終話  「愛にすべてを・・」


数日後
騎士団内で正式に団長への就任式が行われた
俺は協力したとはいえ騎士ではないので不参加〜。
まぁ、どうせお堅い形式爆発なので参加しても寝てしまうだろ・・

シトゥラもどうやらルザリアへの生活に慣れつつある・・
あの後すぐ主のいない部屋に行った・・
それにしても帰ってきた時のあのスクイードの顔は見物だった!

因みに帰ってきたらフィート君はいなかった。書置きに
『エネと一緒に旅行に行ってきま〜す♪』
ってあった。
俺が極寒の地で働いていたのにバカンスかよ・・
しかも女連れ・・。今回活躍しなかった割には良い目見ているじゃねぇか・・
・・そんなわけで今は部屋には俺一人〜。
どっかへ出かけるのもいいがなんか気がのらねぇ・・、
長旅の後は出無精になるもんだな〜・・
外ももう暗いし、早めに寝るかね・・

コンコン

「はいよ〜」
誰か来た・・?

ガチャ

「起きているか・・?」
タイムだ、ズボンにシャツのラフな格好・・
「タイムか、どうしたんだ?」
「・・・約束は果たさないとな」
ドン・・
目の前に酒が置かれた。
色んな種類の葡萄酒・・、よく集めたな・・
「・・覚えていたのか?」
「当然だ・・」
そのまま床に座るタイム
「・・おめでとうな、団長昇進」
「・・ありがとう、でも半分はお前のおかげだ」
葡萄酒の栓をあけグラスに注ぐ
「ついでくれるのか?」
「このぐらいさせろ」
「サンキュー、それじゃあお前も飲めよ」
お返しにグラスを用意して葡萄酒を入れる
「ありがとう・・・」
静かにグラスを受け取る・・、何時もにも増して静かだ
「それじゃ、団長昇進を祝って、乾杯」

カンッ

グラスを交わし飲む・・、すげっ、うまい・・
「いい酒じゃないか・・!いくらしたんだ?」
「店で一番高い奴だ。値段は見てない」
・・金持ち感覚?
「ふぅん、ありがたい」
・・・・・・・
「クロムウェル・・」
「んっ?」
「ありがとう、・・・・いつも傍にいてくれて・・」
酒のせいか顔を赤くしながら呟く
「・・どうしたんだ・・?」
「今回もお前に助けられたようなもんだからな」
「へっ、よせよ。俺は自分の仕事をしただけだ・・」
「それでも、ありがとう・・」
「タイム・・・?」
何だかいつもと様子が違う・・・
「クロムウェルは・・、何で私なんかと一緒にいてくれるの・・?」
「・・・ばかっ、今更聞くことかい・・」
「・・・・・聞きたいの・・」
・・・・・
「・・・・仕事を紹介する金ヅルだから!」
「それだ・・け・・?」
潤んだ瞳で見つめるタイム・・、何なんだ・・・?
「・・・・・・・、んなこと言えるかい!!さぁ飲め!ガンガン飲めぃ!」
酔いにまかせてお茶を濁す・・、なんだか苦手な空気・・・・



・・・・
しばらくして・・
「くろむうぇるのばか〜」
目がすわっているタイム・・・
「おいっ、大丈夫か?っうかお前酒って飲めたのか?」
そういやこいつと酒を飲むのは初めてだ・・
「飲めたかって、飲めるから飲んだんでしょ〜!」
・・いつものタイムじゃない・・・
飲むと陽気になるのかな・・・?
「わかったわかった。ともかく少し休め・・」
「ん〜、く〜ろ♪」
「・・何だよ?「くろ」って?」
「だって名前長いじゃない。だから愛称〜♪」
「猫じゃないんだから・・」
「・・嫌なの!?わたしがつけてあげているのに!!」
いきなり睨みつける・・、絡み酒!?
「わかった!何とでも呼んでくれ・・・」
「よろしい♪くろ〜!(ガバッ)」
「・・おいっ!タイム!?」
いきなり抱き着いてくるタイム・・、酔うとほんと人が変わるタイプなのな・・・
「・・・・・・・あのね・・、わたし、くろが好き・・」
・・・・・えっ・・・?
「なっ、何いきなり言っているんだよ!?」
「だって・・、いつもの雰囲気だと言えないし・・。わたしたち、憎まれ口ばっかじゃない・・」
まぁ、微笑ましい会話はそんなないけど・・
「何時からか・・、あなたが気になってしかたなくなった・・、でも・・言えなかった・・
いつもあなたにひどいこと言っていていきなり『好き』なんてね・・ふふふ・・♪」
・・・・・・
「タイム・・」
「くろはどうなの・・?わたしのこと・・・」
「・・えっ!いやっ!それは・・・」
いきなり確信ついた質問!?ど、どうする・・!?
「やっぱり・・嫌いだよね・・、こんな乱暴女・・・」
・・・・・・・・・・
「好き・・だぜ・・」
「・・・・えっ?」
「嫌いなら誰がお前みたいな無愛想女の世話になるかよ!そんくらい気づけ!」
・・・言っちゃった・・・・
「くろ・・・・・!!」
俺の胸に顔をうずめるタイム・・、
肩が震えている・・、声を殺して泣いているんだろう・・
「おいおい・・、大丈夫か?」
「・・・うん・・・」
酔うとほんと感情豊かになるな・・、これがタイムの素顔・・か・・
「・・・・しばらくこうしているか・・?」
「・・・・・うん・・・」
そっとタイムを抱きしめる・・、こんくらいしてやらないとな・・
互いの気持ちを伝えめつつ夜が更けて行く・・・・・
なんか急展開だね・・・、ほんと・・



