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「彼と彼女と妾龍と・・」  第五話


「夢幻の壺」もとい夢幻虫を捕獲できたことにより、直接探索に関っておらずとも
ルザリア騎士団では事件解決の安堵の空気が流れていた。 
しかし・・・
今7人と夢幻虫がいるのは、騎士団敷地内にあったうち捨てられたかのような小屋。
場所が場所だけに本屋敷から離れている上、周囲にも人気はない。
「何でまた、こんな・・・」
 「モノがモノだからな、用心するに越したことはないって事。」
ブーたれるクロムウェルを筆頭に怪訝な面々へイリアの話を要約すると
先に夢幻虫を確保していた者は、その所有物から魔導士くずれらしかった。
当人はもう既に死んでいるだろうが、その者が夢幻虫を用いたと考えれば、
夢幻虫の話は裏で知れ渡っていると考えていい。
そして、事件があった屋敷から既に他の騎士達が調査を後日に撤収してしまった以上
もう騎士団が夢幻虫を捕獲済みと考えるのは易い。
 「騎士団を襲撃するバカがそう居るとは思えないけど、神に等しき力が手に入る
と勘違いして誰もトチ狂わないとは保障できないだろ?
まっ、何もなかったらなかったで万歳、後はコイツの力を封印して事件は解決♪」
「んな、面倒な・・・やはりこんな物騒な奴破壊してしまったほうが
いいんじゃないのか? 最初に人も殺しているんだろ?」
カサカサ と夢幻虫が足掻き何か抗議らしきものをしているがそれを片手で嗜め
 「確かに・・・な。でも、失敗作だからと己を破壊しようとする創造主に対し
足掻き逆らった処でコイツは立派な生物。生物が己の身を護る為に相手を殺して
しまったのならしょうがない。己の身を護るため以外は被害も出してないしな」
「そんな虫相手に・・・」
イリアの考えを理解できるほど柔軟性がある人間はそうはいない。
故に、スクイードを筆頭にやや不服な者も・・・
 「なら、例えばお前はシトゥラが獣人だからと差別するか?」
 「・・・するのか?」
「するかっ!! それとこれとは話が違うだろっ!!」
 「大して変わりはしないさ。コイツが自由を求め確固たる意思を持つ以上
俺たちもそれを尊重しなけりゃならない。 でなければ・・・」
「・・・ふんっならば仕方ない。コレも騎士の務め」
床に腰を降ろしたイリアとクロムウェルを始めに、他の面々も腰を降ろして休み始める。
「しかし捨てられていたような外見と違い、随分と片付いているな・・・」
 「ああ、毛布も人数分用意してある」
 「こっちには食物と飲物もあるわよっ!!?」
 「・・・、こんなこともあろうかと用意しておきました(ニヤリ」
用心深い上に用意周到なイリア。もはや、脱帽ものである。
 「・・・・・・、処でフィートの姿がないな。」
「!!? あんニャロめ、逃げやがったなっ!!」
カサ・・・カサカサ・・・カサっ
なんだかんだありつつそれでも小奇麗な小屋で皆くつろぎ休み、夜は深けていく。
何も起こらぬよう願いつつ・・・。

深夜、仄かな灯りの中で眠る面々。
抱き着き相方の乳間に顔を埋め、それを抱擁して眠るものありーの、
大剣をささえに壁を背凭れ身体を起こしたまま眠りるものありーの、
それを膝枕に歯切りし防止に何かを咥えさせられたまま眠るものありーの、
普通に毛布に身をくるんだままそのままに眠るものありーの・・・
その中で座ったまま起きている者の影があった。その前には夢幻虫が魔方陣中央に。
そしてその周囲には浮遊する幾つもの魔導の表示ディスプレイ。
その者とは、半裸当然に上半身は胸を固定するよう布を巻き付け
後は巻きスカート姿で胡坐をかくイリア。
扇情的にシットリと肌が汗を帯びている処をみれば暑いのだろう。 と
「・・・まだ起きてるのか? ってか、その格好は何だ?
