番外 「フィート君の忙しい1日」


やぁ、僕フィート。
この町の何でも屋さ
クロムウェルって強烈な先輩とコンビを組んでいて色々苦労してるんだ・・・
まぁ根はいい人だからこれみよがしに怒れないんだけど・・・
あの人は性格さえよければモテるんだろうけどね〜、
それでも僕ほどではないか♪


・・・・・・・・
日の光が差し込む朽ち果てた宿屋で目が覚める
ここは僕達が寄生している宿だ。
稼ぎからいってもっといいところでも暮らせるんだけど
あまりいいところだと働く気がなくなるっていう先輩の言葉でここに暮らしている
まぁ、誰もいないしやりたい放題できるから僕も満足はしているんだけど・・

そういや、先輩は昨日から帰ってこない。
なんでもこの町、ルザリアに駐在している騎士団の団長補佐タイムさんに
夜這いをかけようとして失敗。
屋敷の屋上に張りつけにされているんだそうだ・・・・。
昨日、先輩に見えないように隠れて見物したけど・・・、
・・・・酷かった・・・・
顔中ボコボコなうえにタイムさんのことを慕っている男性騎士数名が石を投げていた・・
タイムさんも先輩に気があるんだから
もっと普通に接したらうまくいくと思うんだけど・・
ほんとっ、先輩どう考えているんだろう?
この間もせっかく二人きりにしてあげたのにあまり進展しなかったようだし・・・
・・・・まぁ忠告しても聞かないからよしとしよう♪

先輩がそんなんだから今日は1日フリ〜、
だから予定を考える!
確か〜、騎士団屋敷の受付嬢サリーさんが会いたがっていたな、それにエネも
そうだったし・・、後は・・とりあえず他に定期的に会っている子は問題ないか♪
朝っぱらから屋敷に行くと先輩の目に付いて助けを求めるだろうから・・・
エネのところに行こう!!
よしっ、そうと決まれば出発〜〜〜!

寝巻きからフード姿に着替える。因みにフードをとったら
普通にGパンとシャツなんだけど・・
あんまり戦チックなのは好きじゃないんだ。
まぁ何でも屋をしつつナリが普通ってところを女性にアピールして
気を引かせるのが目的なんだけど・・・
部屋の鍵をかけて階段を降りる・・
いつもながら人気のない宿屋・・、ってカウンターにも誰もいないし・・
よく見たらもう昼時だな・・・、僕って朝には弱いんだ・・
途中で何かつまんでいくか・・・・・・


エネが住んでいる家はテントだ。
以前は普通の家に住んでいたんだけどヤブ医者に騙されてテント群に
追いやられたそうだ。
まぁエネのお母さんも病状はいいらしく
一人で立てるくらいまで回復したようだ
この町の郊外にはそうした人や難民がテント暮らしをしているんだ。
先輩曰く「こんなご時世だから珍しくもない」・・だそうな。
ともあれ、テント群に向かって歩き出す・・
レンガが並べてある中央通りを経由していくんだ・・・


中央通りはいつもの賑わい・・、貧富の差が激しいこの町の実状が嘘のようだ
まぁそんなものが表丸出しの町もそうそうないか
「いやっ!止めてください!!」
むっ!女の子の叫びが!!
11時方向!
男にからまれている少女発見!
キュピーーン!!!

『バスト・・・クリア!
ウェスト・・・クリア!
ヒップ・・・、う〜ん、くりあ!
そしてフェイス・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、まぁ及第点
総合すると70点・・
解析グレード=GOOD』

助けよう!

「君っ、いたいけな少女をいじめるのは止めたまえ!!」
なんだか紳士ぶった口調になったけどまぁいいや
「あぁん?ガキは引っ込んでろ!!」
・・・・ガキ?
「ふぅ、・・・『狂風』」
軽く印を切り中級の風魔法を発動。
ヒュゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!
ピンポイントで突風が男を直撃、男は遥か彼方に飛んでいった
運がよかったら生きているだろうね、いやっ、悪かったらか・・
「大丈夫かい・・?うっ!!」
採点ミス、正面から見たら・・・・、
フェイス・・及第点をちょい下に変更
バスト・・、くりあに変更・・
訂正総合、60点・・・赤点だ。
くっ、僕の観察能力もまだまだか・・・・
「ありがとうございます!助かりました!」
「い、いやぁ、じゃぁ僕はこれで・・・」
「あの、お礼がしたいんですけど・・」
「いいです!いいんです!はい!」
「いえっ、そうおっしゃらずに・・!あらっ、よく見ると素敵なお方・・・・・」
「あっ、いやっ、僕急ぎの用があるので!これで!!」
一目散に逃げる!!
総合点が赤点なら関わらないほうが身の為だ!!
ここが見境ないプレイボーイと違うとこさ!!
さよ〜なら〜!!

