第八話  「ヘタレを越えて」


フィートが遊び半分で掘った大穴をメルフィは易々と元通りにした。

まぁその方法はオーソドックス、どこからか土を両腕で掴んできて足で踏みつけ固める、

巨体の割には器用に作業をしており土の色は違うが元通りのなだらかな地面となった

キルケの補足によると、あの竜の姿の方がメルフィの本当の姿で生活しやすいという都合で人の姿になっているんだとよ

・・確かに、あの体じゃかさ張るだろうしなぁ。

でかければいいってもんじゃないわけか

っうか、地ならしするのに地震が起きていたんだけど・・流石に館も教会もクラークさんが関わっているだけあって丈夫だぜ・・



まっ、その甲斐あってスクイードの休憩が終わる頃には元通りになり訓練を再開、

動体視力や敏捷性についてはこの程度でいいとしてここからはツェーラによる本格的なスクルト攻略。

この一件どうしても譲れないツェーラは念入りに体をほぐしてそれに取り掛かっている。

恋する乙女は強いもんだ、それも・・恋人ではなくて子供が欲しいなんて・・アグレッシブやのぉ・・

「それでは・・、これからは実戦として本気で行きます」

ツェーラの得物は骨剣二刀ではなく実戦用のショートソード、飾り気はないんだが少なくても白狐族の物じゃない

「ツェーラ、それはどうしたんだよ?」

「ああっ・・スクルトと同じスタイルにするために倉庫にあった奴を貸したんだよ」

ユトレヒト隊倉庫保管のショートソードか、何か特別な物なのか・・?

「白狐族の男性戦士が使用する骨剣の長さに近いのを借りました。重量から本番はもっと早いと思ってください」

・・やはりあの環境じゃ金属製の武器なんてないだろうからな。その分鋭さは折り紙つき・・か

「わかったよ・・殺す気できてくれ!」

「その剣はクローディアと俺の鉄を切る用に保管していた剣だ、ぶっ壊してもいいから・・がんばんな」

斬鉄・・か、気軽に言うけど剣を扱う故でその技能は凄まじい事だ。

なんせただ得物を切るだけじゃダメ、気を練った上で放つ一撃でこそ成せる技だ。

巷に『鉄切り』だの『斬鉄剣』だの自称している奴ってのは大概武器の性能頼りの力任せってのが多い

だから結局は切るって言うかひしゃげさせているだけで得物ボロボロになり名折れになるって笑い話が多いんだよ

「・・いきます・・!」

ツェーラの顔からフッと感情が消える、本気に入ったな。

すると彼女の体を包むように紫の火が燃え上がったかと思うとその瞬間、ツェーラの姿が消えうせた

白狐族が得意とする『幻術』と呼ばれる術だ。

幻を活用する事で相手を霍乱させたりする、

それ単体ならば攻撃面以外での活用となるがこうした決闘ならば自身の優位を築ける手段にもなる。

今のツェーラみたいに最初に手の内を見せて相手に駆け引きを持ちかけるのも手だ

だが、スクイードもなまじシトゥラのパートナーをしているわけじゃない。

幻術に動揺する事もなく感覚を研ぎ澄ましている

「・・!来る!」

身構えた瞬間スクイードの目の前にツェーラの姿が現れる、

その瞬間に斧槍の柄でツェーラを突くのだが柄はツェーラの体を貫通し、その姿が消える

幻術による幻影フェイント、白狐戦士の基本戦法でシトゥラも良くそれを使うだけにスクイードの対応は冷静だ

柄で牽制しながら次の行動に対処し突如として姿を見せるツェーラに素早く斧槍にて薙ぎ払う

しかし



フッ


「何・・!」

薙ぎ払う斧槍はツェーラの体をすり抜けて消える・・、二段幻影フェイントか!

一瞬で現れるその姿を本物なのか虚像なのか判断するのは難しい。

ツェーラが女戦士NO2なのも納得できる

斧槍で薙ぎ払ったスクイード・・それゆえに隙は出来、あいつの脇腹を狙うかのように三人目のツェーラの姿が現れる

「・・はぁ!」

「こ・・この!」

咄嗟にスクイードが応戦し、キィン!と甲高い金音が響いた・・

致命的な隙と思えたがスクイードは柄を引きツェーラの刃を受け止め、力任せに払いのけてそのまま体を捻りながら足払い!

