第六章  「薔薇戦士現る」


マスク・ド・ダークネスVSナイトプリンセスのドロー試合は大会進行に思わぬ障害となってしまった

それ故しばらくの間主催者側で会議が行われた

その結果、グランセイレーンとの対戦が予定されていたローズキラーと不戦勝となったハンサムガイKの組み合わせで対戦となり

その勝者が決勝としてグランセイレーンと戦う事が決定された。

グランセイレーンことロカルノにとっては悪い提案でもなくローズキラーの方も異論がないという事で

遅れた分を取り戻すべく早速に試合が行われる事になった



”さて、流石は仮面武闘会。想定外の出来事が起こりましたがカードを変更しての対戦となります。

事実上の準決勝戦、ローズキラー選手とハンサムガイK選手!双方とも突然の提案を快く受けそして今入場です!”



アナウスが叫ぶ中雄々しく入場するローズキラーとハンサムガイ。

双方とも異様と言えば異様な姿故にその光景は圧巻・・

「それでは・・準決勝、レディィィ・・ゴォ!!」

勢い良く掛け声をかけるジルさんとともに試合開始!

「・・・異な組み合わせだ(シューコー)」

「ははは・・まったくだ。まぁ僕としてはあの二人のどちらかと本気でやりあう気もなかったんだけどね」

白いタキシードと漆黒の全身鎧。派手と言えば派手なのだが得物、防具からしてもローズキラー有利に見える

「・・流石に身内通しだと戦いにくいという事か・・(シューコー)」

「そりゃあねぇ。だが・・君もそうなんじゃないのかい?」

「・・何の事だ?(シューコー)」

「・・まっ、何となくね。それじゃあ始めようか!」

華麗にレイピアを抜き構えるハンサムガイ、その名に恥じぬ優雅な振る舞いに黄色い声援もちらほらと・・

「いいだろう、お前も所詮通過点に過ぎない(シューコー)」

重そうなバスタードソードを軽々と構えるローズキラー

両者にらみ合いながら微動だにしない・・ただ、口元がわかるハンサムガイは微笑を浮かべている

「・・破!」

ローズキラーの豪腕から繰り出される強烈な一撃、だがハンサムガイは巧みに間合いを外しそれをやり過ごす!

「・・追撃する!」

それに対しローズキラーは振り下ろした刃を返しそれを払う、すると空より現れる3つの氷礫・・

回避動作中のハンサムガイ目掛け高速で降り注ぐ!

「おおっと、流石に狙いどころがいいね」

隙をつかれた攻撃、本来ならば直撃は免れないのだが・・


パァン!パァン!パァン!


瞬時にハンサムガイの手が動いたと思うと氷礫は一瞬で粉々に粉砕された

「・・・礫ではとめられるか・・(シューコー)」

「氷と金属では硬度に差がある。それに僕の腕ならば同時に突き砕く事もお手の物さ」

「ふん・・やるな(シューコー)」

「君の対策は僕らのところじゃ皆受けているからね。意表を突こうとしても無駄だよ?」

爽やかに笑うハンサムガイ・・だがローズキラーはそれに微動だにしない

「馬鹿殿か・・」

「そりゃあね。まぁ僕の場合は興味本位、生憎パートナーの護身方法は完璧だからね」

「・・ちっ、まぁいい。ならば実力で打ち砕くまで!(シューコー!)」

「ふふふ・・予定外だけど楽しめそうだ・・」

気迫溢れるローズキラー、優雅に踏み込むハンサムガイ・・

双方そのまま突っ込み緊迫感溢れるインファイトへ!

