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九章  「お騒がせワンコの仕事」


ルナの部屋・・。
流石に物などはあまり置かれていなくベット上はグチャグチャに乱れている
床などは綺麗に掃除されているが机の上は全く使っていないのか
物置のようになって何か石などが置かれている
そしてベットの隣に立てかけられているあの大太刀・・
「あれだ・・、お邪魔しま〜す・・」
ドアを開けて目的の物を見つけたリュート、流石にいきなり入って物色するわけにもいかない
「大太刀か〜、普通の太刀とは打ち方もまた違うみたいだし
『狂戦鬼の大太刀』とまで言われている妖刀・・。じっくり見させてもらおう」
一応の礼儀が大太刀の前で軽く合掌してから刃を抜く
「やっぱり刀の刃って綺麗だな・・・・。ルナもちゃんと手入れしてあげないと・・」
濡れるような刀身をうっとりと見つめているリュート
その刀身から放たれているただならぬ気配には全く気付いていない
否、あらかじめこの大太刀がどのようなものかを彼は知っていたのだがそれを忘れる
事ほどの美しさなのだ・・

・・・戦エ・・・

「?・・誰も・・いないよな?」
急に声が聞こえたが誰もいない・・。
「・・??気のせい・・かな?でもこれほどまでの銘刀、どうやって打ったんだろう?」
リュートはじっくりと刃を調べはじめる
・・・・戦エ・・我ヲ手ニ取リ・・
見惚れていた彼の瞳はしだいに色が変わっていった


「ふんふんふ〜ん♪」
ルナの部屋の異常に気づくわけもなくメイド姿のリオは鼻歌まじりに廊下のお掃除をしている
「・・・、人手が足りてないのに上機嫌だな?」
隣では普段着で彼女とともに掃除をするアレスが・・
いつも共に掃除をしているディやルナが安静ということなので
いつもよりかはしっかりとした掃除装備だ・・。
二人が寝こんでいるので掃除も少し大変になるということでライも普段サボっている
お方達(主にルー、アルシア・・)に掃除を手伝えと言ったが返り討ちにあったらしい・・
「だって〜、今度リュート君が私の為に装飾品作ってくれるって約束してくれたんだよ♪
ちょっと楽しみじゃない」
「あまり彼で遊んでいるとシャンが嫉妬するぞ・・?
彼女はすぐ手を上げる癖のようなものがあるんだし・・」
「まぁまぁ、嫉妬が愛を育てることだってあるんだから♪」
「・・はぁ、そんな事言ってリュートに襲われても知らないぞ・・」
「大丈夫♪リュート君お利口だから注意したら聞いてくれるよ。
あっ、私はルナちゃんのお部屋の掃除にいくね。アレス君はどうする?」
「女性の部屋の掃除はできないし・・、居間から始めておこうか」
「わかった、じゃあまたね♪」
箒片手にルンルン気分でルナの部屋に入っていった。
そこに彼がいるとも知らずに・・・

「ベットメイキングぐらいかな?ここは・・って・・リュート君?」
部屋には入っても物がそんなにない。
机の上のガラクタのような物はなんだかよくわからないけれども
ルナにとっては大事な物らしく触ると怒るので対象外なのだ
そんな中部屋の片隅でうずくまる犬耳の少年の姿が・・
「・・・・」
「やだっ、リュート君。ルナがまだ子供だって言っても女の子なのよ?
下着でもあさっていたのぉ?不潔〜♪」
にこやかにリュートに近づくリオなのだが・・

シュッ!

不意に空を裂く音が聞こえ咄嗟にリオは半歩身を引いた
パラッと前髪が数本落ちてきている。
「リュ・・リュート・・君?」
「・・・」
無言のまま大太刀を手に持つリュート、目には理性の光が灯っていない・・
「ど・・どうしたの!?リュート君!?危ないじゃない!」
「・・・」
問いかけてみても無言なリュート・・
「あたふたあたふた・・(ど・・・どうしたの?
や・・やっぱりいたいけな子供を悪戯したから怒っちゃったのかな?
このままだと私襲われちゃう!?)」
さっきそんな内容の話題をしていただけに思わずあたふたしてしまっている
そんなことおかまいなしに力任せに大太刀を振りかぶるリュート・・
「ね・・ねぇ、リュート君。色々誘惑しちゃって悪かったわ、ごめんなさい!
でも私にはアレス君がいるからこれで・・勘弁して?(チラリ)」
サービスにスカートをチラリと捲るリオ・・、事態に気付いていない・・

シュッ!

