第8話 「怒髪天を突く」


廃屋から俺達の宿に戻る・・・
よく見ればあの廃屋と良い勝負な朽ち様だ・・・・
セシルが部屋に置いてある装備に着替える間、外で待つことにした・・
・・・・・覗いたら恐らく俺の命はない・・・
「しかし、あのロカルノって人、かっこよかったですね〜」
「あいつ、男だぞ?」
「あっ、酷いな〜。男として尊敬しているってことですよ!」
そういやこいつセイレーズのファンだったな・・・
「まぁ、後でサインでもねだってきな・・・・」
「でもっ、あの二人、怪しくないですか?」
「あの二人・・?」
「セシルさんとロカルノさんですよ!たぶん付き合っているでしょう!」

ガタン!!

部屋の中からずっこける音が聞こえた・・・
「・・・・フィート、天井見てみな・・・・」
「えっ?・・・おおっ!!?」
フィートの頭上に鋭利に尖ったつららが出来ていた・・
警告・・ってわけ?
「・・・まぁなんだ。発言には注意しようってことかな?」
「・・・みたいですね」
下手に話していたら串刺しになる・・・
「こんにちわ!クロムウェルさん!」
ふぃに声が聞こえた。
ふりかえると栗色の髪をした少女・・、以前助けたエネだ
「おおっ、エネか。久しぶりだな?」
フィートはしょっちゅう会っているけど俺はあまり彼女とは会わない・・
何て言うの?お邪魔虫みたいだから・・・
「ご無沙汰しています。」
礼儀正しくお辞儀する、確か今は酒場でウェイトレスやってるんだっけ・・
「エネ、どうしたんだい?」
「フィート、きちゃった・・♪」
うおっ、早速ラブラブ的オーラが・・。こいつらところかまわず・・!!
「んっ?エネ、少し胸が大きくなったんじゃないか?」
ふぃに目がそっちに行く。男なんてそんなもんさ!!
「えっ、あ・・・、これは、・・フィートが・・・・・(ポッ)」
「エネ、駄目だよ。そんなこと人前で言っちゃあ・・」

神よ!!この罪深き二人に裁きの雷をぉぉぉぉぉ!!!!!

「あっ、それよりもフィート。この間私のところに魔杖忘れたでしょう?はいっ」
照れくさそうに渡すエネ、魔杖はピカピカに磨かれている・・・
おそらくエネがやったんだろうね・・
あ〜、熱い熱い・・・
「磨いてくれたんだ!ありがとう!!お返しに今度たっぷり『お話』しようね♪」
「・・・・・・うん♪」

・・・・神よ〜・・・・・・

「あっ、それよりもクロムウェルさん。さっき町でタイムさんを見ましたよ」
「タイムが?ああっ、屋敷に戻る途中かな?」
「でもちょっと変でしたよ?気分が悪いのか男の騎士に担がれてましたし・・・
裏道にいましたし・・」
「・・なんだって?」
確か他の騎士はベルナンド公屋敷にいたはず・・・
「迎えにきたんですかね?でも別に気分悪そうじゃなかったようですけど・・・」
そんなこんなで話していると、
タイムの部下、スクイード君が走ってきた・・
何用ですか?
「おいっ!変態!タイムさんを見なかったか!」
「タイムを・・?いいや、俺自身はちょっと前に別れたが・・?」
「・・・やっぱり・・・」
・・・様子がおかしい・・
「おいっ?どうした?何があったんだ?」
「さっき屋敷に手紙がきて『女は預かった、命がほしければ手を引け』っと・・・・」
・・・なんてこった・・・
「こっちでは騎士がタイムを担いでいるって情報がある、他になにか手がかりは!?」
「・・何もない・・!くそっ!!」
「・・・・・ともかくお前は現状維持だ!騎士団を落ちつかせろ!
後は俺に任せればいい!」
「・・しかし・・」
「しかしもくそもあるか!!貴様ならタイムを救えるとでも言うのか!?
対策がわからん以上大人しく従え!!」
「うっ・・!わ、わかった・・・」
「後でまたつなぎを入れる。それまですぐ騎士団を動けるようにしておけ、頼むぞ!」
青い顔をしながら走りだすスクイード・・
「先輩・・・」
「クロムウェルさん・・・」
「奴さん達・・、本気で俺を怒らしたようだな・・・」
女を盾にするような奴は許さない・・!
奴らには死を超越した苦しみを与えてやる・・・・・


