第四章  「ナイト オブ プリンセス」


第四試合マスク・ド・ダークネスの勝利により武闘会はさらに盛り上がりを見せている。

その中、キルケ達一同はダークネスの実力を冷静に分析していた

「・・よもや、ミーシ・・っと、雅が一回戦敗退とはなぁ・・」

「雅選手も初戦から激闘でしたねぇ・・、組み合わせの如何なら決勝まで残っていたかもしれないでしょうね」

黒服パツ金男の隣でキルケは鼻息を荒くして呟いている。おしとやかそうに見えて中々に行動的、

その性格からしてこうしたトーナメントが元々好きなのかもしれない・・

「そう・・ねぇ・・。雅の動きなんて・・全然見切れなかったし・・。それをクリーンヒット一つもなく倒すなんて・・」

「だが、ダークネスの攻めが少し緩かった・・」

「・・えっ?それは雅が・・」

「雅が女だと言うのも要素にはあったのだろうが・・、彼女の音速拳に対する捌きは見事なものだ

それに対してカウンターに彼女を倒す時のあの一撃・・」

「・・あのカウンターがどうしたの?お兄さん」

「雅の超高速を見失う事無く捌き続けた彼がスピードを落とし決定打を放とうとするその瞬間を見逃すとは思えない

そうなるともっと完璧なカウンターが決まっていても不思議ではない・・つまりは・・」

「格闘戦には慣れていない・・って事ですね!」

「え〜、でも凄い一撃だったと思うわよぉ?」

「もちろん、あの体術でも並ではない。とどのつまり、メインで戦っている得物は拳ではない・・っという事だ」

「なるほどぉ・・得物は持っていなかったから体術者かと思っていたけど・・そうだったんだ・・」

感心するフレイア、だが結局彼らにダークネスの正体がわからず・・

「それで・・次の試合だな・・。流石に進行の手際が良い・・」

「変に演出してませんからね♪あっ、出てきましたよ!」



第五試合の選手が入場してきてロカルノとキルケの顔色が変わる

片や胴体が蒼、その他が白の全身鎧を着た重戦士

片やピンクのフリフリドレスに白いケープを着用した女性

注目すべきはつけている仮面・・、普段ロカルノが着用しているのと同じ形そしてそれは黄金色に輝いていた

「なっ!?」

これにはロカルノも声を失う・・

「あれは・・ロカルノさんがアレスさんに送った仮面・・ですよね?」

事情を知るキルケも見えないが額に汗を一滴垂らしている・・

「・・間違いあるまい、あのフォルムと材質はそう真似はできない・・。アレスが部屋に飾っているはずの仮面がここに・・

もしや、アレスとリオの身に何かあったか!?」

「あの黄金仮面をあそこにいるフリフリっ子が盗んで参加したわけですか!?た・・大変です!今すぐお二人に連絡を・・」

「いや、待て。今からシウォングに行く事はできない・・。それに、あの女の正体がわかれば解決に繋がる・・」

「そ、そうですね・・でも・・一体彼女は・・?」



「・・・(当人が着用しているって発想は湧いてこないのな・・)」



テンションを上げているロカルノとキルケに黒服パツ金男はやや引いている。

っというかここまで自然にそう思っているのを見ると自分がおかしいのか?っという疑問すら浮かんでくる



”さて第五回戦!謎に包まれた黄金の仮面着用の美少女剣士ナイトプリンセスの登場です!

ある種若さに漲った挑戦者!色々と注目です!

そしてその相手となるのが贋蛇武!元探検家という経歴を持ちながら謎の疾走の末に独自の戦い方を開拓し

戦士へと転職した謎の男!これは・・これは注目です!”



1人熱の入るアナウスを余所に両選手は比較的落ち着いている

「それでは!第五試合・・レディィ・・・ゴォォ!!」

その中淡々と仕事をこなすジルさんが開始の合図、今回は自分に害なす人物がいないためか

本人としては非常にスマートな進行が出来内心かなり喜んでいるのはここだけの話である



「いくわよ!!」



ミニなスカートも何のその、華麗にポーズを決めて得物であろうレイピアを取り出す。

特注品なのかその柄もピンクに塗装されており鞘も変に装飾が施されている

見る限り儀礼用・・っというかどこぞのお姫さんが使えもしないのだがとりあえず護身用に・・っと拵えたような感じがする逸品

だが鞘より放たれた刃は鋭く寧ろ実戦用の武器を悪趣味にいらった感がする

対し贋蛇武は全身甲冑をつけたまま仁王立ち

重そうな体に対しナイトプリンセスは何の遠慮もなく刃を突きたてる

「えええぇぇぇぇい!」

ややおふざけな容姿とは裏腹にその一撃は鋭い、おまけに確実に喉元を狙っている

可愛いふり割とやるもんだわと・・

しかし贋蛇武もただの木偶の坊ではない



轟!