 オニーサンは許しまセンヨー―!!!」
 「あ〜〜はいはい芸風は置いておいて、ちょっと・・・な。」
御茶目にゼスチャーで置いておいて、イリアの目は再びディスプレイへ。
「無視かよっ!!? んで、何だ、それは?」
 「ん〜〜、コイツの解析結果とシュミレーション等々々」
起きたクロムウェルはイリアの背後からソレを覗き込む。・・・石鹸と花の甘い香りが。
「・・・・・・、・・・・・・・、・・・さっぱり分からんっ!!」
 「ってか、素人が見てわかるもんじゃないし!!!」
「うぬっ、・・・ぬぅ・・・」
仕方がないので、クロムウェルは女の柔肌鑑賞おば。
艶な肌はそれだけでもう、それだけで御飯3杯は軽くイケます♪
 「・・・・・・、折角事件が解決たのに、
俺の我侭に付合わせて皆には悪いことしたな。」
「・・・。 まぁ、世話になった上に最後の最後まで何もやってなかったし。
それに、イリアの言い分じゃまだ終ってないだろ? 
今更、水臭い事言うな。仲間なんだから。」
 「仲間・・・か。 そう言ってもらえるとは・・・な」
「んあ? まさか、虐げられているとか・・・って、あの面々でそれはないか・・・」
 「虐げられちゃいないよ〜〜。 寧ろ、アルシアにゃ愛されてるし」
「え゛!!? ま、まさか・・・(汗」
クロムウェルの脳裏に展開するのは百合に耽美で極濃な世界
 「・・・それ、三割程度で正解ね」
「な、なぬっ、三割ですと!!? ・・・女同士でなんて非生産的な事を(ハァハァハァ」
 「三割でソレかいっ!!! 鼻息荒すぎだ。 殴るぞ」
「・・・裏拳撃ってから言わないで(泣」
そして再び部屋を支配するのは静寂。しかし、先ほどと違い起きているのは二人。
 「・・・はぁ、ふぅ〜〜〜〜(疲」
「またダメだったのか?」
 「まあ、な。コイツが壺を媒介に擬似生物たるのは魔導的に結びついている
「門」の御陰。それを離そうとすると如何してもコイツの命も引き摺られて・・・
だから封印しようとするとコイツ自身も封印されてしまう と。」
「・・・・・・、・・・・・・ふむ」
 「理解出来てないなら頷くなっ。 まぁ、フィート待ち?」
「・・・俺がいうもの何だが、フィートに頼みごとすると身体要求されぞ?」
 「俺の身体程度で希望を適えてくれるなら幾らでもヤらせてやるさ」
何を思いその台詞をはいたのか、妾龍と謳われた戦聖女の顔に浮かぶのは憂いの表情。
それは儚げでいとおしいまでに美しく・・・
「そ、そんなこと・・・・・・そ、その前に俺がぁっ!!!」
瞬間、シンボータマランボー状態に切れたケダモノに押し倒され一寸驚きなイリアは
布の支えなど如何程のものか崩れる事がない豊かな艶乳を上に、間に立てられた男膝で
股を閉じる事もするされず、仄かに浮いた腹筋に美しい臍の腹を無防備に曝し・・・
 「・・・・・・ふぅ、ホントに望むなら止めはしないけどな・・・泣くぞ、タイム」
その名に、ケダモノから人へ。 瞬間
「!!?」
空を舞ったクロムウェルはズンガラガッシャンと破壊音を立てて戸を破壊し、外へ。
その音に不覚とばかり臨戦態勢を取った皆が見たのは、
格好そのままに胡坐をかきカサカサともがく夢幻虫を片手で弄ぶイリア。 
凡そ、奇襲を喰らった感では・・・
 「・・・・・・、クロムウェルが寝惚けて「タイムーっ」だってさ」
「へ、変態めっ!!!」
 「・・・クロムウェルだからな」
 「まっ、兄さんらしいといえば兄さんらしいわね」
「それに気付かないほど深く寝ていたとは・・・」
一名、生真面目に論点が合っているのか間違っているのか
安眠妨害を非難する面々に対し苦笑を浮かべるイリアの心中を察せる者はいなかった。
己の存在に不満はない。寧ろ感謝までしている。しかし、生を渇望し求める事はない。
それが愚問と、元たる彼の者にそれが許されていたとしても・・・
