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八章  「霧は晴れる」


シウォング王の屋敷に世話になって数日
フィアラルも目を醒ましたので、その日はリュートとディが居間を占拠してメンテを行っている。
テーブルの上に広げたシートの上に眠るように機動停止状態の
フィアラル・・。っと言っても眠っているようにしか見えないのだが・・
「異常はなし・・。流石はオリハルコンとミスリルの合金。表面損傷はほとんどない・・」
フィアラルの関節部や翼を診るリュート。
この屋敷にきてデレデレしっぱなしだが本職ともなるとやはり真剣な顔つきになる
「そうですね。あの黒光弾を二度も耐え、さらには『ブラストドライブ』で
突破口を開いてこれですから・・」
ディも動力源となる魔石の具合を調べている
「お前達、若いから熱中する気持ちは大事だけど、
鉄相手ばっかりって折角可愛い相方がいるのに・・・不毛だぜ?」
その光景を見ていて呆れるライ・・。ソファで寝転んでレイハにマッサージをしてもらっている
隣ではルーがいつもの如くお菓子を頬張っている。
そしてリオがお茶を持ってきており優雅にティータイム・・
「・・・・ルナと僕の状態・・知っているんじゃないんですか?」
「もちろん♪」
「・・ナンチャッテ王のくせに・・」
「まぁまぁ、シャンは寝ているからその間にこいつもきちんとしておかないといけませんので」
「・・鋼の鷲か・・。性能は道中聞いたがそれほどすごいようには見えないな〜」
「ですが主にあらかじめ従順でしたら非常に役に立ちます。
戦闘能力も高そうですし隠密行動には優秀でしょう」
ライの腰をもんでいるレイハがちらりとフィアラルの嘴を見てそう言う
一目で切れ味のいい代物と判断したようだ
「ふんっ、鍛冶師や魔術士が銃だの擬似生命だの造れて当然。
その程度でイイ気になるとは未熟者メっ!!!」
師匠らしい忠告?なルーさん・・
「「・・・(アンタは特別や・・・)」」
ディとライが心内でぼやく・・。そもそも人外な道を歩んでいるので当然・・
「そ、そうなんですか!!! もっと精進せねば・・・」
 「おう、ガンバレ。 そうすれば、死ぬまでに私の足元ぐらいにはなれるゾ」
「「・・・(それでも無理っ!!!))」」
・・土俵が違いマス
「ま・・まぁそれはともかく。これでよし!もう起きて良いよ・・フィアラル」
パーツを組み立て万事OK。
フィアラルはそれとともに自動的に回路の立ち上げ目を醒ます・・
周囲を見て「ここどこだ?」っと言った感じだ
「おはよう、フィアラル。ここはディ君の家だよ。」
リュートの言葉に「なるほど・・」っとうなずく
「へぇ、よくできているもんだな」
「当然ですよ、思考系のみに魔石を使ったくらいなんですから」
ディが毒舌口調に・・。師弟揃って毒舌である
「でも意外に表情豊かで可愛い〜」
リオが目を丸くしてフィアラルに触る。フィアラルは目を細めてリオの手に頬を寄せる
「おべっか売りおって・・」
「まぁまぁ、結構賢いですよ。」
そんな中フィアラルは何かに気付いたかのようにレイハを見る・・
そして一直線に飛びレイハの肩にとまる
「・・本当、お利口ですね」
静かに肩にとまった鋼の鷲にレイハも優しくなでてやる
「・・フィアラルって・・・。黒髪の女性が好きなのかな?」
「まさか・・。でも実はフィアラルはレイハさんが伝書用に使ったりしている
鷲の外見をイメージしましたからね。それが関係しているかも・・」
「あの子を・・?そう言われてみたらどことなしに似てますね。
でも伝書用なら人懐っこいのは頂けませんね」
「ああっ、それは主の言葉ひとつで変わりますよ。僕もそれで襲われたんですから」
造り手としては忘れられない苦い思い出ゆえに二人はもはや苦笑いな状態・・
「・・主って・・お前達じゃないのか?」
「そうなる予定だったんですが・・、何故かシャンさんが飼い主になったんですよ」
「そういえばシャンはどこなの?」
居間にこないシャンにリオが首をかしげる。部屋で一人でいることはあまりない彼女なのだ
「気分が悪いって寝こんでいましたよ。まぁ大丈夫そうでしたが・・」
「激戦の後に体調の崩す事はよくあることだ。そっとしておいてやれよ」
歴戦の戦士であるライがそう言う。
戦闘というものは時に自分の体のリミッターを破ることがある。
そのツケとして後で身体にガタがくるのだ
「ふんっ、それよりも造った物に牙を向けるとは・・もう少し上手に造れんのカ?」
ルーが傲慢に言い放ちお菓子を口に運ぼうとした・・
しかし
それを素早く奪い取る影が・・
フィアラルが器用にお菓子を爪で掴み取りレイハに差し出そうとしている
「私に・・ですか?」
「・・(コクコク)」
・・・・意外に点数稼ぎ?うなずきながら差し出されたレイハの手にお菓子を置く・・
爪でつかんだのにお菓子は潰れていなく見事な力加減である。
「・・・(ピクピク・・)」
これにはルーさん青筋立ててワナワナと・・。
弟子の造った使い魔如きに馬鹿にされては師匠の名折れ・・
「ル・・ルー・・落ちつこうね・・」
ライがなだめようとするが
「これが落ちつけるカ!」
我慢ならぬようで加減しながらも魔法の矢を発動!