迫る瞬間に鎧の膝部より火が吹き出て高速でバックジャンプ、通常ではありえない動きにナイトプリンセスの攻撃は空しく空を切った

「当たるものか・・!」

全身甲冑の贋蛇武があざ笑うように言う、だが反撃をするような素振りは見せていなくまだ様子見のようだ

「ちょっと!逃げてないでちゃんと戦いなさいよ!」

対しナイトプリンセス、回避された事に何気に怒っている。

ヒロイン的ブリブリ衣装の割には意外にも好戦的な性格になっているご様子・・

「逃げる・・?人聞きの悪い、相手の能力を分析していると言ってもらいたいものだな」

「どっちも同じよ!正々堂々と戦いなさい!」

ムキーと怒りだし切りかかるプリンセス、だがその動きを正確に把握しているのか



ブン!轟!ブン!轟!ブン!轟!



付かず離れずブーストにて距離を開ける。中々に鋭い斬撃も空しく空を切りそれ以上にプリンセスのフラストレーションは急上昇・・

「貴方!いい加減にしなさい!」

「・・データ採集はもう良い、ならば期待に応えて反撃をさせてもらおう!」

そう言うと白い全身甲冑を着た戦士は腰より剣の柄を取り出す、見るからに何でもなさそうな道具に見えたのだが・・



ブゥン・・



瞬間、柄より伸びる赤き透明な刃・・

それはユラユラと揺らめきながらも形が崩れる事は無く不気味さを感じさせる



「あ・・・あれは!!?九骸皇!?」

贋蛇武が出現させた特殊な剣にキルケは目を丸くして驚く、そしてその隣には強張った表情のロカルノ

「うぬ・・似ている・・。まさか・・贋蛇武の正体は・・クラークか!?」

「・・(いあ、あの人はそんな仮装に興味ないだろうって・・。寧ろリオの事を疑えよ・・)」

突っ込むに突っ込まれない黒服パツ金男、すでにロカルノとキルケのテンションに完全についていけずに頭の中で突っ込んでいる

「な・・!?お兄さん・・それじゃクラーク=ユトレヒトが贋蛇武なの!?」

「可能性だ・・、東国で何かあったのか・・あるいは・・」

「・・(・・今のこいつらはおかしい・・、ツッコムのはやめておこう・・)」



会場のおとぼけとは別にプリンセスの顔色は優れない

「それは・・・」

「ふふふ、超古代の遺跡より発掘した剣だ・・。光線の刃・・受け切れると思うな!でぇぇぇぇぇぇい!!」

全身甲冑とは思えない機動性で突っ込む贋蛇武、脚部のブースターを巧みに使っている。

これが違反にならないのはやはり仮面武闘会だからか・・

「っ!?きゃ!!」

放つ一撃は異様な熱気を持ち、受けて立とうとしたプリンセスは咄嗟に体を反らす・・

光線の刃はそのまま地を焼き刃の形の溝を作り出す

「そらそらそらそら!」

形勢逆転とばかりに連続して切りかかる贋蛇武、それに触れてはまずいとプリンセスは防戦一方となるものの

元の身体能力の高さ故襲い掛かる刃を回避し続ける

それでも装備から触れたらアウト、極力距離を開けようと大きく飛びのく

流石の贋蛇武も全身甲冑という装備故に瞬時に距離を縮める事ができない

だが・・

「直撃させる!」

咄嗟に取り出したのは古代兵器である『銃』それも長身のライフル型であり正確にプリンセスを捉える

そして・・



轟!



光線刃と同じ赤い光が迸りプリンセスを襲う!

それは言うなれば高速で飛翔する炎の弾丸、目にも止まらぬ速度で肉薄し回避終了したてのプリンセスに迫る

「ひっ・!」

思ってもいない攻撃に顔を引きつらせるものの瞬時に体を反らす・・



ドォン!