一撃を受け止められた事に面食らっていたツェーラだが牽制目的の鋭さをかける払い故に難なく回避して距離を取った

「・・ふぅ、何とか凌げたか・・」

冷や汗一つ流しながら呟く、まぁ・・しごいた結果が見えた瞬間ってやつか

「お見事です、確実に腹を切るつもりで仕掛けたのですが・・」

「反射神経はフィート君をおかげで鍛えられたからね。だけど・・幻術によるフェイント・・厄介だ。

何とかして見切らないと・・」

決して楽観はしない、スクイードの奴も本気だろうが・・


「いや、正直それを見切るのは不可能・・っというか相手の思う壺に入ってしまうぞ?」

おっと、ここでクラークさんのワンポインツアドバイス!

「クラークさん、それは・・一体・・?」

「今戦ってもわかるだろう?目の前に敵が瞬時に現れる、幻影かどうかを見極めるよりかは先に手を出した方が賢明だ。

どの道幻影でも速く判断しないと相手に隙をつかれるし、幻影と決め込んでいて実は本命だったらマヌケに背に土をつける事になる」

・・まぁ、それが実物かどうか判断する暇を与えてくれないのがこいつらの戦いでもあるだろうけどな

「なるほど・・」

「幻影フェイントに対しては距離をあけようとも切り払おうともせずに隙を小さい攻撃で牽制したほうがいいだろうな」

「流石はクラークさん、その点を考えれば一回目の幻影を払った柄での一撃は的確だ。

それで終わりと踏んで二回目に大振りにしたのがまずかったわけだがな」

「変態・・」

「未だに一撃必殺指向の表れだ、寧ろ柄での速攻の一撃から連携に繋げるくらいの工夫が必要じゃねぇか?」

得物が長い分そうやって確実に相手を捉える戦法ってのもある

「ですが大振りの一撃の後の攻撃を防いだのは流石です、良い反応だと思います」

「ツェーラ、ありがとう・・。でもあんなフェイントを何度もやられたら・・・」

・・まぁ、単発攻撃大好きなこいつには苦手だろうね

「幻術による幻影を使用しての連撃は高度な技術を要します、私でも3連続でしか幻影を創り上げる事ができません」

姿を消して自分の幻影を作り出しつつ相手の反応を見切って隙を突く、

幻影の数が多いほど相手の動きを把握してどう仕掛けるか考えないといけない分難しいわけか

「多用はできない・・か、正直安心したよ・・それで、スクルト君も今のような攻撃を・・?」

「え・・っと、あの子は幻術が苦手なので基礎的な事でしか・・。出来てさっきみたいに2連続ぐらいだと思います」

・・つまりはこの戦法による攻撃は今のままでも何とかなりそうだな。

後はスクルトの体格差と鉄のショートソードと骨の剣によるスピードの差・・だな

「因みに、シトゥラだと幻影攻撃って何回できるんだよ?」

「シトゥラ副隊長は幻術と戦闘、両方において優れています。

相当な回数攻撃できまると思いますが・・あの御方は幻術を使用せずとも無傷相手を切り払えます」

・・流石、シトゥラだな

だがそれでも副隊長・・か。隊長の面見たことないけど相当な実力なんだろうな・・

「・・シトゥラの凄さを実感できるな・・。それよりも、今はスクルト君との決闘だ・・ツェーラ、付き合ってくれ」

「わかりました!」

気合に満ちた二人、二人の明るい未来のために真剣にかつ全力で訓練に取り掛かった


・・・・・・・・・


その後、スクイードとツェーラは手を抜くことなく実戦想定の訓練を続けた。

日が沈むまでそれは繰り返されキルケを残して俺達は観戦するのをやめた。

幻影殺法に対して攻略できそうなのだがスピード差では敵わず、スクイードは致命的な一撃を受ける事こそないのだが

ツェーラに対して有効打を受けないままの状況が続けられた



「スクイードもツェーラも必死だよなぁ(パチ)」

「恋愛事が関わっているからなぁ・・。その分気が抜かなくていいんじゃないか?(パチ)」