そして慰めるが如くじっと戦聖女の顔を見る夢幻虫。
追う者、追われるモノ。裁く者、裁かれるモノ。生い立ちからも対照的な二者。
 「己の存在にすら疑問を持つ俺を慰めてくれるか・・・。何とかして助けるからな」
カサカサ・・・カサ・・・
傍目から見ても戦聖女と擬似生物 夢幻虫の心温まる交流。 と、それをぶち破り
「皆、お客さんだぜっ!!」
一体何処まで吹っ飛ばされて来たのか全身に枯枝や枯葉を着けたクロムウェル。
彼がお客という以上、お客なのだろう。 所謂、招かざれぬ客 汝の名は敵。
準備ソコソコに皆慌て表へ。しかし、何処にもその姿はなく・・・
・・・いないのではなく、予想以上に大きすぎたのだ。 月を背に影となって。
 「あの大きさに気配を感じないとは・・・」
 「・・・・・・安心しろ、シトゥラ。 コレが奴の気配だ」
最初はいぶかしんでいた白狐の麗女も、言われ気付く。そのことに。
目の前にいる皆の気配は確かに存在する。
しかし、人が確実にいるであろう騎士団の屋敷の方からは存在しなかのよう・・・
 「・・・気配そのものが感じない?」
 「喰っているだろうさ。自然に零れる生命エネルギーまでも貪欲に・・・」
まだ発見されたとは思っていないのだろう。 巨人は音もなく進み続け全貌が明らかに。
腐った肉の塊のような人型で要所要所に無数にあるのはおぞましいばかりの口・・・
「・・・奴は俺とフィートで消滅させたぞ!!?」
 「何処に肉の一片でも残っていたんだろさ。餌はあの場に腐るほどあったからな。
 現にほら・・・蜥蜴肌の上に出鱈目に彼方此方に刃まで食み出して」
「笑い事じゃないぞ、あんな怪物相手に」
メキャ
 「黙ぁれ、凡騎士。流石にアレは俺も予想外だったんだ。
全く、神のなりそこないだけに性質が悪い・・・取り合えず、場所を変えるか。
シトゥラ、カチュア、奴 劣神魔が中央に位置するよう八星方陣を描いてくれ」
 「「了解っ!!!」」
策も聞かず本物の忍者さながら速攻で飛び出す二人。
そして戦聖女 妾龍が呆然と立ち尽くす男三人に見せる笑みは、意志の強さそのもの。
 「さて、男どもにも決戦準備のためにキリキリ働いてもらわないとな。」
「・・・。 さぁ、お前等、自分の彼女だけ働かせて自分等はサボるつもりかぁ?
キリキリ働け、キリキリ、下僕どもっ!!」
 「お・ま・え・も・なっ!!!」
イリアのローリングソバットで再び吹っ飛ぶクロムウェルを合図に
二騎士は動き出した・・・・・・
因みに八方魔方陣には二つ正方形を45度ずらす重ねるものと、一筆書きにするものがある。
この時、イリアが指示したのはその両方を呪紐を用い重ね描くこと。
光と闇の四行は巡り八行となりて刹那の悠久に、神と精霊と人をつなぐ・・・
 「イリア、終ったぞ」
 「出来たわよ」
 「ご苦労さん。 では早速、いってみようかっ!」
二人が戻って来き、イリアは詠唱開始にその足元に走るのは八星方陣。
其処から吹き上げる力に裾をはためかせ舞うかのように揮う指は詩に合せ
更なる立体円筒型魔方陣を描き・・・
 「・・・・・・、『凍結』『転送』っ、イグニッション!!!」
揮う両腕に、反応させる間もなく劣神魔を覆う結晶状の結界。
完全に覆いきり内容物を凍結したそれは、諸共頂点より燐光に空中へと崩れ・・・
その場から嘘のように消滅してしまった。
そして対象が対象だけに、イリアは卒倒しそうな勢いの這々体で地に座りこみ
情事で尽きてしまったかのように息荒く喘ぐ。
それこそ直視に男族は前屈みしかねないほどので。
「もう・・・終った、のか?」
 「・・・、まさか。 被害が出ないよう都市外れの人気ない処に送っただけ。
向こうに存在がばれてる事を悟られてなかったから、すんなりいったが
・・・これでもう激戦は必至だな。『凍結』が解け次第死に物狂いで・・・」
