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第五話  「私を孕ませてください」


局地に住む獣人と言えども純愛というのは存在するものなんですねぇ・・


思いつめた表情でベンチに座り白狐族の女戦士ツェーラが話した内容は簡単に言うと・・『スクルトの仔が欲しい』だって。

スクルトとツェーラは幼馴染で小さい頃から常に一緒だったそうだ。

しかし大きくなるにつれてツェーラはスクルトを異性として意識しスクルトはシトゥラに憧れを抱いた。

ツェーラは白狐族の掟により成人の儀として一族の男の仔を孕む事を拒み戦士として歩む道を決める。

それは、男が嫌いなんて理由じゃなくて一重に、「初めて」は想いを寄せたスクルトの仔が欲しいから。

両人それぞれが想い合い力量があるならばそんな面倒な事をしなくていいのだが

残念ながらスクルトは幼馴染といえども落ちこぼれ、

シトゥラに対して強い憧れを持つが故にツェーラの気持ちに全く気付く事無く戦士にもなれなかったってわけだ。

そんな中、俺達が突如として里にやってきシトゥラを旅立たせた。

それを好機と見たツェーラはスクルトを戦士にして自分に子種を注いでもらう計画を立ち上げた。

未熟者の仔を作るなどとは許されない事らしい。

だけどスクルトとツェーラを思惑は交わる事がないままスクルトは見事成人の儀を終え、

ツェーラの気持ちに気付く事なくシトゥラの元に行ってしまった。

これに対してツェーラはもう自分の気持ちを伝えるしかないと覚悟の上でその後を追った・・っというあらすじなんだって。



「まぁ・・意外だよな・・。白狐族って相手を選ばないような感じがしたんだけど・・」


シトゥラなんか見ていたら特に・・ね。まぁあいつでも力量がないと異性として見ないんだけど・・

「わ、私のようなのは・・珍しいケースなんです。大抵は発情期を迎えるとともに恋心なんて忘れ去るか、双方成人して最初に孕むかなんですが・・」

1人優秀、一人落ちこぼれじゃ・・な・・。

「でもこっちはこっちで面倒な事になっているんですけどねぇ」

「・・そうなのですか?」

もう面倒も面倒・・だけどこれはツェーラにとっては好機かもしれない

「まぁな。スクルトがシトゥラに孕んで欲しいって言って来たのはいわずもかな。

だけど今のシトゥラにはまぁ・・友人以上恋人未満なヘタレ騎士がいるんだよ」

・・現状はもっと厳しいんだろうが・・

「っ!?副隊長が・・人間の男と!?」

驚いてる驚いている・・、まぁ他の種族との交わりなんてないんだろうしなぁ・・

「う〜ん、まぁそんな相思相愛って訳じゃないぜ?まんざらでもない・・って感じ?」

「は・・はぁ・・。あの・・シトゥラ副隊長を・・」

「下の世界に来て色々と学ぶ内に・・ってわけだ。それでも煮え切らないんだけどな」

「それで、厄介な事とは・・?」

「スクルトさんがシトゥラさんが欲しいというならばそのヘタレ騎士さんが黙っていないでしょう?