柄にもなく走ったから喉が乾いたけど
なんとか逃げ切った・・・・
気がつくとテント群の入り口だ・・。
ふぃ〜
呼吸を整えエネのテントに入る。
「やあ、エネ。きたよ」
テントに入るとエネは母親の看病をしていた。
「あっ、フィート♪」
嬉しそうにエネが言う。
この子もすっかり僕のモノさ♪
「フィートさん、こんにちわ」
エネのお母さんだ。僕と先輩の活躍で回復にむかったので
かなり年下なんだけど敬語で話してくれる・・、照れるな〜
「あのっ、クロムウェルさんは?」
「ああっ、タイムさんに夜這いかけ損なって騎士団屋敷に張りつけの刑中だよ」
「「・・・・・・・」」
エネ親子、沈黙・・。
「そ、それじゃあ今日はゆっくりしていけるね」
「そうだね♪ゆっくり『お話』できるね♪」
「・・・・うん(ポッ)」
『お話』って言うのは合言葉、内容は・・・・・・、
まぁこういう場では言うことじゃない事・・だね
「・・・?、まぁゆっくりしてください」
合言葉の事なんか知らないエネの母親はなんだか
よくわからないっと言った感じだ。
お宅の娘さん、もう大人ですよ♪


とりあえずテントにいるのもなんだから外で話をすることにした。
あっ、今の話っていうのは普通の話だよ?
テント群の中にも少し開けた場所はある。
そこに座って日ごろのやんなき事を語り合う・・・
こうしているだけでも幸せって感じだよ、なんせあのアクの強い先輩と
行動しているんだからどうしても世間から「ずれて」しまうんだ
しかし
「おおっ!ここにいらっしゃいましたか!!!」
初老のじいさんが僕に話かけてきた・・・
「ええっと・・、誰です?」
初対面・・のはず・・・・?
「先ほど助けてもらった娘の保護者ですじゃ」
先ほどって・・・、あの子!?
まさか追ってきていたとは・・・、
どうしよう?エネが見ているけど・・殺るか・・・・?
「あっ、ああっ。お礼ならいいって言ったんだけど・・・・」
「いえっ、そうではありません!お嬢様がまた強姦に攫われたんですじゃ〜!!!」
・・・・・・、物好きもいるんだね
「・・・・それで?」
「お願いします、お嬢様を助けてやってくだされ〜!!」
・・・なんか芝居くさいぞ?
「あっ、悪いですけどそういうのは騎士団に〜・・・」
「それだと間に合わないんですじゃ〜〜!!!!!」
「ねぇ、フィート。助けてあげたら・・?」
うっ!エネが同情の眼差しで見ている・・・、
ここで断れば好感度はダウン・・・、くそっ、仕方ない!!
「・・わかった、エネがそういうなら・・・」
「助かりますですじゃ〜!!!」
うるさいよ!!
「じゃあちょっと行って来る。『お話』はまた今度になるね・・」
「しょうがないよ、その代わり今度いっぱい『お話』しよ♪」

・・・ふふっ、随分積極的になったじゃないか・・・・

・・・・・・・・
「でっ、ここでいいんですか?」
なんでかわからないけど怪しい倉庫まで案内された・・
「はい、わしはここまでですじゃ!外でお待ちしておりますですじゃ」
・・・・・話し方、変。ってなんかさっきより髪の毛ずれているような・・・
まぁいいや。早いとこ済ませて騎士団屋敷の受付嬢サリーさんと
イイことしよう!