「・・・あのまま消滅させてしまえばよかったのでは?」
 「・・・ざっと見、身長は人の6倍」
「「「「「???」」」」」
 「って事は、多少誤差あれ質量は凡そ36倍。それだけのモノを
消滅させるにゃ一体どれだけのエネルギーが必要よ?」
「「「「「???」」」」」
身体が資本の方々に小難しい話をする事自体間違いである。まぁ、魔導が決して
便利に摩訶不思議な力ではなく立派な技術であることさえ分かってもらえば・・・
・・・一部除き、あえて誰とは言わないが面々の顔を見ているとそれすら理解出来てない
気がするのは気のせいか? 尊敬と憧れに目を輝かせてるし・・・
兎も角、イリアは小瓶の霊薬を呷り自身に回復魔法を施し気合一発。
 「キース、その旨の連絡は?」
「ああ、・・・了解した、と。 でも、皆生きて帰ってきてくれと伝言を承った。」
その旨の連絡とは、地域住民への警戒避難は勿論の事、この6人が
勝てなかった時に備え、一切の支援を行わず敵の分析に徹すること。
つまり、場合によっては味方の見殺し。 あのタイムに対して辛い判断・・・
 「スクイード、準備は?」
「栄養剤から傷薬,カチュアの鋼串まで馬に詰めるだけ」
 「良し。 ・・・この戦い、文字通り命がけになるだろう。
命が惜しいやつは来るな。 そんな奴、邪魔にしかならない。
それでも戦えるというなら、来い。」
預かった者の役目にこのときばかりは厳しく・・・その裏に確固たる優しさ。
今まで見せなかった厳しさに、一瞬押し黙る面々。それでも斬込み隊長はクロムウェル。
「どうせなら、奴を今度こそ消滅させて皆生きて帰るぞ って言ってくれよ、イリア」
それでも悪戯少年のような笑みに斬込み隊長はクロムウェル。
「客人や何でも屋が頑張っているのに我々が頑張らないわけにはいくまい?
我等、ルザリアの騎士を侮るなっ!!!」
 「ふふ、無理するなスクイード」
「無理なんかしてないっ!! これは、武者震いだっ!!」
スクイードが叱咤するのは己自身。騎士たる者、退くことは許されない。
「端より覚悟は出来ている。 寧ろ、ココで倒すことが出来ねば大被害は必至。」
 「まっ、そういう事だから・・・バカ兄貴だけに任せてもおけないし、仲間だしね。」
 「皆・・・。・・・よしっ、出撃。 絶対生きて帰るぞっ!!!」
応っ!! と一同は出撃した。 劣神魔との最終決戦へ・・・

一同が決戦場へ到着した時、劣神魔を封印した結晶状の結界は
既に振動し、罅が走り始め・・・瞬間、砕け散る結界に距離を越え襲い来る吐瀉物。
 「チクショウめっっ!!!」
キィー―――――――――ン
イリアが皆より前に出て手を翳し張った大障壁に圧しかかる。
そして、障壁がなく吐瀉物が直接掛かった地面は腐り解け・・・
障壁にかかる負荷に魔力が逆流。イリアの神経を 肉体を焼き、腕から煙が
 「う・・・ウオオオオオオオオオオオオッ!!!」
戦聖女の戦叫 もはや咆哮にその先から黒曜石の如き美しさの鱗が生え以上に四肢が
甲を装着したかのような狂暴な龍のものへ変化。その攻撃を凌ぎ切った時 妾竜の姿は
字名の通りに半龍人で勇ましく、それでもオーバーロードで全身より立上る湯気。
それが負荷が如何ほどのものか語る。
「イリア、その姿・・・」
 「ああ、身体が耐えられずこうならぜざるえなかった・・・」
と、様子見に後ろへ向けた瞳は金色の龍眼。
「・・・ライと同類?」
 「今はそんな事より・・・来るぞ、散れっ!!!」
瞬後、その場をはぎ払う腐巨剛腕。
辛うじて、跳ね,伏せ,後飛びに避けたが・・・当たれば一撃死は必至か。
「出し惜しみせずにいくぞっ!!!」
イリアとクロムウェルの雷撃襲「ライトニングブレイカー」が、シトゥラの幻炎攻撃が
スクイードの斧槍とキースの大剣の斬撃が、カチュアの鋼串が唸るっ!!!

