
「先生が暴れてくれるわ。私も援護するから貴方は学長を・・」
「了解!俺を狙うなよ!」
周りの雑魚はリーが引き連れて俺の道はアンジェリカが作ってくれる
正しく魔法乱舞・・・、火は飛ぶは風が飛ぶはで慣れてないと怖いぞ〜?
真っ先に突っ込む俺に対して周りは仕掛けたいんだろうがそうはアンジェリカとじいさんがさせない。最も、二人の援護で照準がぶれた攻撃なんて俺には当たらないけどな

「おらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおらおら!!」

後は力の限り叩く!叩く!たたぁ〜く!!
接近戦のイロハも知らず安全地帯から魔法で攻撃する連中なんて近づいたら終いだ。
学長はその光景を見て他の魔術師でバリケードを作るが・・
「俺のこの手が光って唸る!!手前をしばけと輝き叫ぶ!!」
格好良く決める!
「必殺!ラァァァァァァイトニングッ!!ブレイカァァァァァァァ!!!!」
四股に放つ電撃を右手に集結させ勢いと共に屠る!!
「があああ!」
「うあああ!」
「ぎぇえええ!!」
電撃の一撃をまともに受ける魔術師一同、爆発とスパークに飲まれて吹っ飛んだ・・

「・・気合い入っているのはいいけど、パクっているわね」

「そこ!気分だ!気分!!」
「・・この距離で良く聞こえるわね・」
向こうでアンジェリカが呟いたが俺の耳は地獄耳なのさ!
おっと、敵を目の前にして余所見はいけないな
「・貴様・・」
俺を睨む学長さん、もはや上品ぶる余裕もないらしい。
っと言っても他の戦力は法王とそれと同様の実力を持つ二人でほぼ壊滅、
残った連中も恐れをなして逃げ出しているくらいだものな
「さぁ、後はお前だけ・・っても。まだまだ量産しているのか?」
「ふ・・何か忘れていないかね?」
「ああん?例の化け物か?どこにもいないじゃねぇか」
「ふ・・ふふふふふ・・ふははははははは!!!」
何急に笑っていやがるんだ・・気持ち悪い
「やっぱおたく頭おかしいんだね」
「ふん!アルティメットウェポンは私・・そのものだ!
君たちが探していた物はここにあるのだよ!」
自分の胸を指差し不敵に笑う学長さん・・。よ〜わからん
「あ〜、頭の悪い俺に合わせて話してくれよ」
「ならば見せてやろう!出でよ!『究極』の名を持つ力よ!」
地面に巨大な魔方陣を展開する・・、
そこからは黒い瘴気のような霧が吹き荒れて学長を包んでいく・・なんだ・・?
「坊主!下がれ!」

!!

ドォン!!

じいさんの声に反応して咄嗟に飛び退いた、
それと同時に魔方陣の付近に馬鹿でかい落雷が落ちた
・・俺がいた地点なんてモロだぜ・・
そして魔方陣に負けないくらいにそこに現れた異形
「これが・・我らがこの島で創り上げた力だ」
パッと見は巨大な獅子・・、
金色の髪が雄雄しいんだけど背中が異常。
その体に負けないくらい巨大な翼を持ち獅子の額のところに学長の顔が・・
今しゃべったのもこいつだな
「やれやれ、自分の存在分けただけじゃなく自らアルティメットなんとかの一部になったってわけか」
「そうだ・・、そもそもこの計画は私の悲願だ。
それが最も実感できる・・実に良い行いだ」
「体は大事にするもんだぜ〜。」
「抜かせ!この力、仕上げの確認を貴様らの血で確認してくれるわ!!」

轟!

獅子の口から放射される火炎!って!獅子がんなもん吐いてんじゃねぇ!!
「あちちちちち・・!ったく!炎を吐かれたら近づくのは厄介だな!」
尻に若干燃え移りながらもとりあえずは射程外まで逃げる・・
ちょうどそこにアンジェリカとリーが合流してくれた
「あれがそのアルティメットウェポン・・。
思ったより普通に見えるけど・・中身は凶悪ね」
尻に燃え移った火を風で消しながらアンジェリカが唸る・・、
なんとかズボンに穴が空く前に消してくれたから助かった。
尻がスースーしながら戦うのって・・嫌だし
「凶悪も凶悪だ!並大抵の攻撃は回復してしまうぜ?」
「接近すれば陽気ぶち込めるんだけど・・、それで全て消し去れるとも限らないしな・・。」
「泣き言を言っても仕方ないわ。とにかくフィート君が来るまで時間を稼ぎましょう・・。
私達で何とかなればそれでいい。私と先生はできる限り動きを止める。
クロムウェルはその隙に接近して」
「わかった!頼むぜ!」
そうと決まれば二人の詠唱の邪魔をされないためにも俺が突っ込む!
「そこか!」
早速気付いたアルティメットウェポン

轟!

今度は獅子の口から巨大な炎の弾丸を飛ばしてきやがった!
「なんの!」
スピードは速いが動きは単調だ!!すんでだけど何とか回避できる
「おのれ、ちょこまかと!!」
くそっ、弾幕のように連続で炎を吐き出してきやがった・・これじゃ近寄れねぇ!
「おい!一発でかいので援護しろって!!」
このままじゃ服同様に黒くなっちまう
「ったく!世話が焼ける!!