だからヘタレ騎士さんとスクルトさんが決闘をして勝った方がシトゥラさんの子宮を頂くって賭けをしているんですよ」

多少違うような気がしないでもないが一応フィートの説明は間違ってはいない

「そう・・だったのですか・・」

対してツェーラも少しは驚いているようだ。

まぁ白狐族にも自分が孕ませたい女性が他人とかぶったら決闘みたいな事をするらしいからな

「まっ、それだけだと良いんだがシトゥラの予想だとヘタレ騎士の方に分が悪い状況なんだよ・・。

そこで極力フェアにしたいって事でヘタレ騎士強化をしようって事になったんだ。

だけど・・対白狐戦士に対して有効な教官がいなくてな・・」

「・・・・・」

「スクルトの気持ちもわかるしヘタレ騎士が負けるのもこっちには少し都合が悪い。

それでまぁ悩んでいたってわけだ。・・厄介だろ?」

「・・クロムウェルさん・・」

「・・ん?」

「その騎士を鍛える役目、私に任せてくれませんか?」

・・・ふぅん。スクイードが勝ったならシトゥラはスクイードのモノ。

目的を果たせなかったスクルトならばツェーラも言い寄る機会もある・・ってわけか

「確かに、同じ白狐族、しかもスクルトの手の内を知っている奴ならば好都合だが・・ツェーラ、実力は?」

「現時点では白狐族の女戦士では上から二番目です。一度も仔を産んでいない分里の評価はそれよりも低いのですが・・」

女戦士というのも色々大変なんだな。

シトゥラは仔を生みながらも戦士として戦っていたからこそ副隊長という立場まで上り詰めたのだろう

「・・なるほどな。わかった、それじゃヘタレ騎士の訓練をツェーラにお願いするよ」

「ありがとうございます!」

満面の笑みを浮かべるツェーラ。

察するに自分の想いなんぞ全く気付かない相手に対して告白する事に不安をかかえていたのだろう。

ってか、女戦士でナンバー2になっても言えないんだから・・玉砕覚悟でルザリアに来たんだろうな

「・・なぁ・・スクルトの何処に惚れたんだ?」

人が良いって事ぐらいしか・・

「えっ!?あ・・その・・私がいなきゃ・・ダメな子ですから・・」

・・なるほど、母性本能をくすぐるわけだな。

その手に関してはなんか天性の素質を持っていそうだな・・

「ううん〜、でも発情期だってあるんでしょう?他の男で紛らわそうとしなかったのですか?」

「・・一族じゃ変人になっているのですが・・私は・・最初の仔がスクルトじゃなきゃ・・嫌なんです」

その様子だと・・処女か。

シトゥラのような発情の仕方をする白狐族な皆さん。

それで処女を守り通し鈍い男をのためにとっておくなんざ鉄の意志だな・・。

「気に入った!騎士団には俺から言っておいてやるよ。こうなったら意地でもスクイードを勝たせてスクルトを諦めさす。

そして何が何でもスクルトとお前をくっつかせてやるよ♪」

「ありがとう・・ございます・・」

顔を赤くしてるよ、おい・・。

そこらはシトゥラとは違うところだな。

「そんじゃフィート、スクルトに見つからないように軽くルザリアの案内でもしてやんな。

くれぐれも手を出すなよ」

こいつなら・・安心はできない

「わかっていますよ。事情を知っている以上それは野暮ってものです。それじゃ・・状態が整ったのを見計らってそっちに向いますね」

「おう、ツェーラ。騎士団に説明している間少し観光でもしておいてくれよ」

「わかりました、お手数ですがよろしくお願いします」

良い子だね、こんな子に好かれているのに気付かずにシトゥラに走るとは・・

スクルト、奴の目は節穴だな。



・・・・・


騎士団連中に説明する、即ちそれはタイムへの説明。

っと言う事で本来ならば俺の宿に向うものなのだがそこは青二才の考え。いくらなんでもタイムは目を醒ましている。

そしてこの場合あいつがやる行動は一つ!


着替えを取りに屋敷に向う!


