第九話  「決戦、シトゥラ争奪戦」


ユトレヒト隊に世話になって訓練する事数日、

いつまでもそうしていられないという事で今日発つ事にした。

っても朝食は頂いたんだけどな・・。

相変わらずクラークさんはあっさりとしているもんだ、まぁ細かい事を気にしないのはいい事なんだけどな。

他の面々も軽い挨拶程度、クローディアは人に恋愛を伝授するほど器用じゃないしメルフィは最初からどうでもいい他人事

唯一キルケだけがツェーラに熱い声援を送りながら俺達を見送ってくれた。

恋愛大好きな夢見がち少女だな・・

まぁその結果がどうあれ、後日伝えに来る事を約束しつつ俺達はルザリアに向けて出発をした。



・・・・・・・・・・



普段ならば馬を使っても数日かかるのがフィートが風の魔法を使ってくれるために移動は至極楽、

っても上空に飛ばされる感覚には未だに慣れるはずもなく俺はともあれスクイードは絶叫を上げ

ツェーラは危険だからと言う事で何気にフィートが抱きしめながら飛翔した。

それもドサクサに紛れて尻とか触っていたし・・

・・それが狙いなんだよ、全くに・・。

ルザリア到着後は各自解散、スクイードは体を休め俺はタイムに報告。

ツェーラはルザリアに来ている事をスクルトに気付かれるわけにはいかないので

フィートのエスコートでテント郡にあるセイレーズ爺さんのところに厄介担ってもらう事にした

・・テントなんだ、1人や2人増えたところで問題はないだろうからな

そんな訳で俺はタイムに報告してこれからの事を相談する・・はずだったんだが・・



「ん・・んむ・・ん・・!」



団長室に入るなりタイムが抱きついてきて扉を閉めつつ俺に熱烈な接吻をしだす、それももう数分経過・・

自ら舌を動かし俺の口内を愛撫する様は騎士団長のそれではない

「ん・・はぁ・・♪クロ・・」

長い口付けが終わった後にしっかりと抱きしめるタイム、俺中毒もとうとう末期症状ですかな・・

「数日空けただけなのに大げさだぜ?仕事中なんだろう?」

「私の出張の後にクロが出て行くから、特別なの・・」

ま〜ったくに、我侭っ子さんだねぇ・・。まぁそこがタイムなんだけど・・

「嬉しい事言っちゃって〜♪まっ、続きは今晩って事にして〜、スクイードの事だ」

「え・・?シないの・・?」

「勤務中でしょうが!」

「・・もう、意地悪・・」

全くに、寂しさが募ると仕事もクソもないようだなぁ。

仕事をちゃんとするように俺がコントロールせねば・・

「え〜、コホン。とりあえずツェーラとフィートの甲斐あってスクイードの特訓は成功だ。

実力は拮抗しているとツェーラも判断した、後はどっちがシトゥラに執着しているか・・だな」

「フィート君も協力してくれたの・・、意外ね・・」

「まぁ、あいつの場合はただの気まぐれだろうさ。それで・・スクルトはどんな感じだよ?苛立ったりしていなかったか?」

流石に都会に数日滞在すれば故郷も恋しくなってくるだろうし、本来はシトゥラと交わるために来たんだ。

不満の一つでも・・

「全然ね、ルザリアを朝から夕暮れまで見学しているわ・・昨日なんかカチュアと一緒にローエンハイツで海を見てきたんだし」

ないんかい!