「喰らえ必殺の、ラぁーイトニングっボルっっ・ザっ・セイバぁークラぁーシュっ!!!」
へにょん
理論威力ならば奥義必殺技で、雷撃襲ですら霞むほどなのだが・・・
今のクロムウェルのソレはマッサージにしかならない。
 「馬鹿タレっ!! もっと雷を捻り出し、固め上げて、それでブッた斬れっ!!
 こんな風にっ、『閃・雷・衝・斬・撃』っ!!!」
斬っ!! と、その龍腕から生まれ伸びた雷の超大太刀は理論威力そのままに
劣神魔の手首を斬り落し、燃やし尽くす。 その程度では直ぐに再生されてしまうが。
「んな無茶な・・・」
 「ツベコベ言わずに、お前は頭を使うより身体で覚えろっ!!
 俺に合わせてもう一発撃ち込めっ!! 次は成功させろっ!!」
「イリアさん、キビシぃー――っ!!  ならば、やらば諸共っ!!!」
 「ライトニングボルトっ!!」
「ザ・セイバぁー」
「「クラぁーシュっ!!!」」
二人が生み出した雷の超大太刀は途中で寄り集まり、空気中より更なる雷を集め
相乗以上の威力でもって劣神魔の片腕を破片すら残さず焼滅させてしまった。
「す、スゲェ・・・なぁこの雷を呼び水にすれば大気からもっと雷を
奴を葬り去れるだけの力をあつめられるんじゃないのか?」
 「理論的には可能・・・だけど、今の俺は出来ない。 変身前では自滅する。
せめて奴が完全に神になってくれれば・・・神討つ刃もデカい怪物相手では形無しか」
「ならば、俺がやるっ!!」
 「出来なくはないが・・・確実に耐え切れず、身体が崩壊するぞ」
「ふっ、これでも身体だけが自慢なんでね」
 「・・・・・・、自滅するため教えたわけじゃないからな。
  生きのびろ、絶対」
イリアの指示に皆、二人から劣神魔の意識がそれるように動く。
そして、イリアの呼掛けに何処からともなく飛んで来て向かい合うのは夢幻虫。
 「『夢幻の壺』、否『夢幻虫』っ、この妾龍イリアに力をよこせっ!! 