「まっ、それはそうだけどな・・。特にスクイードの方が気負いすぎている気がするんだけどな〜(パチ)」

「あいつはいつもああだよ、今回は自身の身の振りだけじゃなくてツェーラの想いまで背負い込むんだ。ストレスで倒れないのが不思議だな(パチ)」

「損な性格だな、お前やナタリーみたいなら気楽に生きれるもんだろうけど(パチ)」

「クラークさん、余り姉御の悪口言わないほうがいいぜ・・?(パチ)」

「・・なんで?(パチ)」

「・・・ポルターガイスト現象が起こるんだよ・・(パチ)」

「ああ〜、この部屋の酒瓶や窓が割れていたとか言っていたよな。お前本気か?(パチ)」

「タイムに乗り憑った前例からして世迷い言じゃないってわかるだろ?(パチ)」

「そりゃ・・な。じゃ・・奴の話でも一つ・・ナタリーは実はカナズチで溺れてベソかいた事あるんだぜ・・?」

「・・・姉御が?」

「うむ・・」

「「・・・・・・」」

「何も起きないな・・?」

「だな・・。カナヅチ程度じゃ問題ないのか・・、あいつ、死んでから心が広くなったな」

「あ・・いあ、変化起きているよ・・」

「何が・・?」

「盤面・・」

「ん・・?うおっ!?俺の駒の配置が全然違う!!?」

「またネチっこい報復のを・・。でもこれ、俺の勝ちだ♪ほれ、チェックメイト♪」

「あっ、手前!これは無効試合だろう!?」

「死者を冒涜したクラークさんが悪い♪」

「おのれ・・」

ふふふ・・、しかし・・今の博打とかでも使えるかな・・

俺と幽霊姉御のペアでイカサマしまくりでガッポガッポ♪

・・・保留しておこうか・・


「兄上、クロムウェルさん。お茶が入りましたよ」


おっ、ちょうどいいタイミングにクローディアがお茶を持ってきてくれた。

「クローディア、サンキュ♪」

「将棋ですか・・。・・兄上・・この駒の配置、無防備すぎますよ」

「俺もそう思うよ」

今ここで怪奇現象が起きた事などクローディアにはわからない。

まぁ元々クラークさんはこうした娯楽って「下手の横好き」状態だったんだけどな・・

「それで・・もう日が沈んだけど〜、あいつらまだやっているのか?」

もはやアドバイスよりも体を慣れさせる事が大事だから俺達は退席したんだけど・・

「ええっ、先ほど様子を見た時には照明をつけて訓練を続けていました」

照明・・、ああっ、フィートの手助けか。

「まだやっているのか〜、大丈夫か?」

「キルケが回復を施しているので大丈夫です。

今ではフィートさんが術を使いスクイードさんの動きを鈍らせた上で訓練を続けているようです」

「回復役がいるとはいえ・・流石にオーバーワークだな・・」

「本人もそれを承知でやっているんだ・・壊れない程度ならば問題ないだろうよ」

まぁフィートもいるんだ、ギリギリのところで死なないでしょう

「そうですか・・。しかし・・スクイードさん、必死ですね」

クローディアの目から見てもスクイードの気迫は感じ取れるみたいだ

「恋愛が絡むと人ってのは必死になるんだよ、クローディアだって必死だっただろ♪」

「あ・・兄上・・」

・・ふぅん、クローディアも必死にクラークさんにアタックしていたんだな。

「まっ、そういう事だな。とりあえずそろそろ待たすのも酷だ・・。明日辺りルザリアに戻って一日休んだ後、結論を出さないとな」

「もういいのか?」

・・わかっているくせに・・

「先方を待たせているようなもんだ。それに・・訓練のしすぎで実力の拮抗が崩れちゃ元も子もない」

「へ・・ほんとあのクロムウェルの言う事とは思えないなぁ・・ルザリアの生活で一皮も二皮も剥けたってか?」

この人が他人を褒めるなんて珍しい・・

「俺もいつまでもガキじゃいられないって事だよ・・・」


パァン!