そんな誘惑に引っかかることもなくまた鋭く剣風が吹く!
思わず箒で防ごうとしたがあえなくスパッと切れてしまう・・
「ひええ・・(ああっ、このままじゃあこのリュート君と肉体の繋がりをもっちゃう・・
アレス君、私どうしたらいいの?)」
「押え込めばいいんだ!」
颯爽とアレスが部屋に飛びかかりリュートへ体当たりをかます!
流石は公私両方のパートナーだけにリオのお馬鹿な心の内を見透かしツッこんだりしている
「アレス君!よかった・・、瑞々しい果実は落ちずに済んだわ♪」
「怪しい小説の読み過ぎだ、どうやら「獣皇鬼・砕刃」に操られているようだ」
アレスが暖炉の火掻き棒を構えながらリュートを見る
リュートは太刀を持ちながらもふらりと立ちあがった
「嘘、だってあの刀の妖気ってルナが持ってから大丈夫になったんじゃなの?」
「・・、おそらくはルナの生命力が弱まったから同時に「獣皇鬼・砕刃」を支配する力が弱まったんだ。」
「それにリュート君が触っちゃったから・・ああなったのね」
「そうだ、とにかくルナにありったけの回復魔法を叩きこんで何とか連れて来い。
それまでは俺がここで押える・・」
飛びかかるリュートに何とか隙を突いて吹き飛ばすアレス
まともに鍔迫り合いしようものなら火掻き棒なんてスパっと斬れてしまうのだ
「わ・・わかった、怪我しないでね!アレス君!」
急いで駆け出すリオ・・。
対しアレスは冷や汗をひとつ流して火掻き棒を構える
恋人の危機を察知していち早く駆け付けたのだがいかんせん状況がよくない
相手は身体は少年、素体としては剣術など皆無なのだが狂戦鬼化になれば
お構いなしに一撃は鋭くなんとか気絶させようにも
うかつに手を出したら跳ね飛ばされかねないので中々重心の入った一撃が出せない
「全く・・人騒がせな客人だ・・」
軽く舌打ちしながら何とか応戦を始める・・、リュートは以前生気のない顔をままだ
・・・・・・・
・・・・・・・
数分して、アレスは窮地に立たされていた
リュート自身にも才能があるのか、次第に自分の手のうちが防がれてしまう。
・・戦いながら学習しているのだ、それも恐ろしい早さで・・
「・・くっ、これ以上はキツイな・・。せめて自分の得物があれば・・」
口惜しいアレス、回復魔法による治療ともなればまだ時間がかかる
援軍が来てもいいぐらいの音は立てているのだが、今屋敷に誰がいるのかは彼もわかりかねない
不確かなものに期待するわけも行かず結局この状況を打破するのは自分のみなのだ
「・・・・」
先ほどから火掻き棒や体術で叩かれているリュートなのだが
とりつかれているだけに全然平気なようだ
「各なる上は刺されても庭に突き飛ばすか・・」
このまま屋敷内で暴れられるよりかは広い庭に叩き落してから対処したほうがいい・、
そう考え決死の覚悟で突進するアレス・・
しかし
「ガウ!」 こらぁ!
そんなアレスの頭を飛び越える銀髪の少女・・ルナ
疾風の勢いでリュートに飛びかかり「獣皇鬼・砕刃」の刃を握る
「・・・!」
太刀に触れるとともにリュートの身体がビクっと震えたかと思うと急に倒れた
「間に合ったようだな」
ルナの部屋にぶらりと入ってきたいつもの格好のライ・・。
疲れ切った顔を見ると
「団長が・・、ルナを回復したんですか?」
「ああっ、リオももう来るだろう。ったく、妖刀に迂闊に触り過ぎだっての。」
どうやら素早く事態を察知していち早くルナを動けるようにしたようだ
「流石に過去にコレの被害を体験しただけありますね」
「まともにやると難儀だろ?ともかく、起きろ。リュート(ペチペチ)」
「ううん・・あれ・・僕・・?」
「目が醒めたか〜?ったく、ルナに一言言ってからこいつを触れよ・・」
「えっ、なんで・・ここ・・?」
「・・・・・、「獣皇鬼・砕刃」に心を奪われていたんだ」
「アレスさん・・えっ!?じゃあ僕・・」
「まぁ、問題はない・・かな?別に被害はないから安心しろ」
ライが事態の収拾に努めようとするが・・

ドタドタ・・!!

「リュート!馬鹿なことやったんですって!?」
寝巻きのまま夜叉の如くな表情で詰め寄るシャン・・
「団長〜、すみません・・」
後から申し訳なさそうにリオ登場・・
「・・・・言っちゃった?」
「・・騒がしいってシャンが言ったからつい・・」
口を滑らせた事をすまなさそうに言うリオ。
そんなことおかまいなしにシャンは・・
「人様に迷惑かけちゃ駄目だって言っているでしょ!?」
「シャ・・シャン!落ちついて!ストレスためちゃだめって・・」
「やる事やって何言っているのよ!」
怒りに任せてリュートの首を掴む
「え・・シャン・・・?」
「これがリュートが言っていたDDT『デンジャラスドライバーテンチュウ』よ!!」
首をつかんだままシャンは後方へ身体を滑らせ・・

ゴン!!!

リュートは頭から床にぶつかりブラックアウト・・
「全く!!迷惑かけてすみません!」
「あ・・いやっ、仕方ないさ」
あまりの怒り様に唖然とするライやアレス
「いえ、勝手にルナの得物を・・・あら・・・」
話している最中に急にふらついてシャンはそのまま昏倒してしまった
「・・・・また二人仲良く気絶・・か。ルナ、悪いな。一騒動起こっちまって・・・・床に穴も開いたし」
「わう! 仕方ない!」
「まぁ、そん代わり魔法で全快したからな。
ディの面倒でも見ながらあそこでしばらく寝てくれ・・。
さて、俺は疲れた。寝るぞ〜、後リオとアレスでよろしくな」
生命力をギリギリまで抜き取られた者を俊敏に動けるまでに回復させたのだ
ライの疲労も常人では考えられないものなのだろう・・・、全然顔にはでないのだが
「団長・・わかりました」
「おう、じゃあな〜」
今度はライがふらふらと・・・。
かくしてリュート君のお騒がせ騒動は静か(?)に幕を閉じた・・のだが

「・・う・・・うん・・」
シャンに強烈な投術を食らって気絶していたリュート。
顔に明かりが差すので目が醒めたようだ・・
「あ・・ここは・・?・・!!なんだこれ!」
目が醒めてびっくり。
辺りは地下室のような空間であり何よりも自分の手足が拘束されて
木箱に押し詰められている
「あぁら、お目覚め?」
死角から女性の声が・・。
それは忘れ様にも忘れられないもの・・
「!!・・・ま・・まさか・・セシル!?」
必死に辺りを見渡すリュート、そこにあの女は・・いた
腰に届くくらいの長い金髪、それに黒革の短パンに同じく黒革のビスチェな露出の激しいもの・・。
「正解よぉ・・じゃなかった。正解♪」
声はセシルそのものなのだが少し口調が違う・・が
彼女を見てリュートも我を失っていてそんなこと判断できないようだ
「な・・なんで!ここはシウォングだよ!貴方はハイデルベルクにいるはずじゃないか!!」
「何寝言言ってるの?ここはハイデルベルク。私の家の地下室よ♪」
「う・・そ・・?」
「嘘じゃないわよ?これ見たら納得してくれるかしら?」
ポケットから取り出すは一枚の手紙
内容は・・

”親愛なるセシルへ
やっほ〜、お元気していたかしらぁ?今回はいつもの文通とは別なんだけども。
先日屋敷に客人として犬人の少年がきたのよ。
でもその子、勝手に人の得物触ったりしてちょいといけない子みたいなの。だからその子の
相方と相談して貴方に根性叩きなおしてもらうってことで郵送します♪
結構可愛いからイジメがいがあるかもよぉ・・。
じゃあまた返通待ってるわぁ
                       アルシアより♪”