反射(リフレクト)!!

「「「うあああああ!!」」」
当たって死にこそしないがフィアラルの反射能力により複数に分かれ加速した魔法の矢・・
その勢いだけにかなり驚く面々

・・その後、ルーさんライによってオシオキ部屋へ連行・・・
幸い怪我人はなかったが居間が散らかったのは言うまでもない


その夜・・

「う・・・あ・・・ああ」
部屋でうなされるシャン・・。布団を弾き汗が滲んでいる
「・・・・・・」
部屋の中には濃い闇に包まれてる。
気配こそないが常人でも見れるくらい濃い闇色の霧が・・
そしてゆっくりのシャンの体内に侵入していく
それと同時にシャンは身体を強張らせたがやがて嘘の様に静まり返った・・。
身体の表面をボコボコと波打ちながら・・・・





コンコン


シャンの部屋のその出来事から間もなく
突如ディの部屋をノックする音が響く。
「はい?開いてますよ・・?」
夜中の訪問者というのはディにとっては珍しいもの・・
むしろ逆に彼が目撃するほうなのだ、
四人の姫や自分の姉が含み笑いをしながら相方の部屋に入るのを
「・・・リュート君かな?」
返事がないのでこちらから扉を開ける・・、そこにはシャンの姿が・・
用意した寝巻きを着ているが汗が染みついてへばりついており肌が透けて見えるくらいだ
「・・・・・・」
「シャンさん、大丈夫ですか?汗びっしょりですよ?」
「ディ・・」
「???でもこんな夜中にこっそりこられたらリュート君も誤解しますよ?
まぁ彼ならそんなことには疎いですからわからないですか・・」
笑いながら話すディ。対しシャンは無表情のままに部屋に入り扉を閉める
「・・・・・ホシイ・・」
「??・・え・・、まっ、まさか・・本当に・・?」
タジタジするディにシャンが突然押し倒す!!
「ちょ・・ちょっと!シャンさん!」
「貴方ガ・・欲シイ・・」
明らかに彼女の声ではない不気味な声でそういう
押し倒したディに口付けを交わす、それも極めて激しいものを・・
「んっ!?んんん!!」
その尋常ではない力にディの異常だと感じたが

コォォォォォォ・・・

口からシャンが息を吸ったかと思うとたちまち身体の力が抜けていく・・
「んんんっ!!?(魂盗(ソウル=スティール)!?シャンさんじゃ・・ない・・・)」
大した抵抗もできずディは生命力を取られ昏倒した・・・
「・・・コレデ・・。次ハアノ獣人ニスルカ・・」
静かに笑うシャンにしてシャンならざぬ女性・・ふらつきながらもディの部屋を後にする
次の標的を目指して・・