その瞬間に反らした体のすぐ上を光が走り壁にぶつかって爆発した、客に被害を及ばせないための特注製の石壁を破壊した

人体に当たってはひとたまりも無い威力で対人兵器とは到底思えない

プリンセスの優秀な反応故になんとか凌げたのだがその威力に呆然としている

「ちょ・・ちょっと!レフェリー!あんなの反則じゃない!」

「え・・ええっと・・そんな気がするのですが〜・・アナウスさん!どうなんですか!?」

詰め寄るプリンセスにジルさんも慌てて助けを求める、仮面武闘など初めてな様子で大いにうろたえている

”え〜っと、武装に関しての規定は特にありませんね。反則ではありません”

冷徹なアナウスの声にプリンセスの怒りは真骨頂・・

「ふふふ・・規定は良く確認しておくべきだな。剣撃を得意とするお前にはどうする事もできまい」

勝ち誇る贋蛇武、対しプリンセスはギロリと贋蛇武を睨みつける

「反則的な武器を用いて勝ち誇るなんて・・許さない・・許さないわ!

月の女神に代わって天誅よ!!!」

気合十分に華麗にポーズを決めるプリンセス




そして・・


「・・わう?」ルナの代わりに・・?


遠い空の下、月の女神な犬っ子は誰かに呼ばれたような気がして周囲を見渡すのであった・・




「ふふふ・・近寄れず離れずのお前に何ができる・・、古代兵器の素晴らしさを解せぬお前には勝ち目などない!」

ジャキっと光線ライフルを構える贋蛇武、手加減は一切しないようだ

「こうなったら一か八か・・!仮面の力を借りて!今必殺の!プリンセス!アタァァァァァック!!」

華麗に一回転しながら叫ぶプリンセス、すると額に付ける黄金仮面が眩く光だし

気合とともにそこより閃光が放たれる!

「何!?うわぁぁぁ!!」

咄嗟に光線ライフルを放つもプリンセスより放たれる光の波動に飲まれ光は球形となり贋蛇武にぶつかる!

凄まじい衝撃が贋蛇武を襲い衝撃で甲冑がひしゃげていく

「これがプリンセスの力!見よ!」

止めとばかりに光の中に突っ込み飛び蹴りをするプリンセス、それは鈍い音を立てて贋蛇武の首に深く食い込み

吹き飛ばす、ミニなスカートを履いているがために下着丸見えなのだがそんな事まったく気にしていない

対し贋蛇武は止めの一撃で吹き飛ばされ地を転げまわりながらピタリと動かなくなる。

ボコボコに凹んだ甲冑からしてまるで何かの粗大ゴミにしか見えない

「ふふふ・・月の光の前には・・如何なる者も無力!!絶好調である!」



「・・くぅん・・?」誰かがルナの事を呼んでいる・・



ハイテンションなナイトプリンセスに遠方の女神は困惑顔・・、まぁ仮面や名前からして月は全く関係なのだが・・

それは言わないお約束

「そ・・それまで!勝者、ナイトプリンセス選手!」

ともあれ、舞台を会場にもどし圧倒的な武装を持つ相手より形勢逆転した事によりジルさんはもちろん、観客の興奮を高まっていた

”古代知識を得てその力を発揮した贋蛇武選手、惜しくも敗退です!

そして勝ったのはナイトプリンセス選手!仮面の輝きはもちろんのことそのスカートの中身で我々を魅了しました!

見事な戦いです!”