「・・・シャンが!?うそ!」
「嘘な訳ないでしょ?うふふ・・、これから一杯楽しんであげるわぁ・・」
チロッと身動きの取れないリュートの頬を舐めるセシル
「うわ、お助けぇぇぇぇぇ・・(ガク)」
「・・・・・、気絶しちゃった。オシオキはこんなものでいいかしら?シャンちゃん♪」
リュートから死角になっているところで寝巻き姿のシャンとライが静かに見ていた
「ええっ・・ありがとうございます・・でも・・・そっくりですね?」
「・・・ああ・・。気持ち悪いな・・」
「しっつれいねぇ。セシルは長い金髪が特徴だからリオだって
このカツラつけたらそれらしく見えるわよぉ?」
そう言うと苦笑いしながら頭のカツラをとるセシル・・ことアルシア
「これで悪さしないでしょう。夢オチなのは悔しいけど」
「躾に熱心だな、でも本当なら洒落にならんだろう・・」
「そりゃあそうだけど・・。」
「まぁまぁ、でもそんなに似ているかしらねぇ?」
「そっくりだ・・。その格好で俺の部屋にくるなよ?絶対相手にしないから」
「ふぅん・・。それはそれで面白いかも・・」
あくどい顔になるアルシア、ともあれ、オシオキ完了で後始末をシャンに任せ
アルシアはそのまま出ていった
ライも付き合いで大道具の片づけをしていたが・・

「「セシルゥゥゥゥゥゥゥ!!!」」

突如ルナとディの叫び声が屋敷を響いた
「・・いいんですか?」
「かまってほしいからやっているんだよ。だからあえて無視!!」
「・・ディ君とルナちゃんがいい迷惑みたいね・・」
結局ブータレなアルシアさんだったとさ
しかしこれだけでは終らないのが彼女
次に取った策は・・

「かっかっ、身体が・・・」
翌日になり全身に激痛が走るリュート。頭部の傷はわかっているものの・・
因みにセシル登場はやはり夢と言うことで済まされたらしい 
「アレねぇ。狂戦士化による筋肉の酷使と打撲傷で筋肉痛?
大人しく寝てたら3,4日で治るかしらぁ」
「そっ、そんなぁ・・・」
そんなに痛みに耐えていられない・・っいいたげな情けない顔のリュート・・
「で・も、私がマッサージしてあげたら一日で大丈夫。
しかも、より筋肉が逞しく成長しちゃうオマケつき♪
・・・(間、もっと辛かったりするんだけど♪)」
「じゃ・・じゃあそれお願いします!!!」
 「ウフフフフ・・・じゃあ・・い・く・わ・よ♪」
そして、屋敷中に響き渡る苦悶の悲鳴・・
ライが駆け付けた時には悶絶しており、アルシアは満足げに笑っていたとか・・
何をされたかは彼も覚えていないらしい


居間、ココで客人含め誰也とがゴロゴロするのはお約束の光景。
ソファでは、長たるラフ兄貴ライを真ん中に、ゴスロリなルーと妖艶嬢アルシアの
珍しい組み合わせが男の膝枕でまどろんでいちゃったり。その足元の絨毯の上では
お子様達 半分諦めに遠い目なディ少年の腹を枕にして銀狼少女ルナが居眠り・・・

 「わぅ?」
気配にむくりと起き上がったルナが向く居間の扉、其処から入ってきたのは
先日の負傷から回復に、慣らしがてらのリュートとシャン。
 「あ・・・起こしちゃった?」
 「大丈夫。寝る、あきた、わん♪」
「「・・・・・・」」
なら無理して僕の腹を枕にして寝ないでと、死に体のディの目が語っているが
同情のリュートと共に放置に、シャンとルナは会話に華咲かせ・・・
 「そう言えばルナって喋り方何時もは拙いのに、絶口調で喋る時あるよね?
 あれは・・・戦ってる時? 何か騎士様みたいな感じに・・・」
 「わう? わぅ〜〜〜、・・・わん!! それ、ルナ、友達一緒!!!」
 「???」
一般知識すら疎いと言わざる得ないシャンにルナの言わんとしている事など
理解できようはずがない。 そもそも、一般人ですら到底察するは不可。
なので、その枕 兼 下僕 兼 説明係たるディ復活に
「ルナは精霊士なんですよ。だから精霊を使役する事が出きるわけでして・・・
その時は精霊憑依に、その精霊がルナをサポートしていたわけです。口調含め」
「「へぇ・・・」」
唖然としてるシャン,リュートが何処まで理解してるかは怪しい。
「・・・ルナ、見せてあげたら如何ですか?」
 「わんっ!!」 いいよ!!
目を閉じて深呼吸一回に、ゆっくり瞼を開けた銀狼少女の瞳は緋色ではなく紫に
 「・・・取り合えず、精霊憑依させてみたけどこれから如何するわけ?」
「「おおうっ!!?」」
豹変したルナに感嘆な二人。 しかし、いつもの精霊憑依と明らかに異なり
武士な感というよりかは、何処となく飄々とした感に大人な姐御みたく・・・
「・・・何処の何方が憑いたんですか?」
 「ん〜〜〜、秘密♪」
「「「・・・・・・」」」
銀狼娘は尻尾を機嫌に振りつつイタズラな笑みを浮かべ、
それはもはやルナではなく別の誰かであった。
それでもルナが精霊憑依を解かないということは害無ものなのだろうが・・・
 「んで、何の話だったけ?」
 「え、・・・ルナが戦闘の時は騎士様みたいな口調になるって話だったんだけど」
 「ああ、あの時憑いてるのは刀の英霊だから・・・」
「刀の英霊って・・・狂戦鬼の大太刀!!?」
一度狂戦士化した事があるリュートだからわかる事だが、刀は「戦い」しか求めていない。
口調云々までサポートしてくれるとはとても思えるものでないほどに・・・
 「それとは一寸違うかな。実際は、かつて刀の主であった者達の魂の残滓・・・
戦いの記憶・・・そして、その中で培われ伝えられていった御技。その集合体。」
一体何者が憑いているのか、銀狼娘の視線の先は遥かに遠い。
その当事者ではなく、知人の事をしったかのような・・・
「でも、あの刀は狂戦士の呪いがかかってるのに・・・それを?」
 「・・・妖刀を呪われず活かし遣いう者がいたんだよ。ライのかつての仲間にね。
 遥か古に極東より流着きし呪の刃を用って邪を断つ侍の一族・・・
 その者から太刀「鬼哭」がライの手に渡り、それも激戦に耐えられず砕けてしまった。
 仲間の遺物で共に戦いの中で砕けた戦斧「獣皇砕」と融わせ鍛え直されたのが
 狂戦鬼の大太刀『獣皇鬼・砕刃』」
「じゃあ、精霊憑依の時にいつもルナが使っているのは・・・」
 「そう。本来なら彼の子に伝わるはずだった技。
一度それも潰えたけど・・・今はルナ、私が受け継いだ」
銀狼娘から語られるのは戦士達の記憶。
事を成すために力を 得物を求め、得て戦ったという・・・。
ディ達ではとても、アレス達でも未だ・・・ライ達ぐらいでなければ語れない重み。
得物あってこそのモノノフ。モノノフあってこその得物。
人剣一体。
「一つの剣と技の歴史をきけるだなんて僕はなんて運がいいんだ。ルナ、ありがとう!!!」
 「・・・わぅ?」 何?
・・・先ほどとは打って変わり其処にいるのは深い知を思わせる紫瞳の銀狼娘
ではなく、あどけないばかりの緋瞳の銀狼少女。
「・・・・・・。 ルナ、今さっきのルナの話、もう一度話せますか。」
 「わぅ〜〜〜〜、・・・わう?」 え〜〜〜〜っと、・・・何?
・・・そこにバカがいた。
いやいや、端から野生児たるルナに小難しい話など己の意志で出来るはずがなかった。
英霊よ、頼むからルナの知恵の方も鍛えて下さい。 と思うその相方ディ。
 「わぅっ!? ディ、ルナ、バカにしたっ!!」
かぷっ!!!
出来れば少しはおしとやかにしてやって下さい と腕を齧られつつ少年は思った。
はっきり言って、無理(合唱。
 「えっと・・・此処だとライさん達の御邪魔になるから向うに行かない?」
 「がう」うん。
「・・・・・・(汗」
「・・・・・・(泣」
尻に敷かれている友にかける言葉などあろうハズもなく、
ルナに獲物で引き摺られるディとシャンに、リュートは着いていくしかなかった・・・