「まぁ・・ルザリアとローエンハイツ巡りで満足だったら・・問題なさそうだな・・」

「山育ちの白狐族には都会は新鮮だし海なんて見たことないでしょうしね」

シトゥラも海を見た時は興奮してたもんな・・。ほんと、海辺で育った者としちゃ理解できね

「とにかく、後は白黒はっきりつけるだけだな」


コンコン


っと、来客か・・

「開いている、どうぞ・・」

途端にキリっと表情を引き締めて自席に座るタイム、たまに二重人格のように見えてくるな

ともかく、俺も自席としてソファに腰掛けた

「失礼します・・」

入ってきたのは意外にも・・スクルト、やはり騎士団屋敷という空間が緊張するのだろうか

・・っうか・・

「・・おいおい、さらに焼けたか?」

「え・・あ・・はははは・・」

体質と言えどもこれまた時期外れにこんがり焼いたものだ

「スクルト君、どうしたんだね?何か必要なものでも・・」

「ああっ、いえ、タイム団長、そういうわけじゃないです」

一応こちらの都合で留まってもらっている分扱いも丁寧なんだな、

それにスクルトも恐縮していら・・トコトン人が良いもんだ

「ん・・じゃ、どうしたんだ?」

「スクイードさんが帰ってきて、明日勝負をする事を言われたので・・今までお世話になった事のお礼を言っておこうと思いまして・・」

律儀だな・・

「このぐらい、構わないさ。我々は君の願いを妨げようとしているのだからな・・」

顔色を曇らせるタイム、ここ数日で何気にスクルトの事を気に入っているようだな

その分この一件に関しては心苦しいものか

「いえ、元々はシトゥラ副隊長が自分の意志で下界を見たいと言ってルザリアの皆さんにお世話になっているんです。

それを僕の我侭で崩すのは申し訳ないと思っていました・・、

スクイードさんとの勝負は僕の成人の儀の本当の意味での仕上げ・・っと受け止めています」

謙虚ながらもしっかりと考えている、腕が悪いが性格は立派だな

「悪いな・・、とにかく明日が全てだ。今日はゆっくり休んでくれよ」

「わかりました・・では、また明日・・」

一礼して退室するスクルト、大人しそうに見えてすでに臨戦体制か・・。

これは、どっちに転ぶか・・

「・・、クロ・・大丈夫かしら・・?」

「スクイードを信じるしかない・・な」

「それだと少し、不安が残るのよね」

お前の部下だろうが・・

「それにしても、男二人と女一人・・ありきたりな揉め事だが、難儀なものだぜ」

「その点、私達は恵まれているわね・・」

「はははっ、タイムを狙う恋のライバルなんざ去勢して燃えないゴミの日に捨ててやるぜ」

「もう・・馬鹿♪」

俺達は至って平和なんだけど・・全てがそうはいかないわけだなぁ


・・・・・・・


翌日


いよいよスクイードVSスクルトのシトゥラを賭けた決闘が行われる

場所は騎士団の演習場で観客はタイムやアンジェリカ、シトゥラぐらい・・

仕事に穴を開けるわけにもいかないのでルザリアの騎士達は気になりながらも通常の任務へ行き

ツェーラはその場を見るわけにもいかないので結果がわかるまで身を潜めている

唯一、フィートだけが結果しか興味がないって事なのでどこかぶらつきだした。

「ま・・あいつらしいんだけどな」

フィートはあくまで助っ人だからな

それはともあれ、天高く晴れ渡った空の中決闘の準備が整ったところでテント郡担当課で待機しているスクイードを呼びに行く事になった

すでに準備は整っているはず、後は精神を集中するのみ・・

「お〜い、時間だぞ〜?」

勤めて軽く、扉を開く・・そこにいたのは・・



「人間五十年〜・・下天のうちをくらぶれば〜・・夢幻の如くなり〜・・」



スクイード君・・壊れているね・・

っうかその歌は玉砕覚悟の歌だろうが!

「スクイィィィドゥ!!しっかりしろぉ!!」


バキ!


「うがぁ!」

全力で喝をいれる!今の奴には痛みによる闘魂注入しかない!

