四章  「希望都市」


希望都市シウォング
山間にある円形の大都市にて遠くからでもその活気が目に見えてわかる
翼人が所々空を飛んでいたりと来訪者二人にとってはまさに別天地
「・・すごいね、キース・・」
「あ・・ああ・・」
その光景に驚くカチュアとキース・・馬はキースが操っておりカチュアは彼の腹に手を回して見学をしている
「そんなに珍しいかな?」
前方で同じくアレスの後にまたがるリオが驚きながら振りかえった
振り分け的には夫婦同士にしたほうが問題がないから自然とこの組み合わせになったようだ
「俺達は港町育ちだからな。現在の勤務地も平野だし・・これほど山に囲まれた場所は珍しいんだ」
「・・ふぅん、別に普通だよね?アレス君」
「いつも見ていればそうだろう。逆に俺達が海を見れば驚くだろうしな」
「そう言われてみればそうよね。」
なんだかんだ言いつつも一行は賑やかな街を迂回し、馬が通れる道を選んで都市の外れまで進んだ
「おい、目的地は都市内じゃないのか?」
街を通り過ぎたことにキースが驚く
「・・ああ、俺達の居城はもっと街の外れだ」
「どうして?そんな隅っこだなんて便利悪いわよ?」
「それでいいのよ。それに街中だと騒がしすぎるだろうし〜」
「・・私達ずっと賑やかなところだからそういうのわかりにくいな。ねぇ?キース?」
「物品補充ができればこだわらないさ」
「無頓着ねぇ・・、でもイリアさんと会えるかな?」
思い出すはかつての恩師にして自分達に戦う術を鍛え教えてくれた妾龍イリア・・
表立った存在ではないということは聞いているがそれでも会いたいと二人は思い
思わずそんなことを言ってしまう。
それは先を行く二人も同じ事で願わくばもう一度会いたいと思っている

各々一人の女性の事を思い出しながらやがて見えてくる質実剛健な屋敷が・・

「・・結構・・大きいわね。ルザリアの騎士団屋敷と引けを取らないわ・・。そんなに大所帯なの?」
「いえっ、一応は必要最小限よ。うちはそう言うところは切り詰めているんだけれども・・大きいかしら?」
馬から降り、旅の荷物を担ぐリオが首を傾げる
「造りでそう見えるだけだろう。最も中も機能的だから同じように広く感じるな」
馬を降りながらアレスが説明する・・・その説明はアバズレに対してか妻(誤)に対してか・・
「それよりも馬小屋はどこなんだ・・?これだけ広い平野だとちゃんとつないでないと探すのが・・」
「ああっ、放っておいて大丈夫♪うちの馬は放し飼いで必要な時は自ずとやってくるの」
「そういうことだ。都市で飼うよりかは馬自身のストレスも違うからな・・よし、いけ」
手綱を放し馬を広い平野に離してやるアレス・・キースも唖然としながら同じように馬を野に放った