そして子供達が完全に立ち去り三人だけとなった居間、パチリと目をあける娘二人。
ルナですら気配に目が覚めたのに歴戦二人が気付かないはずがない。
当然、狸眠りで子供達の話に聞き耳たてていたり。
 「ライには辛い話よねぇ・・・」
 「まぁ・・・ナ。でも今更大丈夫ダロ? ・・・それに、ホントに寝てるし〜〜」
「・・・・・・z・・・・・・z・・・」
 「あら、ホント。・・・でもルナに憑いたの誰だったのかしらねぇ(悩」
口調雰囲気から、既に亡き仲間ではなく身内っぽい感じなのだが・・・
 「それは・・・(まさか・・・とは思うマイ)。」
 「ねぇルー、誰だと思うぅ?」
 「私ぁ、誰でもイイ。 きょ〜〜みナ〜いゾ〜」
 「あらま、珍しい・・・」
ルーは検討なら既についているが、態々言う必要も無いし義理もない。
事実はだた、仲間の遺物が次の世代へとしっかりその心と共に受け継がれている事。
彼は関して、それでもう満足なのだから・・・・・・



狂戦鬼の大太刀の一件以来、しばらくは休養していたリュート達だったが大分傷も癒えてきた
それで・・
「街の鍛冶工房で得物を作りたい?」
昼下がりの居間にて突如リュートがライへ切り出した
「ええっ、お騒がせしましたし。
ここではかなり勉強になりましたのでそれを元に何か造ってみたいんですよ」
「そっか・・。じゃあ許可証でも書いてやるよ。」
「ありがとうございます、ライさん」
「ふん・・、ならばこれで何か造ってみるカ?」
いつもの如くソファでダラダラなルーが取り出したのは透明な水晶のようなもの
「これは・・?何なんですか?」
流石のリュートでも材質がわからないようだ
「あのシャンにまとわりついておった液体だ。ここ数日かけて私が安定させておった。
硬度と軟度が安定しにくいのダガ、火をいれて一つの代物へ作ればそれなりの物が出きるだろう」
「硬度がそんな・・。まるで魂の水晶ですね」
「さしずめ『魂晶鋼』っと言ったところダナ。師を唸らせるものとしては中々なものになるだろう」
「ルーさん、ありがとうございます!」
「まぁ気にするな。手始めに私やライを唸らせるような物でも造ってミロ」
・・・それだけでもかなり高いハードルになりそうなのだが・・
「わかりました、僕もここでお邪魔になって結構アイデアも湧きましたので・・」
「あれだけ熱心に見ていれば思いつくでしょうね。リュート君がんばって♪」
「リオさん・・、僕、がんばります!」
優しいリオの声にリュートもテンションが上がる
しかしその隣で・・
「リュートォォ」「お姉様」
シャンとディが呟く・・。かたや怒りが溢れかたや呆れている・・
「じゃあ早速やってみます!シャン、一緒に行こう!」
「え・・?リュート・・私も?」
「うん、シャンと一緒の方が気合いが入るからさ。フィアラルと一緒に傍にいてほしいんだよ」
「・・も・・もう!しょうがないわねぇ」
仕方ないと口で言っているものの顔は嬉しそうなシャン。
しばらくして二人は鍛冶道具関係の身支度を整えてシウォングへ赴いた


それより数日、シャンとリュートは屋敷へと姿を現さず
屋敷はいつもの時間が流れた
たまにディとルナが二人の様子を見に来て雑談をしたり
リオが差し入れを持って言ってデレデレするリュートにシャンが一喝するなど
中々どうして騒がしい生活を送ったようだ・・
リュートも屋敷で色々と迷惑もかけているので半端な物を造るわけにもいかないと
それこそ必死で鎚を振るった。