「おら!気張れ!時間だぞ!」

「ヘ・・変態!僕は何を・・」

何かに憑りつかれていたんかい・・

「時間だ、シトゥラも見ているんだ、全力で挑めよ・・・」

「わかった・・!お前のおかげで気合が入ったよ・・」

「ようし!そんじゃ・・出陣!!」

「お、応!!」

少しだけふらつくスクイードだが気合十分にテント郡から出陣をする

・・少し・・ダメージを与えたみたいだけど止む終えなしだ、がんばれよ〜・・

そんなわけで場所は演習場へ・・

すでに準備は完了しており場は完全にピリピリしてます

「では・・これより、シトゥラの一件をかけた対決を行う。双方・・全力で挑んでくれ」

審判はタイムが行い、シトゥラやアンジェリカは安全地帯まで退避。

スクルトはいつもの白い白狐の服装、まぁ替えがあっても同じだろうし

だが流石は戦士として認められただけに武器は持参してきた、

まぁ、シトゥラやツェーラでも見慣れた白狐族の戦士共通である骨と永久凍土を使用した骨剣。

ツェーラが言ったように確かにショートソードと同じくらいの長さで飾り気はなく握りの部分に布を巻いているのみ

だが刃は良く磨がれている、以前シトゥラのを持たせてもらった事があるのだが流石に金属使用じゃない分軽く扱いやすい。

と言っても、金属製の武器と真っ向からぶつかりあう事なんてないからこそ使用しているだけあって

全力で金属武器とぶつかりあえば強度的にポキっと逝くだろうな

対しスクイードはルザリア騎士制服に持参の斧槍、機動性には機動性・・あいつも防具をつけずに勝負となった。

これは短期決戦だな・・

「・・スクルト君、よろしく頼む・・」

「こちらこそ・・よろしくお願いします」

礼儀正しく一礼する二人の戦士、気合は十分だ・・

「では・・はじめ!」

双方の気迫を感じ取ったタイムが開始の合図をし、身を引く

ゆっくりと構えるスクルトと同じく斧槍の切っ先を相手に向けるスクイード

それぞれが想う相手のためにうかつに仕掛けられないのだろう

「・・・・・・」

「・・・・・・」

無言のまま睨みあうスクルトとスクイード、張り詰めた空気が一体を支配しシトゥラも何を考えているのか鋭い目つきで二人を見守っている

だが次の瞬間にスクルトの体が跳ねた、流石は獣人・・基本的な身体能力は人間のおよぶところではなくあっという間にスクイードに迫る!

しかしスクイードも遊びで今まで訓練をしてきたわけじゃない、スクルトの軌道を見切り牽制の一撃を払いながら素早く飛びのく

スクルトの動きに動作が一瞬遅れたのだがそれでも対応し自分の間合いに入り込ませないようにしたんだ

自分の間合いで戦う事、戦闘での基本にして重要な事だな

でもスクルトも負けてはいない、一撃を払われたのだがすぐさま体勢を立て直し地を蹴りながら開いた距離を埋めようと駆ける

落ちこぼれって話だが突っ込むことだけをみればそうとは思えないな。

お人好しだった表情は何処へやら、真剣にスクイードを倒そうと迫り地を這うような踏み込みをして仕掛ける!

距離を取ってもすぐに埋められると悟ったスクイードはその攻めに斧槍で地をすくい上げるような突きを放つ!

「・・!う・・おお!」

接近するというのは被弾の可能性をあげること、だがスクルトはスクイードの突きに怯むことなく

踏み込み足を止めるために鋭い足払いを仕掛ける!

「な・んの!」

スクルトの敏捷性なら足を取られた瞬間に一気にたたみ込まれてしまう

だからスクイードは突いた後の動作で柄を引きそれを地に突き刺して飛びあがった!

中々の反応、スクルトの一撃は空を切り、スクイードは宙で小さく一回転しながら斧槍を握り返し斧刃を叩きつける・・

これは・・アイヴォリーが良く使う空中小回転踵落としのモーションだ。

技を盗んでいたか・・確かに遠心力の付く一撃は破壊力抜群だ・・一撃必殺指向のあいつらしいがハッタリとしては上等

「うわ・・わ!」

足払いが失敗に終わった状態で脳天かち割られそうな一撃が降り注ぐ故にスクルトは不安定な状態から地を蹴りその一撃を避け、距離を開ける

その瞬間にドガッと斧刃が地を削り土が飛びあがった

・・まともにあたったらとりあえずアンジェリカ先生の緊急治療が不可欠になりそうですね

だが・・今のやりあいで実力は五分五分だな。

スクルトの猛攻をスクイードがどれだけ捌けるかが大きな焦点か・・

「・・流石にやりますね。副隊長で白狐の戦いを理解していらっしゃる・・」

「だが、シトゥラと君とでは戦法も違う。楽観はできないさ」

気を緩ませる事無く会話をする二人、流石真剣勝負・・そうこうしている間にも相手の出方を伺っていら・・

「・・できれば、もっと違う出会い方をしたかったですね・・」

「あぁ、君じゃなかったら・・気兼ねなく相手をできたのだが・・」

「でも・・シトゥラ副隊長は・・譲れません。覚悟を・・!」

「・・っ、来るか!」

殺気を放ちスクルトの体が再び跳ねる・・さっきに比べて格段に速い!