しかし

「くぅん・・」 ディ・・?
シャンが部屋を出たすぐ後
何ともなしに眠気眼のままルナがディの部屋に入ってきた
昼間走りまわっているだけにすぐ寝てしまう彼女だが何故か寝つけず腹いせというかなんというか・・、舎弟を巻き込んでやろうと思い部屋にきたのだ
「わう?」 寝相悪いよ?
地べたにうつむせになっているディ、ベットが荒れているしてっきり落っこちたのだと
勘違いしている様だ
その様子を扉から静かに見ている影・・・
「ディ ちゃんと 寝る・・」
仕方なしにディに迫る・・が・・
「ルナちゃん、ここにいたの?」
不意に声が・・、降りかえるとシャンがそこに・・
「わう?」 シャンもどうしたの?
「うん?ちょっと寝苦しくてお手洗いに行こうと思ったらルナちゃんがここに入るのが見えたから・・」
笑顔で話すシャン・・だが、手が軽く震えており顔は汗が噴き出ている・・
「シャン 大丈夫?」
具合が悪い事はルナも知っているのでかなり心配そう・・、
「だ・・・大丈夫よ・・・、ダイジョウブ・・」
顔がかなり引きつっているシャン
そこで
「う・・・ルナ・・」
ディがかすかに唸る、それにルナは反応しディの方を見てしまった
そこには頬のこけた瀕死のディの姿が・・
「ディ!」
「ル・・・ルナちゃん逃げて!!」
後からシャンの叫び声が・・、ルナはそれに反応することなく意識を失った・・





シャンの隣の部屋、シャンの具合が悪いということでフィアラルを
自分の部屋で寝かせることにしたリュート。
「明日辺りにはルナのあの大太刀をよく見せてもらおうかな、フィアラルはどうする?」
「・・・・・」 どうするって・・
首をかしげるフィアラル、発動してからはずっとシャンの隣にいたので一人で
何かするということは思いつかないようだ
「ははっ、じゃあシャンの看病かな?でも明日になればきっと体調もよくなるだろうし・・」
フィアラルの頭を撫でるリュート。そして明かりを消そうとする・・が

ギィ・・・

不意に開かれる扉・・。入ってきたのは・・
「シャン・・、どうしたの?すごい汗だよ」
寝巻きが着崩れて胸も見えているシャン、顔も汗でびっしょりで息が荒い・・
「リュー・・・ト・・」
荒い息使いでリュートに近寄るシャン、足の運びもふらついておりかなり辛そうだ
「だ・・大丈夫!?シャン!」
慌ててシャンを抱きとめる、アルシアを呼ぼうかどうか迷っていると・・
「リュート・・リュート・・・・て・・」
「え・・なんだい?」
「に・・逃げて!」
必死の言葉でシャンが叫ぶ、それと同時にシャンの顔が急に鬼のようにキツイ形相になる
目も血のような緋色へ・・
ガシッ・・
「ぐ・・あ・・・シャン・・?」
すごい力で首を締めてくるシャン・・、元々力が強くない彼女だが軽がると
リュートを持ち上げている
「・・・・、フフフ・・」
「!?・・シャンの声じゃ・・ない?」
鬼のようなシャンの口から放たれるのは男性とも女性とも違う不気味な声・・
それは以前あの洞穴で聞いた・・
「キサマ・・、アノ程度デ我ヲ滅シタと思ッタカ・・」
グググッ・・っとさらに力を込める。
窒息などではなく首の骨をへし折るくらいの怪力だ
「ヴァリゴ・・・ぐあっ!」
息ができなく、次第に身体の力が抜けてくる
そこへ・・
「!!」
フィアラルが急いで飛びかかり、シャンへ体当たり・・
主には絶対に手を上げない鋼の鷲は今造り手を殺そうとしている女性をシャンとは認識しないようだ
それでも鋭い爪を出さずに突進するのはフィアラルのためらいか・・
「グア・・」
中々に威力のある突進を行いリュートをヴァリゴラに支配されたシャンから解放する・・
「げほっげほ・・、くそっ!シャンの姿の生屍か!」
急いで寝床に置いた『法皇』と『女教皇』を抜く
「ホウ・・、コノ女ヲ殺ス気カ・・?」
「なんだと!」
「・・・フフ・・、・・・りゅ・・リュート・・」
急に表情が彼女のモノに戻る、それと共に身体が激しく痙攣を・・
「シャン!大丈夫!?」
「駄目!きちゃ駄目・・!んんんっ!!」
再び苦しみだしあの鬼の表情へ・・
「・・身体を・・乗っ取られている・・?」
「フフフ・・、ソウイウコトダ。コノ娘ハアノ戦デ一番我ト接シタカラナ・・。
アノ獣人娘ドモノホウガ素材トシテハ優秀ダッタガ・・」
「ぐっ・・」
「サァ、我ヲ討テルカ?」
「くそ・・・・、僕には・・撃てない・・・!!」
銃を向けたまま固まってしまう、身体を乗っ取られているとは言え目の前にいるのは
苦楽を共にしたパートナー、トリガーを引くことは・・できない
「フフフフ・・・ソレデイイ・・」
にやけるシャン=ヴァリゴラ・・そこへさらに襲いかかるフィアラル
彼(?)にはためらいはなくもはやシャンをシャンとしては認識していなく
2番目の恩師リュートの命を守ることを最優先としている
「ウルサイ!」
突如シャンの腕から放たれる闇色の液体!
それは鋭い刃と化してフィアラルの身体を貫通させ・・・