ローズキラーの豪腕から放たれる一撃は強烈、ハンサムガイを捉え鋭く切り払う

ハンサムガイの動きは獣戦士のそれをも上回り卓越した敏捷性と神速の突きでローズキラーの装甲を削る

ローズキラーの攻撃が入ればその場で終わりそうな戦いなのだが状況は5分5分、

重いながらもそれを感じさせない鋭い連撃を放つローズキラーに対しそれをことごとく回避しつつも

相手の装甲に手を焼いているハンサムガイ・・

「当てるだけでは私は倒せない!(シューコー!)」

「君こそ・・当たらなければ僕は倒せないよ」

「ならば当てるのみ!」

攻撃の速さが上がるローズキラー、咄嗟にハンサムガイは相手を蹴りその反動で距離を開いた・・

「やれやれ・・、ディやルナが手を焼くわけだ」

「ふふふ・・この鎧は特注性、本来の得物ではないお前に勝ち目などない(シューコー)」

「それはどうかな?君の悪いところは余りある実力を活かせず慢心するところさ・・!」

「ぬかせ!」

猛烈な勢いで踏み込むローズキラー、対しハンサムガイはそれに真っ向から迎え撃ち・・


キィン!


鋭い金属音が鳴り響く、衝撃がぶつかり刃が交差する中ハンサムガイのレイピアはローズキラーの右肩アーマーを突き刺し粉砕していた

そしてそこには重装な鎧を着ているには相応しくない華奢な体が見える

「な・・に・・!」

「レイピアだけでその重厚な装甲を砕く事など・・意外と思ったかな?」

「そんななまくらで私の鎧が・・」

「突く箇所、タイミング、そして君の力を利用すれば・・意外に容易いものだよ。

相手の力を利用する戦術は数多ある、それをやられるのが君の弱点・・っと言ったところかな?」

爽やかに笑うハンサムガイだがローズキラーは殺気をにじみ出ている

「おのぉぉぉれぇぇぇぇぇ!」

激情しながら飛びのきバスタードソードを地に突き刺す!

ソレと共に冷気が地を覆い連続して鋭い氷の刃が伸びハンサムガイに襲い掛かる

「うおっと、とと!これはまずいかな・・!」

華麗に回避しながらも次々地より襲い掛かる氷刃にハンサムガイは防戦一方となる



「・・キレちゃってますね・・」

それを見ていたキルケが素直に一言・・

「よほど気に入ってたんだろうな、本性丸出しだぜ」

隣の黒服パツ男も呆れ顔、これがローズキラーのもっとも警戒すべき点・・

「でもどうするの?あのままだと大会ぶち壊しになるわよ?」

「そうですね・・、ロカルノさんが出たとしても進行メチャクチャになりますしね・・うわぁ・・ジャッジのジルさん泣いちゃってますよ・・」

ローズキラーの本性が現れ場内騒然となる・・


その時・・

『まてぇい!』

突如場内を包み込む勇ましき女性の声・・、それにローズキラーの動きもピタリと止まった

「・・っ!?この声・・」

『貴様の愚行、もはや目に余る・・とぅ!』

「・・上か!」

空中より華麗に回転をしローズキラーとハンサムガイの間に一人の戦士が舞い降りた

露出の激しい赤いビキニ鎧に額にはナイトプリンセスと同じく黄金のロカルノ仮面を着用、

見事なまろい股体を鎧に包んだ姿をさらにマントで包んでいる

「・・っ・・あのウィング零の存在にこの感覚・・、まずい・・!」

「・・ま・・まさか・・」

その姿にローズキラーとハンサムガイの両者の様子がおかしくなる

「あ・・・あの・・貴方は・・・」

二人だけの戦いの場に乱入者が現れた事にジルさんが恐る恐る近づく

服装からしてみればナイトプリンセスを上回る変人なのは一目瞭然・・

「私?私か・・薔薇の戦士セクシーローズ・・っとでも言っておこうか」

「セクシーローズさん・・ですか、あの、すみませんが乱入はお断りをしているのですよ・・。

ただ今ローズキラー選手とハンサムガイ選手の試合中なので・・」

「試合?・・そのハンサムガイの姿が見えないようだが・・」

「へ・・ああっ!?」

見ればハンサムガイの姿が忽然と消えていた・・、

それは魔法でも使ったかのように、セクシーローズが現れた一瞬で会場から姿を消したようだ

「・・く・・逃げたか・・」

これにはローズキラーも舌打ちをする、敵を逃した事の悔しさではなく上手く脱出できた事に対する嫉妬心から・・

「これはそのハンサムガイが棄権したって事だね・・。そうともなるとローズキラーは不戦勝・・それでは面白くないだろう?