仕留める気だな・・

ツェーラと同等の速さで接近し手から得物の骨剣を放つ!

唯一の武器を投擲するとは・・

軌道は単調、牽制して体術で勝負に出るつもりか

「甘いぞ・・!」

投げつける骨剣は鋭いが見切れない速さではなくスクイードは冷静にそれを腕で払おうとする

斧槍で払おうものならば隙が出来るからな、ここらは実戦術としては常識・・

ドンピシャのタイミングで骨剣の腹を・・って・・


ドン!


「な・・に!?」

払う腕が空を切りその腕にめり込む石礫・・

なるほど、白狐の機動性を理解している故に戦法を変えて石に幻術をかけて骨剣に見せて時間差での攻撃にしたか!

落ちこぼれってツェーラもシトゥラも言っていたが、十分強敵だぜ・・

「これで・・終わりです!」

見る限り石礫の威力はかなりのもの、防具をつけていない右腕にめり込んだところを見て相当な痛みが走り上手く動けないだろう

斧槍なんて重い両手持ちの武器を持つ以上片手を封じられたのは致命傷・・

おまけにスクルトはスクイードの右側に姿を見せ止めをさそうとしている

この位置・・まずい・・!負けるぞ・・

「僕は・・負けない!!!」

骨剣を振り上げ切りかかるスクルトに対しスクイードは引かずに突き進む!!

ザシュ・・

振り下ろされる骨の刃・・それにスクイードは肩をぶつけわざと斬らせた。

血が吹き飛ぶが振り下ろしきる前である事とスクルトの体格的に一撃に重さがないが故に腕を飛ばされずに刃は止まった・・

「う・・おおおおおおおお!!!」

ハルバートを投げ捨て左手に力を込める!

「う・・・!?」


バキ!