・・・・・

それからキースとカチュアはホールで待たされ、アレス達はどこかへと入っていった
・・ホールはかなり広く正しく屋敷・・重厚感もあるが洗練された造りになっている
そう時間がかからぬうちに一人の女性が廊下から歩いてきた
お団子の黒髪に秘書服レイハ・・眼鏡が凛々しい正しく秘書嬢・・
「アレス達に話は伺いました。どうぞ上がってください・・キースさんにカチュアさん」
落ちついた声のレイハ・・、正しく大人のレディだがそれ以外にもただならぬ気配を感じる
キース・・
(・・・ただの秘書・・じゃないな。この感じ・・)
「は〜い♪じゃあいきましょ?キース君?」
「あ・・ああ。では失礼します」
一礼して秘書嬢の後に続く二人・・、レイハはモデルばりの乱れのない歩きで案内する
「どうぞ、この屋敷の主の部屋です」
案内したのは執務室と書かれた一室・・中に案内されると一人の男が座っていたが・・
着ている物はややだらしない。そしてその隣にアレスとリオが立っていた
「ようこそ、うちの面々が世話になったようだな。俺がライだ」
「・・ライ、案内中に着替えてくださいと言ったでしょう・・」
「何、知っている間だ。お疲れだったなキースにカチュア」
「は・・はぁ。ライ・・では貴方が真龍騎公の・・」
キースの一言にレイハはアレスとリオの方をチラリと見た
二人がライがシウォング王だということを話したかと思ったのだ・・しかし二人も驚いている
ところをみると自分の考えが違っていたことに気付き別の原因を考える
「・・なんで俺が王だと思うんだ?」
対しライは冷静そのもので静かに訪ねる
「・・貴方の顔立ちがイリアさんと良く似ている。それにあの人はライさんとの身内のようなものと言っていた。・・推測ですが・・」
「ふっ、正解だ。俺がシウォング王のライだ。そんなに奴に似ているか?」
「ええ・・なんというか・・雰囲気とか・・。それで、彼女は?」
「別のところにいるよ。お前達の事はあいつから良く聞いている、まぁ屋敷でゆっくり旅支度をしてくれや。協力するぜ」
爽やかに笑うライ・・だが、周りの人間は内心首を傾げている。イリアの存在は彼らの間でもかなり曖昧なのだ
「ありがと〜♪そんじゃくつろがせてもらいましょうか!」
「・・お前は相変わらずだな、ったく兄貴があれだし・・」
「団長・・、カチュアの兄・・とは・・?」
突如言い出したライの言葉にアレスは思わず聞いてしまう・・、裏でイリアがいたにしろ初対面なのだ
「ああっ、あの暴走牛クロムウェル=ハットだ。ほれっ、前に来ただろう?」
「ええっ!あの客室でタイムさんと激しく愛し合っていたクロムウェルさんですか!!?」
「・・リオ、なんでそんな事を知っているんだ?」
「・・すみません、こいつ、うっかりとその場面を・・」
リオの首根っこを掴みながらアレス謝罪・・当人達がいなかったのは幸いである
「って・・貴方達兄さん知っているの?」
取り残されたカチュアさん、驚くに驚けない・・
「んっ?ああっ、以前シウォングで事件が起こった時にクロムウェルやタイム達がいてな。
俺達に協力をお願いしたことがあったんだよ・・知らなかったか?」
「・・全然・・あのボケ兄貴・・っちゅうかそんな事までイリアさんが言っていたの?」
「あ・・う〜ん・・まぁそんな感じだ。そんじゃ二人を空いている部屋に案内してやれ・・同じ部屋でいい?」
「・・できれば別・・」「もっちろん♪」
キースの言葉をかき消すようにカチュアさんハウリング・・
「・・じゃあ・・案内頼む・・」
キースの発言は通らず・・っうか通ったら一騒動起こりそうなので棄却していただきとりあえずは部屋へと案内した

・・・

「ほんっと世の中って狭いよな〜」
二人きりになった執務室・・そこでライが唸る
「私には事情が読めませんが・・」
話がよくわからないレイハ・・不機嫌そうに席に座った。彼女も何かと忙しい身故に時間が割かれるのはあまり気のいい事ではない・・
「まぁまぁ・・説明してやるよ♪身体を使って・・(ニギニギ)」
「ラ・・ライ、今日の仕事はまだ・・」
素早く後から抱き締め、耳に息を吹きかけるライ・・対しレイハは拒否の言葉を口にするも抵抗はせず・・
「仕事?終わったべ?」
「はっ?・・そんな・・」
「見てみい、どないよ?」
何時の間にか積んである書類を取るライ・・見れば完全に終わっている・・
「・・こ・・これを・・何時の間に・・?」
「んっ?お前がキースとカチュアを案内している間」
「えっ?あれだけの時間で・・!?」
「まぁそういうことだ♪」
「そ・・それだけの処理能力があるんだったら何でいつも時間かかっているんですか!」
「・・、ふっ、男には口に出せない理由ってもんがあるのさ」
・・困っているレイハの顔が見たいなんて口が裂けても言えないライ・・
「よくわからない理由を・・、とにかく、明日からはもう少し作業時間を短縮してスケジュールを組みますからね」
「げっ!?・・レイハさんそれはご勘弁!」
「駄目です。早く終わればその分次の仕事もできるんですから」
「ううっ・・こうなったら身体で直談判だ!」

ガバァ!!