おっと、庭先から豪快な打撃音・・

「ダウンだな、クローディア・・そろそろ打ち切らせてくれ。今日はもうゆっくり休んだ方がいいだろう」

「わかりました、キルケ達も切り上げさせますね」

「ああ、もちろんだ。スクイードの話を聞いてからやたらと熱心にサポートしているからな・・労をねぎらってやるか」

クラークさんが・・キルケを・・

「なんというか・・相変わらずの趣味だよな」

「・・何がだ?」

「女の趣味・・?」

「好いた女がたまたまそうだっただけだ。それに趣味が悪いってほど悪い女じゃないだろ?二人とも・・」

まぁ、クローディアは剣の腕良し、気立て良し、そのくせM気があって隻眼だけど美貌はかなりのもの

キルケは家庭的、献身的で明るく元気、ゴスロリっ子だけど美少女だろう。まぁ多少裏の顔がありそうだけど・・

「まぁな〜、でもロリ、妹なら疑惑も出るぜ?」

「阿呆、大体女の趣味の悪さはロカルノが一番だ」

それは間違いない、恐らくハイデルベルク=ダンケルク一女の趣味が悪い男だろう

なんせあのセシルだからな・・、世間一般のセシル=ローズの聖女伝説とは裏腹に本性はケダモノ。

追われた事がある身としちゃありゃ美女の皮を被った化物と思われます

「頭が良いし何でもできる天才、色男の鏡のような奴だけに悔やまれるよ」

「まぁ・・それを打開する展開もありえるんだけどな」

「・・セシルに愛想が尽きたのか?」

・・・とうとう・・だな

「そうなるかもしれないってところか。ロカルノの事を慕う女性が俺達のところにいるんだよ、

今も一日中あいつの傍で手助けをしているだろうよ」

なるほど、だがロカルノに言い寄る女でユトレヒト隊・・かぁ

「・・変わり者っぽいな」

「まぁ、メルフィの目付け役だ」

っとなると竜人か、メルフィほどのジャジャ馬の面倒を見る献身的竜人娘・・

「強敵だな、っうか普通ならばセシルに勝ち目はない」

「そりゃな、キルケの奴もセシルよりそっちの方がお似合いだって言っていたし。だけど・・実る事はなさそうだ」

・・竜ってのは長寿だからな・・、本人に取ってはたとえ結ばれても一緒にいられる時は余りにも短い・・か

「罪作りだな・・ロカルノも」

「全くだ、まぁ両人納得で妙な関係に落ち着いているよ」

ふぅん、まぁ・・愛の形は一つじゃないか。そう考えてみれば白狐人も普通なんだろうなぁ


・・・・・・・


その後予想通りというかスクイードはボロボロ状態で戻ってきたようだが何か掴んだようで顔も少しほころんでいた

まぁ、キルケが治療しなかったら3回は死んでいるってフィートが言っていたから無茶やったんだろうね

ともあれ、オーバーワークしたからにはしっかり休んで本番に備えるのが一番・・なんだけど・・


「・・お前、さっさと寝ろよな」


風呂入って眠らせるつもりが中々寝付けないようで俺がベランダで寝酒として葡萄酒を飲んでいたところにスクイードがやってきた。

「中々・・寝付けなくてな」

さっきそろそろ帰るって事を言ったっきり顔が引きつってたからな

「・・なんだ?勝てるまでツェーラに付き合ってもらってスクルトを待たすのか?」

「そうじゃない・・だが・・緊張して・・」

「今から緊張してどうするんだよ・・ったく。だからお前はチェリーだったんだよ」

「うっ、うるさい!こんな大きな勝負、初めてなだけだ・・」

こいつの家系は代々騎士系統らしく騎士への試験も楽だったようだからな

勝てば天国負ければ地獄・・ってな勝負なんてこれが初めてか

「ま〜ったく、だらしがねぇなぁ!シャキっとしろよ!」

「他人事と思って!そもそもお前がシトゥラを僕の部屋に住まわせたのがこうなった原因でもあるんだぞ!?」

「・・でも、それでお前満足していただろう?」

「う・・」

「まぁ、本当にシトゥラとの同居が嫌ならタイムに頼んで女子寮に入れるもんだしな〜。それを今まで続けていたのはスクイードの自己責任だ!」

「く・・くそ・・」

ふふふ・・、言い返せまい。発端はどうあれシトゥラの事を気になりだした時点でその事に対して貴様は俺に文句は言えないのさ

「そんな顔すんなよ〜、負ければ今の生活は終わるが勝てばシトゥラとの仲が前進するんだ。そのチャンスと思えばいいだろう?」

「こんな一件がなければ僕だって・・」

「恋人になるために何か模索していたのかい?」

「・・それ・・は・・」

ふっ、大方体を重ねただけで恋人気分になっていたのだろう。っうか・・女性と行動を共にするのがシトゥラが初めてらしいからな。

