×

[PR]この広告は3ヶ月以上更新がないため表示されています。
ホームページを更新後24時間以内に表示されなくなります。

「彼と彼女と妾龍と・・」  第六話


一度は倒したかと思われた劣神魔の襲撃
際どい状態にはなったものの騎士団とクロムウェル、
フィートそしてイリアの活躍により無事撃退することに成功した。
緊急の避難の準備もされていたが彼方より天に昇る光を見た時
住民全てはそれが勝利を知らせるものだと誰もが感じた

・・戦闘が街の外れであったため建造物の倒壊などは少なく
あれだけの戦闘があったわりには騎士団としては後始末が至極楽なものとなった
ただ、物が壊れなかったかわりに重傷者が二人ばかし・・
もちろん、街の危機を救った者として手厚い治療を受けているの・・だが・・


「なぁタイムさん、どうして俺が団長室にて寝泊りするハメになっているのか・・
こと細かくかつ端的にわかりやすく説明してくれたらこの心の中の疑問が綺麗さっぱりと
あの青空みたいに晴れ渡るんですが・・」

丁寧な説明をするクロムウェル・・場所は・・何故か団長室
何時も彼が占領しているソファをベット代わりに包帯まみれのクロムウェルが寝ている
かなりの重傷のはずだが本人は結構大丈夫そう・・
それでも手足を全然動かさないところを見ると軽傷ではない
「だって・・宿だと看病するのに出向かないといけないじゃない・・」
机にて今回の騒動による街への被害などの報告書から
一旦目を反らし心配そうにクロムウェルを見つめるタイム。
最悪大事な部下、親しく語った友、そして最愛の男を見殺しにするという判断をしたタイムだったが
誰よりも彼らの事を心配しクロムウェルが重傷だと聞きつけたら
作業の指示もそっちのけで街の名医クライブの元に走り診てもらうようにお願いしたのだとか・・
「だからってもう少しまともな設備のところじゃないとさぁ・・」
「クロは嫌なの・・、こんなに・・心配しているのに・・」
思わず涙目になるタイムさん
「わ、わかった!でもな!本来は俺入院しているくらいの怪我人なんだぞ!
ッうか歩けないんだぞ!その・・もよおしたらどうするんだよ!」
「わ・・私だって、軍医としての知識も持っているわ・・。きちんと尿瓶も用意したから・・」
恥ずかしそうに取り出した尿瓶、それを見てクロムウェルは青い顔をしちゃったり・・
「い・・嫌だ!看護婦さんならまだしもタイムにそれをやられるのは嫌だぁぁぁぁ!!」
「仕方ないよ、生理現象なんだし・・」
「いいや仕方なくない。っうかな、付き合っているとは言えどもそんな恥ずかしいことをだなぁ・・」
「クロ・・、変態なんだからこの際そんな事気にしないでゆっくり傷を癒して・・」
「癒せない!癒されない!っうかそういうのを『変態』の一言で片付けないでくれぇぇぇ!!!
あだっ!!叫んだから傷がぁぁぁ!!」
絶叫に次ぐ絶叫・・それにタイムも慌て気味・・
「クロ・・大丈夫・・?」
「大丈夫じゃ・・ない・・・」
「もう、こうなったら徹底的に介護してあげるから・・・、全快するまでここで寝泊まりしてね・・」
「ううう・・、じゃあ看護婦さんをクライブの所からよこしてくれ・・」
結局願いを届かずクロムウェル、我慢の末に男の面目丸つぶれ
愛は女を強くする・・・



そしてもう一人の重傷者は・・
「あ〜・・、個室ってのもなんだかなぁ・・」
騎士団御用達となっている病院にて治療中なイリア・・
タイムの顔も効いてVIP待遇に騒音がない別棟の広い病室に運ばれた。
そのため個室のわりには馬鹿みたいに広く、
辺りには沈黙・・・・沈黙・・・・・・沈黙・・・・・・
「ったく、治療するのにこんなスペースいるのかっての・・」
あからさまな貴族趣味な部屋の広さにぼやくイリア。
かく言う彼女は病院指定の病室着は身体に合わないということで
大きめの白シャツにローレグ状の紐パンとかなり激しい格好・・
そうでもしないと落ちつかないのか