欲望全開にレイハを抱き上げるライ・・衝撃で団子頭が解かれて麗しい黒髪がファサっと下りる
「ラ・・ライ・・来客中です・・」
「さっきの提案を撤回するまで止めない・・っと言ったら?」
「・・意地悪・・」
「その顔もそそられるなぁ(ハァハァ)」
もはや問答無用状態・・しかし

「お〜い、そろそろ私の事に気付いてくれないカ?」
「「!!!!」」
硬直するライ&レイハ・・、
見れば執務室の入り口に不機嫌そうに立つ紺色髪のゴスロリ衣装の少女・・にして少女にあらぬ魔術師ルー
「・・御主ら、いつもここでそんな事をしているのカ?」
「いや〜、あっはははは・・・。それでどしたんだ?お前が執務室に来るなんて珍しい」
「うむ、何か騒々しかったのとちょっとな・・」
腕を組み何やら考え込んでいる感じのルー
「ああっ、客だ。ほれっ、前に地の命脈が歪んでいた地点があっただろ?アレス達に向かわせた時にそれに協力した二人を招いたんだよ。」
「ほう・・それで、その結果は?」
「とりあえず落ちついてから聞こうと思ったけど・・、何かあるのか?」
「うむ・・街の周囲に張った『網』がどうも安定せんノダ」
『網』とはある程度力の持つものが触れると術者のルーに知らせる結界の略称のことだ
「・・?安定しない・・?」
「まぁ月の満ち欠けで魔素が安定しないなどの現象はあるんだが・・その周期には当てはまらない」
「つまり何者かの暗躍がある・・っと?」
途端に顔を強張らせるレイハ、敵の侵入があるとすればいち早く都市にも警報を伝えなければならないのだ
「まだそうと断定はできんのダガナ。まっ、はっきりとした敵意は感じられん。御主だって何も感じない以上はまだ害はでないだろう」
「ふぅん・・じゃあ一応の警戒だけはしておくか。」
「賢明ダ。じゃあ私は寝る!続きはゆっくりヤッテイロ」
「なんだ?一緒にしないのか?」
「ラ・・ライ・・」
「性欲も大事だが睡眠欲も大事ダ!・・また後デナ」
結局は後で相手にして欲しいルー、ともあれその場は退室にライとレイハは二人の時間へと・・

・・・・

個室に案内されたキースとカチュアだがとりあえずは屋敷の案内がてらリオ達についていき
居間へと向った
「・・姉様、どうしたのです?そちらの方々は?」
居間では金髪の青少年ディ&銀髪の狼娘ルナがノンビリとお茶とお菓子を摘んでいた
「ああっ、今回の任務でお世話になった人よ。こっちがキース君、こっちがカチュアちゃんで
カチュアちゃんはあのクロムウェルさんの妹さんなんだって!」
「そうなんですか〜・・なんだか似てますしね。僕はディ、こっちはルナです。」
「姉様・・っということは・・」
「そっ♪私の愛しい弟♪目に入れても痛くないってね」
「・・言いすぎです」
「この人 優しい♪」
パッと見るだけでキースが気に入ったのかルナは上機嫌で彼の服を触る・・が、お菓子でついたクリームがベタベタと・・
「ああっ!ルナ!駄目じゃないか・・」
「いやっ、気にしなくていい。それほど育ちは良くないんでな・・。それよりもここの屋敷の住民は君達だけ・・なのか?」
「いえ・・まだいますよ。シエルさんは街に買い物がてらだしアルシアさんは山に薬草採集・・
僕の師匠はお昼寝にカインさん達はまだ任務中・・。そんなわけで今ここにいるのは僕達だけですね」
「・・結構いるのね。ってこんな屋敷だからそれも当然か。」
「まぁゆっくりして♪私、着替えてからお茶入れるね〜」
そう言いながらリオは上機嫌で居間を出ていった
「・・やれやれ、ともかくくつろいでくれ。俺達も堅苦しいのは苦手だからな」
対しアレスはソファに座る・・・、
キース達が部屋に入ったのと同時に道具一式を自室に置いてきたようで今はラフなシャツにズボン姿・・これが女性と男性の身支度の早さの差・・
「くつろぐ・・か。他人の家でそうするのも中々難しいものだがな」
騎士団支給の紺の軍服のままキースが彼の隣に座る・・、代えの服はないらしい
「・・違いない」
フッと静かに笑うアレスとキース・・、中々に気が合っていそうだ
「ねぇねぇ?キース!落ちついたら街に行こうよ!お土産とかも必要でしょ!」
対しハイテンションなカチュア、彼女も白いタンクトップにズボン姿のままでキースに詰め寄っている
・・因みに軍服は街を出てすぐに荷物袋へしまい込んだらしい・・
「カチュア、俺達は遊びできたんじゃない。思ったよりも時間がかかっているんだ」
「ブ〜ブ〜!」
「・・全く。少し時間がかかると団長へ手紙を書く。だが土産は不要だ・・いいな?」
「ちぇっ、つまんないの〜」
「ふぅ」
毎度の事ながら相方に手を焼くキースだがそれを見てディも同情の念を抱く
「なんだか大変そうですね〜」
「・・わかるか?」
「ええ・・、どうせ相方にするなら姉様みたいなタイプにすればいいのに・・」
「何、どんな奴でも少なからず手を焼く・・そうだろう?アレス?」
「・・ふっ、お前ほどじゃないがな」

