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4話  「『過去』に似た少女」


「・・・それでっ、なんか変に複雑な造りね・・」
テーブルに向こうでシャンが肘つけながら言う
「・・まぁ、単純に斬るだけとかそういうものじゃないしね。
複雑な分こうしてメンテナンスをしないと具合も悪くなるんだ」
バラバラになった銃をいとおしく磨くリュート・・

二人は旅の途中で訪れた鍛治師が多いというアースと言われる町に宿泊している。
先日の襲撃から追手も途絶えたようなので銃のメンテがしたいとリュートが言い出したからだ
シャンにとっても別にアテのない旅、別に断る理由もないので
こうしてリュートの得物を見ている・・

「でも・・、これが古代の兵器・・ねぇ。このレンコンみたいなのに弾を詰めるわけ?」
銃の部品を取り、6つに空いた穴を物珍しそうに見る・・
「そうだよ。だからフルに装弾しても6発が精一杯なんだ。
それを考えて行動しないといけないんだよね〜」
銀の銃をさっさと組みたてる・・、
やがてリボルバー式の銃『法皇』が元の形に戻った・・

「随分器用ね・・」
「まっ、そうだね〜。これでも鍛治師見習なんだからこのくらいできないと破門だよ」
微笑んで応えるリュート。
「・・リュートは・・、何で鍛治師になりたいの・・?」
「えっ?」
不意の質問に驚く・・
「いやっ、ちょっと気になったのよ。
リュートって異常なくらい鉱石や鍛冶関係に熱心だし・・」
「そうかな・・?まぁ好きだから、かな?それに・・憧れているからだね」
「前に言っていたミュンって人の事?」
「うん・・、僕はかつては小さな町のパン屋で住み込みで働いていたんだよ。
ある日パンの配達をしていたら獣人狩りにあってね・・、
危うく捕まるところをミュンさんに助けてもらったんだ・・」

現在の社会での獣人の地位は低い・・
それ故満足に生活保障もされておらず無理やり連れ去って
強制労働にさせる『獣人狩り』というものが行われることもしばしばある・・。
最近ではそうした差別を抑えるための行為が盛んになってきており北国ダンケルクをはじめ
獣人が安心して暮らせるような都市も増えてきた・・

「・・そう・・、なんだ・・」
「あの人の戦いぶりは見事だったよ。瞬く間に爆発が起こってね。
それからかな?あの人みたいな人になりたいと思うようになったのは・・。」
「・・・・・」
「どうしたの?」
「・・なんだろう・・、普段は呑気なのに決意は固そうだと思って・・」
「ははは、まぁ色々あったんだよ。シャンはどうなの?
そんな鎌なんて滅多にお目にかからないし」
お目当ての特殊大鎌カラミティテラーを見ながらリュート
「・・これは・・、私の祖母の物だったの・・。
私が4歳の時祖母が父さんをこれで殺し6歳の時私がこれで祖母を殺したわ・・。
嫌な思い出だけど私が持つ唯一の思い出の物・・ね」
「・・・そっか・・・、じゃあ譲ってもらうのには骨が折れそうだね」
「上げないわよ!!図々しいわね!!」
「冗談だよ、でも一回調べさせてよ?どういう仕組みか興味あるしね♪」
「・・・そんなに興味深い物なの・・?」
「すっごいよ!だって声に反応して形を成すんだよ!?」
「・・っというか声じゃなくて魔力よ?」
「・・・そうなんだ」
「じゃあ見てみる・・?サイズ!」
声と共に持っていた黒い金属棒の先端から碧の液体が出てくる・・
「待ってました♪じゃあ見させてもらうね!」
餌にむさぼりつく犬の如くテーブルに置かれたカラミティテラーを見だす・・・
もはや周りが目に入っていない様子だ・・
「・・・鉱石馬鹿・・」
つぶやいてみても反応なし・・、こうなってはシャンもやれやれと呆れるほかない
「ねえねえ・・・」
不意にシャンのマントが引っ張られる・・
「んっ?誰・・?貴方・・」
引っ張っていたのは小さな女の子・・・。
シャンと同じような乱雑な黒髪で一目で孤児だとわかる・・
「あの・・、恵んで・・・」
両手でお願いする・・、手は傷だらけで痛々しく見える・・・
「・・・・いいわ。これで美味しいものでも食べなさい」
銀貨を数枚少女にあげる。
このくらいなら数日は十分に食べられるだろう・・
「ありがとう・・」
恵んでもらったのにあまり嬉しいそうでもなくそそくさと店を出ていく少女・・
「何?あれ・・・」
「・・・・・・何か訳がありそうな感じだね?」
何時の間にか少女の方を見ているリュート
「訳って・・?」
「だってこの街、そんなに貧しくないしさ。
孤児が恵んでもらって嬉しくないはずがないのにあんな表情だし・・・」
「ううん・・・、気になるわね」
「後を追ってみる?」
思ってもみないリュートの言葉
「えっ?」
「だってシャンはあまり外の世界知らないだろ?色々見ていたほうがいいと思ってさ。
はいっ!」
カラミティテラーをシャンに返しさっさと店を飛び出るリュート
「ちょっ、待ってよ!リュート!!」
急いで少女を追うシャン・・・。彼女も自分に似た少女が気になるようだ・・