・・・・・・

しばらくやることもなくゴロゴロしているとキース&カチュアが見舞いにやってきた
「イリアさ〜ん、元気?」
当人も包帯捲いてちょいと痛々しいがそんな素振りゼロで明るく接する
・・これが彼女の良いところか・・
「いんや、退屈と静寂に殺されそう・・」
「団長もわざわざこんな立派なところにしなくてもねぇ。
人間生活するのに大してスペ−スいらないのに・・」
「それでも街の危機を助けた英雄だ。
丁重に扱わないと申し訳ないだろう。・・これ、花と見舞い品です」
ベットの隣の花瓶に綺麗な花束を刺しキースは見舞い品をイリアに渡した
「おう、サンキュ。・・なんだ、饅頭?」
紙の袋に包まれたのは湯気だった白い饅頭
「騎士団の面々でも人気の露店です、営養価の高い食材ばかりですから
疲労回復には最適かと思います」
「そして私からは〜!これ!!」

ドンッ!と小テーブルに置いたのは『マッスルビルドアップ』と書かれた怪しい鉄の缶・・
「・・・なんだ、これ?」
「プロテインよ♪これさえ飲んでいたら身体中の筋繊維が歓喜に震えて踊り出すこと間違いなし!!」
「・・その言い方だと筋肉が勝手に痙攣しているんじゃ・・・」
「違うわよ!これはかのプロテイン学の権威セックスレス=オトコスキー教授が
苦難の末に開発に成功した秘伝のプロテインよ!その経緯がこの缶の側面にきちんと・・」
ウルウルと目を潤ませながら何故かキースに持たせて読ませる
「・・はぁ、『このプロテインは私が若かりし時に遠国で見かけた一人の戦士、
ゴリアテの筋肉美を見た時からはじまった。
筋肉の素晴らしさ、そしてそれが油によって光る様はこの世の至宝
それを誰でも手に入れれるように研究に研究を重ねた結果、
このマッスルビルドアップは完成ました。
これで皆さんも素晴らしい筋肉を作り周りに見せつけてあげましょう』」
「どう!?私もこれ見て涙流したんだから〜
イリアさんもこれ飲んで筋肉に元気与えればそんな怪我一発よ♪」
「あ・・はは・・でも・ゴリアテ・・?」
「ええっ、私もよく知らないけれどもきっと立派な筋肉なんだろな〜、絶対大胸筋がピクピク動くはず♪ああ〜、会って見たい♪」
カチュアの頭、筋肉一色・・。もしくは成分が筋繊維なのかもしれない
「は・・はは・・もう随分前に天に召されたぜ・・・まぁいいや。ありがとよ」
ともあれ、見舞い客の心使いにありがたく受け取るイリア・・使うか使わないかは別にして
「あ・・でも・・イリアさん。少し聞きたいことがあるんだけれども・・」
「・・・・・・」
おおよそ見当はつく、否、つかなければおかしい
「あの龍の姿って・・どうやったら変身できるの!?」
「はぁ?」
「いえ、戦いながら思ったんだけどあの人ならざる筋肉の盛りあがりはすんごくって!」
戦闘中んなこと考えていたのかこの女・・・
「あ・・あのなぁ・・」
「すみません、こいつはとことん趣味に走っているみたいで・・」
「っうかもっと疑問に思わないのかよ・・?」
「そりゃあ人が龍になるなんて驚き桃の木サンショの木だけども・・。
イリアさんにゃ変わりないし〜、っうかどんな術使ったの?」
「・・企業秘密だ。そういう質問は勘弁してくれ」
「え〜!そんなこと言わずに〜!」
「カチュア、いい加減にしないか。世の中変わったことなどいくらでもあるんだ」
質問攻めしようとしているカチュアの首根っこを掴み持ち上げるキース・・
「お前はお前で物分りいいな?」
「前に所属していた騎士団で天使を人間にする方法を探している人と出会いまして・・・。
俺にとってはそっちのほうが驚きましたよ。
それにカチュアの言うとおりあの龍もそこでだらしなく寝ているのもイリアさんだ。・・それに違いない」
「・・ありがとよ。」
堅物の気遣いをありがたく思い少し微笑むイリア
「じゃあ俺達はこれで。スクイードとシトゥラさんは後始末に奔走していて
『貴方は英雄だ』っと伝えておいてくれと伝言を預かったので報告します」
「おう、あいつらも元気だな・・」
「スクイードさんは一番役に立ってなかったから・・ね。じゃあお大事に〜♪」
笑いながらキース夫妻(誤)が退室・・
騒がしいのがいなくなったらまた部屋に沈黙が訪れた



