5話  「絶望を乗り越えて」


「・・・どうしたの?リュート」
街道を歩くリュートにシャンが声をかける・・。
なぜかというと顔色があまり優れていないのだ
「うぅん・・、ちょっと・・、熱があるのかな?なんだろう、身体が熱いんだ・・」
「ううん、私は怪我の治療なら得意なんだけど病気にはさっぱりね・・。
次の街で医者に見てもらいましょうよ?」
「そうだね・・、でもお医者さんいるのかな?」
「大丈夫よ。次に到着するのは貿易都市のルザリアよ?
そんな人の行き来が多いところなら医者の一人や二人・・大丈夫よ」
「・・ごめんね。迷惑かけて・・」
申し訳なさそうに耳を下げながらリュート
「・・・・・・・ほんと、君が迷惑かけていることを自覚しているなんて・・・、ほんとに熱ね」
本気で心配しだすシャン・・、かくして次の街で診てもらうことになった・・
・・・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・

「・・・はいっ、大体わかったよ。君も大変だね・・。
獣人の診断できる医師なんてこの街には少ないんだよ・・」
宿の一室を借りてリュートを寝かした後
シャンは街中走りまわって一人の医者を診つけた
なにやらひ弱そうな人だけど快く応じてリュートの診断をしてくれたのだ
「・・・でっ、やっぱり風邪なんですか・・?」
隣で寝ているリュートを見ながらシャン
「そうだね、慣れない長旅で少し疲れたようだ。
別に病気ってわけではないから心配しなくても大丈夫だよ」
「そう・・よかった・・」
いつもはぼろくそ彼の事を言うのだが流石にこうした状況だと気使っているようだ
「数日休んだら大丈夫だろう、その時にまた見に来るよ」
爽やかな笑顔の医師、この笑顔が患者の不安を和らげてくれるようだ
「ありがとうございます・・、あの・・お代は?」
「ああっ、いいよ。それよりも彼についてあげておいたほうがいい。僕はこれで失礼するよ」
そう言うと医者はさっさと荷物をまとめて立ち去った
全く無欲な人物らしい
ともあれ、二人っきりになった中、シャンはリュートの額に濡れタオルを置いてやる
「・・・もう、旅で疲れるだなんて・・。」
「ううん・・シャン・・?」
寝てままであったリュートが目を醒ます
「・・大丈夫?リュート」
「あ・・・、僕・・」
「お医者さんに診てもらった後よ。長旅で少し疲れが出ただろうって。
鉱石馬鹿も程々にしないといけないわよ。」
「・・・・ごめん・・」
「なっ、なによ。そんな深刻な顔をしなくても・・」
「でも、僕の不注意でこんなことになったんだし・・、もし今連中に狙われたら・・」
「いいのよ、君を守りながら追い返せばイイだけの事」
「シャン・・」
「君に出会った影響かな?なんだか前向きに考えられるようになったの・・。
だから安心して休みなさい・・。」
「わかった・・、ありがとう・・シャン・・」
そう言うとリュートはそのまま眠りに入った

「・・ありがとう、リュート・・」

リュートが寝入った後、聞こえないくらい小さな声でそう呟くシャン。
彼女もそのまま、彼の看病を続け何時の間にか眠ってしまった







貿易都市ルザリアに留まって数日。
体調を崩した(?)リュートも快調に向かって行った
「・・はい、もう大丈夫なようだね。旅をしても大丈夫だよ?」
宿屋の一室にてリュートの診察を終える医師クライブ。
獣人相手でも関係なく診察し、少しやつれているがわかりやすく面倒を見てくれる
「よかった〜、いやっ、意外に時間がかかっちゃったね」
照れくさそうに応えるリュート
シャンはそんなリュートの空元気に呆れ顔だ
「まっ、仲がよさそうだね。だか君達、どうして旅をしているんだい?」
「ああっ、鉱石の勉強のためになんです!僕は鍛治師見習なんですよ」
「そうなんだ・・、そういや僕の患者の中に奥さんが有名な錬金術師の人がいるけど
一回訪ねてみたらどうかな?奥さんは亡くなっちゃったけど色々話が聞けると思うよ?」
思っても見ない医師からの紹介に目を輝かせるリュート
「ほんとですか!その人は今どこに!!?」
「あ・・、ああっ。この町のテント群に住んでいるよ。メモを書いてあげる・・」
あまりの食いつきのよさにビックリするクライブ
ともあれ、その男の居場所の地図を書いてもらった
「やった♪シャンも行こうよ!」
「・・まっ、部屋にずっといるのも気が滅入るしね。でもあんまり走らないでね・・。
なんだかこっちが看病疲れ気味なの・・」
その一言に申し訳なさそうに頭を書くリュートと笑ってごまかすクライブであった・・