「何よさっきから〜!私がケダモノみたいじゃない!?」

「・・それに近いな。ともかく、世話になっている身だ。行儀良くしてくれよ?」
「失敬ね!わかっているわよ!」
直もブーたれるカチュア・・、そんな相手をするキースだが嫌そうでもない
「・・ディ君、相方には多少欠点があったほうが飽きないもんだ。」
「・・変わってますね。でも・・わかります」
「わう?」
ディも相方がちょっと変わっているのは良くわかっている・・まぁ・・カチュアほど狂暴でもないのだが
「ディ 悪口言った!」
「違いますよ・・、はい、お菓子」
何気に敏感なルナの口にお菓子を放りこんでうまく丸め込む・・、それだけでルナも満足のようだ
対し収まらないのがカチュア・・
「でも、街に行く必要はあるんじゃないの?」
「・・何がだ?」
「だって、いつものクレイモアが壊れちゃってヘンテコブレードが代用品として使っていたじゃない。
ちゃんとした物は買わないといけないよね?ね?」
「それはそうだが・・資金も心もとない。それに自分に合った代物なんぞそうそう見つからない。
無理に街で探すよりもじっくり探したほうが賢明だ。
それまであのガンブレードで代用するしかないさ」
焦れば良いものが手に入らない。自分の命を預けるものには妥協したくないのが彼の考え
「だがあのガンブレードというのも使い様によっては優れた武器だとは思うがな」
アレスも面白そうに呟く、
「そうは言っても銃を撃てば手にすごい衝撃がきて痺れる。・・斬撃主体にすれば剣は短い。
・・・良くあんな得物で生き残れたと思うよ」

「・・さっきから気になったのですがガンブレード・・ですか?キースさんの得物なんですか?」

突如会話に加わるディ。どうやらキースの得物に興味があるらしい
「ああっ、元々彼の得物は大型のクレイモアだったが戦闘で使用不可能になってな。代用品に
銃と剣が融合した武器で戦ってきたんだ」
「銃と剣の融合・・面白そうですね・・よかったら見せてもらえませんか?」
「別にかまわないが・・、弾はもうないからただの剣だぞ?」
「構造とかに興味がありまして・・ね」
にやけるディにキースは首を傾げ言われるままにガンブレードを持ってきた
「あまり他人の家で刃物を持つのは気が進まないが・・・これだ」
・・・・
「・・なるほど、柄は銃で出来て弾道を妨げないように刃をつけるとは・・。優れた武器でしょうが
強度面で不安が残りますね」
マジマジと見ながらディが解析する
「そんなに興味深いものなのか?」
「とても!銃だけでもいいんですがこんな物があったとは実に興味深いです。・・文献にも載ってませんからかなり希少なものですよ!」
目を輝かせながらディが語る。対しルナはつまらなさそうに「何この玩具」とでも言いたそうな
顔をしている
「そんなに珍しいなら君に譲ろうか?俺にはそれはどうも使い勝手がよくない。・・柄が曲線を描いて少し持ちにくいしな」
「どちらかといえば銃のほうに比重を置いていたようですしね・・。
・・そうだ!キースさんにこれが合わなかったら僕がこれを基本にガンブレードを造ってあげますよ!!」
「・・へぇ、ディ君ってそんなことできるの?」
驚くカチュア、どう見ても年頃の少年がそんなごつい物に興味を示しているのだ
「まぁ鍛冶云々は街の鍛冶師にパーツを作ってもらって魔導回路を組みたてればたやすいですよ。その分緻密な設計図が必要ですが・・」
「その言い方だと期待してもよさそうだな・・。お願いしてもいいか?」
「もちろん!久々に燃えてきましたよ!!それではどんな代物がいいか教えてください!
相棒がいればもっと良いものが造れますがその分は補って見せますよ!」
やる気なディに一同少し下がる・・
「まぁ・・それでは頼む。街への注文はカチュア、おまえがいけ」
「ええ〜!パシリ!?」
「街に行きたいんだろ?」
「・・ちっ、しょうがねぇ・・。って一人だと迷うから誰かと一緒にしてよね!」
「わかったわかった」