・・・
・・・・
・・・・・
翌朝
どうやら飲みすぎたらしく二日酔いだ・・。
ベットの隣ではタイムが寝息をたてている・・・、なんで隣にいるかって・・?
・・・・・・
言えないね!!昨日の夜は俺とタイムだけが知る宝物さっ!!
ともかく水を飲む・・、
あ〜、こんな調子じゃ朝の訓練どころじゃないな・・・。
13部隊以来だな・・、二日酔いで訓練休むなんて・・・・
あのころはクラークさんに怒られた怒られた・・、
あの人は誰も死なせたくないと思っていたから余計に怒ってたんだよな・・
・・今の俺ならクラークさんに勝てるだろうか・・?
あの人に勝つため今まで訓練してきたが・・

”力とは守るべきものがあって始めて限界を越えれる、今のお前にはそれがないのさ”

ふぃにあの人のセリフを思い出した・・・
守るべきもの・・・か。
「うう・・ん・・」
隣でタイムが唸る・・、お目覚めか・・
「・・クロムウェル・・」
「・・なんだ・・?」
「・・・クロム・・・・・・・・・・・・ウェル!!?」
返答があったのが不審だったのか急に飛び起きるタイム・・
「おはよう、タイム」
「・・・なんでお前が私の部屋にいるんだ!?」
・・・??・・寝ぼけている・・?
「おいっ、ここは俺の部屋だぜ・・」
「へっ・・?・・・あれ!私・・なんで・・?」
「・・とにかく布団で隠せよ、見えてるぜ」
「・・・・・!!!変態!!!」
顔を赤くして布団を包むタイム・・、今更変態って・・・言われても・・
「・・・・・・ひょっとして昨日の事覚えてない・・?」
「昨日・・?お前と酒を飲んですぐ別れたはずだが・・・」
「だったらなんでお前がここにいるんだよ!?」
「・・そ、それは・・。・・・ひょっとして・・」
「ひょっとして?」
「昨日・・、私・・、お前に告白する・・みたいな夢を見たんだけど・・・」
「・・・それが現実だよ・・・」
・・・・・・・夢だと思って告白したのかよ・・・・・
「・・・・ほんとっ!?」
「その方がお前がここいるつじつまがあうだろ?」
「・・・うん・・」
顔を真赤にしてうつむくタイム・・世話が焼ける女だ・・
「じゃあ・・、俺の返答も覚えてる・・?」
「・・・・(コクッ)」
「お前がここにいる訳わかった?」
「・・(コクッ)、あのっ、私がベットでお前の隣で寝ていたということは・・、その、つまり・・・」
「・・・・(コクッ)」
「・・・・・・私ったら・・・なんてはしたない事を・・!」
もうゆでだこみたいに真赤、血が頭に集まり過ぎているようだ・・
そんでもって完全硬直するタイムさん・・・。
「ともあれ、支度しろよ。団長になったんだから忙しくなるんだろ?」
「あっ・・、ああっ、わかった・・!ちょっと出ていってもらえないか・・。恥ずかしい・・」
「わ〜ったわ〜った!!」
・・ほんと、世話の焼ける女・・。まぁ、いいか・・
こんな奴でも俺を想ってくれるのなら・・・・・

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