「でっ・・、お前も見舞いか?」


しばし静寂の中、寝転ぶイリアが突如どこへともなく声をかける
「まぁ、そういうことです。先輩はタイムさんが完全隔離しちゃってますからね〜・・。
団長室は開かずの間になっているようです」
何時の間にか開けられた窓に腰掛けているフィート。
彼も危険な術を使用したのだが意外に平気そうだ
「団長室で介護だぁ・・?タイムも人が変わったな・・」
「先輩の影響でしょうかね・・・。まぁそこらへんは詮索はなしにしておきましょうか。
どうです?体調は?」
「まっ、命に別状はないが動き回るには体が言う事を聞いてくれないな・・。
それよりも・・報酬をもらいにきたのか?」
ニヤリと悪戯な笑みを洩らすイリア・・だがフィートは目を合わさずに軽く笑うだけ・・
「まぁそれは置いておきましょう。あの夢幻虫、
どうやらイリアさんに力を与えたせいか『門』としての能力を失っているようです。
貴方が気絶している間にちょいと調べましたよ」
「そうか・・じゃあ封印しなくても問題ないな・・」
自然と安堵の息をつくイリア・・、その事が彼女を悩ませていたようだ
「そうですね、もはや害を与えるほどの力も残ってませんよ。
これでこの一件も無事解決ということです」
「やれやれ、ほんっと最後に美味しいところを奪っていくな」
「美男子なんてそんなものですよ?そちらも身内にも同じ行動を取る人もいたと思いますが・・」
「・・・ああっ、お前と同じで純愛走っているよ」
イリアの言葉にフィート君窓からずるりと滑り落ち・・
「・・・は・・・ははは・・!・・ではっ!報酬は体で払ってもらいましょうか!!」
そう言うと有無を言わさず露出の激しいイリアへとダイブ!
一応怪我人ではあるゆえに体に傷つけないように馬乗りになるフィート・・
対しイリアは慌てた様子もなく
「いいぜ・・。報酬ってのもなんだが手伝ってもらってるしカシもあるしな」
「・・・・・・」
「どうした?まぁあんまり激しいのは勘弁してほしいんだけど・・」
「その前に質問があります。
何故男に犯されかけているわりには抵抗の『て』の字もしないのです?
僕を払いのけるくらいならできるでしょう?」
絶世の美女の腹に乗りながらも冷静にフィートが訪ねる・・
「えっ・・?いやだってお前が望むんだろ?俺がきたせいでお前達にも迷惑かけたし・・・」
「だからと言って年頃の娘さんがそんなに身体を差し出すってのは解せませんね」
興冷めたのかなんなのか・・突如としてフィートはイリアから降りる
「へぇ、お前もそんなのに気を使うとはな・・」
「まぁ、これでも人並みに情は持ち合わせてますからね。・・もっと自分を大切にするもんですよ?」
「自分・・・、自分か。もしかしてその自分が禍の元なのかもしれないんだぜ?」
やや自嘲的な笑いをするイリア・・・、その表情は憂いが漂う
「・・誰も貴方を禍と思ってませんよ。むしろ必要とされている・・」
「・・・?」
「自分が何者かでありそれで悩む者など数限りなくいます。
それでも自分を頼ってくれる、愛してくれる人物がいるならばそれでいいんじゃないですか?
それに例え貴方が禍だとしてもそれを乗り越えられるだけの力を周りは持っている
・・っと思うんですがね」
「・・やれやれ、口説き文句か?」
「ナンパ師の戯言ですよ」
今度はフィートが自嘲的な笑い、彼もそれなりに歩んできた道がある
当然、それはなだらかなものではない・・
「・・ありがとよ、少しだけ気が楽になった・・」
今度は曇りのない聖女の微笑み、フィートは彼女の心の内が少し見えたような気がした
「どういたしまして。まぁ身体は大事にしてください、
至高の肉体美はそうそう肉牙にかけられてはいけないものです」
「なんだよ、んな理屈・・」
「ま〜、でも無償でってのも何だか惜しい気もしますしね。報酬を要求していいですか?」
「なんだ?結局ヤるのか?」
「違いますよ、あの力を失った夢幻虫。僕に譲ってくれませんか?」
突如思いもしないフィートの提案、イリアさんそれに一瞬思考回路停止・・
「・・は?何に使うんだ?っうかもう『門』は開かないぜ?」
「そんな機能どうでもいいですよ。まぁ部屋番くらいしてくれるでしょうし〜・・
蟲って・・いいんですよね〜・・・画になりますし・・」
途端に少年の顔に影がさし超濃密な邪気が・・
「何考えてんねん、手前・・」
「なぁに、見てくれに惑わされる世の女に天誅ってわけですよ♪
まぁ別に酷い目を合わせるつもりはないですよ。せいぜい相手を驚かす程度ですし・・、
まぁ僕が嫌われたのならばイリアさんの所へ渡すって言いますよ。
アレも結構知能は高いらしいですから」
「・・まっ、お前のところに預けておくよ。っうかそれ以外のことに使いそうだけど・・」
「あはははは・・、まぁそれは置いておいて。あいつの名前をつけてくださいよ?」
「・・俺が?」
「だって、イリアさんが言わなければ結局は夢幻虫だって
封印されてお終い・・だったのですからその権利はありますよ」
「・・・そっか。じゃあ〜・・・・・・『アニマ』にしておいてくれ」
アニマ・・霊魂、生命・・そして・・
「男性の内にある『女性』、・・・随分と深い名前ですね?」
「夢幻虫を飼うってのもお前の中のそれがそうさせたのかもしれないからな」
「・・わかりました。しかし・・アニマ・・そしてあの龍の姿・・。
・・・・・・・いやっ、止めておきましょう。
そもそもそんな長期間存在を維持できるほどの魔術師なんていませんですしね」
「・・・やれやれ、随分と推理が好きだな?」
「性分ですよ。それに、貴方はイリアさん、妾龍にして誰からも愛される戦聖女・・
僕にとっちゃそれで十分ですからね。それじゃあ僕はこれで・・・」
そう言うと格好をつけながら右手を上げる・・そこに握るはイリアが履いているはずの紐パン
「えっ?うおっ!手前フィート!何時の間に!?」
「『法王』の名は伊達じゃないのです♪ではお大事に〜♪」
駆ける法王・・怪我人なイリアは追うこともできず
裸にシャツ一丁な危険な状態にて呆然としていた・・