意外な方向に話は持っていきキース自身も驚いたが自分に合う武器を造ってくれるとなれば
それは非常にありがたく・・、ディとともに熱心に完成予想の設計図を作り始めた

・・・その夜・・・
「・・なるほど、地底にそんな奴らが・・なぁ。意外といえば意外だな」
夕食も終わり居間でくつろぐ一行・・、シエル、アルシアも屋敷に帰ってき客二人に静かに挨拶をしてとりあえずは落ちついた
「まぁ、古代文明・・だろうナ。一部の特権階級が延命措置でも造っていたのダロウ」
ソファに座るライの隣に寝転ぶルーがつまらなさそうに・・
「だからあんなに高いところから物を言っていたんだ」
「・・しかし、あんな地の底で生き長らえることはできるとはな」
アレス&リオカップルもラフな格好にてくつろいでいる
「銃みたいな兵器を造ることができたんだったら延命装置ぐらいは簡単でしょう・・。まぁなんで今復活したかは謎ですが・・」
「それはこいつの気も関係しているのかもしれないナ?」
ディの疑問にルーが応える・・こいつ・・=
「俺かぁ?なんでだよ?」
「内に物騒な物を持っているからナ。まぁ私かもしれないが・・」
「でもぉ、キース君とかははるばるシウォングまで来ていたんだ〜、あっ、セシルって会ったことあるぅ?」
真面目なキースにこれまた好印象なアルシアさん、お色気全開な彼女はカチュアにとっては
羨ましくも恨めしいしキースにとっては色気が強すぎるようだ
「セシル・・?セシル=ローズ・・ですか?」
「そうそう♪有名なんでしょ?」
「・・ええっ、騎士関係ではかなり。俺も会ったことはないですが知的で礼儀正しい騎士の鏡だと言われてます」

・・・シーン・・・・

一同沈黙・・、ディなんかは目が点になっている
「・・誰が流したんだ?んなデマ・・」
「???それで通ってますが・・。
まぁ戦闘は荒荒しく一部の人間はかなり狂暴でだらしない女だと言われてますがそれ以上に良い印象が出まわっているので・・」
「あの国は嘘で塗り固められているようダナ・・」
「ん・・・」
「そのようですね」
ルー&シエル&レイハさんが一斉に国を非難・・それにキース達も唖然と・・
「まぁ、必要な物資は明日にでも揃う・・向こうまでの移動は・・」
「途中で馬でも買います。ですが・・ディ君に依頼したものがまだ数日かかりそうなので・・」
「あんっ?お前何か頼まれたのか?」
「ええっ、面白い物があったので・・。良い物ができそうですよ♪」
「お前もリュートの奴と出会ってから随分とそっち系のことが好きになったもんだなぁ・・」
「元々好きでしたからね〜。まぁそれが出来あがるまではゆっくりしてくださいよ♪
このご時世得物もなしで長旅するのは危険です」
「・・騎士相手に言うな。まっ、そういうことならかまわない。ゆっくりしてくれや。二人も追撃で疲れているだろうしな」
「・・ありがとうございます。では俺はその事を団長に伝えるために手紙を書いてきます」
そう言うとそそくさとキースは居間を出ていった・・
「真面目ねぇ・・。外国まで追跡すれば期間が長くなるのだって向こうもわかっていると思うんだけどぉ」
「昔いた騎士団ではそういうのしっかりしていたから・・・ね。」
カチュア、足を伸ばしながらルナと仲良く座っている
「ふぅん・・、流石は相方・・だな?」
「それよりも!さっきから気になっていたけどライさんの周りにそんだけベタベタくっついているのは何故!?」
ソファに座るライに寄りそっている四人の姫・・正しくピンポイントハーレム
彼の膝にはルーが頭を乗せ反対側ではアルシアが凭れる。
床にはシエルが座って彼の足に寄りそうようにしておりレイハは少し遠慮がちにアルシアの隣へ・・
「何故って・・俺の女だから」
「ガビーン!」
「まんまなリアクションだな。なんだ?そんなに変な事か?」
「・・普通だと・・思うの?」
「おう♪」
「リオさ〜ん・・」
「まぁまぁ、余所はどうかわからないけれどもここじゃこれが普通よ♪」
「・・別に女ハベラすのはいいんだけど・・胸がおっきいのばっかりなんて許せない!!」
どうやら怒りはそっちのようだ・・
「カチュアちゃん・・?」
「思えばリオさんも豊乳だし!シエルさんなんてゴットバディだし!アルシアさんも理想形だし!!」
残り三名をチラッと見るカチュア・・だが・・・これ以上は続かない・・
「・・あの・・私は・・?」
「レイハさんは〜・・、服からして大きさよくわかんない」
その一言にレイハさん口元が少し震える・・
「私とルナは!?」
「わう?」
残る二人・・ルーとルナ。ルナは興味なんかないだろうけれども・・
「お友達〜♪」
「一緒にするな!私の方が大きい!」
ガバッ!
「何を!私のほうが勝っている!」
ガバッ!
双方いきなり上着を脱ぎ出す!!・・そこにあるのは正しく洗濯板が二つ
「・・ルーはともかく、カチュアは恥ずかしいとは思わないのかよ」
「・・『そんなペッタンコ、見せても誰も萌えないわ!』・・ってお兄さんに言われて・・ううう・・」
「上着たくし上げながら泣くな・・」
「それよりも判定はどうダ!こんな小娘に負けてなるものカ!」
「・・俺が審判かよ!?・・アレス君・・?」
「嫌です」
アレス即答、このうえなく厄介な質問なのはもう皆わかっている・・。周囲の目からして誰も変わってくれないだろう
しかし、救世主は何時の世にも突然現れる
「??・・身体測定!」
なんか遊んでいるのだろうと思ったルナ、ルー達と同じように服をたくし上げる
「・・うおっ!?」
・・それにディは思わず鼻を抑え、一同沈黙・・