ガン!!

思いっきり床に叩きつける、床は破れフィアラルはそこに埋もれるような形になる
動力部に直撃したのかフィアラルはそのまま動かなくなってしまった
「・・液体の刃・・。そんな物まで・・」
「アノ子供ノ力ヲ吸収シテヤット使エルヨウニナッタモノダ・・
イイゾ・・、コノ身体ハナジム・・」
見ればシャンの口から闇色の液体はこぼれている・・
さらには臍からも漏れて来ており彼女の身体を薄く包んでいる・・。
その中で右腕に液体が集まっており腕が滲んで見えない
「子供・・?ディ君か!彼に何をした!?」
「言ッテモ無駄ダ・・、オ前ハモウ死ヌノダカラナ・・」
そう言うとシャン=ヴァリゴラの右腕をかざしあの液体が伸びて刃となり
リュートの額にピタリと止まる・・
「・・・!?」
「サヨウナラ、我ヲ滅シタショウネ・・・!!!」
途端に苦しみ出すシャン=ヴァリゴラ・・
「・・リュ・・リュート!!私を・・殺して!!」
いつもの彼女に戻る・・がヴァリゴラの支配から脱しても全身を覆う
液体には逆らえないようで身体が全く動かない・・
「シャン!僕には・・・」
「馬鹿!君が死んじゃったら何にもならないでしょ!今のうちに早く・・・・あああ・・・・!!
シズマレ!女!!」
シャンの必死の抵抗も空しくやがてヴァリゴラに戻ってしまう
「シャン・・・!」
唸るリュート、パートナーが苦しい立場にあって何もできないのが悔しく拳を握り締める・・
「フン、愚カ・・デハ・・」
今度こそ額を貫こうとする・・・
そこへ

バン!!

再び勢いよく扉が開かれ飛びこんでくる白い影!
「!!」
寝巻きのレイハだ・・正しく疾風の動きでシャン=ヴァリゴラに掌底を仕掛ける!
「他人の家で好き勝手やるのは無礼ですよ」
「グ・・」

ガシャアアアアン!!

思っても見ない素早さと威力で少女は吹き飛ばされ窓ガラスを割って落下する・・
「レ、レイハさん!」
「遅くなってすみません。アレはどうやらディ君やルナも襲ったようで
そちらに気配を残しておりまんまと引っかかりまして・・・」
「いえ・・、そっ、それよりも二人は!?」
「命に別状はありません。生命力をかなり抜かれたようです・・。
ともかく、あの程度では傷にもならないでしょう・・追撃をかけますよ。
庭ではすでにライが待ち構えています」
「は・・はい。では・・」
壁にかけてあるブリューナクを取ろうとする・・が

シュッ!

