終話 「あなたに捧ぐ・・」


騎士団の活躍により大捕り物は無事終了した
死者もさることながら重傷者の数が異常に多かったようだ・・
当然その重傷者はすべて「凍傷」によるものだ・・・・・
アーカイブ公はタイムによって逮捕、騎士の誘拐、不法貿易、さらには麻薬密売云々・・・
死罪は免れないがタイムの計らいで懲役290年・・だそうだ・・・
死ぬまで光の入らない牢獄の中・・、苦しいね〜
あいつは根にもつからな〜、恐ろしい恐ろしい・・・


町の郊外にあるテント群・・・
町に暮らせない難民達や浮浪者が多く住んでいる区域だ。
フィートの被害者(?)エネもここに住んでいる
そのテントの一つに本物のセイレーズは静養していた・・
「ロカルノ・・・?」
ベットで寝ていたセイレーズ老人が起きあがる。
なるほど、白髪が渋い老人だ。俺も年取ったらこうなるんだな!!
「やぁ、セイレーズさん。持ってきたぜ?」
怪盗セイレーズ姿ではなく本来の目元を覆う仮面+革のジャケット姿のロカルノが
ダイヤを渡す。
普段着でも仮面を外さない・・、なんでだろぉ〜?なんでだろぉ〜?
「!!、やってくれたか!・・・・・・・間違いない!ありがとう、ロカルノ」
ふつふつと目じりを熱くし感涙するセイレーズ老人・・、
よほど大事なものなんだな・・
「ふっ、これで恩が返せたわけだな」
どうやらセイレーズ老人とロカルノは過去になんらかの関係があるようだ・・
まぁあんまり興味の持つのも野暮ってもんさ・・
「よせよ、・・ところでそこにいる方々は?」
セイレーズ老人が俺達を見て訪ねる。
今ここにいるメンバーは俺、フィート、セシル、タイム、スクイード君ってな感じだ
「ああっ、今回手伝ってくれた人達だ。左から変人、変人の保護者、
私の仲間、騎士団員2人・・だな」
ロカルノまで・・・・・・・・、
わいは、わいは変人やあらへん!!
「そうだったのか、ありがとう、変人殿」
真に受けるな!セイレーズ!!
「クロムウェルだよ!全く・・、しかし妻との指輪の割にはそれ以上に大事そうだな・・」
「ああっ、このダイヤの中にあるのはフラムタスクという錬金石なんだ・・
空気に触れると大爆発するのでな・・、被害者が出なかったのが幸いだ・・・」
「!!?・・なんでそんなもん指輪にしてるんだよ!!」
「かみさんが錬金術師だったんでな『最強の夫婦にこそふさわしい』ってことで
必死に作成したんだよ・・」
・・・・・・・理解できん・・・
「どうやらアーカイブ公はそのダイヤの中にあるのが
フラムタスクだということを知っていたらしい。
軍隊にでも売ればかなり高額になるだろうからな。」
「大爆発って・・、どのくらいの規模なんですか?」
フィートがセイレーズに訪ねる
「そうだな・・、この町が塵も残さず消えるくらいだな」
!!!!!!!
「「「うそ〜ん!!!」」」
ギャグ担当(俺、フィート、セシル)が驚く。
クール担当(ロカルノ、タイム)はあまり驚かない。
・・・この差は何?
因みにスクイード君呆然・・
「だから心残りなのだよ!妻の造った物が大量殺戮の道具にされてはたまらんからな・・」
「まぁよかったじゃないか。その指輪はしっかり持っておきな」
ロカルノが静かに言う・・
「そうしたいが・・、わしも病気でもうすぐこの世を去る。
このまま持っていてもまた誰かに盗まれる。
そこで・・・・・・あ〜、クロマティさんだったかな?」
「クロムウェル!!」
だから誰だよ!?クロマティって!!
「ああっ、そうそう。あんまりカッカしなさんな。あんた、この指輪を受け取ってくれないか?」
「ええっ?俺!?」
「力は集うものだ、それにお前さんなら安心して渡せそうだしな」
どうやら本物のセイレーズに気に入られたらしい・・
「・・わかった。受け取らせてもらうよ。ただし一つ条件がある」
「・・・何かな?」
「俺の知り合いに名医がいる。その人に治療を受けな。
例え治らなくても安らかに往生できるさ・・」
前回エネの一件で知り合ったクライブって医者のことだ。あれ以来交流が多少続いている
まぁ俺なんかは病気しないんで大抵世間話程度だがね
「・・・、わかった。」
「よろしい。じゃあ俺はもう帰るぜ。またその医者を連れてこよう。
長生きしろよ!しみったれじいさん!」
指輪片手に外に出る。
他の面々も礼をして退室していった・・・