ガチャ、

扉を開けて中に入る・・、中は暗いが・・、
何人かいるな?
「・・・・・ふぅ、出てきてくださいよ?これでも忙しい身なんですから」
暗闇に声をかけると倉庫の灯りがついた・・
そこには・・
「き、君は?」
あの赤点っ子が奥に座っている
誘拐された感じではないな・・・・、
他には黒服の男が4人
「お待ちしておりましたわ、ダーリン」
だ・・・・・、ダダダダダダ!!!!ダァァァァリン!!?
「ちょっと待った!初対面でダーリンはないんじゃない?」
「私、あなたに一目ぼれしちゃいましたの。
それなのに逃げてしまわれるなんて酷いと思いません?」
無視ですか・・・・
「いやっ、だから僕も忙し・・・」
「それで、力ずくでもあなたを私のモノにしたくなったんですわ」
・・・・・、はぁ
「それでわざわざ僕を探して呼び出し、こんな黒服の男を集めたわけか・・・」
ってチンピラにからまれるくらいならいつも黒服のそばにいたらいいじゃないか!!
「そうよ、どう?私のモノになりません?」
「あいにく、僕は自由奔放なのが好きなんだ。それに魔法を使うところを見て
この程度の人数しか用意しないのはちょっとうかつじゃないかな?」
4人くらいなら2秒で片付けれる・・・
「そうでもないですわ?この倉庫には結界が張ってありますの。
だから魔法は使えませんことよ?」
・・・・うそ?
「マジですか!?・・・えい!!」
急いで初級の魔法を唱えるが・・、何も起こらない・・
ありゃ〜・・・
「さぁ、どうします・・?」
こんな赤点っ子のモノになるなら・・、儚く散った方がマシだよ!
「魔法が使えなくても答えは変わらないよ。」
「そう、・・なら無理やりにでも。やっておしまい(パチン)」
指を鳴らすとともに襲いかかる黒服4人衆・・
はぁ、あんまり肉弾戦やりたくないんだけど・・・・

コォォォォォ

軽く体内の陽の気を練り、拳に集中させる・・
やがて拳は輝き出し、熱を持つ・・・・・
『渦巻く怒りがこの手に集う!これが光の拳!陽砲!!』
叫ぶとともに両手を覆う光の球体ができ上がる

これは高温のエネルギー体で鉄ぐらいなら簡単に溶かす気孔術
どちらかといえば魔法と体術の中間に位置する技だ。
以前、旅修行中に立ち寄った道場で学んだものでそこで先輩と知り合った。
もっとも、先輩の『陽砲』はもっとでかいし威力も高いけどね。
よくあんな巨大な光球を作り出せるもんだよ・・、やっぱり生命力の強さ・・かな?
因みになぜか先輩は『スフィアストライク』って勝手に名づけている。
あの人、そういうのこだわるからな〜

「さぁ、大やけどしたくなかったらおとなしく下がって!!」
警告するがそのまま襲いかかる黒服。
全く・・
ぼす、ばき、どがっ!
軽く急所を狙って攻撃、魔術師だと思って甘く見たのが運のツキさ。
これでもかの暴走猛牛で有名な『スタンピート』の乱闘をいつも見ているんだから・・!!
最後の一人は僕の戦い様を見てかなり動揺しているようだ・・
まぁ死なない程度に手加減しているんだから安心して落ちてください♪
「今度はこっちから・・・!!」
駆けだそうとしたその瞬間!

バン!!

勢い良く倉庫の扉が開いた
「お嬢様!!勝手に団員を連れて行っては困るとあれほど言っているでしょうが!!」
女性の声だ、あれ?この声・・・
「・・タイムさん!?」
振り向くとスーツ姿で息を切らしているルザリア騎士団団長補佐、タイムさんがいた
「・・・、フィート君?」
「どうしたんですか・・?」
「君こそどうしてこんなところに・・?」
・・話がわからない。あの赤点っ子もタイムさんを見るたびすくみ上がっているし
残った黒服の男も敬礼している・・・
・・・・?????・・・・・