さらに数日たって二人はひょっこりと屋敷に姿を現した
リュートは工房服を煤だらけに汚し、顔も真っ黒なのだが満面の笑みを浮べている
「まぁ・・なんだ。成果は出たのか?」
「ええっ、良いものができました!」
いつもの如く、部屋の掃除をしていたライが興味本位で居間へやってきた
掃除はアレスが引き継いでやるということらしい・・
「とりあえず、これで顔を拭いてください」
煤だらけのリュートへレイハがタオルを渡す
「あ・・ありがとうございます。(フキフキ)」
・・自分の顔が汚れているのに今気付いたようだ
「・・煤が取れても目の下のクマは取れてないみたいね・・」
隣ではいつものシャン、戦闘行為がないわけで流石にあの黒服姿は恥ずかしかったようで
街娘の格好だ。それでも肩に鋼の鷲を乗せているので街ではかなり目立っていた・・
「まぁまぁ、とりあえずはこれ!レイハさんの為に造りました!」
大きな袋から取り出したのは菱形の大きな刃
盾ほどの大きさがあり一点には丸い穴が開いている
「私に・・・ですか?ですが私にはすでに得物が・・」
「ああっ、これはメインの得物ではなくあのクナイのような飛び道具なんですよ。ほらっ」
リュートが菱形の刃に触れるとそれは広がっていき、四方へ大きな刃を見せる巨大な手裏剣となった
あの丸く開いていた穴は4枚の刃の支点となりさらにはグリップにもなっているようだ
「折り畳み式の巨大手裏剣ですか・・。
里でも使いこなせるものが少なかった物ですね」
これにはレイハも目を丸くして驚く
「どうです?クナイだけだとどうしても一撃の威力に限界がありますから
それを補うものと思って造りましたが・・」
実際にレイハに手渡して感触を確かめてもらう・・
レイハはマジマジと巨大な手裏剣を手に取り
「いいですね。切れ味もさることながらこれだけの大刃なのに軽い・・。
折り畳みと言う事で携帯性も申し分ないです」
「でしょ!忍びという職だと巨大な得物は命取りになりかねないので
『隠密性に優れる必殺の飛び道具』というコンセプトで造りました」
いい仕事ができたようで鼻が高いリュート
「試しに私が投げてみたんだけど大木がばっさり切れたわよ。
でも刃の部分を持つから手袋をしないと危ないけどね」
「それは承知ですよ。私もこの類の鍛錬は受けてますので・・。
ですがこの中心部分・・、取っ手があるのは何故ですか?
ここを持って投げることはないでしょうが・・」
巨大な手裏剣の中心に穴が開き、そこをまたぐように取っ手があるのだ
「それは、折り畳んだ時に盾の変わりに使えるようにと思いまして・・。
万が一の時に役だってくれると思います」
「そうですか・・ありがとうございます」
造り手の考えが盛り込まれた品物に思わず頬を緩めてしまうレイハ。
彼女は他人に得物をもらった事など里での生活以来ほとんどないのだ
「・・、こんなもん俺に対して投げるなよ?レイハ・・。でっ名はなんていうんだ?」
マジマジと手裏剣を見ていたライ、何故そんなことを言うのかというと、
彼、仕事をさぼったりした時によくレイハからクナイを投げられているのだ・・・。
「そうですね、投げた時に綺麗な円を描いたので一応『十六夜』ってのはどうかな〜
っと思っているんですが・・レイハさんどうです?」
「いいですね。ではこの『十六夜』ありがたく頂戴します」
そう言い刃を折り畳んだかと思うと手品のようにパッと十六夜が消えてしまった
「・・・あの、お礼をねだるわけでもないんですが・・。その収納術。どういうカラクリなんですか?」
「残念ですが種明かしはできません。
十六夜だけに闇夜の雲に隠れた・・っということにしておきましょう」
怪しく微笑むレイハ。結構な大きさな物だったが見事に消えたのでリュートもさらに疑問が深まる・・
「でっ、他にも何か造ったようだけど・・、何かあるのか?」
「ええっ、後はあの魂晶鋼で造った物とこの剣ですね」
テーブルにコトっと置くは白い鞘に収められた宝剣というべき見事な装飾がされた剣
「これ・・か?」
「ええっ、どなたかに使ってもらおうと皆さんの得物を拝見して参考に打っていたんですが・・
冷静になって考えてみれば皆さんそう言うところには
無駄がないので僕が何かしても必要ないと思いまして・・・」
頭を掻きながらリュート、騎士団の得物を拝んで興奮してそこまですぐ気付かなかったのが
情けない・・っと言った感じだ
「へぇ、でっ、方向転換にこんな派手な物を造ったのか?」
自分の意図を読んだリュートにライもニヤニヤとする。
「ええっ、この屋敷だって仮にも王が住む「お城」なわけですからこんなオブジェも必要かな・・
っというのもありますが、実際はこの間の僕が起こした事件の教訓で・・。
咄嗟に自分の得物が持てなかったアレスさんが
火掻き棒であの大太刀に挑んだようですのでそんな事態のために
普段は飾り、いざという時に咄嗟に武器としても扱える代物をと思いまして」
「・・それがお前なりの詫び・・っということか」
「あははは・・、まぁそんなところです。まぁただ派手ってわけでもないですよ?
邪気を払うといわれているハルモニア純銀や幸運を呼ぶといわれている
鉱石ラピスラズリなどを装飾につかいましたので縁起ものにでも・・」
「ふぅん・・。この装飾もただの飾りじゃないってことか・・。サンキュ、居間にでも飾らさせてもらうよ」
「ありがとうございます、後は・・とっておきのですね・・」
最後の作品を出そうとした時・・・
「おっ、戻ってきていたカ」
「あっ、おつかれさん、リュート君」
今まで講義が何かしていたのかはたまた偶然かルーとディが一緒に入ってきた
「ああっ、リュート君。良いものができたよ!」
「それは使い手が決める事ダ、あの物で何かできたのカ?」
問答無用に『見せろ』なルーさん・・
「え・・ええ。とりあえずはなんとかできました。これです」
リュートが袋から取り出したのは一対の飾り篭手・・。
白銀のような輝きを見せるが篭手の先に対象に割れた小さなハートがある以外は飾り気は全くない
「ほう・・防具に使ったカ・・。でっ、どのような物に仕上がったのだ」
「ええっ、あの魂晶鋼はどうやら人の気迫により状態を変化させる特性があるようです。
さらにはそれにより形状を記憶するらしくてこの篭手から様々に
得物を変化させれるようにしてみました」
「・・?この篭手から?」
「ええっ、一見不可能に見えるかもしれませんが実際試してみました・・。
ああっ、でもこれ、その人の体質みたいなのにも左右されるみたいでシャン専用って事にしました。
僕だとどうも無理なようで・・」
「へぇ・・。そこまで変幻自在なものなんだ・・。でもほんと想像できないよ」
「まぁ物は試し。シャン。見せてあげてよ」
「うん、わかったわ・・じゃあ・・」
静かに飾り篭手を身につけるシャン。そして素早く篭手を交差させて触れさせる
「はぁ!」
気合いとともに篭手がグニャリと歪んだかと思うと次の瞬間には
シャンの右手に銀の棍が姿を見せていた
「・・・正に一瞬・・ですね」
その変化の早さにレイハも驚く
「まだまだこれからですよ、この棍が武装の基本形態。
ここから「鎌」、「鞭」、「剣槍」の三形態に変化できます。
・・まぁここでは少々狭いので〜、外で試して見ましょうか。
レイハさんも十六夜の切れ味を見たいでしょうし♪」
「そうですね・・。では裏庭に参りましょうか」
「・・今の状態だけでもすごく見えるんだけどな〜」
ライはこれだけでも満足みたいだが
ルーはまだ及第点をくれそうにない・・
とにかく部屋の物を破壊するわけにもいかないので一同いそいそと
裏庭へ出ていった

