第4話 「嵐を呼ぶ隠れホスト」


セシルの鉄扇が怪盗セイレーズの帽子を飛ばした・・
セイレーズの顔が月明かりに照らされた。
銀髪をしており目は紅、威厳を漂う二枚目だ。
・・・・男前やん!まぁ俺レベルじゃないが・・・
「!!、ロカッ・・・・っ!!」
セシルが何か叫ぼうとするがすぐさまセイレーズはセシルに斬りかかる・・
女相手でも容赦しねぇな・・
んっ?セシルの耳元で何か言っている・・・・?
「ふっ、これ以上は時間の無駄だ。さらばっ!!」
素早く帽子を回収、そのまま煙玉を地面にぶつける!
「ちっ、逃がすかよ!」
煙にまみれてよく確認できないがとりあえずそれらしい影に殴りかかる
・・・・・・・
ドガッ!
手応えあり!
「おっと!君にはまた会うことになるだろうな、さらばっ!!」
あれ?手応えあったのにそのまま消えた・・・?
しばらくしたら煙が消えた・・・、
あっ、フィートが・・・倒れている・・・
今殴ったのって・・・悶絶から回復したフィート・・・?
・・・・・・・・・・・・・・
・・・ま、まぁ過ぎたことは忘れようぜ!!ベイベー!
男は明日のみを見つめるもんさ・・、あはっ、あはは・・・・・・
「ぶっ、無事か?セシル?」
とりあえずセシルを確認、何故か険しい表情・・・・
「・・・・・・・・」
「・・お〜い、セシル?」
「えっ?あっ?何かしら?」
「無事かって聞いているんだよ」
「ああっ、大丈夫よ。」
上の空だな・・、あれ、何か落ちている・・
「何だ・・?書類・・・・?」
「セイレーズが落とした物ね・・・」
「こいつが目当てか、何々・・・麻薬・・買い付け記録!!?」
「なんですって!?」
驚きながら書類に目を通す、なんてこった・・。あのベルナンド公は
貴族の間で麻薬を利用して荒稼ぎしているらしい。
「やれやれ、見られてしまいましたか・・・・」
屋敷の入り口からベルナンド公が登場・・
「大人しく黙っていたら命だけは助けますが・・どうですか?」
「残念、そこで「はい」って言うような育ち方はしてないんだよ」
「そうですか、おい、こいつらはセイレーズの仲間だ。
殺したら報酬は上乗せするぞ!!」
傭兵どもが野良犬の如く屋敷から出てくる・・
やれやれ、こういうことかい・・・
「いけるか?セシル?ほらっ、フィート。起きろ!」
フィートをかばいつつセシルに聞く
「ふ・・・ふふっ、・・面白いじゃない!!血が!!血が騒ぐわ!!!!」
鉄扇握り締めて不適に笑うセシル・・・、暴れたい願望がかなって
最高に『ハイ』ってやつになっている・・・・
「あっ、先輩・・僕は気を失っていたんですか?」
「ああっ、あの傭兵どもがいきなり襲ってな」
この際、このバカ傭兵達に俺の罪を被ってもらいませう・・
「!!、なんですって!!いきなり同業者に殴りかかるなんて!!許せない!!」
「そっ、そうだな・・、おい、何、印を切っているだ・・・?」
ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・・・!!!
もしや・・・・

 『大気満たす偉大な力!!愚者を滅ぼす意思とならん!風骸!!ウィリーウィリー!!』

「おいっ!!フィート!!落ちつけぇ!!」
いきなり特大級の竜巻を呼ぶ魔法を詠唱するフィート・・!

ゴォォォォォォォォォ!!!!!!

やばすぎる!うわっ!!目の前が爆風で何も見えねぇ!!!
街中でそんな魔法使うな〜!!
お助け〜〜〜〜!!!



