第7話 「仮面男と猛獣女」


赤いチャイナドレス姿のままのセシルが案内したのは住宅地区のとある廃屋だった。
ここからなら俺達が世話になっている宿屋まで近いな・・

人気がまるでない廃屋・・・、その中に普通に入っていくセシル・・・
おいおい、不法侵入でないの・・?
俺とタイムは顔を見合わせて中に入っていく・・・・・
廃屋の2階にあがり、古びたベットがある部屋・・
そこになぜか目元を覆う仮面をつけた青年がいた・・
この男・・・どこかで・・・?
「つれてきたわよ〜?」
セシルが気軽に声をかける・・・
「そうか、ご苦労だな」
仮面の青年が普通に声をかける、知り合いか・・
あれっ、この声!?
「そうか!お前セイレーズだな!?」
あの夜のセイレーズの声にそっくりだ!
「ご名答、だが私は君達と争う気はない。落ちつけ」
至って冷静な仮面男・・・
「・・どういうことか説明してくれる?セシル」
タイムも困惑気味・・・・
「ええっ、まずこのむっつり仮面はロカルノ、私と同じユトレヒト隊のメンバーよ」
こいつもか・・・、やっぱユトレヒト隊は変人揃いだ!!
「ロカルノだ、君達のことはこの暴走女から聞いている」
セシルの頭をぽんぽん叩きながら仮面の男、ロカルノが言う・・
やばいよ!あんた!導火線に火がついちまう!!!
「もう、やめてよ。
それで昨日ベルナンド公の屋敷で会ったのがこいつだったってわけ」
照れくさそうにロカルノの手を払うセシル・・、
なぜ・・発火しない!?なぜだっ!!?
もしかしてこの男、この女を手なずけている!?
「ちょっと待ってくれ!順序をおってわかりやすく説明してくんない・・?」
もう何が何やら・・・・・

ロカルノとセシルの話ではこうだ・・
ロカルノは本物の怪盗セイレーズではなく、雇われの身だということ
本物はかなりの年齢の老人だそうだ。別場所で静養しているらしい
老人セイレーズは難病にかかっているらしく、もはや余命わずからしい
今までの人生に悔いはないがたったひとつだけ思い残しがあった。
それは最愛の妻との愛を誓った指輪が昔に盗まれたことだ。
それはダイヤの中にさらに鉱石を含んだ特殊なダイヤを使用した指輪で
闇のオークションで貴族の手に渡ったらしい。
それを取り戻すため、知り合いの仮面男、ロカルノに頼んだらしい・・・
ロカルノはダイヤが狙われていることを伏せるため、わざと別の目につくものも一緒に
盗みつつ今日まで情報を得てきたわけだとさ・・・
そして昨日偶然俺達と遭遇、チャイナドレスのセシルに驚いたってわけ

「じゃあ、昨日盗んだダイアはビンゴだったのか?」
「いいや、あれも目的の物とは違った」
珍しいダイヤって言っても結構あるんだな・・・・
「しかしあのベルナンド公は普通のダイアだと言ってませんでしたか?」
フィートがつっこむ、
事態の解明に必死に頭を回転させている
「そこだ、あのダイアは常に光を反射しているため中心にある鉱石は
専門の者じゃないと見つけられないんだ・・・」
ロカルノが応える
「ふぅん、そうなんだ。バカな貴族じゃ見分けられないわけな。
でも昨日のが外れだったら他に手がかりは・・?」
「ああっ、以前ダイアの行方を調査したリストがある。残っている貴族は後一つだ」
懐から紙を取りだしタイムに渡すロカルノ、態度の一つ一つがかっこいい〜
「これは・・・」
渡されたリストを興味深くみるタイム・・
「残りは、この街の貿易関連を牛耳るアーカイブ公ただ一人だ」
「っとなると次はそのアーカイブ公がターゲットってわけか」
「そう、そこで君達に頼みがある」
とうとう本題・・か
「そのアーカイブ公の屋敷はこれまでの所と段違いの警備だ。
屋敷や敷地もかなり広域だ。
さすがの私でもつらいところがある・・・」
「そこで、私達に協力してほしいってわけ」
鉄扇を叩きながらセシル・・
「つまり、俺達に盗みの協力をしろってわけか・・・」
「まぁ、そういう風に受け取ってもらっても結構だ」
ストレートォ、この男、動じることを知らない・・・
「俺達は構わないとしてもタイムは騎士団の人間だ。それは難しい注文・・」
「いやっ、構わない。できる範囲で応援しよう」
・・・あらっ、意外な答えを出すタイム・・・・
「おいっ、いいのか?盗人に加担して?」
「お前と組んでいる事自体犯罪行為に等しい、
それに、これでも何が悪かはわかっているつもりだ」
わしゃあ犯罪者ですか!?
「ヘコむわ〜、姉さん、酷いわ〜」
「何とでも言え、ではっ、私は騎士としてできることをやろう。
アーカイブ公の屋敷の周りにうちの騎士を数人配置する。
そしてお前達が奴の不正をわかった時点で突入・・どうだ?」
自分にできることを素早く計算・・、
そういうことにはこいつにはかなわないな
「それで十分だ。協力感謝する。タイム嬢」
ロカルノが礼を言う・・。
全く、仮面つけてるくせに言い方がシャープだ!
「礼なら終わってからにしてくれ。
ではっ、私は一旦屋敷に戻ろう。
部下の調整をしていつでも配置可能な状態にしておく。
行動開始する時が決まったら連絡をくれ」
「わかったわ。お願い!」
セシルも声をかける・・、
タイムが自分にライバル心を持っているなんて全然思ってないだろうな・・・
軽く手を上げ、颯爽とタイムは出ていった・・・・・
「でっ?俺達は何をすればいいんだ?」
「何、私と同じ格好で暴れてくれるだけでいい。
ダイヤの鑑定なんで無理だろう?」
「・・・・その仮面姿?」
「・・・セイレーズの格好だ。」
「ああっ、すまない。俺はそれでもいいがフィートは?」
「彼は上位ランクの風使いのようだからな。
ベルナンド公の時みたいに竜巻を起こして牽制してくれたらいい」
牽制どころで済めばいいが・・・
「わかりました。あれより威力を下げればちょうどいいですかね?」
「っていうかあれはやりすぎだ!!」
屋敷を倒壊するような牽制するなよ・・・・?
「それはそうとしてセシルはどうするんだ?」
「私?私も陽動。真正面から手当たり次第ぶった斬るの♪」
嬉しそうにいうな・・・・・
「やれやれ、セシル一人でも十分な気がするな・・。でもロカルノ。
なんで初対面の俺にそんなこと頼むんだ?」
いくらセシルの連れとはいえ・・ねぇ
「クラークの元部下、さらには『スタンピート』の通り名で誉高い拳闘士
クロムウェル=ハットの名前は意外に知れ渡っている・・・っということさ・・・」
・・・なるほど
「お褒め頂き光栄の至り。
さぁ、話はこんなもんか。
用がないなら一旦俺達は宿屋に戻るぜ?」
「いいだろう、また、衣装とともにお前のところまで行くとする。
それと・・・セシル」
「ん?何?」
「いい加減着替えろ・・・・」
「あっ、そうね・・・・」
女性なら服装に気をつけようよ・・・・・
「確かお前の服は俺の部屋だったな。いくぞ〜」
とっとと廃屋から出る俺、セシルも後からついてきた
話はまとまりつつあるな・・・

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