第9話 「ダブルオペレーション」


それからすぐ俺達はロカルノのとこに向かった。
もはや宿屋でのんびりしてもいられない。
フィートを使いによこして騎士団との連携を取る。
スクイードの活躍もあり、騎士団もとりあえず動きはとれそうだ・・・
こういう時は団長が指揮するもんだが、あのおっさん、
やり手らしく超多忙で屋敷にいることが滅多にない
だから実質的にこの町の治安は団長補佐のタイムが仕切っている・・




夜・・・

ロカルノのいる廃屋・・・
「これで・・いいのか?」
黒い貴族服、黒い帽子を被り俺がいう
「まぁ、そんなもんだろう。これが剣だ」
同じく黒いセイレーズの格好をしたロカルノが剣を渡す。
「悪いが俺の得物はこの拳だ。他に能がなくてな」
「私も剣は専門外だ、まぁお守りみたいなものさ」
仕方なしに腰に剣を下げる・・
因みにフィートもセシルもすでに散り散りに行動を始めている
「言っておくが俺はタイムを助けることが最優先だ。陽動にはなるだろうが・・
ダイヤのことまでは手伝えないぜ?」
「もちろんだ、そこまで世話になるつもりはない」
こいつの腕なら心配はない・・か
「クロムウェル・・」
「・・・んっ?何だ?」
「すまないな、私のせいでタイム嬢が・・」
「ストップ!あいつも自分の仕事で捕まったんだ。あんたのせいじゃない」
「そうか・・」
「安心しな、あいつはそんなことぐらいでくたばるタマじゃない。さっさと助けてやるさ
そして・・、ふざけたことをした奴を叩き殺す・・・!」
「・・・・ふっ、わかった。では行くぞ!」
窓から飛び出し二人の怪盗セイレーズが闇に消えていった・・・




アーカイブ公屋敷・・
相変わらずかなり広い敷地だ・・
ものものしい警戒が行われている、先日のベルナンド公とは段違いだ・・
しかし今回「盗む者」は4人いる。
それぞれ東西南北に分かれて突入の時機を見計らっていた
突入の合図は俺が出す。
この赤い閃光を放つ信号弾でな・・・
おっと、そうこう言っている間に月が雲に隠れた・・
・・・・・今だ!
信号弾をおもっきり空へ投げる・・・・


ボゥン!!


破裂音とともに激しい閃光が現れた。
それと同時に俺は一目散に突っ込む!
タイミングを合わせるように北の方角から竜巻、
東の方角から氷柱が巻き起こる。
警備兵もまさかこれだけの人数なら・・っと油断していたらしい。
次々とフィートとセシルの餌食になっていくのが見えた。
しかし、それに構っていられない、俺の目的はただ一つだ・・・・
勢い任せに屋敷に突入する・・・・・・!!




ホールはさらに傭兵どもがひしまいていた
ちっ・・・、邪魔だな。
「おのれ!セイレーズめ!」
「成敗してくれる!!」
ところどころ正義漢ぶった馬鹿どもが叫ぶ
一人一人相手すると厄介だな・・、捕らえられている部屋も探さないと・・・・
その時もう一人のセイレーズ・・・つまり仮面男ロカルノが正面から入ってくる。
援護してくれるのか・・ありがたい!
「この場はまかせたぜ!セイレーズ!!」
セイレーズことロカルノに声をかけて先に進む、なぎ払いながらでもな・・
ロカルノは返事なしに指を立てて答える、華麗な剣技で圧倒していた

・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・

部屋という部屋を蹴り破り中を探す・・
いない・・!
途中で警備していた兵どもも殴り倒している・・
ちっ、俺としたことが・・・らしくなく焦っている・・・・・・!!
これ以上探すのもきついな・・、兵士をしぼって聞くか・・
ちょうど部屋の片隅で怯えて震えている奴がいた・・・・
「おいっ!」
「ひぃ!!」
俺を見て怯える兵士、しかしそんなこと気にしてもいられない
「女騎士はどこだ!?」
「・・・・・・・」
上等だ!
「答えないか・・・、いいだろう・・!」
べキッ!!
死なない程度に横顔を殴る・・、奥歯が数本飛んでった・・・・
「ひぃ、わ、わかった・・・。地下だ・・・」
かすれ声で兵士は言う。
「地下だな!よしっ!!」
怯える兵士をほっといて先に急ぐ・・!!