『南方を守護せし紅の翼 天を駆け我らを守りたまえ
 始原の炎甦えらん!  紅蓮朱雀!!』」

杖を突きながら真紅の三重魔方陣発動!
そこから現れるのは炎を纏った巨大な紅の鳥
孔雀ってやつかな?アルティメットウェポンの炎に負けないぐらいの熱さだ
「援護するわ・・・

 『風 大気に満ち地を覆え さすればいかなる物も粉塵へと帰さん
  疾風怒濤  テンペスト』」

ゴオオオオオオオ!!!

こちらも立体三重の魔方陣を展開して巨大な竜巻を放つ!
って!このままじゃ俺もやばいじゃねぇか!!
「クロムウェル!打ち上げるわよ!!」
竜巻を飛ばしつつもアンジェリカがさらに魔方陣を詠唱・・これも本のおかげか?
でも飛ばす・・?

ドォン!

!!!
急に体が上空に吹っ飛ばされた!?衝撃こそあるが体が軋むほどじゃない・・
「なんだよ、こいつは!?」
アルティメットウェポンが小さく見えるくらいの上空・・海まで見えていら・・
世界って・・丸いんだね
「アンジェリカの術か・・あの魔法をまともに受けなくていいんだけれども・・」
宙に浮いてますよね・・僕・・

ガクゥ!!

落ちる!落ちるぅぅぅぅぅぅ!!
「この事絶対考えてねぇぇぇだろぉぉぉぉぉ!!」
顔が引っ張られるのがわかるくらいの衝撃で落下する俺・・着地失敗したら・・死ぬね
しかし良く見たらアンジェリカの竜巻がアルティメットウェポンを巻き込み
そこにリーの巨大な炎鳥がそこにぶつかり巨大な火柱が上がった・・
落下の音で爆発音は聞こえないが・・すげぇ威力・・流石は法王だ
よっしゃ!ここは俺が留めを刺してやる!!
「垂直落下の力を借りて!今、必殺の!
セイバァァァァァァァークラァァァァァァッシュ!!!」

バリバリバリバリバリ!!!

上空だから俺が起こした雷に天雷を呼び起こせる事も出来る!
これを一気に・・・食らえやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!

ドォォォォォォォォォォォォォォォォン!!!!!

大爆発!全くもっと音が聞こえない・・っうか耳鳴りが酷い!
それでも燃え盛る炎の中に巨大な雷の刃を叩きつけ付近一面にスパークが走った。
風、炎、雷の怒級攻撃を立て続けに食らったんだ・・再生どころじゃないはず!
「ゲホッ!ゲホッ!・・ったく煙がすげえな!」
ライトニングボルト・ザ・セイバークラッシュを叩きつけた瞬間に
反発する力が発生してそれに乗って俺はうまく着地できた
・・んだけど爆炎やらスパークやらで砂煙が巻き起こって周りが良く見えねぇ・・
「クロムウェル!無事だったの!?」
「無事だったの・・ってアンジェリカ。
上空に飛ばすだけ飛ばしておいて後の計算していなかったのかよ」
「攻撃の射線上に立っていた貴方が悪いわ・・でもそれに加えてあんな大技を与えるなんて・・」
「これが実力って奴だ・・。だが・・奴の気配がないな」
「ええ・・、あれだけの攻撃を受けたんだし・・多少は傷を負っていても・・」

サァ・・・

会話の途中で風が流れる・・それが煙を払って視界が良くなってきた
・・!!?・・
アンジェリカの後ろに奴がいる!?こんな近くで気配がないだと!
「アンジェリカ!危ない!」「死ねぇ!」
あれだけの攻撃でも全く傷になっていないアルティメットウェポン、
確実に倒すために獅子の鋭い爪を力任せに振ってきやがった!
「えっ・・!?」

轟!

彼女がいたところを獅子の爪が高速で横切る!
・・何とか俺が抱き寄せて・・回避できたが・・恐ろしい一撃だ。
そして・・
「あ・・ありがとう。クロムウェル」
「あ・・・ああ。それよりもさっさと魔法で牽制しろ!」
「・・貴方?その背中の傷!?」
俺としたことが・・背中をざっくりやられちまった・・。
おかげでアルティメットウェポンから遠くに離れられない。
「ドジっただけだ!いいから攻撃しろ!」
回復魔法をしている余裕はない、眼前にはまだ奴がいるんだ・・
「ほう、すばしっこいのに当たったか・・これはいい・・」
ちっ、勝ち誇ってやがる・・人間だったくせに
「させるかよ!アンジェリカ!さっさと坊主を連れて後ろに下がれ!」
じいさんが炎弾を連発して牽制する・・が再生能力を持つ体には一瞬焼けさせるが
すぐ回復しやがる・・とんでもなくタフだ!
「ちくしょう!こうなったらもう一度・・」
「させるか!カトンボども!」

バリバリバリバリバリバリバリバリ!!

!?・・俺が起こした雷よりもでかい放電をしてやがる・・あれをぶっ放す気か・・
「ちっ・・逃げろ!アンジェリカ!」
「・・間に合わないし貴方を置いていけない!結界を!」
「くそっ!」
じいさんも急いで結界を張った・・が・・そんなんじゃ止められねぇ・・
「吹き飛べ!雷の嵐とともに!!」

雷が爆風とともに走り俺達の結界をたやすく破壊し凄まじい衝撃とともに吹き飛ばす・・!
やばすぎる・・タイム・・!


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