窓から恐ろしい早さで入ってくるあの闇色の液体!
意思を持つかのようにブリューナクを取りこみ引っ込んでいく
「!!しまった!」
「ちっ・・思った以上に厄介ですね・・。あの銃がなければ外は危険です。貴方はここで・・」
「シャンが苦しんでいるのに指くわえて待っていろっていうのですか!?
そんなこと僕にはできません!」
「・・・貴方・・」
「彼女は僕が救ってみせます!・・絶対に・・」
真剣な眼差しのリュート・・、その熱意にレイハも少し微笑み
「わかりました・・ではいきますよ」
「はい!」
割れた窓から飛び降り追撃戦へと赴く
屍霧神を完全に滅するため、そして彼女を助けるために・・




屋敷の庭・・。
本来漆黒の闇が支配する庭だが魔導により明かりが灯っている
「全く、随分好き勝手やってくれタナ・・」
寝巻き姿で不機嫌そうなルー、魔杖を振りかざし殺る気満々
「予感的中なのはいいが、場所が悪かったなぁ、ヴァリゴラさんよ?」
先回りして庭で待ち構えているはライ、ルーの二人・・。
そして窓から飛び降りるレイハとリュート
他の極星メンバーは一応の装備を携え窓から静かに様子を伺っている
神に憑依されているとはいえ、素体は小柄な少女・・。
接近戦を得意としたり鞭での中距離戦闘をする者にとっては集団で相手にしづらいのだ


対しシャンの身体を乗っ取ったシャン=ヴァリオラ、
闇色の液体が身体を覆っておりさらに片手にはブリューナクを持っている・・
「場所ガ悪イ?・・・ハハハ・・、コノ身体ヲ手ニ入レアノ少年ノ魔力ヲ頂イタ
我ニ場所モ相手モ関係ナイ!」
勝ち誇った顔とともに腕を振るう!
それとともに闇液の刃が幾多にも別れ一同を襲いはじめる
「!!・・・疾!!」
鋭い攻撃を各自素早い動きで回避・・、
そしてレイハは身体を回転させながらクナイを数本投げる!

ヌプ・・!


クナイはシャンの肉体までは届かなくあの液体の鎧に塞き止められる
「無駄ダ・・」
ヴァリゴラが笑いながらそう言うとクナイは鎧から投げられた時と同様の早さでレイハに向かう!
「破っ!」
手持ちに短刀でそれを捌くレイハ・・
「フン、貴様ラ如キモハヤ用ハナイ・・。大人シク我ガ糧トナルガイイ・・」
勝ち誇るシャンの姿をしたヴァリゴラ。
対し・・
「用はない・・?こっちは用はあるんだよ・・、上せあがるのもほどほどにしておけ・・ルー?」
「おう・・、大海を知らぬ蛙め、私の力を思い知れ!」
不機嫌そのままに大魔方陣を展開
途端に闇夜を照らす方陣がシャン=ヴァリゴアラの周りを包みこむ
「ナ・・ナンダ!?カ・・身体ガ・・」
「ふん!囲んでおるのに何故私達が本格的に攻撃しなかったかわからんのカ?」
「その通り・・、不浄なる者の動きを弱める結界だ・・。
さぁ、リュート!俺達にできるのはここまでだ!シャンを助けたいか!?」
「は・・はい!」
「ならばこいつを使え!!」
天高くライが投げ、リュートの目の前に刺さるは神殺しの剣『神狼牙』
「お前がシャンを本当に救いたいと思うのならばその剣が応えてくれるだろう・・
命と引き換えになるかもしれんがな」
「・・・それでも・・・・それでも僕はシャンを救いたい!!否!必ず助けて見せる!!」
地面に刺さる破壊の剣を抜き雄々しく振りかぶる・・
「・・ヌ!・・・アアアアアア!!・・・・・リュ・・リュート・・!」
リュートの決心の言葉にシャン=ヴァリゴラが苦しみ出し・・彼女が現れる
「シャン!今助ける!」
「だ・・駄目!!私の為に命を・・。それよりも今のうちの私ごと・・」
「馬鹿!約束したじゃないか!死ぬ時は一緒だって・・・言ったじゃないか!!」
「リュート・・グ・・・ああ!!馬鹿メ!!」
再びヴァリゴラに支配されるシャン・・
さらには結界にて動きが封じられているのにあの液体の刃が動き出す