っと言う事で迷わずに騎士団屋敷に直行♪

屋敷三階の私室に向うとそこには予想通りにタイムがタンスから下着を取り出している最中であった。

今日は非番だからなぁ・・

「ク・・クロ・・?」

「今日は黒のスケスケ下着か・・。いいなぁ・・(ハァハァ)」

俺がその手のお店で買ってあげた勝負な下着だな。

昨日ドップリ交わったのだがそれだけじゃ足りないらしい・・。ったく可愛いんだから〜♪

「替えがないだけよ、それよりも・・入ってくる時はちゃんとノックしてよ・・」

「はははっ、悪い悪い。非番でゆっくりしたいところ悪いんだけどちょっと付き合ってくれよ」

「・・・えっ?」

呆然とするタイムにツェーラの事を説明しつつ、普段着である白ブラウスに黒長ズボンからスーツへと着替えてもらうことにした。


・・・・・・・

数分経って団長室、事の成り行きを説明を終えてタイムもツェーラに任す事に対して賛成してくれた

まぁ、それが最善なんだけどな

「でも・・そのツェーラって子の実力・・任せても大丈夫なの?」

非番と言う事でいつもよりすっきりとしている団長専用の大机に肘をつけながらタイムが言う

初対面ではないんだがツェーラの事なんてタイムにゃわからんだろうしな

「戦闘の身のこなしは見ていないけど白狐族女戦士ナンバー2は伊達じゃない・・って感じだな。

スクルトを成人の儀合格まで導いたんだ、大丈夫だろう」

「わかったわ、クロがそういうなら・・信じる♪」

二コリと笑うタイム、全幅の信頼を得るって・・何だかいいよなぁ・・

「それよりも・・。ツェーラがルザリアに来ている事・・スクルトとシトゥラには内緒にしておいた方がいいな」

「そう・・ね。スクルト君はもってのほかだしシトゥラにとっても動揺を誘うかもしれないし・・」

まぁ何よりも公平性を欠くかもしれないって事もあるんだろうが・・

スクルトとスクイードならびルザリア騎士団の事情だけならまだしもそこにツェーラの思惑も入っているんだ。

やむ終えなし・・


コンコン


おっと、きたきた。呼び出した奴は言わずもかな・・ともあれ、目でタイムに合図を出しタイムさん、団長チェーンジ

「入りたまえ・・」

「失礼します・・・・」

危機迫るほど切羽詰った表情のまま入室するはスクイード。

目の下にクマが出来ているなぁ・・。こりゃシトゥラでも修復不可能だったか

「仕事中悪いな、ちと方針が決まったからタイムにもこうして出てきてもらったんだ」

「そうでしたか・・団長、非番中であるのに申し訳ありません・・」

「いや、事情はクロムウェルに聞かせてもらった。君にとっても我らにとっても大事とは言えよう。

騎士としてシトゥラには協力してもらってはいるがあくまで善意の協力、私でも彼女を引き止める事はできない」

「は・・」

「スクルト君が決闘を受け入れてくれたのがせめてもの救いだ。シトゥラは今の騎士団に必要な存在・・

こちらの勝手かもしれないが今彼女に去られるのは非常に困る・・わかるな?」

「・・・」

シリアスモードなタイムさんは威厳たっぷり、それは俺に甘えるデレデレ娘ではなく

正しくシャイン・ルビー・ミネルヴァと呼ばれる敏腕女団長のそれだ・・。

スクイードも萎縮しまくってら

「君に命令を出す。・・スクルトとの決闘に勝利せよ、これは絶対に果たさなくてはならない事だ」

「わ・・かりました、私の・・命に代えましても・・」

「大げさだな〜、スクイード。そうならないために手を打ってあるんだよ」

「変態・・し・・しかし・・僕は・・」

こいつもスクルトの実力を少しは把握しているみたいだな・・シトゥラ経由で聞いたのか・・?

「スクルトに勝利するために特別な教官を用意した。しばらくの間は仕事をキース君達に任せて打倒スクルトに切磋琢磨してくれ」

「だ・・団長!」

「以上だ・・」

スクイードの意見などおかまいなし、まぁタイムにとっても多少は関わりがある事だからな・・

双方丸く収まるためにも引けないところはあるか

「そんじゃ、今より30分後に表の公園に集合だ。休暇扱いだから遠慮すんなよ・・後、着替えと戦闘装備一式・・用意しな」

「変態・・、わかった。では、失礼します・・」

未だ困惑顔を隠せずに退室するスクイード、甘いな・・。ヘタレが・・


「・・クロ・・これでよかったのかしら・・?」


タイムも後味は決してよろしくない様子だな

「スクルトの気持ちがどうなのかはあいつにしかわからない。

まぁスクイードが勝ちシトゥラがここに残ってツェーラとスクルトが結ばれる。

・・これが一番良い形だろう?」

「そうね・・、・・わかったわ・・」

「それじゃ・・俺も軽く用意をして付き添ってくるから、数日空けるぜ?」

「えぇっ!?」

「・・んだ?ちゃんとやっているか見届ける奴がいなけりゃダメだろ?」

そんなに仰天しなくても・・

「で・・も、クロじゃなきゃダメなの・・?」

おいおい、自分は出張しておきながら・・

「この状況じゃ俺が一番適任だと思うんだけど・・な。

まぁそんな長期間空けないし、浮気のしようもないだろう?大人しくしておいてくれよ?」

「クロ・・」

う・・、この懇願するような眼差し・・

これをやられるたびに俺の決意は揺らぐタイムの武器・・だけど・・

「タイム、これは仕事だ。シトゥラに還られたらダメだろう?我慢しておくれ・・」

「・・もう・・意地悪・・」

ジロっと俺を睨むのも数秒、後は俺の唇を奪い長い接吻と相成った。



・・・・・・・・・・


中々出発させてくれないタイムを言い留め、俺も軽く準備をする。

途中フィートから念波による通信が入り合流場所を教えた後すぐに向った。

まぁ、これなんかは別にあれこれ用意するものなんかないからほんとすぐなんだけどな・・。

財布とか・・武器とか・・そんなもん。

そしてそのまま騎士団前にある緑地公園に到着した頃にはすでにフィートとツェーラがベンチに座っていた。

ツェーラは露店で買ったと思われる焼き御菓子を頬張っている。

良く露店で見かける一口大のパンケーキに生クリームを詰め込んだ奴だな

ううむ・・、やはり甘い物が好きなのかな・・?