ルー→無乳
カチュア→無乳
ルナ→儚乳

「「・・ま・・負けた・・・!!」」
何気に成長している銀狼にペッタンコ二人がうなだれる・・
「??ルナ!勝った!」
何だかよくわからないがとりあえず喜ぶルナ・・、相方は鼻血を出している
「いいから直しなさい。お前等その内成長するって」
「うう〜、ライ〜!!」
「この無念・・男にわかってたまるかぁぁぁ!!」
嘆くペッタンコ達、一人はライに慰めてもらいもう一人は相方の元にランナウェイ〜
「・・なんだ、アレ」
「・・あの・・ライ・・」
「ん・・?どうした?レイハ?」
「私の胸は・・そんなにわかりにくいのでしょうか・・」
ここにも悩む子羊がいたようだ・・

・・・・・

翌日
朝早くから行われている訓練にキースも顔を出し自分の実力を計るために奮闘した
それでも力量の差は歴然、それでも良い勉強ということで全力を出し切り彼らに立ち向かった
・・その間も相方は歯軋りをしながら寝ていたのだが・・・
それにより午前中はキースは完全にグロッキー、アルシアの治療を受けながら何とか起き上がることができるぐらい・・
カチュアはやる事もないので買い物がてらアルシアに案内されてシウォングへと案内された

「う・・ん・・」
彼が目を醒ますとそこは自分達が借りた客室のベットだった
「俺は・・?」
訓練でライに戦いを挑み、破れたことまでは憶えている・・そこからは記憶はなく今まで気を失ったのがわかる
「やれやれ・・、醜態を晒したか。」
体を起こし苦笑いをする。敗北は己を強くする・・そのための醜態は恥ずかしいだろうが貴重なこと
・・彼の恩師からの言葉を思い出し気持ちを切り替える
「カチュアは・・ん・・?」
相方はどこかに行ったのかと思ったらテーブルにメモ書きが置かれており
”ディ君の依頼がてらアルシアさんと街に行ってるね♪傷は大したことないらしいよ〜”
「・・あいつはどこでもあいつ・・か」
ともあれ体を起こし部屋を出る。
服は正されているが包帯を捲かれているのがよくわかる・・とりあえずは近くに人がいないかと
探し、ルーの部屋を見つけた