・・・・・・・・・・・・
テントの外、ところどころ浮浪者がうろうろしている・・
まぁ珍しい光景ではない
「これでもう怪盗セイレーズが世間に出ることはないな・・」
ロカルノが静かに呟く
「そうね、でもおしいわね、セイレーズ姿のあなた、結構かっこよかったわよ?」
セシルがあからさまに誉める。
なんかこいつ・・ロカルノに対してはやけに・・・・
「おちょくるな、変装ごっこは趣味じゃない」
「またまた〜、仮面つけてるくせに!」
セシルに同意、仮面つけてんじゃん・・・

「そうだ、タイム・・」
つきあってられないので一緒に出てきたタイムに声をかける
「何だ?」
「手ぇ出してくれ」
「?、こうか?」
両手を差し出す・・、こいつの指って細いのな・・・
「ほらっ」
さっきもらったフラムタスクダイヤの指輪を右手の指に入れる
「・・これは・・・・・?」
怪訝な顔のタイム・・
「指輪なんてもんは男のするものじゃない。女が持っているもんさ。
だからお前が持っていてくれ」
「・・クロムウェル・・・」
・・・決まった!俺様かっこいい!!
これだよ!これが2枚目格闘戦士クロムウェル=ハット様だ!
わかったか!わかったらしびれろ!!
「こんな事で私の唇を奪った事をチャラにできると思ったのか?」
・・・・・・・・・・・・・・
ピシッ!!
どこからか亀裂音がした・・ような・・・
見るとスクイードが青筋たてて固まっている・・・・・・・
「あ、あははははは・・・、憶えてたの?」
「私はお前の女だ・・・・とも言っていたな」
スクイード君から凄まじい殺気がこみ上げてくる・・・・・
「そういえばタイム嬢を大事なモノとか言っていたな」
ロカルノも便乗、やめてください!
「貴様〜!!俺たちのタイムさんを!!!」
スクイード君プッチン!
「待てよ!スクイード!!おい!!」
「問答無益!!お前たち!(パチン!)」
指を鳴らすスクイード、すると周囲にいた浮浪者が一斉に槍を取り出す!
「「「よくも我等のタイム上官を〜!!!」」」
こいつら全員騎士団員!!?
なんで関係のないスクイードがここにいるのかって思っていたんだ!
計ったな!?タイム!!
「覚悟ぉぉぉぉ!!!」
「お前等見てないで助けろよ!うっ、うわぁぁぁぁ!!」
ロカルノ、セシル、フィートは白いハンカチを取り出しチラチラ振って
無言のリアクション・・・
くそっ!逃げ切るしかねぇ!!
「おぼえていろよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
全力で逃げる!
「「「「待たんか〜!!!変態〜!!!!!」」」」
全力で追ってくる騎士団のタイムファンクラブ・・・、
うへぇ〜

・・・・・・・・・・・・・・

結局町から離れた山奥まで全力疾走させられた・・・
大抵の者は途中でゲロってリタイヤしたがスクイードが最後までついてきやがった
やりおるわ・・・・・・





その翌日、町の入り口・・
町に入る者、町を去る者達が立ち止まる場所だ。
まだ朝だということもあり行き交う人はそういない・・・
セシルとロカルノが帰るということなので見送りにきた
「ほんとっ、稼がせてもらったわ♪」
報酬もらってホクホク顔のセシル。
因みにこの間のバトルロワイヤルは同数で引き分け、
あれ以上狩られる者がいなかったのでそのまま終了となった・・
「そりゃあよかった。俺たちも結構稼いだからな」
「そうですね、これだけあったらしばらくは楽できますね!」
見送りにきたのは俺とフィートとタイム。