色んな意味で興奮しているアナウス、若干セクハラっぽくもあるのだが

当のプリンセスはそんな事気にせず手を振り続けている


「なんだかすごい反則技使ってましたけど・・あっけないですね」

観客を魅了し続けるナイトプリンセスを見つめるキルケ、贋蛇武さんは哀れタンカで運ばれている

「装備に頼りすぎた結果だ。相手が相手ならば性能だけでも勝てたのだろうが・・な」

「でもぉ・・あのプリンセス・・仮面からなんか変なもの出していたけど・・何なの?」

「あれは即興の魔法だろう、仮面というわかりやすいアイテムに対し力を集中させて放ったのだ。

元より黄金仮面にある魔力と混ざり合って強力な一撃となった・・っと言ったところか」

冷静にナイトプリンセスの必殺技を分析するロカルノ、だがその正体はわからないようだ

「アレスさん達から仮面を奪い取っただけの事はありますね・・」

「はははは・・・、でも悪い奴じゃなさそうだぜ・・?」

1人素な黒服パツ金男・・、とりあえずはキルケ達に話を合わしておくことに決めたようだ

それでなければ疎外感がすごいのだろう

「ううむ・・次はダークネスとの一戦・・どちらが勝つのか・・見物だな」

「でもその前に次の対戦があるわ、お兄さんと決戦で戦う相手になるかもしれないんだから・・注目しましょう!」

ダークネスVSプリンセスの激闘が予想なれるならその二人の勝者と戦う相手を決める一戦に四人の視線は集まる



贋蛇武の一撃により壁の一部は崩壊したものの、それに対して何も補修せずに大会は続行、

ジルさんも何事もなかったかのように中央に立っている

”さぁ続きまして第5回戦、注目するは仮面を装着してでもその甘いマスクがにじみでているハンサムガイK選手。

対するは有翼人種のスーツレディ、ウィング零選手!色物でない分綺麗な戦いに期待できそうです!”



アナウスの解説とともに入場する二人の戦士、1人は金に黒縁取の派手な嘴型仮面装着し白のタキシード姿の金髪優男

得物はその優雅な物腰とは違い実践的で飾り気が余り無いレイピア

それに迎え撃つは同じく嘴型の黒い仮面を装着し黒いスーツ姿の有翼人女性ウィング零、腰には同じく実戦向きのレイピアで

その得物を除くと翼から服装までほぼ黒づくめの女戦士である



「それでは!第五回戦!はじめぇぇ!」



ジルさんの気合十分な叫びとともに試合開始!

だが、両者ともピクリとも動こうとせず相手の様子を見つめている

「・・なるほど、良い腕をもっていらっしゃるようですね・・」

静かにウィング零はハンサムガイを見つめその能力を分析する、いきなり仕掛けないところをみるとただの戦士ではない

「そちらこそ・・、だが・・興味本位でこんな場所に出るとは思えないタイプと見た」

ハンサムガイも負けてはいない、相手に動きを合わせるが如く彼もウィング零を観察・・

「左様です・・。私の今回の任務は優勝ではなくある人物の監視・・」

「ふぅん、ある人物・・ねぇ・・。まぁ主催者サイドではありがたくない出場者だね」

「それを言うならば貴方も・・でしょう?」

「これは一本取られた。まぁ・・祭りは楽しむものだ。奇しくも得物は同じ・・手合わせ願おうじゃないか」

「・・委細承知・・」

両者華麗な立ち振る舞いにて一礼し、レイピアを抜いて刃を合わせる。

実戦ではお目にかかれないレイピア同士の決闘スタイル、双方の切っ先は額に向き半歩踏み込めば致命傷を与える姿勢・・

短期決戦もいいところな決闘方法なのだが双方に迷いは無い

まぁ双方ごつい仮面をしているが故にレイピアがまともに突き刺さっても『即死ではない』のだろうが・・

「「・・・・」」

互いにすぐそこに急所がある中、緊迫した空気が二人を包む、突きを放とうとも刃が重なりあう状態

それを払う事もできるが全ては一瞬で決まる。

「・・・・・」

「・・・・・」

いつ仕掛けるともわからない張り詰めた空気・・、しかし二人ともその顔に焦りはなく無表情に近い

「・・・やるね・・。仕掛ける隙を見せてくれない」

「こちらも同様です。名の有る剣士と見受けました・・」

「・・まっ、これを扱うのは社交辞令な感があるんだけどね・・。だけど、このまま刃をあわせたまま終われないかな」

「こちらも・・同様です・・」

自分の喉元に突き刺されるかもしれない鋭い切っ先を前に余裕で会話をするウィング零とハンサムガイ・・

だが、軽く言葉を交わした後二人の空気が変化する

それは決闘する者達に相応しき鋭いモノ・・



そして・・



閃!