ともあれ、散歩がてらテント群を歩く二人。
獣人と首に小さな骸骨の首輪をつけた少女が歩いているのだから当然目立つ
声をかけこそしないもののテント群の住民からは奇異の目で見つめられた・・
「ここだ!」
やってきたのは意外にしっかりした作りのテント、
まぁそれでも一人暮らせてたらいいほうだ
「こんなとこに住んでいるのね・・。まぁ雨風しのげたらどこでも一緒だけど・・」
「そだね、じゃあ入ろう!ごめんください!」
意気揚々と入っていくリュート。
それにいつもながら呆れながらも後をついてくシャンだった・・。

「なんだ、君達・・」
中には一人の老人が静かに本を読んでいた・・
「僕達、クライブさんの紹介でここに着ました。
僕は鍛治師の見習で奥さんがその、錬金術師だったのですね・・?
それで色々話を聞きたいと思いまして・・」
「・・なるほど、まぁ、暇つぶしにもなる。いいだろう・・。しかし、その前に坊主が背負っている
その白い棒・・。見せてくれんかの?」
「ああっ、これですか・・、どうぞ・・」
素直に布を解き老人に渡すリュート
「やはりブリューナクか・・。手入れもいきとどいでいるな」
「えっ!!?何でわかるんですか?」
「これはわしのかみさんが作ったものなんでな・・」
懐かしそうにブリューナクを撫でる老人
「かみさん・・って!まさか貴方・・ミュンさんの・・・」
「ミュンはわしのかみさん。わしはセイレーズと言う者だよ」
「セッ、セイレーズ!?あの伝説の怪盗!?」
今度はシャンが驚く・・
「えっ、シャン・・知っているの?」
「知っているも何も裏業界じゃ知らない人はいないわよ!」
「まっ、一世代前の盗賊さ・・。だがなんで坊主がこれを持っている?これはあのばあさんに
預けたはずじゃが・・」
「ばあさん・・、ミョルキル師匠ですか?
僕はあの人のもとで見習として働いているんですよ!」
「そうか・・、あんな無愛想なばあさんが師匠だと大変だろう・・?」
「いえっ、貴方の奥さんもそれに耐えて立派になられたのですから・・」
「・・ふふっ、あいつは耐えたというか・・、仕事以外は相手にしてなかった・・っといった感じかな?
だがその鍛治師見習の君がアサシンの女の子と一緒に旅をしているのかね?」
「・・わっ、私の事が・・」
「わかるもんじゃよ?
歩き方から周囲の気の使い方までアサシンのそれに近いからの・・。
これもブリューナクを巡る縁だ。君達のいきさつを話してくれんかの?」
「・・わかりました、私達は・・」
・・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・
・・
「・・っというわけです」
一通りの説明を終えるシャン、セイレーズ老は面白そうに話を聞く
「なるほど、じゃあお嬢さんがいた組織は『フィアー』というのでは
ないかね?」
「!?なんで・・?」
「正解のようじゃな、いやっ、組織の形態やら何やらをまとめると思いついてな。
まっ、昔取ったきねづかという奴じゃよ」
「じゃ、じゃあそのボスの居所とかもわかるのですか?」
「リュート、そんなわけ・・」
「わかる」
「「・・えっ!!」」
「今でも表、裏問わず色んな情報が入ってくるのでな。
わしの手にかかれば一組織のボスの居場所なぞたやすいもんじゃ・・」
「「・・・・・・・」」
偉大な怪盗に驚く二人・・
「どうじゃ、自由を得るため・・一つこの老いぼれの言うことを信じてみんか・・?」
「・・・わかりました・・是非・・」
「じゃあ教えるが・・危険なところだ。それでも行くかね・・?」
「・・・はい・・」
「・・良い目だ。では教えよう・・」
・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・
・・・・・・
・・・・
・・