気迫に圧されたスクルト、その頬にスクイードの鉄拳が見事に入りスクイードを吹き飛ばした・・

肉を切らせて骨を断つ・・か。不恰好だがスクイードらしいぜ

だが、これで右腕は完全につかえなくなった・・左手のみで斧槍を扱うのには無理がある

これでスクルトが立ち上がれば・・

「う・・ぐ・・はっ・・」

大の字で地に背をつけたスクルト・・、口を切ったのか血が流れるが・・まだやれそうだ。

「く・・、無理のある姿勢で気絶させられなかった・・か・・」

口惜しそうに呟きながらも斧槍を拾うスクイード、右肩からは血が滴っている・・

「い・・意識が遠のきましたが・・ね・・」

苦笑いしながらも骨剣を地に刺しながら起き上がる・・、だが足がガクガク震えているところを見ると

相当なダメージを与えたようだ

被弾を考えない戦いをするために打たれ弱さがあるか

「ならば・・次で決めよう」

「ええ・・」

よろめきながらも間合いをゆっくりとつめる二人、隣にいているシトゥラの表情にもやりきれないものが見え隠れしている

やがて双方の射程圏に入ると得物を構え、静かに呼吸を整える・・

「僕は・・副隊長に・・!」

「シトゥラは・・僕が・・!」

死力を振り絞った声とともに放たれる一撃・・、スクルトは骨剣で突きを放ち・・スクイードは柄で薙ぎ払う・・

・・最後はリーチの差か・・スクルトの攻撃がスクイードに届く前にスクイードの払いがスクルトの腕にめり込んだ

その衝撃で手から得物が落ち苦痛に満ちた表情を浮かべる・・

「ぼ・・僕は・・副隊長・・に・・」

唸るようにそう言いながら膝を地につくスクルト、人の良い奴だが・・執念は凄まじいものがある・・

「スクルト・・君・・」


「・・・・・・、それまで。スクルト君を戦闘不能と見なしこの勝負・・スクイード君の勝利とする」


静まり返った演習場にタイムの声がゆっくりと響いた

「・・スクルト・・」

試合が終わるや否やシトゥラは席を立ちスクルトの元へと向う・・やはり、心配か

「やれやれ・・一途な者同士・・無茶をするものね」

それに続くようにアンジェリカも席を立ち、二人の治療へと向った

・・後味があまりよくないがこれで良かった・・、そう思いたいな・・



・・・・・・・・



しばらくしてアンジェリカさんの治療が終わったところで一息つけた。

スクイードの肩の傷は思ったよりも深かったようでどちらかと言えばスクイードの方が重傷だったらしい

格言うスクルトは拳による一撃をもらった時顎にもダメージを受けてそれで脳が揺れたから動きが鈍ったと言う事で

それ以外は軽い打撲傷で済んだ・・済んだんだが表情に陰りがあるのは否めない

「完敗です、僕もまだまだ未熟ですね・・」

演習場にあぐらをかいて座りながら頭をかくスクルト、精神的ショックが大きいようだな

「まぁ、落ち込まない事ね。先ほどの戦闘からして貴方は立派な戦士よ」

・・アンジェリカが慰めているよ・・

「ありがとうございます。副隊長・・」

「・・よくがんばった、スクイードに勝てなかったがお前は良い戦士だ」

「副隊長・・その言葉が聞けただけでも・・がんばってよかったと思います・・」

深く一礼をするスクルト・・

「ちょ〜っと待てよ、スクルト。もう還る気満々だろうが・・一つ伝えておかないといけない事があるんだよ」

「・・僕にですか?」

「ああっ、実は今回の勝負・・当初はスクイードとお前とでは力量はお前のほうが勝っていたんだ。

それでは公平感がないと言う事でスクイードはちょいと特訓をしてきた」

「・・私が頼んだ。スクルトの事情もスクイードの事情も・・わかるのでな」

申し訳なさそうにシトゥラが呟く、後ろめたいんだな

「まぁそういう事だ。因みにシトゥラがスクイードを鍛えたんじゃない。こいつを鍛えたのはお前がよく知る人物なんだよ」

・・っと言っても本人ここにいないんだけどな

「え・・、僕が知る・・?」

「ツェーラだよ、スクルト君」


「ツ・・ツェーラ!?なんで・・あいつがこんなところに・・」


目を丸くして驚くスクルトと無言で眼を見開いているシトゥラ、両方に内緒にしてましたからのぉ

「・・本人が言うもんだろうが・・ツェーラは、お前に孕まして欲しいんだよ」


「・・え゛・・?」


「・・ツェーラが・・か・・」


固まる白狐二人・・、相当信じられない様子だな

「つまりは、お前がシトゥラに憧れを抱くのと同時に・・ツェーラはお前の事を見ていたって事だよ」

「あの・・乱暴女が・・ですか・・?」

「うむ、私も彼女は子を産みたくないがために戦士になったものと思っていたのだが・・」

「それもスクルトの仔が欲しいからだってよ。だからこそスクルトを追ってルザリアまで来てスクイードに願いを託したんだ」

事の経緯を説明するたびにスクルトの顔が固まっていく・・

相当、想像がつかないん様子だ

「僕が勝った後、ツェーラは覚悟の上で君にそれを打ち明けるようだ。・・彼女の気持ち、汲んではくれないかな?」

勝者の嫌味と思われようがスクイードは素直にそういう、間近にて手合わしてきただけにツェーラの気持ちも良くわかっているのだ

「・・わ・・かりました、とりあえずは・・ツェーラと会って話をしたいと思います・・。

今・・あいつはどこにいるんですか?」

「それがいい、あいつは今・・」「せんぱ〜い!!」

俺の言葉を遮るように聞こえてくるはフィートの叫び声

「あら、フィート君。急いでどうしたのかしら?捨てた女に襲われている最中?」

アンジェリカさんが早速喧嘩売っているよ・・、だがフィートはそんな事気にも留めていない

「どうした?えらく焦っているようだけど・・」

「エネが大慌てで僕に教えたのですが・・ツェーラさんが攫われたようです!」

「なんだって!?」

おいおい・・うまく話が収まるところで・・

とにかく、詳しく聞いてみない事にはわからないか


「フィート、状況を詳しく教えろ!」


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