ある程度身体を動かせれば後は魔法にて回復できるもの・・
拘束(?)されているクロムウェルよりもイリアの方が早く回復したり。
まぁそんなわけで一応はクロムウェルの様子を見にイリアは騎士団屋敷へと赴いた
「ああっ、イリアさん!もう身体は大丈夫なのかい?」
屋敷のホールにて書類片手に歩くスクイードが彼女に気付いた
「よぅ、まぁ上々だ。それよりもクロムウェルは?屋敷で静養しているって聞いたけど・・」
「あ・・・ああ、詳しいことは僕にもわからないんだ・・・、これが・・・」
バツの悪そうなスクイード・・・
「わからない?ああっ、なんだか開かずの間になっているんだな」
「そうなんだ、ノックしても入ったら駄目だし緊急で入ろうとしたら
鬼のような形相で怒り出すんだよ・・、
しばらくは指示は会議室で受けている状態にまでなったんだ」
「・・た・・・タイムがか?」
彼女らしからぬ行動にイリアも唖然・・

「それだけじゃないですよ、お二人さん。
夜勤の騎士に聞いたんですけれども夜な夜な団長執務室から呻き声が聞こえるんですって・・」

間を入って話しかけてくる短めの金髪な受付嬢のサリーさん・・。
一時期、某ナンパ師に捨てられて無断欠勤が続いていたが
最近ようやく復帰した強い女性である
「な・・何をやっているんだ・・?」
「僕達はあまり考えたくないんだけどね・・。
ともかく、イリアさんなら団長室に入れると思うから〜・・様子を見てくれないかな?」
「ああっ、わかった。ちょっと恐いけどな・・」
トボトボ歩き出すイリア、それにスクイードはふと思い出し
「ああっ、イリアさん」
「んっ?」
「この街を救ってくれてありがとう、騎士団を代表を礼を言う」
静かに敬礼するスクイード・・、イリアは振り向きもせずに軽く手を上げてそれに応えた