「じゃあ・・行くわよ!まず・・『サイズ』!!」
棍棒を振るかと思いきや突如先端から生えてくる大きな刃。
以前の得物「カラミティテラー」に比べると大きさは小さいがそれでも
大鎌の部類には入る物だ
元々の得物なだけに扱いなれており、的変わりにライが投げた丸太をばっさりと斬っていく
「次は『ウィップ』!!」
シャンの声と共に鎌全体が緩み急にしな垂れたかと思うと鞭形態への変形が完了。
銀の棘が所々あり見るからに痛そう
「お〜ほっほっほ!!」
高笑いとともに地に落ちた材木を切り刻み木の粉を宙に降らせる
「・・人格変わってないか・・?」
「・・・アルシアさんの『龍尾』を参考にしたから・・でしょうかねぇ・・?」
ともあれ、端から見ていると危ない人なので今度はライは訓練用の鉄で補強した棍を投げた・・・、
それも本気の力で
まともに当たれば即死は間違いなしな棍、しかしシャンはすぐそれに気付き・・
「『ランス』!!」
今までで一番の気合い声で叫ぶ
そうすると鞭が棍形態になりさらに棍の中腹が膨れ上がり巨大な刃となった・・
「ええい!!」
飛びかかる鉄棍に剣槍となった魂晶鋼を突きたてスパッと切断する
「・・・お見事、それぞれの特性を活かせば一級の得物になるだろうな」
「ありがとうございます、シャンも実際どんな感じ?」
「まぁ、扱いやすいけど・・。前はこれに身体押さえつけられてたからあんまり好い気はしないわ」
「まぁそれは仕方あるまい、だからこそそれがお前の身体に馴染んでいるのだろうからナ」
「はぁ・・」
テストは終わりと感じ剣槍形態から棍へ戻しもとの篭手へ・・
面倒かと思いきやかなりの早さで元に戻っていった
「ふむ、それだけ勝手がいいと私直々に安定させたことだけはある」
「ルーさん、ありがとうございます!」
この女性に認められた事はかなりのものでリュートも嬉しそう・・
「でも、これの名前はどうなんです?」
「それがね、色んな形態があるからつけにくいみたいなの・・。
ライさん、なんか良いネーミングある?」
「ええっ!?俺にふるなよ!そうだな・・気合いと共に変化するから
『魂応器』・・っでいいんじゃないか?」
「とってつけたような・・、でもいいんじゃないですか?ライさんにしては」
「う・る・せ・え!」
毒舌なディの口をつかんで引っ張るライ。
ともあれ、意外な収穫によりシャンの新しい得物が手に入り、
リュートも満足げだった。

因みに・・

斬!!

「良い切れ味ですね・・」
鋭く孤を描く巨大手裏剣『十六夜』。
どれだけの切れ具合が確認するために林の木々に向かって目一杯投げたのだ
結果は十六夜の軌道に生えていた木々は全てばっさりと・・
レイハの傍の地面へ戻ってきて突き刺さった頃には木が倒れる音が連続して鳴り響いた
「っうか切れすぎだ・・。遠心力に物を言わせて凄まじいことになっているな」
思わず感嘆の息をつくライ・・
「良い物を頂きました。これで少しはライも仕事についてくれますね」
「お、おい。んなもん投げるなよ?・・何だ、その目は!?」
「室内では・・投げませんよ・・フフフ・・」
魔性の笑みを浮かべるレイハさん、対しライはこんなものを造った
リュートを恨めしくおもうのだった・・


この屋敷での生活にも中々なじんできたがいつまでも寄生するわけにもいかない
そのためにリュートは今後の旅のプランを立てながら1度師匠の元へ戻ろうと提案し
どのようなルートを取るかレイハに地図を見せてもらっている
・・、交易隊を手配しようかというライの心使いもあったが流石にそこまではあつかましいので
ブラブラ旅路につくことになったのだ
「でもほんと、歩いて帰るのですか?結構な長旅になりますよ?」
居間でルナとフィアラルと遊んでいるシャンに全快になったディが訪ねる
「ううん、まぁ元々馬に揺られて旅するのってなれてないからね。
私達、いっつも歩いて旅しているから」
「へぇ・・、シャンさんとリュート君ってどんな出会いだったの?」
お茶を入れて持って来てくれたリオがシャンへ・・。
リオはいつものメイド服姿なのだが頭に銀羽根のサークレットをつけている
「最初は〜、あの子が私の得物に興味を示してしつこくつきまとってきた事かな?
いくら逃げても「見せて 見せて」ってほんと、しつこかったわよ」
苦笑いのシャン。当初はものすごく迷惑だったが今となれば良い思い出・・
「・・・リュート君って・・・」
「ストーカー?」
「ただの鉱石馬鹿よ、でもそれから成り行きで一緒に旅するようになって・・
私の居場所を作ってくれたりしたわ。・・・不器用だけどね」
「わう? シャン 顔 赤い!」
「ルナ!・・っもう!」
結構照れ照れなシャン、惚気話なんてしたことないだけに頬も少し赤い
「いいですよ〜、そういうの。運命の出会いってわけですか?」
「あっ、ディもそんなこと言っちゃって〜。ルナがいるじゃない?」
「?? 何?」
「・・・ルナにそういうのを理解させるのは難しいもんですよ・・」
「いいじゃない、ルナちゃんはルナちゃんで・・」
「まぁそれもそうですね〜。でも姉様、今日は何でその羽飾りをつけているのですか?
・・片翼で何だか高そうですし」
「そう〜、えへへ♪似合うでしょ♪」
「とても似合ってますよ、リオさんにぴったりで・・。」
「やだ、シャンちゃんまで〜。リュート君に感謝しないと♪」

ピシッ!!