間、奴を足止め出来るだけの・・・この身を半神と成せるだけのっ!!!!」
求めに、夢幻虫から放たれる極彩の虹光。 それが戦聖女 妾龍イリアに注がれ・・・

某所、とある屋敷の一室では平日の深夜にも関らず眠れない男がいた。
あるいはそれは予感だったのか・・・時間潰しに晩酌すること暫し、それに
「くっ!!?  来たか・・・」
活性化し、双眸が金色の龍眼へ。 開かれたパイプラインに流れ出すのは
内なる破壊神 戦龍神の力。  本来なら四の鍵でもって引き出すべきもの。
しかし、男と違い精霊に近い彼女ならばその身体のみで使いこなせるだろう。
「我が一部 我が代理人、この力は俺のもののみならず
同時に汝のものでもある。 使い、今すべきことを成せ」

比類なき猛き魂、それに応え耐えられるよう器が剣を以て変わる。
四肢を胴と同じサイズに無骨でアンバランスであっても、より強固で狂暴に。
臍や胸など柔な要所以外、戦闘スーツみたく頬まで覆いつくす黒曜石な美しさの龍鱗。
露出している白肌にも刺青の如く走る魔導回路。
米神から天を突いて生えるのは龍角に、朱の艶唇から零れる獣牙。
黒髪もより長く伸び首後下で寄り合さり鱗が生え龍尾へ。
その背から生えるのは剣晶片を幾重に集めたかのような龍晶翼。
そして身に纏うのは、蜘蛛女神の糸によって作られた戦闘服が転じた炎と水の羽衣。
砕ける硝子の様な音と共に、ここに『戦龍神妃』イリア、転・臨。
 『・・・数多の神が敵となろうと、我は汝達に祝福を』
その唇から紡がれる言葉 言霊に空中から零れた燐光が五人に吸い込まれ・・・
「身体が回復した? ありがたいっ!!」
クロムウェルの声に戦龍神妃は振向き頷く。声発せずとも一撃超必殺の準備へ入れ と。
だが、それだけの力があれば当然に劣神魔の注意を引き、
神々しいまでも美しく、確固たる理性を有しているのか。
と憎悪を抱いたのだろうか、両手でもって捕獲しようと
 『・・・貫けよ、光』
かざした右手より放たれた無数の烈光は曲線を描き劣神魔を貫き圧す。さらに
 『・・・喰らえよ、闇』
かざした左手に空から現れた漆黒の弾が劣神魔の肉を抉り消す。
 「イリアさん、すっご・・・(汗」
 「圧倒的だな。これなら・・・」
女性二人は余裕綽々に、もはや勝ったも当然。しかし男二人は返って冷静に
「確かに圧倒的だが・・・それだけ削っているだけだ。致命傷になってない」
「・・・丸で、消える前に烈しく焚ける蝋燭の炎のようだ」
 「「!!?」」
身を変貌させてまで神の力を宿し人の意志を保っているのである。
その負担、魂が消滅しそう程度では語れず、推して知るしかない。
「正に、客人や何でも屋が頑張っているのに騎士の我々が頑張らないわけにはいくまい」
「果たして何処まで力になれるか分からないが・・・それでもやらねばっ!!」
少なくとも主攻撃に対し嫌がらせ程度に攻撃にはなる。だから比べ力なくとも刃を揮う。
志のために、志を託すため微力を尽して・・・
・・・・・・・・・・・・
クロムウェルは死角で力を蓄え、空駆ける戦龍神妃と巨人な劣神魔が攻防を繰り広げ
その足元でも熾烈な激戦は繰り広げられていた。
シトゥラの支援に二騎士の奮う斬撃は炎真空刃となって腐肉を斬裂く。
そしてカチュアもまた、爆裂火炎符と鋼串を用いた忍手裏剣術「牡丹」と「五月雨」を
合わせてた「五月雨牡丹」を射ち込んでいたが、幾ら狂暴ケダモノ娘でも無い物は射てず
腰後ろに装着したホルダーの鋼串が尽き、空ぶる指。
 「えっ、あ・・・」
その隙が、迫る極太触手の存在を一瞬忘れ・・・地を撃つそれに暴風に捲込まれた
若葉みたく舞い上がった小さな肢体は誰にも受け止められる事無く地に叩付けられ・・・
「っ!!?」
「!!?」
キースに生じた隙に加え一角から崩れたバランスに衝撃波であっても致命的な一撃で
諸共吹っ飛ぶ二人。 人の身体は可也の速度をもてば凶器となる。
受け止めようとしたシトゥラも疲労に見誤り・・・地に伏し完全に沈黙する四人。
四人に腐肉の触手が迫る。 が、
