第8話  「剣士対決」


義理の兄妹のすれ違いが行われていると同時刻
教会に近い街プラハがすぐ見えるほど近づいた街道を
ユトレヒト隊隊長クラークは悠々と歩いていた
肩にはロカルノと同じような袋を背負っているがこちらは何やらどたばた暴れている・・
「モゴモゴ〜!(出せ!私はハイデルベルクを継ぐ王女なるぞ〜!!)」
「うるせ〜、お姫さんならもう少し大人してろ・・ったく俺の妹にとんでもないことしやがって・・」
「モゴ・・(あんなに嫌がるとは思ってなかったのよ)」
「弁解は聞かねぇ・・っと・・」
何かに気付き、袋を軽く放り投げる・・

ゴス!

「モゴ〜!!」
受け身も取れず袋からは絶叫・・・、恐らく派手に尻餅をついたのだろう・・
そしてその袋の前には顎鬚が特徴の一人の剣士が・・
「困るな、アバズレでも大国を背負う姫なんだが・・・」
「姫だろうがなんだろうが無礼者には違いねぇよ。おたくも騎士ならちゃんと面倒見ておけよ」
「耳が痛いな・・、生憎、姫様の行動を監視していた近衛は金的を食らって悶絶していてね」
「・・この国の将来は明るいな」
「・・否定はしない。っうかできない・・」

「モゴ〜!!!」

「ともあれ、おたくがセシルの同僚か?見たところ人間だが・・」
ボサ髪の茶髪に騎士制服、それに搭の絵が描かれているマントを着ており鎧は着ていない
あるのは胸ボタンを開けた先に見える胸当て。
腰に下げている剣は曲剣シャムシェールの一種だという事はわかる
「ジェスティン=セイファート。一応、聖剣ブレイブハーツを扱う聖騎士の団長だ。
『金獅子』伝説は聞き及んでいるけど俺は人間だ。
お前さんが有名な『剣聖帝』クラークってわけか」
「大国の聖騎士団長の耳まで届いているってのは恐いもんだな・・、その通り。俺がクラークだ」
「何、お前の元部下からの情報だ。早く俺に倒れて欲しいって感じだったけどな」
「・・・・、ふっ・・。じゃあ待たせるわけにも行かないか・・やろうぜ?」
そう言うと足幅を広げて得物に手をかけるクラーク
薄碧のコートにフルメタルの篭手、後はシャツにズボンという成りだが中々に威圧感がある
「ああっ、じゃあお姫様、ちょっと待っていてくださいな」
そう言うとジャスティンは姫様が詰められた袋を街道の隅にどかし自分の得物を手に持つ
・・・・、袋から解放しようとしないのは勝負に集中したいからか?

ともあれ、すぐに得物を抜ける状態で互いを見る二人・・じりじりと次第に距離を狭める
その時・・
先にクラークから仕掛け、一気にジャスティンに接近する!
「!!・・流石!」
予想以上の速さに感心するジャスティンだがいち早くその動きに対応し真っ向から迎え撃つ
「いくぜ!」
まずは様子見と言う事で得物を抜くフリをして体術で攻める!
彼の攻撃は比較的足技が多く、リーチのありしなる蹴りがジャスティンを襲う
「刀使いが、刀を使わないつもりか!」
軽口を叩きながらもその蹴りを避けながら得物である精狂剣を抜くジャスティン・・
「剣士だからって剣撃以外何もしないなんてのは思い込みだぜ!」
光物を抜いた相手に怯むことなく突進、
ジャスティンの斬りこむより早く掌底を叩きこもうとする・・が

スカッ!

「ありゃ!?」
あわやの空振り、ジャスティンの横顔に当たりもしない、空を裂いている
「ふっ、もらった!」
完全なる隙を作ったクラークにジャスティンは鋭く切り上げる
「ちっ!」

シュッ!

鋭い刃音は響くがクラークはそれよりも早く後退・・・
「まだまだ!」
距離が開いたがジャスティンは懐から投剣用のダガーを二本ほど取りクラークへと投げつける
二本のダガーは寸分の狂うことなく一列に並びクラークの額へと目指し疾走する
「!・・・喝!!」
生半可な飛び道具などはいつも手で掴むクラークだが、
咆哮を放ちダガーの勢いを消し地面へと落とす・・
それを見てジャスティンもにやけている

「おっかしいな・・、距離を間違えるはずもないんだけど・・。
それにあのダガー・・どうやらその剣の仕業か」
「その通り、精狂剣『荒鷹』。相手の精神を乱す剣さ。
もっとも本来なら相手を操るのが能力だけど
お前さんみたいな精神強いのには効果がないだろうしな。感覚を狂わせてもらったよ」
「便利な機能なもんだざ、加えてその投剣術・・、おたく、昔は傭兵か?」
「ご明察、まっ、一つの武器にこだわるのも悪くは無いんだがね、これが俺のスタイルだ。
さて、今のお前さんにはまともに攻撃を当てることも回避することもできないだろう・・
卑怯かもしれんがやらせてもらうよ」
そう言うと右手に『荒鷹』、左手の指間にダガーを持ち構える
「多少感覚がぶれただけで勝ち誇るってのは感心できないぜ?」
そう言いクラークは目を閉じ耳元で指を鳴らし始める

パチン!パチン!

静かに音を鳴らすがジャスティンは遠慮なく突っ込み出す
「何のつもりか知らないが、無防備だ!」
そう言いながらも距離を保ちながらダガーを投げる!
「・・・・・、破っ!!」
目を閉じながらクラークは愛刀『紫電雪花』を鋭く抜き放つ!

キィン!

電光石火の一撃はダガーを全て弾き飛ばす・・、目を閉じながらも正確無比な抜刀だ
「まぐれだろ!?こうなったら!」
「まぐれ?心眼を駆使すれば感覚の補正なんか簡単だ!」
そう言いながら目を閉じて居合いの構えをして突撃!
「!!・・速い!」
「アイゼン一刀流!『霧拍子』!!」

斬!!!

目を瞑りながら放つ高速の居合いは見事ジャスティンを捕らえ一気に切り払う!
ジャスティンは咄嗟に防御しようとしたが間に合わずその一撃をまともに腹に受け地面に倒れる
・・ピクリとも動かない
「峰打ちだ、安心しろ」
そう言うと気絶したジャスティンを「動く袋」の隣まで寄せる・・。
もう精狂剣の影響はないらしくしっかりとした手つきだ
そして・・
「さて、前座は終わりだ。出てこいよ・・クロムウェル!」
当たりに向かってクラークは大声で叫んだ・・


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