世間一般の恋人みたいなシチュなんてこいつには無理か


「二人とも・・ここにいましたか」

ん・・おお、ツェーラまでベランダに来た

やっぱり、こいつも只事じゃないからな

「ああっ、お前も座れよ。疲れているのに緊張しているんだろう?」

「え・・ええ」

ぎこちない動きで簡素な木のベンチに座る。星を見たりするのにって事でクラークさんが造ったスペース。

広さもあり普段は洗濯物を干しているらしいのだがそれでなくてもちょっとした憩いの場だ。

ってもユトレヒト隊の面々は談笑室の方が多用してるみたいだけど・・

俺はこっちの方がいいかな、夜風が気持ちいいし

「ほらっ、飲めよ。こんな時は酔いに任せて寝るのが一番さ」

葡萄酒の瓶をそのままスクイードに渡す、グラスなんて気の利いた物はない。

・・ソムリエに喧嘩売っているスタイルだけど〜、面倒くさいし

「あ・・ああ、ツェーラは・・飲めるのかな?」

瓶に口をつけながら飲むスクイード、そういや・・まだ幼さそうだしな

「はい、体温低下を防ぐために白狐族では度の強いお酒を良く飲みますので・・」

そこらは人間と一緒なんだな、そういや、ダンケルクの酒ってのも度が強い物ばかりらしい。

中には火がつく程の物があって『これを飲めば雪山で裸になっても大丈夫』ってシグマが言ってた。

っうか、あの人普通に全裸でアブソリュートに言っても問題なさそうだけど・・。体格熊だし

「そうか、では少し無作法だけど・・」

「ありがとうございます。・・・ん・・!?・・すごい・・味ですね・・」

手渡しした酒瓶を飲み目を白黒させるツェーラ、確実に初めての味だろうな

「ああっ、葡萄の酒なんて初めてだろうからな・・。少々クセがあるんだよ」

「なんだか・・気付け薬みたいですね・・」

「慣れていないとそんなもんだろう、早く寝て、早く済ませて、早くスクルトと子作りしないとな♪」

「・・はい・・、早く・・」

ツェーラの半生のかけて願う想い、適わせてやりたいもんだ

「じゃ、じゃあ・・僕はもう寝るよ」

おっと、性の話になると照れて逃げ出しやがった・・

「おやすみなさい・・」

「疲れちゃんと取っておけよ〜」

軽く声をかけるものの逃げるように出て行った

「・・スクイードさん、どうしたのでしょう?」

「あの手の人間には性の話は苦手なのさ」

「はぁ・・」

「それよりも、どんな感じだ?今の状況でぶつけるつもりだが・・」

正直、余り俺が口を挟むわけにもいかないからな・・

「スクイードさんも必死ですので・・ここ数日で実力は上がったと思います。私の思う限り、拮抗しているかと・・」

「これで後はどっちが勝つか・・だな。ハッピーエンドとなればいいんだけど・・」

「あの、少し疑問に思っていたのですが・・副隊長とスクイードさんの関係って、どういうものなのですか?」

ん・・?ツェーラにも気になっていたか

「まぁ〜、現段階では同居人。シトゥラに取っては発情期の性処理相手なのか宿主以上恋人未満なのか・・」

「そうですか・・。では、スクイードさんはスクルトを倒して副隊長と・・」

「あぁ、そうだ。二人の関係は一気に縮まり燃える勢いで〜♪」

「そ・・そうはならないと・・思います」

「はえ?」

「副隊長は里から出る時に一族以外の者と交わった際に避妊になる呪を受けています。

スクイードさんと恋人になっても子供は・・」

・・そういやシトゥラもそんな事言っていたな。まぁチェリーの精力をまともに受けて着床してないのも考えてみればおかしいか。

まぁ、経験の少ないスクイードにわかるはずもないし〜、そんな事説明しても行為に夢中になって忘れているんだろうな

「・・ち、因みに、スクイードとシトゥラが晴れて夫婦となって子を産むためにはどうすればいいんだ?」

「呪を解くには長老の力を借りなければ不可能です。ですが他族との交わりを了承するには戦士として認められないといけません。

それに、シトゥラ副隊長は一族の男戦士にとっては一番孕ませたい相手、それを差し置いて独占するとなれば・・」

・・白狐の男戦士全員を敵に回すわけね

ルザリアでソガイされ、白狐でソガイ・・、そうなったら奴をマスターソガイと言うか・・

「大変だね・・」

「・・はい、少なくとも・・すんなり了承してもらえるとは・・」

「ははは・・あいつの恋愛道はどうやらアブソリュートを越える険しさがあるようだな」

ま・・まぁ、それが男を磨くって事だ。

ヘタレ卒業して戦士になれば万事オッケ!精進しろよ〜♪


<<back top next>>