 『傷つき力尽きた騎士達に健闘の祝福を・・・そして安息の地へ帰せよ』
それを戦龍神妃が許すはずもなく、直前で光繭に包まれて彼方 騎士団の屋敷へ。
だがそれだけの事を行えば戦龍神妃ですら生じる隙に
バンっ
と蚊蜻蛉みたく諸手打ちで叩き潰され・・・ておらず、その両腕でもって支えていた。
龍腕,龍脚は決して飾りではなく狂暴なまでの武器。それは攻撃によって証明される。
間を抜けた戦龍神妃は、劣神魔の顔の前に立ち身体に比べ大きな龍脚で一蹴。
今度は仰け反る劣神魔の狂暴な口開ける腹の前に位置し、脇を占め腕振り被りアッパー。
威力に巨躯ですら空に浮く。追い討ちに龍晶翼を展開。そして
 『翼の剣なる羽よ、矢となりて敵を縫い止めよ』
その翼から離れた剣晶は言霊に従い、劣神魔の肉を貫き空に固定。
もっとも、その程度は大したダメージにならず自重で肉を裂いて墜落するのだが・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
皆から護られクロムウェルもまた戦っていた。敵の名は、焦燥。
時間稼ぎの為に皆が決死の戦いを中、己はただ身動きせず力を溜め込むだけ。
皆が倒れ沈黙した時は尚いっそう
・・・俺が戦闘に参加できれば、皆をこんな目に
・・・また、俺は無力なのか。
・・・断じて、否。 目の前の怪物を倒せる術が俺にはある。
そして・・・
暴走牛と呼ばれる闘士が明鏡止水で振り上げる両腕、そこから天へ向かって伸びる雷の剣。
それが臨界へ達した時、次から次へと天より落ち、雷の剣を 闘士を撃つ雷。
「ぐっ!!?」
それでも耐え決して折れず撃つ雷を喰らい己の力とし、更に太く長く成長する雷の剣。
しかし、落雷による衝撃と超過電で肉は弾け血は沸騰し、身体を覆いつくした雷で
金色に輝く身体は崩壊の燐光が零れ流れ・・・
・・・これで終わりにしようぜ、劣神魔。貴様は滅び、俺は生残ってアイツの処に帰る。
「ライトニングボルト・ザ・セイバークラッシュ ・・・ファイナルノヴァ」
クロムウェルは瞼を閉じゆっくり腕を振り下ろすのみ。
狙いを定める必要はない。大気の力を集め、それだけの威力があることは知っている。
巨人の劣神魔を完全に焼滅し余りあるエネルギーがあることを。

劣神魔がそれに気付いた時、既に雷の刃は天に達していた。
知能の有無関係なく、それが自身を焼滅し余りあるエネルギーがあることを。
だからそれを潰そうと迫る前に立つのは戦龍神妃。
 「この世に汝の住まう場所無し。よって、彼の者達の平穏の為に消ね」
その時、今まで言霊しか紡がなかった艶唇から紡がれた言葉は言霊ではなかった。
呆然と立ち竦む劣神魔の前、戦龍神妃と入れ替わりに光が迫り・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
もはや人の技を越え揮われた力は劣神魔を焼滅させ、野を焼き払い広大な原を
石の欠片一つ残さず焦土と化していた。 その起点へ降り立つ戦龍神妃。
目の前には膝立ちに力無く、それでもまだ倒れることがない姿があった。
全身から煙を立上らせるクロムウェルの躯には凡そ生命は見られず・・・
それでも、足掻きしがみ付く微かな命の輝き
 『再び己の脚で前に進めるよう、勇者に祝福を。』
・・・少なくともこれで、命が尽きることはない。当分ベット生活は必至だろうが
・・・まぁ、そこまで面倒みる必要性も感じられないし。

ドクンっ
と、安堵も束の間に 戦龍神妃が焼け野原から感じる不穏な気配。
この際、どうやって生き延びたかは如何でもいい。問題は欠片でも残っていた事。
裕に飛び、降りた戦龍神妃の数歩前には醜くも哀れにプルプルと震える肉塊。
ここまでくるともう憎悪を超えて、その生命力に尊敬の念すら覚える。
しかし、万物を喰らう存在を許すわけにはいかない。 いくら哀れであっても。
そもそも、己の欲望でこうなったわけでもあるから・・・
戦龍神妃はその手に向けて手を翳し
 『汝の存在許すこと適わず。故に焼滅せよ』