「つまり、この子は団長さんの一人娘って訳ですか・・・」
とりあえず騎士団屋敷に招かれた、いつもの応接室だ。
「ああっ、新人団員も団長の娘ということで拒否できないらしくしばしば
お嬢様の雑用に付き合わされているんだ・・・」
疲れた様子でタイムさんが答える
この騎士団、タイムさんがいなかったら崩壊しているだろうな〜
「・・・ごめんなさい・・・」
急にしおらしくなる赤点っ子・・、タイムさんが恐いようだ
「まぁ、いいですよ。ところで先輩は・・・?」
屋上に姿が見えなかったし・・
「ああっ、公園で水責めの刑・・・だ」
さいですか
「・・・・・ああっ、まぁ、ほどほどにしてください・・ね」
「死なない程度にはしている」
まだ怒っているようだ・・・
「でも、先輩もタイムさんの事が好きだから夜這いかけたんですし・・・」
そう言った途端、満面驚きの表情に変わるタイムさん、
こういうことには免疫がない人だね・・
「ばっ、ばかな事言わないでくれ!あっ、あいつが私のことなんか・・・」
・・素直じゃないな〜。まぁ恋のキューピット役なんかご免だから
このくらいにしておこう
「じゃあ僕は帰ってもいいですか?後はそちらの問題のようですし・・・」
「ああっ、すまないな。迷惑かけて」
「いえいえ、構いませんよ。まぁオフの時間を潰されるのはあまりいい気はしないですけど」
「十分注意しておこう・・、さぁお嬢様・・、しっかり団長に説教されてくださいね!」
「・・・・うっ、・・・・」
グゥの音も出ない赤点っ子、たっぷり絞られてください・・・
って団長いるんだ。珍しいね・・・
「ああっ、それと帰るときにあの変態を連れていってくれ。そろそろ解放しないとな」
「・・・はぁ、わかりました・・・・・」
肩を落とし応接室を出る・・

屋敷のホール・・
「フィート♪用事終わったんでしょ?今暇?」
受け付けのサリーさんだ。
「ええっ、終わったには終わったんですが・・、先輩のテイクアウトを頼まれて・・・」
「!!!、あんの変態〜・・・・!!!」
怒気を発しながらサリーさん・・
「ははっ、ごめんなさい。また今度のオフにでもゆっくり、会いましょう」
「・・うん♪絶対だよ!!」
途端に元気よく返事するサリーさん。女の子ってなんでこうも多面性なんだろう?
「じゃ、おつかれさま。」
そう言って屋敷を出る。
うわっ、もう夕暮れ時だ・・・
なんだか空しい休日・・・・・・・・・・・

タイムさんに頼まれているので屋敷前の公園に向かう・・
噴水近くの木に足を吊るされ先輩はいた・・・・
腹筋運動しないと顔が水に浸かってしまうらしく、何度も身体を曲げている・・・
手も結ばれているし・・、うわっ、結んでいるの全部ワイヤーだ・・・・
さすがタイムさん・・・・
「せんぱ〜い、解放令が出ましたよ」
声に反応する先輩、うわっ、顔がさらにボコボコだ・・
「おっ、おおっ、フィート!!助けにきてくれたのか〜!!!」
「・・まぁそんなものです。大丈夫ですか?」
「なっ、なんとか・・、タイムの野郎!ここまでやるか!?」
手早くカマイタチでワイヤーを切断する
「夜這いは犯罪ですよ?」
「違う!夜這いは男のロマンだぁぁぁぁぁ!!」
大声で訴える先輩・・・、そんなんだから変態って言われるんですよ・・・・・
「だいたい、わざと見つかったんでしょう?先輩がその気になれば
いくらタイムさんでも襲えたはずですし」
「ばっ、ばかなこと言うのは止めたまえ!フィート君!
わざとこんな地獄を味わう奴がいるわけないじゃないか!」
嘘ばっかり、どうせ上手く行きすぎてなんだか罪悪感にかられたんだろう・・・・
傭兵だったから実は恋愛事はうまくないんだ、この人。
夜這いはさしずめ歪んだ愛情表現?
まっ、先輩らしいけどね
「まぁまぁとにかく帰りましょう」
「くそっ、この借りはいつか必ず・・覚えていろ!タイム!!」
・・・懲りない人、タイムさんも大変だな・・・・
はぁ、結局先輩と一緒に帰るのか・・、
まぁ飽きないからいいんだけど・・
それに・・、楽しみはむさぼるもんじゃあないしね♪


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