「・・私の結界の中でもまだ動けるカ・・。」
「ディとルナの生命力吸ったからな・・、ディはまだしもルナは痛いか」
「呑気に言っている場合カ?あの小僧が止められなかったら次は私達ダゾ?」
寝巻きのままで十分戦いの準備ができていない面々・・
それでもライの表情に曇りはない・・
「リュートならうまくやるさ・・。あの顔を見ろよ」
神狼牙をかまえシャンの救いたい一身で駆け出すリュート・・
「・・ふん、買いかぶりにならなければいいガナ」

「シャァァァァン!!!」
「消エロ!!!」
神狼牙を構え襲いかかるリュートに闇色の刃が疾走する!

ザク!!

鋭い液体の刃はリュートの両肩を貫通する!
「・・!!!うおおおおおお!!!」
肩から血が噴き出る・・、それでもリュートはひるまずパートナーに刃をつきたてる
その顔はもはや鍛冶師などではなく剣士のそれだ・・
「ミュンさん・・そして神狼牙・・僕に力を!!!」
決死の特攻・・それとともに神狼牙の刃が輝きだし

轟!

光の一閃となりパートナーの身体に突き刺さる!
「シャンから出ていけ・・・!ヴァリゴラ!!」
「オ・・ウオオオオオオオ!!バ・・馬鹿ナ!!」
光を放つ神狼牙の影響か猛烈に苦しみ出すヴァリゴラ!
シャンの顔が酷く歪んだと思うと彼女の身体から闇色の霧の塊が飛び出た
それと同時にシャンの身体を包んでいた液体も力を失ったのかバシャっと地へ落ちる・・
「シャン・・!!シャン!!!」
力なくリュートにもたれかかるシャン・・リュートは神狼牙を抜き地に突き刺して彼女を受けとめる
不思議な事にシャンの身体には傷一つついていない
「リュート・・、私・・・」
「ヴァリゴラの支配から解放されたんだよ・・、大丈夫・・?」
「・・・うん・・」
弱々しく呟くシャン・・、目からは涙がこぼれている

「オノレ!!コウナッタラ・・・!!!!」

「おっと!!逃げられると思うなよ!!!リュート!チェックメイトだ!止めはお前が刺せ!!」
龍眼となり黄金の闘気を放つライ・・
闘気はヴァリゴラを包みがんじがらめにし動きを封じる・・
「ヌゥ!人間如キの力デ我ガ・・!!?」
「人間を舐めるな!クサレ神!」
さらに力を強めるライ・・ルーも彼に力を分けておりレイハもクナイが刺された符を取りだし
「五方陣結界・・・!!」
クナイを五方向へと投げる。
ヴァリゴラを中心に囲むように・・
「縛!!」
レイハの気合い声とともに符が光だし線で結ぶ
「フッ・・これで逃げ場はないナ!」



「シャン・・後始末だ・・。僕達であいつを滅するよ」
「リュート・・わかったわ!」
そう言うとヴァリゴラ解放とともに地面に落とされた魔槍銃ブリューナクを持ち
天に向けて構える
「この世から消えろ!ヴァリゴラ!!」
最後の力を振り絞りブリューナクへ力を送る・・
シャンもリュートの手を握り力を込める。
そして姿を表す光の魔銃・・・、ルナの力を流さなければ到底相位昇化されなかったが
今二人の力にて神槍銃となっている
「「うおおおおおおおお!!!」」

轟!!

二人の死力とともに放たれる光の巨光!!
それはまっすぐヴァリゴラに、そして天に向かって伸びる!!