一瞬にして二人の体が動く、刹那の時間にてハンサムガイが先制に突きを入れそれをウィング零が捌き切り払う。

それでも鋭い突きはギリギリで回避でき軌道は反れこそしたがウィング零の頬を浅く切った

だがそれで終わるウィング零ではなく切り払い牽制した後にハンサムガイの心臓目掛け鋭い突きを放つ

相手の動作、踏み込みのタイミングは完璧、常人ならばその時点で『積み』なのだがハンサムガイは

ウィング零の動きにさらに反応しばく転にて回避・・



全ては一瞬の出来事・・、観客は何が起きたのかと仮面の下で目を丸くしているのだが二人は別。

「お見事・・僕としては女性を傷つけずに倒したかったのだが・・」

「戦いにおいてはその油断が命取りになりますよ・・?無論、私生活も・・」

ニヤリと笑うウィング零、彼の物腰からして女性好きなのを察知したようだ

「それは耳が痛いね。さぁ・・社交辞令はここまで。女性に手荒な真似は極力控えているんでね。決めさせてもらおうよ」

「大した自信の持ちようで・・。ですが私も任務遂行中、退けません」

「仕事熱心だね・・・感心するよ」

ニヤリと笑いながらレイピアを構えるハンサムガイ、それに応えるようにウィング零はレイピアを一端鞘に収め構える

「居合い・・?レイピアだとやりにくいだろう・・」

「違いますよ・・集中するにはこの方が都合がいいので・・。では、参ります・・。

非化学忍法!火の鳥!」


途端に彼女の体は炎に包まれ炎弾と化す!

「非化学忍法・・?冷静そうに見えて君も仮面の魔力に憑り付かれているみたいだね・・・」



「はぁぁぁぁぁ!!」



冷静に分析するハンサムガイとは裏腹に、炎を纏ったウィング零はレイピアを抜きそれを突きたてて突進をする・・

駆ける体、炎は踊りまるで鳥のような姿を模りハンサムガイへと迫る!

「これは・・、まずいね・・」

それでも苦笑いをしつつ余裕なハンサムガイ、目の前に火の鳥が迫った瞬間・・



斬!



瞬間に二人の体が入れ替わりウィング零の体を纏った炎が四散した

一般観客に取っては体が交わり炎が消えうせたようにしか見えない、だがハンサムガイのレイピアにはこびりつくかのように炎が纏わりついていた

双方に傷はない・・だが・・



「・・空気の溝を作り一点を打つ・・、見事・・です」



ニヤリと笑いウィング零は胸元を押さえ静かに倒れた・・

技の衝撃かハンサムガイの技か、その鷲型仮面には皹が無数に入っている

「もう少し加減したかったが悪かったね。だが・・君ほどの女性、もっと違う出会い方をしたかったよ・・。

今度逢った時は非礼の詫びも込めてお茶にでも誘わせてもらうよ」

ハンサムはどこまでもハンサム、倒した女性にも言葉をかける事を忘れない

その姿に一般席の女性人の心は大いに鷲掴まれたであろう



「勝者!ハンサムガイ選手〜!!!」



ジルさんのジャッジの後、女性陣の黄色い声援が飛び交ったのは言うまでもない事・・

その中・・



「・・なんだか、あれがウィロウ2世っぽいですね」

「そうねぇ・・紳士的な感じがして名探偵の二代目には相応しいかも・・」

キルケとフレイア、何気にハンサムガイに好感触・・

本性を知らないのは恐ろしい事である

「決勝での挑戦権と言う事らしいが・・一般参加をしている事も考えられない事もないか・・」


「・・(どう見ても・・カインぢゃん。あそこで嫁さん応援しているし・・)」

これも仮面の魔力か、キルケ達はハンサムガイの正体に気づく事はない

まぁ、元々顔を合わせる機会が少ない事も手伝っているのであろうが・・。

その中黒服パツ金男だけはハンサムガイの正体と最前列でノホホンっと応援する仮面の女性の存在に気づいている。

「とりあえずは一巡しましたね・・白熱ですね!」

「そうね、お兄さん!がんばって!ここからが正念場よ!」

「任せろ・・。とりあえずは、次はデストロイベアーか・・。文字通り骨が折れそうだな」

「・・笑えんて・・それ・・」

ニヤリと笑いながらロカルノは一礼し再び仮面の戦場へと赴いた



「・・っというか、このまま勝ち進んでいくとセシルさんと当たるんじゃ・・」



「いいんじゃない?お兄さんにボコボコにやられちゃえば♪」


「・・嬉しそうだな・・おい・・」


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