コンコン

「・・開いているゾ?」
奥からあの貫禄のある物言いの声が・・
「失礼します・・」
中に入るキース・・そこは本が並びまくりの散らかりまくり・・
そんな中揺りかごのようなアームチェアーに座り本を読んでいる魔女・・もとい元魔女ルー
「ほう、目が醒めたか。良いのが入って一日目が醒めんとライは言っていたのだがな」
「頑丈さには定評がありまして・・皆さんは?」
「お前の相方とアルシアは街に行った。ライとレイハは執務室で仕事、アレス、リオ、ディは庭掃除。
シエルとルナは狩りだ・・そして私は魔導院の生徒のための課題探し・・ダナ。
レベルを合わせるというのは中々に難しい!」
えっへんと威張るルー・・、言ってることは凄いのだが・・
「そうですか・・。じゃあ俺も何か手伝いを・・」
「御主は客人だ。手伝うことなどないダロウ?」
「いや・・、世話になっている以上は・・」
「ふむ・・、まぁライ達に聞けばいいのだろうが・・入りにくいだろうしな。なんなら私の部屋の整理でもやるか?」
「整理・・、いやっ、女性の部屋を片付けるのは・・」
「ふんっ、御主が思っているような代物などない。魔導書をカテゴリー別に分けておけばいいだけだ・・そのくらい分かるだろう?」
「・・カテゴリー・・、いやっ、さっぱり」
現場の叩き上げには難しいことではある・・、それに対しルーさん呆れ顔
「男ならそのくらい知っておけ!言いか!・・・・」
クドクドクドクドクドクドクド・・・
説明する事10分少々・・、詳しい話はそれこそ彼には到底わからないが一応理解はでき散らかっている魔導書を試しに分けてみた
「うむ、それでイイ!言えば分かるな!」
「・・良い経験にはなりますよ」
「よし、では後は任せるゾ?」
突如立ち上がり呼んでいた魔導書片手に部屋を出ようとする
「・・・はっ?」
「私はこれから魔導院で講義ダ!整理しておいといてくれたらいい。後はライに聞け」
そう言うとルーはさっさと出ていく・・、キースはその姿に唖然としながらも
「あの若さで講義をする立場か・・。天才というものはいるものだ」
彼女の正体などわからないが彼女の凄さは良く理解できたようだ
ともあれ、暇つぶしがてら彼女の書物の整理をしてやる


・・
・・・
・・・・

はじめること1時間程度、とりあえずの整理は終わり後の戻す場所はわからないのでまとめて置いておくことにした
「よし、これでいい。」
途中、魔導書と全く関係のないいかがわしい本を見つけたが真面目にそれも『カテゴリー』としてまとめてあげていたり・・、
彼女が見たらそれこそ笑い出すだろう
「・・、次は・・ライさんに聞くか。・・んっ?」
部屋を出ようとしたが整理した部屋の片隅に怪しい本が・・
題名も載っていないただ黒い本・・、魔術に詳しいものならそれに気付くだろうが
「まだ残っていたか・・。これは・・わからないな?」
一冊だけわからないのはスッキリせずその本を手にとって見た
そして・・・・



「はぁ・・・はぁ・・・」
執務室・・声の主はレイハ。忍として素晴らしいまでの持久力を持つ彼女が何故息を切らしているのか・・それは言わずもかな・・
「やっぱり仕事していてもリラックスは必要だよな♪」
「ん・・っ、だったら・・仕事を・・してください・・」
「んっ?もうシなくていいのか?」
「そ・・それは・・」
机に手を付きライの上に座るレイハさん、困惑顔で悩む・・。行為は続けてほしいが仕事をしてほしい・・両立は・・多分無理・・
「さぁさぁ・・どうする?」
「意地悪ぅ・・」
これも毎度の事・・しかし飽きがくることもなくまた解決はできるものでもない・・
まどろみの中でたまにはこのままハメを外してもいいかとレイハが思った瞬間・・

バタン!!

「ライさん!!」
突如慌てて入ってくるキース・・。ノックもせずに入ってきてライもどうしたかと思ったがすぐに
異変に気付く
・・彼の胸と尻が大きくなり顔つきも、声も女性のそれに・・
ズボンに白シャツの健康そうな女性がそこにいた・・のだが・・ライ達の姿を見てまたキースもビックリ・・!
「し・・失礼しました!!」

バタン!!

