番外  「奇妙な同居人」


街道の先にテント群が見える・・
ようやく僕が勤務する貿易都市ルザリアが見えてきた・・
「・・・長かった〜!!!」
思わず伸びをして叫んでしまう
遠国に使者として出かけて数日・・、歩いてばっかりだしな

僕はスクイード。
ルザリアの騎士団で騎士として働いている者さ。
憧れの上司、タイムさんの元で働いているんだけど・・
一つ悩みの種がある・・
それはクロムウェルって騎士でもないのにズカズカ屋敷にはいってくる変態だ!
本来ならそんな不届き者は成敗するのだが・・
あいつの力量はハンパじゃない・・・。
悔しいが僕の腕では勝つ事が出来ない・・・!でもいつかはあいつをひれ伏してやる!!

騎士団屋敷に到着し事後報告を済ませる・・
いつもならタイムさんに報告するのだが今は団長昇進試験が終わり
休養中だから別の人間にしている・・
結果は当人しかしらないらしく、僕も非常に気になるところだ
あの年齢で団長昇進・・、すごいことだ!さすがタイムさん!一生ついてきます♪
・・・
それはそうと屋敷で報告が終わったので帰ろうとすると
しきりに周りの連中が
「がんばれよ!」
「大変ね〜」
とか声をかけてくる・・・、何だ?
仕事終わったんだしがんばろうにも・・な・・
訳がわからないまま家路に着く。
騎士団員の寮だ。
僕のオアシス〜!さぁ、一眠りしよう。

ガチャ!

鍵をあけ中に入る・・
「帰ったか、掃除はしてあるぞ?」
・・・・・????
「・・・・へっ?」
目の前に長い白髪で民族衣装みたいなのを着た獣人がいる・・・・・
「・・・すみません!部屋間違えました!!!」

バン!!

すぐさま部屋を飛び出す・・・、部屋番間違えた?
でもここは男性寮なんだし・・・
・・・・
間違えてないよな・・・?

ガチャ・・

「どうした?慌てて・・」
やっぱり・・、いる・・
「あのっ、君は〜どちらさま?」
「?話を聞いていなかったのか。私はシトゥラだ。ここで厄介になることになった」
・・・・・・・・・・話って・・・何?
「すまない、話がよくわからないんだが・・」
「ああっ、私はアブソリュートに住んでいたのだが下界に興味が出てな。
クロムウェルに頼んで同行する事になったんだ」
「あの変態・・が?じゃあ僕の部屋に住むようにしたのも・・」
「クロムウェルだ」
・・・・・

バン!!

思いっきり扉を開いて全力疾走!!!!



・・
・・・・・
「どー言う事だぁぁぁぁぁ!変態!!!!」
猛烈な勢いで駆け付けたのは変態クロムウェルが住むぼろっちい宿・・
あいつは運良く部屋にいておりカードでタワーを作っていた・・
パラッ・・・・
「ああああ!!せっかく3段目までいったのに崩れたじゃねぇか!このチェリー!!!!」
バキッ!!
頬にキツイ一発・・・、くそっ!避けれない!!
「文句があるのはこっちだ!」
「ああ?何なんだよ?金ならないぞ?」
「誰がお前から借りるか!!僕の部屋にいるあの狐人の事だ!!」
「・・騎士団からは何も聞いてないのか?」
「・・ああっ、シトゥラ・・だっけ?彼女に聞いて貴様が元凶だとわかった!!」
「お前、身内で阻害されているのか・・?」
「・・ちっ、違う!報告すましてすぐ帰ったからたぶん事情を説明する暇がなかったんだ!」
「・・・プラス思考・・・♪」
むかつく〜!!!!
「ともかく説明しろ!」
「わかったよ、実はな・・・」
・・・・・・
・・・
・・

「・・・・彼女の事情はわかった。だがなぜ僕の部屋なんだ?」
「・・え〜っと、それは・・・・」
「・・おもしろ半分・・」
「ちっ、違う!何故お前の部屋なのかは・・、そうだ、お前を鍛えてもらうためだからだ!」

「どういう意味だ?」
「彼女の体術は中々だ。一瞬だが俺も追いこまれたからな。
その腕を見込んでお前専属で鍛えてもらおうと思ったんだ」
「・・随分親切だな〜」
「・・、なっ、なんだよ?その目は!いいか!
お前等騎士団は俺に全く手が出せないのが実状だ!
そんなことでいいのか!?いざとなれば戦場におもむかねばならないのに
ゴロツキ一人倒せない不甲斐なさに俺は懸念しているんだ!」
・・・ジーン・・・
「そうか!お前、嫌な奴だけど僕達の事をそこまで心配してくれていたのか!!
ありがとう!クロムウェル!」
「・・あ、ああ。どういたしまして。そんなことだからしっかり鍛えてもらえ!」
「わかった!!」
感激しつつ退室・・、ええやつやな〜
「ふぅ・・、な・・・ごま・・・たぜ。でもあのか・・・、ははははははは!」
部屋の中で何か呟いているみたいだけど良く聞こえないな・・
まぁいいや。帰ろう!