再びホールに戻ったときにはあれだけいた傭兵が全員気絶していた・・
すでにロカルノの姿はない、やはり只者じゃないな・・・
そんなこと思いながら地下への通路を探す。
・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
・・・・・・あった、ホールの隅に薄暗い階段が・・・・!!
まってろよ!タイム!!
一気に駆け出す、やれやれ、今回は俺もさすがに余裕がないようだな・・・
女一人捕らえられただけで・・・、へっ、焼きが周ったもんだ・・・



・・・・・・・
地下室、
牢屋が数個あるが誰もいない・・、他にあるのは鉄でできた頑丈な扉・・・
ここだ!!
しかし、何重にも鍵が・・・
「ちっ!こんな・・・・・・ものぉぉ!!!」

ドンドンガンドンドン!!!!

最高硬度のブラックダイヤ使用のナックル「崩天」で
何度も殴りつける!!!!
いくら鉄製の分厚い扉でもひしゃげてくる・・
そして・・・!!



ガァン!!!!!!



扉ごとふっ飛んだ!
・・・・
中にはタイムが・・・
・・いた!!
鎧を脱がされ、肌に密着しているアンダースーツのまま椅子にくくりつけられている。
猿ぐつわを噛まされ、目も塞がれていたが・・・・大丈夫なようだ。
「タイム!大丈夫か!!?」
「・・・うっ・・んん!!」
猿ぐつわ噛まされてしゃべれないタイム。
ともあれ手早く開放してやる・・・
「クロムウェル・・・なのか?」
あっ、そうか。今セイレーズ姿だからな・・
「そうだ、大丈夫か?」
「ああっ、なんとか・・・」
「全く!心配させやがって!!!」
つい怒ったような口調になってしまう・・
「すまない・・、私のために・・・」
「謝るならスクイードに言え。あいつも焦っていたからな・・・」
「そうか・・、彼は?」
「数人引き連れて屋敷を取り囲んでいる、目的が済みしだい突入できるように・・な」
「ふっ、そうか・・、部下にも、お前にも迷惑をかけたな・・、情けない。
・・もう私は・・・・んんっ!?」
ネガティブなタイムを抱きしめ、口を無理やり唇で塞ぐ。
これ以上こいつが落ちこむところを見たくはない・・・
「んっ!ん〜!!・・・・ん・・・・・」
目を大きく見開きしばらく暴れたが・・、
やがて静かになった・・・・
「落ちついた・・か?」
「おま・・え・・・」
頬を染めて静かに俺を見るタイム・・、なんか照れる・・
「へっ、愚痴なら後で聞く!殴るなら後でいくらでも殴らせてやるさ!
だから・・・落ちこむなよ」
「・・・・・・わ、わかった・・・・・」
いまだに頬を真赤にするタイム・・、こんなタイム、はじめてだ・・
「動けるか?まだロカルノのほうが終わっていないし傭兵どももゴロゴロいる。
さすがにお前かついでこの屋敷動き回るのはきついぜ?」
「・・・あっ、ああっ、大丈夫だ。
しかし得物が取り上げられてしまった・・」
「こいつを使え、ロカルノからもらった剣だ。俺には無用の長物だからな
他の装備は・・、あった。あそこに置いているな」
部屋の隅に鎧一式が無造作にほっていた
とりあえず腰の重たいの投げ渡す。
「業物だな・・いいのか?」
「俺の得物はこの拳だけだ。知ってるだろ?」
腕をポンポンって叩きつつ、タイムに笑いかける。
元々、刃物は俺の趣味じゃない。いざとなれば手刀で物を切り裂くこともできる
「そうだったな。・・ではっ・・行くか!」
部屋の片隅に置いてあった鎧を手早く装備し、剣を装着した
「あっ、その前に一つ・・」
「なんだ?」
「捕らえられている間、変なことされなかった?まだお嫁にいける体?(ワクワク)」
気になりまっせ〜!!脱がされてたし!!
「!!!!!!!」
キンッ!!
おぅ!!!!
金的攻撃での報復・・・ですか・・・・、そりゃあないぜタイムさん・・・・・


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