「アアアアア!!コ・・コノ私ガァァァァァァ!!!」
光に包まれるヴァリゴラ・・
巨光は天に広がり、神が死んだことを表すが如く八方に光が広がった

・・・・・

「やったな・・。結界の中で完全に消滅しおった。
ふん、ケツの青いガキと思っていたが中々やるもんダ」
「俺の言った通りだろ?とりあえず手当てだ、大丈夫か!?二人とも・・」
声をかけようとするライだが途端に声が小さくなる・・

「馬鹿・・、君って本当に・・馬鹿ね・・」
リュートに抱かれ涙を流すシャン
「そうだね・・、だけどこれが僕なんだよ・・」
「リュート・・」
「シャン・・」

お互いの気持ちを確かめるように口付けを交わす・・
「・・気絶するまで放っておくか・・、直に出血で意識失うだろうし」
「・・その方がいいでしょうね・・。」
ライ達に近づくレイハ・・。寝巻きで動き回ったのに着乱れ一つもない
「まぁ、その方がいいだろうナ。ディとルナは・・?」
「すでにアルシアが手当てしている。あいつらも全く、簡単に襲われるなっての」
「こんな場合は中々予測はできませんから仕方ありませんよ。それに・・あっ・・」
レイハが言葉を遮ってリュート達を見る。
見ればシャンとリュートがうなだれているのだ
「リュートは出血、シャンは支配された時の精神的な疲労・・だな。
アルシアにはもう少しがんばってもらうか」
気絶する二人を回収する二人・・。
しかし気を失いながらも二人の手は固く結ばれていた


ヴァリゴラの一件にてリュートやシャンはかなりの怪我をし
アルシアに治療によりしばし安静となった・・
「はい、これでしばらくは大丈夫ねぇ。リュートは軽傷で済んだけれどぉ、
シャンは精神疲労が激しいからねぇ、あまりストレス与えないためにも安静にしてなさぁい」
白衣にすんごいスリットの入ったチャイナ服のような服装のアルシアがベットに立ち笑顔で言う
「ありがとうございます。あっ、僕は動いてもいいんですよね?」
シャンのベットの隣に座るリュートが両肩に包帯を巻きながら言う
あれから二人はどうやっても手を離そうとしなかったのでライは
「もう一緒に寝かしてやれよ」
ってことでシャンのベットに寝かしたのだ。
おかげで二人が目を醒ました時はたいそう驚いたとか・・
「私ももう何ともないんだけどなぁ・・」
「まぁ、身体が怪我したとはまた違うものだからそう感じちゃうのよねぇ。
素人考えは止めて先生の言うことを大人しく聞きなさぁい♪」
「「・・は・・はぁ・・」」
「じゃあ私はディとルナの様子見て来るわねぇ。
どっちかっというとあの子達の方が重傷だからねぇ」
笑いながら出ていくアルシア。
妖艶でお姉様かと思いきや意外に優しい・・
・・・・
「・・安静だって。僕がずっと見ていてあげようか」
ベットに寝ているシャンにやさしく声をかける
「いいわよ、恥ずかしいじゃない・・」
いつも優しいが今日は一際優しい彼に恥ずかしくなってきてシャンは思わず布団で顔を隠す
「ははっ、でも僕が病気になった時ずっと看病してくれていたからね・・。その恩返しをしたんだよ」
「リュート・・」
「シャン・・」
見つめあう二人・・、そのまま「愛の劇場」へ突入かと思いきや・・
「じゃあ少し一人にしてくれる?ちょっと眠いから・・」
「あ・・ああっ、そう・・」
「なぁに?その意外そうな顔・・」
「いやぁ、意外じゃないよ。安静だしね」
「・・・・・、嘘、そういうのは全快になったら・・ね♪」
思っていたことをずばりと言い当てられ苦笑いするしかないリュートだった・・

とにかく、シャンはすぐに熟睡し自分がそこにいたのなら起こしてしまいそうだと思い
言われたとおり外に出た
両肩を痛めているのでフィアラルの修理をするのは無理がある
まぁ自動修復機能により目は醒ましているので問題はないのだが
魔石に傷がついているようで動作がどこかぎこちない。
加えて製造に関わったものや主が全員ダウンしているのでフィアラルは執務室にて
レイハの机の隅で剥製のごとくジッとしていたとか・・
たまにレイハが文具を取ろうとすると器用に嘴で咥えて渡したりしているので
レイハにとっても
「良い子ね」
っとフィアラルの頭を撫でてやったりと・・・。
それで迷惑(?)なのがライ・・、理由は・・まぁ色々と・・