元々私はキラーに用事があったんだ・・ハンサムガイの代役として戦わせてもらうよ!」

何気に準備万端なセクシーローズ、対しジルさん困惑の極み状態

「え・・あの・・その・・放送席!どうしましょう!?」


(う〜ん、ハンサムガイ選手が盛り上がった最中にいなくなったら観客の皆さんも納得がいかないと思いますので・・異例ですが

この勝負、ローズキラーVSセクシーローズに変更します!)


意外にあっさりとした返答、それは観客も同意らしくその判断を支持するように歓声が湧く!

「認めん!そんな事私は認めんぞ!」

唯一、ローズキラーだけが心底焦っているのか声を荒げている

「ふん・・決定は決定だ。さぁ・・始めるよ!」

「冗談ではない!」

バスタードソードを構えヤケクソに臨戦態勢に入るローズキラー・・

しかし


ガァン!


その刹那にセクシーローズの飛び膝蹴りが兜にめり込む・・

「ほらほらほらほら!!私を意識したその名前らしくもっとしっかり戦いな!」

瞬間押し倒し馬乗りになるセクシーローズ、そのまま鎧越しに殴る殴る殴る!!

「きゃ・・!ちょ・・手加減して・・!凹んでるぅ!」

もはや勝負にならないローズキラー、手も足も出ずにタコ殴り状態だ

「聞こえないねぇ!ほらほらほら!!」

「ギブ・・ギブアップ!!!!」

重厚な鎧がボコボコに凹んだ状態で試合を投げ出すローズキラー・・

「慣れないスタイルで私に喧嘩売るからこうなるんだよ!」

止めとばかりに馬乗り状態から飛びあがりそのままストンピング!

「ぐえ・・!・・あぐ・・」

その一撃でローズキラー、悶絶しながら動きがピタリと止まった・・

「あ・・え〜っと・・ローズキラー選手!再起不能(リタイヤ)とみなし勝者セクシーローズ選手!!」

呆気に取られながらもジャッジをするジルさん、しかし準決勝進出者の瞬殺具合に観客も呆然としている


「・・うわぁ・・、こっぴどくやられましたね・・」


「ピクリとも動いてないし・・あんな名前つけるからね」


そんな中キルケとフレイアはその正体に気付き、ローズキラーに哀れみの言葉を述べている

「・・なぁ、ローズキラーを瞬殺するあのセクシーローズっての・・誰なんだ?」

対し黒服パツ金男は年齢不詳の女戦士が起こした暴行劇に呆気を取られていた

「・・知らぬが仏・・ですよ。一応顔隠してますし・・」

「・・まぁ、大体想像つくんだけどな・・」



「おめでとうございます、セクシーローズ選手。これで決勝戦グランセイレーンとの勝負となりますが・・改めて仮面武闘会に参加致しますか?」

もはやトラブルには慣れているのか・・、臨機応変に視界進行しだすジルさん

見た目の若さよりも大分にしっかりしているようだ

「ははは・・悪いね、私の目的はこのローズキラーを始末する事だけなんだよ・・、終わったら還るつもりさ。

それに・・いい加減茶番は終わりして観客も観たいだろう?・・セイレーズとウィロウの戦いをさ!」

観客に向けて叫ぶセクシーローズ、それとともに張り裂けんばかりの歓声が・・

観客はセクシーローズ全肯定の様子だ

「まぁそういう事だ・・。それじゃ私は失礼させてもらうよ・・さぁ〜、ここからはもっと厳しく行こうかねぇ」

そう言うとセクシーローズはローズキラーを肩で担ぎ何の溜めもなく空中を舞い戦いの場から姿を消すのであった

「・・え・・え〜と、それでは順番に不具合が発生しましたが!決勝戦の準備に入ります!皆さん今しばらくお待ちください!」

何とか仕切るジルさん、ほとほと現場の人間というのは大変なものである・・


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