・・・・・・
しかし間に言霊は発動することなく、反対に灰へと崩れ逝く戦龍神妃の龍腕。
腕のみならず四肢の全てが、龍鱗が、龍角が、龍晶翼が崩れ逝く。
炎と水の羽衣も元の戦闘服へ。
そして堕ち逝った戦龍神妃の跡で地に残れたのは元である妾龍イリア。
驚愕に見開かれる褐色の瞳。
イリアは意識はあるのに、身体は空ん胴のようにピクリとも動かない。
アメーバの如くのたうつ肉塊は僅かづつながらも体積を増やし、その狙いを定めたものは
身動き一つ出来ない戦聖女イリア。
精魂共に力尽きているとはいえ、御馳走であることは変わらない。
生きながら喰らえばそれこそ、永遠と・・・・・・
必死で足掻き、それようやく反応を見せる指。しかし感覚は全くない。
その間もちゃくちゃくと距離を詰める劣神魔から腐臭と感じるのは気のせいか。
イリアはようやく仰向けに少しでも張って進み距離を取ろうと腕を動かすが・・・
指先が地面を掻くのみで、やっと身体が進み始めたその時
 「!!?」
足首を掴まれた空を舞ったイリアの身体は次の瞬間、背から地に叩きつけられ
肺から空気を押し出される苦しみに霞む視界に入るのは立った肉塊。
・・・つまりコチラが多少なりも回復するのを待っていた と。 踊り喰いするため。
成す術もなく歯軋りしかしようがないイリアへ肉塊の劣神魔が圧し掛かろうと
足元から顔まで影がかかった瞬間
「・・・『狂風』」
消し飛び、視界は月天。そして、気配に上から覗き込むのは当の術者『法王』フィート。
 「・・・・・・、因みに、何時から、いた?」
「イリアさんが先輩の前に立った頃ですね。最初は何か別のモノが召喚されたかと
思いましたが、アレがイリアさんの変じたものだったとは・・・いやはやいやはや
遅れてくるものです。」
 「・・・・・・」
「これでカリ一つですね。回復したら返してください、身体で・・・冗談です。」
 「・・・しゃべってないで、アレを、劣神魔を葬れ」
「はいはい、分かりました。では・・・『風は去りぬ葉は散りぬ」
 「止めろっ!!!」
「い・・・???」
 「それは、破片が散る。 ・・・燃やし尽くせ。完膚無きまでに」
「それは・・・それが出来るのは『ノヴァ・インフェルン』だけ」
今まで余裕がフィートから一切消える。イリアが完膚無きまでに燃やし尽くせと言うならば
その通りにしなければならない。そして、フィートが知りうる中でそれが出来るのは唯一
四大元素と第五元素でもって対象を対消滅させる窮極破壊葬呪文「ノヴァ・インフェルン」
だが同時に操作を誤ればそのエネルギーは天へ捨てられる事無く一帯を巻き込む。
それこそ、この街を丸々巻き込んで
 「ああ。これしかない」
「・・・他にはないんですか?」
 「奴を散らせずに葬りされるなら、何でも・・・」
「・・・分かりました。先輩とイリアさんだけにイイ格好はさせられませんからね。
未完ですが、この『ノヴァ・インフェルン』で。 しっかり抑えこんでみせますよ、
『法王』の名にかけてっ!!!」
 「大丈夫。お前なら、出来る」
「勿論」
ナンパな笑みから一転、決意の漢の顔となったフィートは印を切り
『四の素を集いしもの
第五の力と我が意志に其を無に帰せ!! ノヴァ・インフェルン!!』
素早く描いた魔方陣より生まれるは、光無き光 白き闇。 
しかし違い、脈動で瞬き安定することはなく・・・
「ぐっ!!? これを・・・抑えこんでいた?」
 「いけっ!!!」
「う・・・お・・・おおおおおおおっ!!!」
放たれた白き闇は劣神魔を内へ取り込み、更に拡大。
 「フィート、お前には帰る場所が、護るものがあるだろう」
「っ!!? エネ・・・・・・、鎮まれよ『力』っ」
 「違うっ!! 抑えるのではなく、破壊に向きを」
「そうかっ、『破壊』とは・・・『力』とは・・・」
瞬間フィートは全てを悟り瞬後、フィートの イリアの視界は白く染まり・・・
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