chapter8  「帰路・天使襲来」


サブノックらの屋敷での生活も慣れ、そろそろ家に帰ろうという話が出始めた・・
まぁ、旅行の目的も果たせたので帰るにはちょうどいいのだが・・

「ライ殿、今日あたり小生らはお暇しようかと思いまして・・・」
執務室で仕事中のライに不意に話かけるサブノック
「んっ、そっか?わかった」
そっけなく応えるライ・・、彼らしい反応だ・・
「色々世話になりまして・・」
「まぁいいさ、また気がむいたら来たら良いよ」
「ではっ、その時は小生の子も一緒させてもらいます」
「それは楽しみだな!まぁ出発前にみんなに声かけてくれよ」
「承知した。ではっ・・」
執務室を静かに去るサブノック・・
「・・・・さてっ、サブノック達がここを離れるとなれば奴らが動くか・・・」
「・・十分考えられますね。教団の動きをよく調べておきましょうか?」
書類に目を通しながら応えるレイハ
「頼むっ、客人として招いた以上は・・な」
「・・わかっていますよ」
スーツ姿のままレイハは静かに執務室を出ていった

「・・ちっ、なんだか嫌な雲行きだな・・」
窓から見える空模様にライは少し舌打ちをした


それからサブノック夫妻は屋敷の住人達に挨拶をして周った。
ルー、アレス、リオ、ディ、ルナは「もう帰るのか・・」っと言った感じだが
あまり関わりを持たなかったアルシア、シエルは特に関心もなく「さようなら〜」状態だった・


・・・・・・・・
日も昇り暖かな風が屋敷を包んできた
「じゃあ色々世話になりました・・」
旅支度をしたセリアが入り口まで見送りにきた面々に言う
「いいえっ、出産がんばってくださいね!」
「ふふっ、リオちゃんも早いうちに孕みなさいよ〜♪
でもその前に挙式あげないといけないわね・・・・
アレス君!リオちゃん良い子なんだからしっかり愛してあげなさいよ!!」
「えっ・・、いやっ・・、わかりました。孕ませるのはまだちょっと早いですが・・」
何かと妊娠の話を持ち出す彼女とセリアにアレス君タジタジ・・

「ふんっ、イチャイチャしおって・・」
それを見てルーさんやや不機嫌・・
「ルー殿、世話になりました」
「まぁいいサ。人間の姿になれて妻ともさらに燃えただろ?」
「・・あ〜・・」
そのルーの質問に答えづらそうなサブノック
「?、まっ、帰って友人を驚かしてやレ」
「ありがとう、ルーさん」

「サブノック 帰る?」
残念そうなルナ・・
「ああっ、すまぬな。また機会があれば会えるだろう」
「わう! 楽しみ!!」
満面の笑みで応えるルナ。
「ルナはサブノックさんがお気に入りみたいですからね・・」
ルナの傍にいるディ少年が呟く
「あらあら、ディ君ライバル出現して焦っているとか?」
「・・ちっ、違いますよ!!」
茶化すセリアに焦るディ・・・

「・・まぁ色々あったが楽しかったよ。また来るときはクラークの部下とやらも
一緒に連れてきたらどうだ?」
かつて誤解しながらも戦った男の部下に興味があるライ
「そうだな、一度話してみよう。しかしアル殿も二人の女性に言い寄られて
大変なようだったからな・・」
「もう、アルさんも二人まとめて面倒見ればいいんですよ!」
他人にむけられた言葉なのになぜか胸に突き刺さる感じがしたライ・・
「あ〜、大変そうだな・・・、そのアルって奴・・まぁ楽しみにしているよ・・」
「ライ、他人事のように言わないで下さい・・。帰路にお気をつけて・・、何せ身重なのですから」
あくまで事務的な秘書嬢レイハさん
「わかりました、色々ありがとうございます」
「いえっ・・、仕事ですので。ああっ、これを渡しておきましょう」
レイハが取り出したのは銀狼ルナの姿をした小さなぬいぐるみ・・
「かっ、かわいい!!どうしたんですか!?これ!!」
セリアさん猛感激・・
「今朝方仕事で旅だったカインさんとヒルデさんから『渡してくれ』っと・・、ヒルデさんは
裁縫を少し習っていましたので・・。」
「まぁ・・・土産みたいなもんだな。」
「かたじけない・・」
サブノックが受け取りかばんにしまいこむ
「ではっ、これにて失礼する」
「さよーなら!」
静かに背を向き出発するサブノック夫妻
・・・・・・
やがて草原にその姿が消えて行った
「・・・・・・さてっ、これであいつらの位置はわかるか?ルー」
「ああっ、かなり遠距離でも大丈夫だゾ」
「よしっ・・、じゃあ各自いつでも動けるようにしておいてくれ」
暗躍する者達に対する備え・・、杞憂だと良いのだが・・