少女が向かった先には寂れた廃屋・・
人が住んでいる雰囲気ではなく彼女が住んでいるところではないようだ
・・・・・
中で待っていたのはゴロツキ・・
彼女の親というわけでもなさそうだ。
「今日の稼ぎは?」
ぶっきらぼうにゴロツキが言う
「あ・・・、あの・・・これだけ・・」
怯えながらシャンからもらった銀貨を渡す・・
「ちっ・・、この・・役立たずが!!」

パン!!

平手が少女の頬を打つ・・
少女は慣れているようで無表情のまま座りこむ
「ちっ、流行病で両親を失ったお前を拾ってやったのに全く役にたたねぇ!
いいか・・、こんなハシた金じゃあ酒も買えないんだよ!!!」
倒れた少女を踏みつけようとするが・・・

ドォン!!

場所が場所なので反響しながら銃声が起こる・・
「いっ、いてぇぇぇぇぇぇ!!!」
それとともに足を押さえるゴロツキ・・
あまりの激痛に転げまわっている・・

「そういうの、拾ったっていうんじゃない気がするね」
廃屋の窓にもたれてリュートが『女教皇』を静かにゴロツキに狙いをしぼっていた・・
「それに、私が恵んだのはこの子のため。あんたみたいなのに上げる気なんか
さらさらないわよ」
転げまわるゴロツキの腹にシャンがカラミティテラーで突く!
「げぇ・・・が・・」
苦しげな声を上げて気絶したようだ・・・
・・・・・・
「大丈夫?」
静かに少女を助け起こす・・
「お姉ちゃん・・?どうして・・?」
「様子が変だったからね・・」
「大変だったんだね。こんな奴に言いようにされて大変だろう?」
「・・・でも・・・仕方がなかったから・・・」
「そんなことないわよ・・。生きていれば良い事があるでしょ?
現にこんな馬鹿から解放されたんだし・・」
シャンがまるで自分に言い聞かせるように少女に言う
その言葉を聞き目に涙を浮かべる少女・・
「お姉ちゃん!」
涙を流してシャンに抱きつく・・・そして大きな声で泣き出した・・。
シャンもそんな少女の肩を優しく叩く
リュートはその光景を黙って見たままだった・・・





・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・
「じゃあ行くね、お姉ちゃん!」
すっかり元気になった少女。
リュート達から旅費を恵んでもらい今後の身の振りを考えるため「リュートの保護者」の元へ
向かう事になった
「気をつけてね。」
少女のボサボサの頭を優しく撫でるシャン
「・・っと言っても、交易隊の馬車に乗るから安全だろう。
向こうについたら師匠によろしく言っておいてね」
「うん!犬のお兄ちゃんもありがとう!」

そう言うと目に希望の光を灯し少女は新しい人生を歩み出していった・・・

「・・・良い子ね・・・」
「そうだね・・、シャンも早くあんな子みたいになれるといいね・・」
「・・・・ば〜か!君みたいな鉱石馬鹿に心配されなくても直に自由になるわよ!!」
リュートの犬耳をくしゃくしゃいじって歩き出す・・
「鉱石馬鹿って・・!酷い!!」
「馬鹿は馬鹿なの!さっ、次の町に出発しましょう!!」
「わかったよ、せっかく心配しているのに〜」
ぼやくリュートに見えないように静かに微笑むシャン・・・

彼らの旅は続く・・




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