「どうやら・・アーカイブの手の者ね・・・」
部屋から鎧姿のセシルが出てきた・・
「ああっ、うかつだった・・としか言い様がないな・・・」
「ともあれこれで騎士団の動きは封じた・・か」
「・・急いだ方がいいな・・・・・」
怒り心頭・・、怒髪天を突くってやつだ
こうなりゃ急いで解決するしかない・・

昼下がりでも人の行き来がない住居地区・・
貴族が多いので通称「貴族地区」と言いわれている。
そこにこの町の貿易を牛耳っているアーカイブ公の屋敷だ・・・
確かにそこら中警備兵がいる・・・、
俺は屋敷の目の前にある木の枝にのぼり辺りを探る・・・・
ちなみにフィートの風のベールで鏡を作り姿を消す術『風鏡』を使用しているので姿は見えない
俺がここにいる理由は一つ、タイムがここにいるということの証拠をつかむためだ・・
ただし、屋敷の中なんかに侵入しては見つかり、その間にもタイムは殺されるだろう
『風鏡』は激しい運動をするとすぐ効果が切れてしまう・・・
だから俺にできることはただ一つ・・・・・!!

しばらく待っていると、屋敷からガラの悪い男が出てきた・・・
見たところ騎士風・・?
ビンゴ・・か・・
すぐさま後をついて行く。飛び降りたらもう『風鏡』の効果が切れた・・
軟弱な術め!まぁガラの悪い男は一向に気づかない・・。
やがてさら人通りの少ない細路地に曲がっていった・・、
・・・・・やるか・・・・
「あの、すみません〜!」
「ああっ?なんじゃわれ?」
これでもかってくらい期待通りの反応。
「ええっ、道に迷ったみたいで・・アーカイブ公の屋敷ってどこですか?」
「この壁がアーカイブ公の・・うぐっ!!」
顎でクイッと壁を指す好きを突き喉に手刀を入れる。
死なない程度に・・・
周りには誰もいない・・・、よし!
気絶した男を担ぎ俺は全力でその場を後にした・・






朽ち果てた宿屋・・、俺の部屋にその男を縛る・・
「なにしやがるんだ!!」
大きな声で男が叫ぶ、まぁこの宿にはそのくらいで驚く輩はいない。
いや、この地区・・か
「お前に発言権はない、俺の質問に答えろ。あの屋敷に女騎士が連れられたか?」
「・・へへ・・」
男はせせら笑って何もいわない・・、冷笑だ・・・
俺は無言で男の肩をつかんだ・・・、
そして・・・


ボキッ!!!


鈍い音と共に男の肩はガクンと下がった
言葉にならない悲鳴を上げる男・・・・
「もう一度言う、女騎士はいたのか!?」
殺気を含んでどなる!
「・・・ひっ・・・・」
「ちっ、いいだろう!死ぬより苦しい痛みってやつを貴様に味合わせてやる!!!!」
「わ、わかった・・・わかったから・・・・・・」
真っ青な顔で男が答える・・
しかし俺はまだ殺気を消さない。ここは隙を見せてしまえば終わりだ




男が生きた心地もしない顔で説明しだした
数人がかりでタイムを襲い、薬で眠らせたらしい・・
油断していたとはいえ・・あいつらしくない・・
それでアーカイブの屋敷に捕らえられている
アーカイブはセイレーズの件で騎士団が動きそうなのを前々から危惧していたようだ。
適度に脅して騎士団を動かさなくするのが狙いだろうが・・・
その気になればタイムを殺すことも考えているだろう。
恐らくロカルノはすでにアーカイブ公に予告状を叩きつけたと見える
だからこんな思いきった行動をしたのだろうな・・

用無しの男を手当てしてやり、動かれるのが邪魔なのでしばし
この部屋で気絶してもらうことにした。

・・殺さなかったのは自分でも意外だった・・・


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