・・団長室・・

”入室禁止”の張り紙が張られており中々にもって不気味な雰囲気を出している
「・・お〜い、タイム。入るぞ〜」
その場で立っているばかりでは仕方ないのでノックして声をかける・・のだが
・・・・・・・
返答なし。しかし中で何かが動いた気配は確かに感じた
「んっ・・、タイムはどこかに行ったのか。・・入るぞ」
意を決し中に入るイリア・・、扉には鍵がかかっておらず意外にすんなり開いた
「イ・・イリア・・、助けにきてくれたのか・・?」
団長室のソファに丁寧に寝かされているクロムウェル・・、
前のテーブルには包帯だの食事だの色々色々置かれている。
一見すると全く普通なのだが唯一おかしいのがクロムウェル。
元気がなさ過ぎる
「ど・・どしたんだ?」
「タイムが・・看護に目覚めて・・手厚すぎる介抱を・・」
「おいおい、結局は熱烈ってか?」
「あの行為さえなければ俺だって別に嫌がらねえよ」
「あの・・行為?」
無言で包帯だらけの手で指差すクロムウェル・・その先には・・尿瓶・・
「・・・・・・・・・、タイムが?」
「・・(コク)」
「お前を?」
「・・(コク)」
「仲良いな〜、羨ましいよ♪」
「どこが!!?恥ずかしすぎるぞ!!
オマケにあの野郎そんな俺の顔をもっとみたいとか言って飲み物に利尿剤を・・(ヨヨヨヨ・・)」
「っうかあいつをそうさせたのはそもそもお前のせいじゃないのか?」
「それを言われると反論できん・・。
っうかイリア、回復する魔法とか使えるんだろう?いますぐ俺を全快しておくれ・・」
「今すぐ〜?っうか他人回復させるのってめっちゃしんどいんだぜ?」
「頼む!今すぐこの地獄から俺を解き放ってくれ・・」
「なんかまずい気がするが・・後は知らねぇぞ?」
そう言うとイリアは顔を引き締め魔方陣を展開・・そして・・



一方、その看護団長は・・
「これでよし、帳簿の記録はこれで問題ない」
「・・・ふむ、すまないな。どうも字を書くのは苦手だ」
小書庫のテーブルにてタイムとシトゥラが帳簿の記入の確認をしている
「白狐族には字を書く習慣はないのか?」
キチンとしたスーツ姿のタイム・・、顔つきも凛々しくこれが団長室にて奇行を行っているとは
誰もが思わない・・、いや、思いたくない
彼女達はシトゥラの記録に多少の不備があったということで
それの修正をするためにわざわざタイムが指導していたのだ。
「そうだな、書面に残す事は重要事だ。
戦い家族を守る私にとっては字を覚えども書くことは滅多にないし・・・そもそもこことは字が違う」
「・・ああ・・それもそうだな。でもその割には違和感なく書けているな」
「スクイードに毎日教えてもらっている、ふふっ、この歳で字を覚えるというのも面白かったな」
「・・中々いい環境だな?」
思った以上に仲の良いシトゥラとスクイードにタイムも思わず微笑む
「そうか?スクイードはクロムウェルほど積極的ではない。
騎士だからか男だからかそう言うことは抵抗を持っているからな。その点はタイムが羨ましい」
「な・・・なにを・・!」
あからさまに慌てるタイムにシトゥラも面白そうに笑う
「冗談だ。さて、これで以降は間違えないだろう・・すまないな、忙しいのに・・」
「い・・いや、では私はこれで」
シトゥラの悪戯じみた笑いにたじろい、タイムは慌てて書庫を後にした
「・・ふふっ、騎士というのは強情・・っとでも言うモノなのか」
帳簿を片付けながらシトゥラは同居の男のその団長の様がおかしくなり静かに笑った

廊下を歩くタイム・・、目指すはクロムウェルが寝ている団長室。
ついシトゥラに話をしていて彼に薬を投与するのを忘れていたのだ
「いけない・・私ったら・・」
いそいそと団長室の前まで・・、しかしちょうどその時・・

ガタン!

急に中から何かが倒れる音が・・
「??・・クロ・・ソファから落ちたのかしら・・」
気になって迷わず部屋に入る・・、そして
「!!!!!!」
「タ・・タイム!!!!」
タイム硬直・・、そこには包帯を取ってとりあえずは元気そうなクロムウェル・・
全身汗まみれでふらついていたが身体の傷は嘘の様に消えている
そしてソファに倒れるはそれ以上に汗を流し情事の後を連想させるが如く息を切らせる
イリア・・
その状態にて導き出される応えは・・