・・思わずリオが口を滑らせた言葉にシャンが凍りつく・・
「・・・・・・・・今、なんて言いました?」
「え〜っと〜、ディ、私何て言ったんだっけぇ・・」
「見苦しいですよ・・・、お姉様・・」
「ううん・・・、実は〜、私が軽くお願いしたらリュート君が作ってくれてね・・」
「・・・・・・・、そうでしたか。あの子ったらそんな簡単に・・」
意外にケロッとしているシャン、別に浮気とかではないのでホッとしたようだ
「・・あ〜、・・・大丈夫?ごめんなさいね・・」
「いえっ、いいんですよ。・・あの子、もうすぐ戦場に赴くことになるでしょうから・・」
「戦場・・?」
ディが思わず聞く。今後は師匠の元へ戻るとしか聞いていなかったのだ
「・・、この事はリュートには内緒にしているの。内緒にしてくれる?」
「・・は・・はい・・」
「「・・ゴクッ」」
思った以上に深刻そうな表情のシャンに居間でダラダラしていた三人も圧倒・・
「実は・・、今回のリュートの旅が終ってもし師匠さんが認めたら自立させるって言っていたの。
それで、師匠さんと親交のある人がその祝いに店を建ててくれるって言われていて・・」
「すっ、すごい!じゃあもし合格ならあの年齢で一国一城の主になるわけですか!!
・・それは戦場になりますね!」
友の出世の可能性にディも嬉しそうだが何故かシャンは浮かない顔・・
「・・・・・・・、その店が建てられる街の外れに・・・・セシルが住んでいるの」
「「!!!!」」
「へぇ、偶然ってあるものなのねぇ」
「偶然じゃないですよ、その親交のある人、
ロカルノって言ってセシルと一緒に行動している人なんです。
それで風水だとか色々調べた結果あの人達が住んでいる街に建てたらいいって・・
師匠さんも乗り気でしたので」
「・・で・・でも!それだとリュート君襲われちゃいますよ!
何で師匠さんにセシルのこと言わないんです!?」
「・・言ったわよ。それを聞いたら即決定・・「極限状態のほうがいいものができる」って言って・・」
「・・・じゃ・・じゃあ・・」
「たぶんあの『魂応器』で合格でしょうし・・。その後が心配なの・・。
だから旅中で逞しくなってくれればいいと思って厳しくしていたの」
「そ・・・そうですか・・。じゃあシャンさんはどうするんです?」
「もちろん一緒よ。いざと言う時は私がリュートを守るわ」
「・・・戦場にいくわけね。でも・・、セシルさんそんなに狂暴じゃなかったわよ?」

「姉様は本当のセシルを知らないんですよ!」
「あいつ 悪魔!!」
「リュートなんて逆さに吊るされて食べられるとこだったんだから!」

「・・・そ・・そうなの・・?」
以前彼女を見た時は気さくで自分にも明るく接していたのでどうもピンとこないリオ
作る料理はかなりの破壊力を誇っていたがそれはそれで「苦手」という一言で済む
・・・恋人がもろ被害を受けたが・・
それはセシルが住む街の住民も同じことで彼女のことを快く思っている人が多いのだ
「まぁ・・、新しい得物もできたし、ロカルノさんもいるから大丈夫だと思うんだけど・・
たまに身体の震えが止まらないのよね・・」
「・・・・よくわかります・・」
同被害者のディが唸りながら呟く。
「何でセシルは獣人や少年少女を襲うんでしょうね?ほんと、人間なのかしら・・」
「セシル!悪魔!!」
「それは間違いないです!」
「・・・はははは・・・」
ルナのディの拒絶反応に唖然とするリオ。
フィアラルに至っては「俺が守る!」な如くに翼を広げている
そんなところへ

ガチャ・・

不意に居間の扉が開きリュートが入ってくる
手には世界地図を持っている
「あっ、シャン!ここにいたんだ!」
「リュート、話はついたの?」
「うん、長期間の海路は酔っちゃうから陸路を使ってボチボチにしようかな・・って
急いで帰る必要もないだろうしさ。」
「そうね、じゃあまたゆっくり帰ろっか。でもリュート・・」
「何?」
「リオさんへ装飾品プレゼントして別れが惜しくないかしら・・?」
急に顔に影がさすシャン・・、口元が笑っているのが特に恐い・・
「えっ!?あ・・・リオさん?」
ピシャリと言われてリュートたじたじ、
リオに目をやるが手を合わせて「ごめんなさい」の仕草をするのみだ
「あ〜・・。シャン、ちょっと庭に来てほしいんだけど〜・いいかな?」
「・・?・・・いいわよ」
彼女も彼女で何か企んでいる様子だ・・
静かに出ていく二人なのだがディやリオは苦笑いするのみだ
フィアラルもついて行こうとしたがリオに捕まれてあえなく玩具にされた・・

「どうしたの?いきなりこんなところに連れてきて・・」
リュートが連れてきたのは裏庭、全く人目につかなくてシャンも何だか心配してしまう
「うん・・渡したいものがあってね・・はい」
取り出したのは小さな宝石箱
「リュート?」
静かに開けてみると中には小さな羽根の装飾がされた指輪。
柿色のような宝石が羽根を生やしたように作られており相当手が込められているのがわかる
「あのリオさんにあげたの、これの為の練習用だったんだ。シャンに受けとってもらいたくてね」
「え・・あの・・これって・・俗に言う・・「エンゲージリング」って言うの?」
本人は求婚の申し出と思いこんで嬉しそうに聞くのだが
「へっ?エンゲージリングって何?」
「・・・・」
「どっ、どうしたの?シャン!?」
「何でもない・・・。でもどうしたの?いきなりこんな綺麗な物を・・」
「うん、その中央にはめてあるのはあの警報機を応用したものなんだ。
僕の身に何か起こったら光出す仕組みにしてある。
同じものも僕は持っていてこれはシャンの身に何かあったら反応するようにしたんだ」
「・・・・リュート・・」
「ほらっ、この間僕が知らない間にシャン、あんな事あっただろ?
そんな事気付かなかったのが悔しくてさ。
もしもっと僕が君の異常に気づいていたら君が苦しまずに済んだかもしれないから・・。
だからこれを・・」
「リュート・・ありがとう。受けとってあげるわ♪」
お馬鹿な事をしていてもやはり彼女の身が心配なリュート、
その気持ちにシャンは嬉しく思い照れながら指輪を左手の薬指にはめる」
「でもっ、エンゲージリングって何?名前からして相手の生命力を吸収しそうな感じだけど」
・・人によっては正解です
「それは、自分で調べなさい♪あっ、ちょうどいいから私からもプレゼント、はい♪」
意外にシャンが取り出したのは質素ながらも小奇麗な首輪。装飾は一切ない
「えっ、これを・・僕に?」
「うん・・、君が工房にこもっていた時にちょっと・・ね」
「わぁ・・ありがとう。どう?似合う?」
首輪をつけてみるリュート、犬人だけに似合いすぎている・・。
サイズ的には大きめなので首元にはかなり余裕があるようだ
「とっても似合っているわよ♪この首輪はね、
君がいけない事した時のオシオキ用にと思って買ったの♪」
「えっ!?いやいや、シャン。僕はそんなこと・・」
「何よ、あの大太刀に心を支配されてアレスさんに斬りかかったじゃない?
あまり外で恥かいちゃだめよ?」
「あれは・・仕方ないというか・・間が悪いというか・・」
「そんな言い訳ですむことじゃないの。
いくら気前がいいからって一国の主が従える騎士団の一員なのよ?
何かあったらギロチンにかけられても文句いえないわよ」
「そりゃそうだけど・・、でもこの首輪でどうするんだよ?」
「・・『おすわり』」

ギュ!