「よっ、ルザリア観光はどうだ?」

「あっ、クロムウェルさん。すごいですね・・見る物全てが新鮮で・・・」

大国有数の貿易都市だからな、シトゥラだってここに来た当初は目を丸くして驚いたもんだ

「それで・・、フィートがサービスでそこまで奢ったわけか」

「はははっ、このぐらい当然ですよ。男の甲斐性です♪」

だったら・・女の面倒最後まで見ろよ・・?

「すみません、ご飯にこんな御菓子まで・・」

「流石に御菓子まで奢るつもりがなかったんだけど指を銜えているのを見ていると忍びなくてねぇ・・」

「あ・・!そんな事・・してましたか・・?」

どうやらよほど誘惑的な物だったらしい。

確かに・・小さい一口大のパンケーキを袋に詰めた菓子なんてあんな氷山にゃあるわけないだろうし露店ってのは客寄せが上手だ。

焼いた菓子の香ばしい匂いは客寄せにはもってこい。

そんな訳で露店には出来立てをわざと店先に置いて客寄せをするんだ。

買い物帰りでやや疲れている奥さんにゃこの匂いはたまらんってわけ。

もちろん、そんな事をしていたら野良猫なんかが食い逃げする心配はあるんだがそこは露天商の腕の見せ所。

常に目を光らせ、それを狙おうをしている猫の相手をして後で一口上げる。それで一種の信頼関係を築かせるんだ。

元々客寄せで売り物にならないから後で捨てるなり自分で食うなりするしかない物なんだけど

商売中に飛びついて喰い散らかされるよりかはよっぽどマシだって以前知り合いの露天商が言っていたな・・

「流石に白狐の里にはそんな御菓子はないか?」

「え・・ええ、甘い物って木の実ぐらいしかなかったので・・」

まぁ世間一般だとそうだろう・・って・・あれ・・?

「・・あの極寒の地で木の実なんてできるのか?」

「食料調達は別の山で行っています。それこそ山を4つ5つ越えたところですが・・」

そりゃ・・大変だな。まぁ・・あんな絶対零度な山じゃ作物なんてないだろうし。

「そんなに大変だったら移住すればいいんじゃないですか?」

「私達白狐族はアブソリュートに育つ「氷華草」を守るという使命を託されています。移り住むなど誰も考えた事がありません」

誇りに満ちた表情のツェーラ。

そういやその氷の花を取って来いって事で俺とタイムはシトゥラに出会ったんだったなぁ・・

「オッサンリバンからは対して詳しく言われていなかったんだが〜、その氷華草ってそんな希少な物なのか?」

「もちろんですよ!局地に息づく生命の支えとなる神の花です!あの花が枯れる事は天変地異の表れ、周辺の自然は崩れ去ると言われてます」

・・へぇ・・そんなもん取ってこいだなんて・・オッサンリバンもいい加減な事を言ったもんだぜ。

まぁ、実際には取れって言う試験じゃなかったんだけど・・

「白狐族も大変だな〜」

「・・それよりも先輩、これからどうするんですか?スクイードさんと合流して訓練をするのはいいですけれども

ルザリア内だとスクルト君に見つかりますよ?ただでさえ僕も警戒して案内したんですから」

「ああっ、それについてはルザリアから離れた場所にしようと思う。ここだとスクルトに気付かれない方がおかしいからな」

「では、どこかで夜営を張るのですか・・?」

「まぁそんな感じかな?ただ色んな意見を取り入れたいから・・突然だけど邪魔させてもらおう」

「邪魔するって・・どこに?」

「ユトレヒト隊館」

ま・・、全員出払っているとは思えないし・・な。

「これはまた・・えらいところを・・」

流石のフィートもセシルとの遭遇は勘弁してもらいたいらしい、まっ・・こいつも被害者だしな

おっ・・ちょうどいい。緊張した面持ちでスクイード君がこっちに向っている。


行き先言ったら仰天するだろうなぁ・・へっへっへっ♪


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