ルザリアより遠く北へ移動した辺境の地ノースリヴァー
その村の近くの林に小さな遺跡がある
「ここに・・、ボスがいるわけだね・・」
『法皇』『女教皇』をすでに抜き、準備万端のリュート
「リュート・・・」
「さあ、行こうシャン。これで君は自由になれる」
「リュート、君は村に戻って・・。ここからは私一人で行く・・」
「??」
「この先は危険過ぎる。君を連れていくには・・」
「大丈夫だよ、シャンがいるし僕もいる」
「駄目・・、君が死ぬようなことになったら・・私・・」
「・・シャン・・?」
「君は・・、私を受け入れてくれた人だから・・失いたくないの・・だから・・」
「・・馬鹿だな」
ふっと笑いシャンを抱き締める
「・・リュート?」
「僕にとっても君は特別な存在なんだ・・。君を失いたくない、君に自由になってもらいたい。
だから僕はここにいるんだよ・・」
「・・・」
「二人で行こう、例え破れる事になっても死ぬ時は一緒だ」
「・・・・わかった・・行きましょう・・二人で・・・」
得物を構えて静かに遺跡に入っていく。
しかしそれを見ているもが数人いた

遺跡の通路は極端に狭く二人並んでギリギリな広さだ
「・・・・、人気がない・・。セイレーズさんの情報、本当なのかな?」
「偉大な怪盗の情報に間違いはないわよ・・。
アサシンに気配を消すことぐらいたやすいしね」
すでに『カラミティテラー』の刃を出し、いつでも戦闘状態に入れるシャン・・
「でも・・、セイレーズさんから何かもらっていたけど・・何なの・・?」
「ん・・・?ああっ・・・『切り札』ってやつさ・・」
「???」
訳がわからないままリュートの後をついていく・・・
・・・・・・
・・・・
・・
敵の襲撃もないまま狭い通路をすすむ中
大きめの広間に出た・・。
壁に明かりが灯っており、中央に巨大な悪魔の像が・・
「・・・・・、何・・これ・・・」
「悪魔の巨像・・、悪魔降ろしでもしていたのか?」

”違うわね・・、これはあくまで強さの象徴。私達に相応しい像だと思わない・・?”

不意に広間に響く女の声・・
それと同時に入ってきた扉が固く閉まる!!
「!!閉じ込められた!?」

”ねぇ、そうは思わない・・?・・シャン・・」
悪魔の像の後から出てきたのは紫髪の妖艶女
ボンテージ服でかなり女王様・・
刺のついた鞭まで持っている・・
「アンナマリー・・・」
「・・・誰?」
「組織の教官役、そして・・、失態を犯したものへの・・」
「まぁ、処刑執行人ね・・。リュート君」
にやけつつ鞭を振るう
「!・・僕の名前を・・?」
「裏切り者に加担する馬鹿なんて珍しいからね〜、あんたも好きね。そんな女の相手を
しても何の得にもならないわよ。なんせ私がその女に刻んで上げたからね〜、
『絶望』っていうスパイスを♪」
「うるさい!!」
急に怒るリュート
「!?」
「じゃあおばさんがシャンにひどい事したんだ・・、なら僕の敵だ!」
速攻で『法皇』の威嚇射撃!!
「おっと、おばさんと言った罪は重いけどあんたの相手は私ではないの。
私はシャンを始末すればそれでいいしね・・」
リュートの射撃を飛びのいて回避する・・
「もうあんたの言いなりにはならない!私とリュートであんたを倒す!!」
「・・ふふっ、リュート君の相手は別に用意してあるの・・きなさい。ゴルディオン!!」
アンナマリーと言われた女がそう叫ぶとともに奥の扉から巨大な体躯の重装鎧の男が・・。
手には巨大なハンマーがあり、右手には手甲に筒状のものが
「ほう・・、『銃』を使用するなどというからどんな奴と思えば・・子供か」
リュートを見てあざ笑う男、ゴルディオン
モヒカン頭に立派なあごひげが特徴だがその顔は蛮族のようだ
「まぁ、ガキは任せたわ。私はシャンを『再調教』しなきゃあねぇ・・。
今度はもう気ちがいになるまで止めはしないよ!」
「く・・、リュート・・」
「わかっている、連携で・・!」
シャンに近づき迎撃体勢を取ろうとする・・
しかし
「おっと!2対2というのも悪くはないが・・、わしはそういうのは好かんのでな!!」
巨漢とは思えないスピードで間に割って入るゴルディオン!
「なっ・・早い!」
「貴様にはもっと暗いところで死んでもらおう!!」
そう言い地面に巨大なハンマーを叩きつける!!