「ぐえっ・・、じゃ・・ジャン・・・」
「ルーさんが面白そうに話を聞いてちょっと細工したんだって・・。
おすわり(ギュ!!)っていうと首が締まるわけ。
リュート自身じゃ外せないからそのつもりで♪」
「しゃ・・シャーン・・」
「君がしっかりすれば大丈夫よ・・。私は信じているから・・」
そういうと微笑みながらリュートの抱きつくシャン
「・・・、わかった。君が気苦労かけない男になるよ・・シャン」
シャンの気持ちに応えるようにきつく抱き締める。
・・しばらく裏庭に二人の世界が広まったのは言うまでもない

因みにその光景を偶然裏庭の清掃をしようとしていたアレスが目撃してどうすればいいか
悩んでいたのだがそれはまた、別の話・・

ヴァリゴラの一件から世話になっているライ達の屋敷とも
別れの時がきた・・
陸路による帰路を選んだリュートとシャンにライも気前よく旅費を渡した
それに対してリュート達も迷惑をかけたので受け取れないと首を横に振ったが
ルーの一声にて受け取る事に・・。
「皆さんお世話になりました」
屋敷の前、元気に挨拶するリュート
「いやいや、結構楽しかったぜ?良い物ももらったことだしな」
「そうですね、貴方にもらった『十六夜』大切に扱わせていただきます」
いつものスーツ姿のレイハ、微笑みながらそう言う
「私も大切に使うね。このサークレット♪」
リオもよほど気に入ったのだがよく銀羽根のサークレットをしているようだ
「まぁ、お前達も達者でナ。精進すれば一流とも言われるようになるダロウ」
「そうそう、向こうでセシルにあったらよろしくって言っておいて〜♪」
「ぶっ・・文通しているならそれで間に合わせてください!アルシアさん!」
アルシアの悪戯な言葉にシャンも慌ててしまう
「・・・、元気でな」
そんな中でもクールな黒豹、シエルさん
「シエルさん・・、貴方のプロマイド絵画を買いましたので毎日必ず・・」
「おすわり」
ギュッ!
「オゴッ・・・、すみません・・」
「・・・、絵画なんてどこに売っていたんだ?」
「裏通りの強面のお兄さんが・・・、こんな感じです」
鞄から大事そうに取り出したのはほんとそのまま写生されたシエル嬢。
黒い薔薇の縁取りがされており書いた絵師の情熱が伝わってくる出来和えだ
「・・・・・、似ているか?」
シエルはこれにはどう答えて良いかわからない状態だ
「・・そっくりダ。あのゴロツキども・・、こんなものをやっているのか・・」
「まぁ親衛隊だから・・な」
ライもこんなものが売られているとは思いもせずただただ唖然としてる
「お二人ともお達者で。僕達もこれから仕事だから途中まで一緒なのかもしれないね」
「いえっ、カインさんにもお世話になりました」
「いやいや、僕の方こそ。君に僕達の歴史を語ったのが嬉しくてね。
いっそ騎士を引退するのを機に自伝でも書こうかと思ったぐらいだよ」
「カインったら・・」
バカップルなカイン&ヒルデ・・彼らはいつまでも彼らのままだろう・・たぶん
「とりあえずはお別れですね。
僕達も結構どこかへ出向くほうなのでまたどこかで会えると信じています」
「わう!また会う!」
「ディ君にルナ・・そうだね!いつか僕も店を開くからそうなったら一度来てよ!」
真実を知らないリュート、友に自分の目標となる店に招こうと目を輝かせて言い放つ
「・・あ・・・そう・・ですね」
「くぅん・・」
何故かテンションダウンな二人
「どうしたんだ二人とも、それにシャンまで。まぁ店を開いたら祝いの一報にこいつらを向かわせるよ。でもよかったのか?俺達の得物を打った鍛冶師に会わなくて?結構貴重な体験だぜ?」
彼らの防具や得物を打った伝説とも言える鍛冶師ブラミスを紹介しようかと
以前ライはリュートに言っていたのだ
「とりあえずは・・。皆さんの武器や防具を見て自分なりに頑張ってみたいんです。
それが全て納得がいってさらに上を目指そうと思ったら・・改めて訪問しますよ」
「そうですか。がんばってください。フィアラルのことも頼みましたよ」
「もちろん、僕達の傑作だからね♪」
シャンの肩にとまる鋼の鷲を二人で見て改めて握手をする二人・・
それ以上の言葉は要らないようだ
「シャン!ばいばい!」
「ルナも元気でね。ディ君と仲良く・・ね?」
「ディ 舎弟 仲良く 違う」
「まぁまぁそう言わないで。もう少ししたらわかるわよ。大切な気持ちが・・ね♪」
「???」
「シャンさん・・、まぁ僕達もボチボチがんばります」
にこやかに笑うディ、こんな相方だから焦っても仕方ない・・そんな感じだ
「がんばって!じゃあ皆さん!失礼します!」
「機会があればまたよしてもらいます!」
「・・・」 さようならレイハさん!

・・・フィアラルも翼を広げて挨拶を・・、どうやらレイハが好きらしい・・。
・・極星騎士団の面々は彼らの姿が消えるまで見送り続けた
そして二人も何度も振りかえり手を振って応えた
「さて!目指すはハイデルベルク、気ままにいこうか!」
「急いでどうにかなる距離じゃないじゃない。とりあえずはゆっくり手をつないでいきましょう?」
「そうだね・・シャン」
天は高く雲は晴れ。見渡す限りの草原へと二人は手をつないで歩いていった


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