「お・・おい!どうした!?」
「そ・・その・・お二人が・・取りこみ中のようで・・」
「あ・・・っ」
途端にレイハが顔を赤くして椅子から飛び起きた・・急いで服を正している
「・・もう大丈夫だ、入って来い」
「はい・・」
再び入ってくるキース・・だけど姿は女性。
「・・・どうしたんだ?」
「あの・・ルーさんの部屋の整理をしていたら突然本が光って
・・気付いたら胸が大きくなっていて・・その・・あるはずのモノが・・ないんです」
「・・なんかの呪いか?」
「わ・・わかりません。あの・・どうしましょうか?」
「ルーさんは魔導院にて講義です・・夕暮れまでは帰ってこないでしょう・・」
唖然としながらもレイハが彼女の今日の予定を言う・・それとともにキース君・・いやキースさんは青ざめる。もはや普段の冷静な彼ではない
「っとは言っても素人がどうこうしても逆効果だろうしなぁ・・。あいつが帰ってきて見てもらうしかないな」
「え・・。じゃ・・じゃあそれまでこのままで・・?」
「まぁ〜・・貴重な体験ではあるな?」
「ライさん、こんな姿・・恥ずかしくていられませんよ!」
「・・まぁまぁ、この際女性として一日過ごしてしまえばいいのですよ・・(キラーン)」
レイハの目が怪しく光る
「「レ・・レイハさん・・?」」
「ふふっ、こんなに心踊るのはアレスさんの時以来・・ですねぇ・・。リオさん達にも手伝ってもらいましょうか・・」
嬉しそうに立ちあがり女性キースに近づく・・
「レイハさん?・・あのライさん?」
「ライ、一人で仕事できますよね?少し席を開けます・・(ガシッ)」
「お・・おお・・」
優しくキースの肩を掴むレイハ・・そして・・・拉致・・・

それよりすぐアレス達も屋敷に戻りリオはすぐレイハに連れていかれた。
・・場所は衣装などをしまっている倉庫
「え〜!?どうしたの!?キース君!!」
リオも驚きに驚く・・・。格言うキースはその女体の手足を拘束されてうなだれている
「こっちが聞きたいぐらいだよ・・」
「呪いにかかったらしくてルーさんが帰ってくるまで何とかしたいそうです・・そこで・・・」
「・・なるほど・・、私達の出番ですね♪」
「・・た・・頼む、余計な事はいいから彼女が帰ってくるまでここに居させてくれ」
すがるキース・・もはやプライドもクソもない
「駄目よ♪キースさん♪せっかくなんだから私が綺麗にしてあげる・・♪」
「お手伝いします・・。しかし呪いとは言え良い体型ですね・・」
「「フフフフフ・・・・」」
満面の笑みな腐女子達・・、キースは自分の迂闊さを呪った

・・・・・・・・

しばらくて・・
「アレス君〜、できたよ〜♪」
倉庫の外で待っていたアレス・・その光景に唖然とする
「・・・な・・・」
そこにいるのは正しく女性、漆黒のドレスを着て大きく膨らんだ胸を強調・・、赤髪は綺麗にまとめられどこかの貴族の娘のように思える
「・・キースさんは化粧のノりがいいようで・・」
「・・・笑ってくれ・・アレス・・」
満足そうなレイハさんとリオさんを余所にキースはもはや諦めに近い雰囲気・・
「キース、・・安心しろ。実際そこまで変化したことはないが・・女装は俺もさせられた」
「アレス君のも綺麗だもんね♪」
「・・やらないぞ。ともあれ、それでどうするつもりだ?」
「・・ルーさんが帰ってくるまでサラシ者だ・・」
「もう、キースさんしっかり!サラシ者なんかじゃなくてどこに出しても恥ずかしくない姿だよ?」
「俺にとってはどこに出しても恥ずかしいんだ・・」
「では、カチュアさんに励ましてもらいましょうか・・」
「!!?頼む!あいつにだけはこの事を伝えないでくれ!」
今度こそ必死なキー子さん。化粧で別人のようになった顔を歪ませている
「???なんで?」
「どうしても!後生だ!」
もしバレたら騎士団に言いふらすのは目に見えている。この上ない屈辱は必至・・
「ううん、しょうがないな〜。じゃあ名前変えて言葉もきちんと女言葉にしてね?」
「わ・・わかった」
「・・違いますよ?」
「わかった・・・わ」
泣きそうなキース・・、そんな姿をアレスは哀れに見ていたがドレスアップした二人はまだ物足りないのかしきりに自分を見ており気が休まらない
「じゃあ〜、ルーさんが帰ってくるまで貴方はアンネ・・ってことでいい?」
「アンネ・・?」
「設定ははるばるアレス君を訪ねて来た義理の妹。愛しいお兄さんに会うため着飾ってきて
それを受けとめる優しき兄!・・いいでしょ?」
「・・アレス・・助けてくれ・・」
「こうなるとどうにもならん。・・夜までの辛抱だ」
彼の言葉は重くこれから行われる芝居のことを思いキースは頭痛を覚えた・・

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