・・ピシィ!!

途端に地面に巨大な亀裂が走る!
「そんなもの地面に叩き付けたって・・!?
なんだ!床が崩れる・・!?」
何故か床はもろく崩れる・・
どうやらすぐしたは空洞になっていたようだ
「リュート!!」
「うっ、うわあああああああ!!」
床の崩壊と共にリュートも空洞に落下する!
それ見てシャンもすぐさま後を追おうとするが・・
「おっと!あんたの相手は私よ・・、
心配しなくても男どもに散々遊ばれた後に彼の元へいけるわ・・」
鞭をしならせ牽制、そしてにやつくアンナマリー
「・・貴方を倒せばそうもいかないわ!」
「ふふっ、組織を逃げ出した負け犬に何ができるものか!」
両者睨みながら対峙・・。
因縁の対決が始まった・・






一方
リュートが落下した先はどうやら地下水路のようで岩肌が剥き出しの通路の中
水が耐えず流れている・・
幸い壁に明かりがあるので周囲の確認はできるようだ
「いつつつ・・・、シャン!!!」
天上に向かい声をあげる!
・・しかし返事はなく何やら金属のぶつかる音が聞こえる
「こんな状態でもあの女が気にかかるか・・、めでたいな」
不意に声が・・、見ればゴルディオンがすでに戦闘態勢に・・
「!?何時の間に・・」
「貴様が落下するよりも早く降りてな・・
さあ、死ぬ覚悟はできたか。愛する女に見取られる事なく
この暗く湿った水路で貴様は絶命する運命だ」
「・・運命なんて・・、自分で変えてやればいい!!」
『法皇』『女教皇』を構え連射!!

チュイン!!チュイン!!

鋭い音とともに命中するが鎧を少しへこませたに過ぎない
「並の鎧なら軽がる貫通もできるだろうが・・、この鎧は特別だ・・」
「・なら・・これでどうだ!!」
今度はブリューナク、魔光弾で一気に勝負に出る

轟!

「ほう、物騒なもんだな・・。しかし!!」
ゴルディオンが両手を前にかざすと共に青い光の膜が・・!
ブリューナクの魔光弾はそれを裂けるかのように弾道を反らして壁に激突し、
振動と共に爆発を起こす・・
「ブリューナクが・・、通じない・・?」
「この手甲には特殊な結界石が埋められている・・、そしてこの右手には・・」

ドン!!