シウォングを少し離れた草原・・
街道に人気は無く歩くのはサブノック夫妻のみ・・
シウォングでは人が溢れかえっていたので馬が手に入らなく仕方なく次の街まで徒歩で
移動することになった・・
「良い人達でしたね〜!サブノック様」
「まぁ・・小生は色々あったが・・な」
「でも人間の姿になれてよかったじゃないですか〜♪」
凛々しい青年姿のサブノックに惚れ惚れ見つめるセリア・・
「それもそうだが、力があまり出せんのでな・・」
「へぇ・・、じゃあ外さないと戦闘とかは無理なのですか・・?」
心配そうにサブノックを見る
「いやっ、野盗程度なら大した事はない・・、がっ、ツワモノ相手だと厳しい・・な」
ジッと自分の手を見ながら唸っている
「大丈夫ですよ。そんな激しい戦闘になることなんてそんなにないですし・・」
「・・・・・・・そうとも言えんようだ・・・・」
キッっと表情を険しくするサブノック・・


何時の間にか辺り一帯を囲む集団・・・
法衣をまといジッとこちらを見ている・・・

「姿を変えても我々は騙せませんよ?卑しい悪魔・・」
一人歩み出た司祭がサブノックに言う
「・・なるほど、その服装・・シウォングの街中で襲ってきた輩のようだな・・」
「ええっ、シウォング王は何を考えて貴様を受け入れたのかは知らないが
我々はそうは行きません。正常なる世のため・・排除します」
「良く言う・・、街人の被害を省みず一方的な理由で殺生をしようとした貴様等が・・・」
「問答無益・・、覚悟しなさい」
一斉に構える僧兵達・・その数は50を越えるか否か・・
「数で押し切ろうというか。甘いな!」
人間形態で対抗、セリアも棒を構え互いの背を守り襲いかかる僧兵を睨む
「セリア!いけるか!?」
「数が多いですがサブノック様と一緒なら!!」
「無理はするなよ・・!」

「「「覚悟ーーー!!」」」
僧兵達が槍を構え突っ込んでくる・・。
元より玉砕覚悟のようだ
しかし、

バキ!ゴス!ベキベキ・・!!

人間の姿であれどサブノックは様々な戦いをくぐりぬけてきた歴戦の戦士
宗教に目が眩んだ者達など歯牙にもかけない・・
セリアもサブノックと結ばれてきてから体が変調しており常人とはかけ離れた戦闘力を
見せる・・
・・・・
二人はその場に立ったまま十数人の僧兵を倒した・・
「この程度か・・、命が惜しければ退け!」
今だ周りを囲む僧兵達に警告するサブノック
「やはりこれでは無理か・・。皆の者・・、今こそ我等の力を見せるときだ」
司祭がそう叫ぶと共に一斉に何かを詠唱し出す僧兵達・・
「・・!サブノック様!?」
「何を詠唱しているかは知らんが小生等にかなうと思わないことだ!」
「ふんっ!思いあがるな!悪魔め!!」
詠唱し終わると同時に天から光の柱が降りてくる・・

そこから出てきたのは白い羽根を持つ女性、天使だ・・

「・・、天使を召還・・?・・セリア、腕輪を取ってくれ」
「はい!」
サブノックの腕につけられた銀の腕輪を外す・・
その途端人の形が歪み鎧の禍禍しい姿を見せる・・
「天使が相手なら少しは厳しくなりそうだな・・」
「天使って・・、レイブンさんみたいな人ですよね」
仲間の元天使の事を不意に思い出すセリア
「案ずるな、彼女ほどの天使ではない。しかし数は出てきているようだが・・な」
次々と光の柱から姿を見せる天使・・、中には僧兵と合わさって融合している者もいる・・
「ふふふっ、これで貴様も終わりだ!!」
司祭が勝ち誇った顔をする
「・・・少々分が悪いか・・。セリア、いざとなればお前だけでも逃げろ」
「それだけは聞けません。あなたがいなくなったら誰がこの子に『正義魂』を注入するのですか?」
不利な展開でも慌てず構えるセリア・・、そうもできるのはやはり夫を信頼しているからだろう
「・・酔狂な妻だ。どこまでできるかわからんが・・・行くぞ!!」
「はい!」

「遠きは声でしかと聞け!近きは寄って目にも見よ!我が名は聖魔サブノック!!
  闇より出でし漆黒の者也!貴様らの正義が正しくば力をもって我に示せ!!!」

天に響く咆哮の如くそう叫び聖魔は天使の軍勢に突っ込んでいった・・!!

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