「ううん・・そうだな。ディ君達の様子を見ようか」
ヴァリゴラの逆襲にて負傷したディ達、リュートも必死だったのであれ以来顔を見ていないのだ
友として心配なのでフラフラとディの部屋へ・・・・・

「は〜い!!アルシア先生の検診の時間よぉ」
「アッ・・アルシアさん!何なんですか!?そのぶっとい注射器は!?」
「栄養剤♪ついでにルーから『不意打ち食らう愚かな弟子に灸を据えろ』って言われてねぇ」
「そ・・そんなこと言われてもあの場合は・・・・・」
ディの部屋から何やら悲鳴が聞こえている
「・・・、悲惨な事態?ともかく・・」

コンコン

少し入るのをためらったがノックをしてみる・・。しかし返事は・・

ブス! チュウゥゥゥゥゥゥゥ!!!

「あいやぁぁぁぁぁぁぁ!!」
ディ君の絶叫・・。しかし部屋の前で固まっているのも何なので静かに扉を開ける・・
アルシアの後姿が目に入ってくるのだが、なんだか御尻から悪魔の尻尾が・・
ついているようにも見えた
「あ・・あの・・」
「あぁら、リュート君。ディなら少し疲れてお眠りよぉ♪」
振りかえるアルシア、それは天女の如き爽やかスマイル
しかしリュートは安心できない・・。彼女を見ていると何故かセシルの顔を思い出してしまうのだ
「そ・・そうなんですか?」
見ればディ、頬がこけているが眠っているというよりは昏倒しているような・・
「リュート?」
「あれ?ルナもここにいたの?」
見ればソファにこれまた頬がこけたルナが寝転んでいる
「ああっ、二人とも同じ症状だからねぇ。
いちいち部屋を回るよりも固めていたほうが手間が省けるってことよぉ・・」
「そ・・そうなんですか・・。でもルナ、大丈夫?」
「・・くぅん」 ・・なんとか・・
「まぁ、この子達は生命力を吸われても魔術に対する抵抗力が強いもんだからねぇ。
心配しなくてもいいわよぉ。まぁしばらくはそっとしておいて?あまりしゃべれる状況でもないから」
「そうですか、じゃあお大事に・・」
ここにいても仕方ないと思いとりあえず外へ出たリュート
それとともに・・

ブス!!チュウウウウウウ!!

「キャイィィィィィィン!!」
注射器がブッ刺さる音とルナの絶叫が響いた・・
「・・アルシアさん・・。楽しんでいる?」
ここにいては自分も被害に合いそうなのでそそくさとその場を後にした
・・・・・・
ディとルナは闘死(?)ともあり話相手がいなくなってしまったリュート。
他の面々にも一応は話をするのだがそれほど親しくはなく・・
レイハ&ライは仕事中でお邪魔してもいけないし、ルーとなら何ともなしに話が合わない
アルシアは天敵と似たような匂いと性格ゆえあまり近くに長居したくないとか・・。
シエルに関しては彼があえて話しかけないようにしている。
「可憐な花は高嶺に咲いてこそ美しい・・」っというのが彼の考えらしい
他にもアレス&リオやカイン&ヒルデとカップルメンバーも屋敷にはいるのだが
両方ともお邪魔であろうしカイン達にとっては眼中にアウトオブ(死語)で惚気はじめるだろう
「・・・ううん、シャンも寝ているし二人もああだしな〜・・。
あっ!そうだ!あの大太刀ちょっと見せてもらおう!」
他人の得物を見るには当然許可というものが必要だがあいにく持ち主はあの悲鳴からすると
丸一日は眠っていそうなので勝手に見させてもらおうと考えついたのだ
かくしてリュートは静かにルナの部屋へと向かった・・


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