@ イリアが来室にクロの変態パワー全開に新陳代謝が超活性。欲望をイリアに・・

A イリアが霊薬(エリクサー)を持ってきてクロ全快、欲望をイリアに・・

B クロ、実は何げに気孔で回復してきた、なんだかんだあって欲望をイリアに・・

判決・・有罪(ギルディ)
「・・・・・・・」
沈黙の女団長、静かにイリアを見つめている
「タ・・タイム、なんだかすご〜い勘違いしている気がするんだけど・・
ほ、ほらっ、イリア!ちゃんと説明してくれよ」
「あ〜、疲れた・・・。ったくクロムウェル、無茶言い過ぎだぞ?俺だって病み上がりなんだからな」
息の荒いイリアの発言・・。タイムの顔に蔭りが刺しゆっくりと自分の机に歩く
「おい!誤解を招く言い方は止めろよ!っうかな、タイム、これはイリアが魔法で・・」
「クロ・・」
「は・・はい!」
「斬殺と焼殺・・どっちがいい?」
ニコリと笑うタイム、眩しい笑顔だがものすんごい殺気・・・
そして机の下に忍ばせた陽鋭剣『ネェルブライト』を抜いちゃっている
黄金の刀身が物騒にも輝いておりクロムウェルもタジタジに・・
「だ・・・だから!!これは魔法の治療だって!!イリアがこうなったのは魔力を消耗して・・」
「あ〜、腰痛い・・」
「イリア手前!誤解招く事を言うなぁぁぁ!!!」


「・・この・・浮気者ぉぉぉぉぉぉ!!!!」


・・願わくば、彼の魂が救われますように・・




予想外の事態が起こったものの別れはくるもの・・
十分な休息を取りイリアが帰る日がきた
「おいおい・・、なんだか大仰だぜ?」
騎士団屋敷前、戦聖女の見送りに集まった騎士達・・・、それは事務を含めて全員が集まった
「まぁ、そんだけ世話になったってことだろう?
訓練してこいつらの実力も多少は上がったみたいだしよ」
一番前で話すは顔中まだ引っ掻き傷やらの痕が痛々しいクロムウェル・・
正しくタフネス
「ありがたいんだが・・、あんま見送られるのは苦手なんだよな〜、今生の別れっぽくて・・」
「まぁまぁ。ほらっ、『アニマ』も別れを惜しんでますよ?」
フィートが手に持つ甲虫『アニマ』がモゾモゾ動いて悲しさをアピール
「・・・そうか・・、まぁエロいご主人だけど元気でな」
聖母のような微笑みを浮かべ、アニマの頭を撫でる。
言葉はなくともこの聖女と蟲には通じある何かがある
「なぁ、イリア。ライんところにゃ表立ってはいられないんだろ?
いっそのことルザリアで住んだらどうだ?」
突如クロムウェルがそう言い出す。それにイリアはハッと驚き・・、やがて頭を掻きながら・・
「・・・・・・、気持ちはありがたいが、俺にだって帰る場所があるんだ。・・悪いな」
「そっか・・。じゃあ仕方ないな」
「それに、俺がいたらタイムと大変だろう?嫉妬の炎がメラメラと〜♪」
「・・そ・・そんなこと・・ない」
しどろもどろしつつなんとか気丈に振舞うタイム・・だが後の騎士さん達はもう殺気全開!
当人は後からの強烈なプレッシャーに足が勝手に貧乏揺すりをはじめちゃっている
・・本能的に逃げようとしているのか
「まぁ、仲良くな!じゃあ皆!あばよ!!」
「おう!ライ達によろしくな!!」
クロムウェルとフィートは軽く握手をし、騎士団の面々は敬礼で彼女を見送った
・・・一人の戦聖女が去ったが彼らの心には大切なモノが残ったようだ


・・・それより数日・・

とある屋敷のとある部屋。
時は深夜だがその部屋の主の男はまだ起きておりもの静かに酒を飲んでいた
「・・、帰ったか」
「ああっ、ただいま」
部屋に突如声がしたかと思うとイリアがそこにいた・・。
「どうだった?状況は?」
「俺の口から言わすか?うまく解決したよ。・・『夢幻の壷』は力を失いナンパ師の居候になった」
「・・悪用しねぇかぁ?」
「しないと・・思う。まぁ・・強く言えないのが辛いところだけど・・」
苦笑いなイリア・・断言は・・おそらく誰にもできないだろう
「ははっ、だろうな。まぁ座れよ・・。一杯やろうぜ」
「俺と・・か?珍しいことを言い出すもんだな」
「まぁ、たまにはな。・・・だが、お前、なんだか機嫌良さそうだな。おい」
「ふふっ、さあな」
静かに椅子に座り杯を交わす二人・・
だが・・何時の間には部屋には男一人となっていた


<<back top next>>