ガクっ♪




しばらくして・・・・なのかな?
俺が目を醒ました時には屋敷は廃屋と化していた・・・
傭兵どもは・・誰一人としていない。
大方、フィートの「ウィリーウィリー」で飛ばされたのだろう
ベルナンド公は・・、廃屋の壁に頭ぶつけて気を失っていた・・・
そしてこの惨撃の張本人であるフィートはセシルに首を締められている
「私の獲物を〜!!!」
「すみません!すみません!!」
・・・どうやら暴れそこなったことに対する腹いせだろう・・
「せ、先輩〜!!助けてください!!!!」
俺が目覚めたのに気づき声をかけるフィート・・
できればわたくし、他人のふりをしたいんですが・・・
でも放っていたらセシルの奴、フィートを殺しかねない・・
「おーい、セシル、そんくらいにしとこ!ね!」
「ちっ!全く暴れそこなったじゃないの!!」
「まぁまぁまぁまぁ。ともかく、落ちつけ!」
セシルをなだめていると屋敷の入り口から騎士団連中が入ってきた。
タイムが先頭に立っている
まぁ街中に突如バカでかい竜巻が現れたからな・・・
「クロムウェル、これはいったい・・・?」
「ああっ、フィートが暴れてな。
とりあえず、そこでのびているベルナンド公は悪人さ。ほらっ」
セイレーズの残した書類をタイムに渡す。俺が気絶していた場所はどうやら
竜巻の中心らしくて暴風の力は小さかったようだ
それでなんとか書類は飛ばされずに済んだみたい・・・
「これは・・・・、なるほど。
おいっ!ベルナンド公を確保しろ、騎士団屋敷まで連行を頼む!」
「「はっ!!」」
しゃきしゃきっとした動きで仕事をする騎士達・・・
お堅いね〜。
「それで、この書類は・・?」
「セイレーズが残していったものだよ」
「そうか・・、奴はこれが目的・・・?」
「それはどうかわからない、もうちょっとで仕留められたのにな・・」
「ほぅ、お前達二人でも手に負えなかったのか・・・・」
意外そうな顔のタイム、今日は日和が悪かっただけだ!
「今日はちょっと日和が悪かっただけよ!!」
うわっ、セシルと同じこと考えてしまった・・・・・
「とにかく、どうやらセイレーズはただの盗賊ってわけじゃないようだな?」
「みたいだな。こんな書類を持ち出すなんて脅迫のネタに使うか、
見かえりなしに公表するかの2通りくらいしかないだろう」
「・・ちょっといいかしら?」
セシルが間に入る
「何かしら?セシル?」
「どうもあのセイレーズの顔って見たことあるのよね・・、
ちょっと別行動で探らせてもらいたいんだけど・・いいかしら?」
・・なるほど、確かにセイレーズがセシルを見たとき驚いた感じだったしな
「そう、ならセシルにまかせるわ。好きにして」
「悪いわね、クロムウェル。
何かわかったらそっちに向かうわ」
「わかった。良い情報を頼むぜ!」
「保障はしないわよ、じゃ!」
チャイナドレス姿のまま走り出すセシル、
・・・・・見えてるよ?おい・・
ふぅ・・、あの女はわからん!
「とにかく、一旦屋敷に戻ろう。ここで居てもしょうがあるまい」
「ああっ、そうだな。おいフィート、騎士団屋敷に行くぞ〜!」
タイムとの話に気をとられていたのでフィートに声をかける・・・が、
放心状態・・・・・
「せ、先輩・・・セシルさんって・・・恐いですね・・・・・」
今ごろ気づいたのかよ!



見なれた騎士団の屋敷・・、もう深夜なので当直の騎士が数名いるくらいだ・・
とりあえずタイムに招かれていつもの応接室に行く。
受付のお嬢さんは今日はいないみたい・・ってこんな時間だしな・・・・・・
応接室に通され紅茶が出された・・、これはかつてないことだ・・!!
「でっ?お前はどう睨む?」
静かに紅茶を飲みながらタイムが尋ねる
「俺の見解では、セイレーズは世間でいうところの義賊ってやつだろうな。
俺とセシルのタッグでも相手にできるような奴ははっきりいって
盗みなんかしなくても食っていける」
あの見のこなしは只者ではない、まぁ剣の扱いは今一つのような感じだったが・・・
「そうか、まぁ今回フィート君がベルナンド公の屋敷を破壊してくれたおかげで
我々も動けるようになったからそれを参考にさせてもらおう」
・・なるほど、あの竜巻がセイレーズの仕業にすれば付近の住民を守るという
口実ができて、貴族の屋敷に入れる・・・か。
「相変わらず抜け目がないな・・・・」
「このくらいは当然だ。それよりももう少しこの依頼に付き合ってくれないか?」
「ああっ、いいぜ。このまま終了っていうのもなんだか中途半端だからな・・
それにセシルの行動も気になる」
「それだ、彼女はセイレーズを知っているようだったが・・・」
タイムも怪訝な顔・・
「セイレーズもそんな感じだったからな。何かあるのだろう・・・・」
「そう・・か、いずれにせよ、何故セイレーズが盗みを働くか・・・・・・」
「ただの泥棒じゃないだろうし・・、なんらかの意味はあるようだな」
「そうだな、よし、明日からは私もお前と行動を共にする」
・・・・・・・なんですと?
「ちょっと待て!騎士団の業務は?」
「他の奴でもできるように日ごろから教育している、セシルばかりにまかせるのもしゃくでな」
なるほど・・・、同期って関係だけじゃなく、ライバルだったのか?
「でも、タイムさん戦闘とか得意なのですか?」
ようやくセシルの剣幕から立ち直れたフィートが訪ねる
「見くびるな、フィート君。これでも剣の腕は自信がある」
優しく微笑みながらタイム・・
「そうだぞ?フィート。タイムはこの騎士団の中でもトップクラスの腕だ」
考えてみれば女ながらすごいことだな・・、
えっ?・・セシル・・?
・・・・・・・・
ありゃあ化けモンだべ・・・
「お前に言われても嬉しくないな」
・・やっぱりな反応・・・
もう慣れたけどネガティブな奴ならウツ病になるぞ?

その日は騎士団屋敷に泊まらせてもらった。
といっても応接室のソファで寝かされたけど・・・・・
まぁそれでもあのボロい宿屋よりいいってのが悲しい現実・・・・・・・・・・
いいんだよ、俺はレトロなのが好きなんだ・・

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