煙と共に右手の金属筒が火を吹く・・
それと同時にリュートの左肩から飛び出す血液
「・・銃・・・?」
「そう、貴様が我が組織にその兵器を見せてくれたおかげで新たな武器ができた・・。
とっつきにくいが大いに役に立つだろう・・、さあ・・。お礼に今度は額を狙ってやろう・・」
ピタッと標準を合わせてにやけるゴルディオン・・
「ごめんシャン・・、約束、守れそうにないや・・」
左肩を打ち抜かれ、足場の悪い水路・・、
さらにはこちらの攻撃が通じないともはや絶望のリュート
それでも希望を託し一矢報いろうとトリガーに手をかける
「さよならだ・・、少年・・」
そして放たれるゴルディオンの銃・・!!
弾はまっすぐリュートへとむかう。・・リュートの反応よりも早く・・
しかし


「ふんっ!!」

不意に彼らの前に一人の青年が飛び出て持っていた槍で弾を切断した・・
「・・!何者だ、貴様!!」
男は銀髪に目元を覆う仮面をしており黒めのジャケットにズボン、そして紺のマントをしている
「・・・・生憎、お前如き格下に名乗る名は持ち合わせていない・・」
落ちついた口調で仮面の男、
手持ちの細く長い刃に乙女の姿が刻まれている槍を巧みに扱い、
じっとゴルディオンを見つめる
「・・・・・何のつもりだ?」
「大の男が子供相手にこんなハンデをつけているのが情けなくてな。
私が加わって兆度いいくらいだろう?」
「・・ぬかせ!!」
銃での攻撃は効かないと判断し、巨大ハンマーで攻撃!
「少年!決めるのはお前だ!」
仮面の男がそう言い巨大ハンマーを槍で迎え撃つ!!

キィン!!!

「ばっ、ばかな・・!!」
驚愕するゴルディオン・・、無理もない
自分の得物の半分にも満たない細身の槍が強烈な一撃を受けとめたのだから・・
「今だ!」
「は・・はい!!」
仮面の男の背中を使いハイジャンプ!!
「銃などこの鎧には効かぬ!!」
「わかっている!!」
狙いを定めて二丁拳銃を連続放火!
狙うは鉄壁の鎧ではなく、その脇腹にある鎧の留め具・・

プツン!

鋭い音とともに全4箇所の鎧の留め具は切れ鎧がバラバラにはがれていった
「馬鹿な・・。留め具を精密射撃するなんて・・」
「ふっ・・流石はあの人の遺産を手にしただけのことはある」
男は一瞬の隙を突きゴルディオンのハンマーを叩き落す!
「・・よし!チェックメイトだ!まだこのブリューナクは2回撃てる・・
生身では耐えられないぞ!」
そのままゴルディオンの前に飛び降りその腹にブリューナクを突き付ける
「ち・・、だがわしも組織の一員・・、女々しい命乞いなど・・」

轟!!

その言葉を待たずしてブリューナクの引き金を引き魔光弾を発射させる!
「!!!!」
・・・ただし、ゴルディオンには当てず足元に発射する
威嚇射撃だがゴルディオンの足の指は完全に消滅しており彼もその激痛で
もがき苦しみ、気絶したようだ・・
「・・・・、これなら悪事もできないだろう。あの、助太刀ありがとうござい・・あれ?」
振り向くとそこにはすでに仮面の男はいなくそこにはロープが一本置かれていた
「あの人が置いてくれたのかな・・、とにかくこれで上に上がれる・・。シャン・・・」
相棒を気にしつつロープで上に上がる方法を考え始めた・・





リュートが地下水路に落ちたのと同時刻・・、
その上の悪魔の像の間
「相棒に無様な姿を見せられなくて残念ね・・」
鉄鞭をふるいながら勝ち誇るアンナマリー
「うるさい、その首跳ね飛ばして助けに行く!」
鞭の軌道を読み、カラミティテラーをうまく使って回避しつつ前進!!
「どこまでも生意気ね!」
以前にない彼女の動きの切れに少し焦る・・
「アンナマリー!覚悟!!」
至近距離にまで接近!大きく飛びあがり液体の刃をかざす!
「・・ふふっ!」
「!!!」
確実に止めをさせる間合いだが
アンナマリーと目があった瞬間シャンの動きが一瞬にぶくなった・・
「ははは!!」
勝機と見たのか自慢の鞭を振るいシャンの脇腹に・・!!

パァン!!