「帰ったか、事情はわかったか?」
白髪の狐人はずっと掃除していたらしく部屋は綺麗に片付いていた
「ああっ、シトゥラ・・だったっけ。よろしく頼む」
「こちらこそ、君は・・スクイード君だったか?」
「そういや事故紹介まだだね。スクイード=キャンベルだ」
そういい握手する
「まだまだ至らぬ若輩騎士だが指導のほうよろしく頼む」
「指導・・・?何の事だ?」
首をかしげるシトゥラ
「へっ・・・・?」
「私はここへ滞在させてもらうだけだと言う話のはずだったが・・」
「・・あいつは僕を鍛えてもらうためとか言っていたが・・」
「・・ふむっ、そうか。まぁいい。暇があれば手合わせするか」
「・・あっ、ああ・・」
・・なんか話がかみ合わない、あいつ、騙した!?
「それよりも、部屋の掃除させてもらったがこれは捨てていいのか?」
縄で十字に縛っているものは・・、僕が集めた春画のコレクション!?
「うわっ!隠してたのに!!何で!!」
「いやっ、目についたものだから・・。いるのか?」
・・女性を目の前にしてどう答えたらいいんだよ!?
「・・一応、ね・・・」
「ふむっ、わかった。」
・・・すげ〜、恥ずかしい・・・
「・・って春画で思い出したが年頃の男女が同じ部屋で暮らす事自体、不道徳なことじゃないか!!」
「・・・・、私はかまわないが?」
「・・へっ?僕がかまうの!僕だって男なんだ!君を襲っちゃうかもしれないんだぞ!!?」
・・獣人の感性が今一つわからない・・・
「かまわないさ。私の一族では女性は成人したらすぐに身篭らされるからな。
男の相手なんか朝飯前だ・・」
・・・なんつ〜一族だ・・
「君がよくても僕がダメなの!騎士が女性を襲うなんてあってはならないことだからな!!」
「・・禁欲的な男だな。まぁ今更変更はできんからよろしくたのむ」
・・・・
「はぁ・・・・・・ああっ、よろしく頼む・・」
はぁ、背に腹は変えられないか・・
・・・その日は一睡もできなかった・・、これから不眠の日が続きそう・・・・


翌日
朝飯をたいらげ手合わせをすることになった。
因みに朝食を作ったのはシトゥラ、なんだが変な味付けだった・・
屋敷の前の公園・・、朝早いので人はいない・・
「得物は?」
短パン、ワイシャツ姿のシトゥラが聞く。いつもの民族衣装は洗濯したようだ
「こいつだ!」
愛用のハルバート『旋空』を見せる。
これは祖父からの頂きものだ。業物らしいがよくわからない。
「ほぅ、わかった。ではっ・・・はじめよう」
スッっと短剣を両手にかまえるシトゥラ・・・
・・・なるほど、かなりの猛者だ・・・
以前の女剣士クローディアも凄腕だがシトゥラも引けを取らない・・
・・・ジリッ・・ジリッ・・
なんとか打ち込もうと思うのだが・・、隙があるようでない。
緩やかなかまえがかえって強固な守りを作っているようだ
「どうした、こないのか?ならっ!」
そう叫んだ瞬間僕の目の前にシトゥラが現れた!
「何!?このっ!!」
早い!なんとか『旋空』ではらう・・が!

フッ

急に消えた!
「甘いな・・」
後ろで声が・・!
「後ろ・・!?」
ガッ!!
短剣の柄で後頭部を叩かれた・・
「って〜!!!!!」
「幻術『陽炎』・・、まともにひっかかるとはスクイードもまだまだだな・・」
幻術?・・僕の知らない術だな・・
「まだだ!もう一本!!」
再びハルバートをかまえる!まだまだぁ!
・・・・・・・
こうして僕とシトゥラの奇妙な生活がはじまる・・。
現在もシトゥラに全敗・・・・ふぅ・・


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