第8話  「法王と呼ばれる少年」


”さぁ、魅力的な試合の後には少しつまらないかもしれませんが。
お子様とお嬢さん対決です!”
”・・ま〜、両方ともツワモノなんですが・・、流石にカチュア選手もシトゥラ様ほどの魅力はないですし・・”
「様」付け!?・・・ってかお前ら公平に実況しろよ・・・
”ともあれ、入場していただきましょう!フィート選手です!!”


「「「「「「「「「「「「「「フィィィィィィトォォォォォォォ♪♪♪」」」」」」」」」」」」」」

・・・また数が増えた・・・、まっ、うるさい声援とともにフィート君入場・・。
男性からは嫉妬で殺意のこもった視線、女性からは色っぽい目線とまぁ・・、すんごい大差・・
”さあ、アルマティの『法王』はこの戦い。どう攻めるのでしょうか!”
”相手のカチュア選手もまだ手のうちを見せていませんからね・・、これはこれで面白そうです。
さっ、そのカチュア選手。颯爽と登場です”
素早く駆けてきて早速鋼鉄の串を指間に挟んでいる・・
やる気満々・・ってね
「キースが負けた以上、私がこのトーナメントを盛り上げないとね♪」
「いやっ、カチュアさんが張り切らなくても先輩が暴れてくれますよ・・」
「いいえっ、お兄さんにばかり目立たせてなるものですか!貴方中々良い人だけど・・・。
倒させてもらうわ!」
「それは僕も同じ・・。『法王』の名にかけて・・、負けるわけにはいかない!」

「それでは・・、カチュアVSフィート君・・・・はじめ!!
やはりフィートに骨抜きにされたのかうさ耳ジルちゃん・・、「君」づけだよ・・


「先手必勝!ハッ!!」
”おおっと!カチュア選手!前の試合と同じく鉄串を投げつけた!”
”あれは片付けが大変ですからね〜、なるべく遠慮してもらいたいもんです・・”
実況の二人の話はともかく、まっすぐフィートに飛びこんでいく・・
「・・・『昇風壁』」
手をかざし目の前に風を集める『昇風壁』・・・
カチュアの投げた鉄串なんてあっという間に風の対流に巻き込まれた・・。
並大抵の飛び道具じゃああの壁は破れないだろうからな。
こりゃあフィート、マジだな・・
「あーーー!ずるい!」
「・・・って、勝負なんですから・・。『狂風』」
「!!・・っと・・、こりゃあマジね・・。」
キッとフィートを睨み一気に突進、まっ、その戦法しかないか
対するフィートも体術と『狂風』をうまく使い対抗している・・。
見たところ五分五分・・だな

「接近戦か・・、フィート君にはやや不利・・か?」
シトゥラも興味深々のようだね
「ん〜、どうだろ?あいつも俺の殴り合いを見て色々真似していたからな〜」
「でも、フィート君は魔術師だろ?カチュアさんにはキツイんじゃないか?」
「まあな、あいつの魔法って結構広範囲の奴が多いんだよ。だから会場を破壊しない程度の
魔法に抑えて戦っているわけさ、スクイード」
「なっ、なるほど・・、『法王』って称号は伊達じゃないのか」
「本気出せばこの町一つ丸のみにするくらいの竜巻は作れるからな〜。」
「・・大した少年だな」
「あいつは子供の頃から魔学しかなかったんだ。『法王』という称号もあいつの半生の証ってやつさ」
「「・・・」」

”見事な乱打戦です!カチュア選手が鋭い蹴りを繰り広げ、フィート選手がこれを受け流しつつ風の魔法で対抗している!!”
”遠距離での攻撃を無力化された以上カチュア選手はこうするしかないんでしょうね”

「ぜーぜー、・・・やるじゃない!」
「カチュアさんも・・・。至近距離から『狂風』を回避するなんて先輩ばりなことを良くしますね・・」
「お兄さんの妹だからこそ・・よ」
「ははは・・、でもこれ以上は次の試合に差し支えますから・・、そろそろ終わりにしますか」
「・・ほんと、余裕面ね・・」
「応援してくれているみんなの手前、泣き言は言えないですからね〜♪」
「きー!むっかつく!その天狗ッ鼻をへし折ってあげるわ!!」
・・おいおい、冷静になりなさい・・
「やっぱり先輩の妹さんですね〜」
「じゃかぁしい!!」
そういうとカチュア超接近!
「いくわよ・・!『居合い蹴り』!!」
そう言いながら腰を軸に今まで以上に鋭い蹴りを放つ・・
「素振り・・じゃない!真空波か!」
見えない断空の波を放つ体術・・、確か実家のメイドが得意だったやつな・・
あいつそんなもんまで使えるようになっていたのか〜
「なら・・!『昇風壁』!!」
風には風を・・・、ってか

パァァァァン!!

空気溝と空気の壁がぶつかり破裂音が起こる・・・!
それとともに宙に舞うカチュア・・
「これで終わり!『迅雷落蹴』」
空中から雷のように落下する蹴り・・、勝負に出たな・・
今までにない早さでフィートに襲いかかる・・んだが
フィートはすでに印を切っている・・
「ピンポイントで・・・・『ウィリーウィリー』!!!」
げっ!!!おい!会場破壊しないんじゃないのかよ!!
・・って、フィートの周りを覆うだけしか・・竜巻がでていない・・?
「きゃっ、きゃああああああああ!!!」
竜巻にモロ巻き込まれて天高く飛ばされるカチュア・・、竜巻の規模自体は小さいから
そのまま遠くに飛ばされることはないようだ・・
”カチュア選手!宙に舞いました!大丈夫でしょうか!!”
”竜巻で上下の感覚が失った上あの高さです・・、着地に失敗する可能性は高いでしょう”
”うへぇ・・、ぺっちゃんこですか?”
”ペッチャンコです”
そんな可愛い表現ですむかよ・・・
「ああああああああああ!!!」
叫び声とともに落ちてくるカチュア・・。
解説のフランキーさんの言うとおり感覚を失っているみたいだな・・。
さて、こんな場合、フィートなら・・・

ドスッ!

「・・・っと!!・・意外に重いな・・」
・・やはり、な
”おおっと!フィート選手、落下してきたカチュア選手を抱きとめた!!余裕ともとれるこの行為!!流石は『法王』です!”
”いや〜、見事ですよ。”

「はらほろ・・・ひれ・はれ・・」
目を回しながら気絶しているカチュア・・、この程度でよくすんだものだ・・
「ジルさん、どうやら戦闘不能みたいだよ?」
「ええっ・・、はい!確認しました!勝者!フィート君!!!」

「「「「「きゃああああああああああ!!!」」」」」

・・・やっぱこうなったか。ここまではカードを見ての予想と同じだな・・
後は俺とシトゥラ、そしてフィートと匿名希望・・。
こっからは予想できね・・、まっ、要は俺が負けなければいいんだけどね・・・。
さて、そうと決まればさっさと行きましょ行きましょ・・・


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