シャンが吹っ飛ぶくらいの衝撃!脇腹が少し切り裂かれており血が吹き出ている・・
「あらっ、とっさに身をひねって致命傷は避けたようね・・」
「く・・、なんで・・・」
止めがさせたのに身体の動きがにぶくなったのを不審に思う
「教えてあげる♪身体の動きがにぶくなったのはあんたが恐怖を感じたからよ・・」
「馬鹿な、あんたなんかとの出来事すでに克服・・」
「それは精神の話。
私があんたに刻んだ恐怖と絶望は身体にまで染みついているの♪
その細胞ひとつひとつが私に怯えるわけよ・・」
「・・・・」
「さっ、次で仕留めるわ。その後すぐ再調教にいくわよ♪
もちろん、調教をはじめる前に
あの犬のガキの無残な死骸を見せてあげるわ♪」
「そんなこと・・させはしない!」
脇腹を押さえた手をどけカラミティテラーを持つ
「全く、見上げたものね。そんなんになってまで何がしたいの?性奴にいたほうがラクよ?」
「私が欲しいのは・・、リュートとの一時・・。それ以外はいらない!」
「はっ!ほんと馬鹿ね!!さあおいで!出来損ない!!」
死力を振り絞って鎌をかざし特攻するシャン
覚悟が決まった表情だ・・
「真正面から・・?ふふっ、さようなら♪」
シャンの首めがけ鉄鞭が襲いかかる
「!!(避けられない・・・、ごめんね・・・、リュート・・)」
シャンが死を覚悟したその瞬間!

ドォン!!

鋭い銃声が鳴ったと思いきや
アンナマリーの鞭は切断された・・
「!!」
「なっ!誰が!?」
これには彼女も大慌て、自慢の得物を無効化され、目の前には鎌をかざすシャンが・・
「これが私の・・、最後の人殺し!!!」
渾身の力を持ってカラミティテラーを振り下ろす・・。
「ぐ・・、ぎゃあああああああ!!」
金切り声をあげながらアンナマリーの身体はななめに切断された・・・。
「はぁ、はぁ・・。あの銃・・、リュート?」
周りを見るがそれらしい人影はいない・・
ただ広間の隅に手甲に銃身がくっ付いた代物が置かれていた
銃口から煙がかすかに出ている・・
「リュートじゃ・・ない?」
そもそも彼にすばやく唸る鞭を命中させ、切断させることなど不可能だ
「・・誰が・・?」

”お〜い、シャン!!”
広間の大穴からリュートの声が・・
「リュート?リュート!!無事なの!!?」
”ああっ、なんとか・・、ロープがあるからそっちに投げるよ!どこかに引っ掛けてくれないかな?”
「わかった!」
その返事の後すぐに投げてきたロープ・・。
シャンは悪魔の像の手にそれを結びリュートを引き上げた
・・・・・・
「ふぅ、一時はどうなるかと思ったよ・・」
ようやく昇ってきたリュートがシャンの顔を見て安堵の表情・・
「リュート・・、怪我しているじゃない!?」
左肩が血に染まっているのを見て驚くシャン・・
「そういうシャンも怪我しているじゃないか、お互い、なんとか無事・・っていうところかな?」
「そう・・、でも、誰かが私を助けてくれて・・」
「!!、シャンも?僕も仮面をつけた男の人に助けられたんだよ」
地下水道で出くわした怪しい男について軽く説明するリュート
「・・・、っということはリュートを助けたのち、そのゴルディオンの腕の銃を取って水道を脱出
、そのまま私の援護をしたってこと・・?」
広間に落ちているのはまぎれもないゴルディオンの手甲だ・・
「そうだね・・、でもそうだとしたらとんでもない早さだ・・」
「・・・・、それに、地面が崩れたりリュートがブリューナクを撃って爆音がしたのに
この遺跡、静か過ぎる・・」
「・・・、他の部下もあの仮面の人が倒したってこと?」
「たぶん・・ね。まぁ、敵ではないと思うし、とにかく進みましょう・・」
「ああっ、ボスさえ倒せばこっちのものだからね」
お互いの傷を応急処置して二人は奥の間へと進む・・。
すぐ傍を脅威が通っていることにも気付かず・・・・・・


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