スクイードは極度の筋肉痛だそうな・・・・、情熱が肉体の限界を超えた悲しい結果だ・・、
さらばだスクイード、安らかに眠ってくれ、
僕は君というアホなチェリーがいたことを忘れない

「世話になったなクロムウェル、おかげでなんとかなった」
ロカルノが礼を言う。その気持ちがあるなら昨日助けろよな・・・
「いいって事よ。タイムの依頼のついでだしな
それよりもおたくらはどこに帰るんだ?」
「ああっ、私たちはここから北に〜、そうね、歩きだと3日くらいの処にある町外れの
教会を拠点としているわよ。クラークに会いたかったら訪ねたら?」
案外近かったんだな・・・
「いやっ、遠慮しておくよ。あの人にはまだ勝てそうにないからな。
よろしく言っといてくれ」
「わかった、伝えておこう」
「あっ、ロカルノさん!いいですか?」
ふぃにフィートが叫ぶ
「ん?何かな?フィート君」
「サインください!」
色紙と羽ペン一式を出すフィート・・・・・
諦めてなかったのかよ!!
「あっ、ああっ・・・、構わないが・・なんと書けばいいんだ?」
さすがに困惑気味のロカルノ・・
「『ロカルノ参上!!』でお願いします!!」
「・・・・・・ああ・・・・」
唖然としながらもしっかりサインするロカルノ・・・
ほんと、なんでもできるな、こいつ・・・
「これでいいかな?」
「ありがとうございます!!!」
色紙握り締め大喜びのフィート
「こいつのサインで喜ぶなんて変わっているわね・・あんたの相棒・・」
あんたに言われたくありません・・・・
「まぁ・・な、おたくら程じゃないとは思う・・」
「ふっ、確かにな。こいつは狂暴だし、クラークは呑気だし・・
まともなのは私とあの子ぐらいだ・・」
まだ他にメンバーいるのか・・、ってあんたもまともじゃないだろ?
「失礼ね!・・さっ、もう行きましょう!タイム、世話になったわね」
「ああっ、機会があればまた訪ねて」
微笑むタイム・・・・
それはライバルに向けてではなく友人としての笑みだ
因みに今は私服でズボンにシャツ姿、私生活ではラフなんだな・・
騎士団団長から騎士なのに誘拐されたことを責められ謹慎中だそうな・・。
まっ、自分で自分の尻ふいたから本来なら別に謹慎しなくていいらしいんだが
それでは部下に示しがつかないってタイムが言い張ったらしい
「そうね、またくるわ。クロムウェル!今度会う時は決着つけるわよ!!!」
「いや、もうええやん・・・」
「よくない!首洗って待っていなさい!(ドンッ!)じゃあね!!」
俺の胸を叩き背を向くセシル、ロカルノも会釈してセシルとともに歩き出す・・・・
えらいのに目をつけられたな・・・・・
まぁ・・・・いいや・・

・・・・・・・・・・・
やがて二人は地平線に消えていった・・・・
「さて、帰るか。フィート、行くぞ?」
「あっ、僕早速エネにこれ自慢してきます!じゃ!!」
サイン片手に走り出すフィート、ここからだとテント群は近いからな・・
ってそのサインのこと説明してもエネにはわからんだろう・・?
「やれやれ、そんじゃあ・・・行くか?」
「ああっ」
仕方なし、タイムとともに帰る・・
朝の日差しがまぶしい・・、
なんか・・昨日の事もあるから緊張するな・・・
「「・・・・・」」
沈黙
こういう空気って苦手だ〜
「なぁ、クロムウェル・・」
「んっ?何だ?」
「昨日、ロカルノが言っていたこと・・、本当か?」
・・まだ根に持っているの・・・?
「なっ、何が・・・?」
「大事なモノ・・だとか・・」
「ああっ、本当・・だぜ・・・」
「・・そうか・・・・・」
うつむき加減のタイム、恐いっすよ・・
「おっ、おい!ひょっとしてまだ根に・・」
えっ?
言い終わる前に腕を組んできたタイム・・・
「ありがとう・・・、・・・・嬉しかった・・」
顔をそむけたまま照れくさそうに言う・・、
指にはあのダイヤの指輪がつけられていた。
・・・・・
やれやれ、こんなとこスクイードに見られたらまた全力疾走だな・・
でも・・、悪くないか・・・
「どういたしまして、タイム」



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