5万HIT記念小説  「13部隊 再び」U


あっさりと騎士団昇格の書類が完成したのだがもはや一同の問題は森の瘴気に対して・・
とりあえずはどうするかタイムとレイブンを加えて改めて話をすることになった

「こうした事になるんだったらもう少し大きな会議室のような物を造るんでしたね・・」
頭を掻きながら申し訳なさそうにアルが呟く
13部隊の面々に比べタイムとレイブンまでが集まったならば応接スペースはすでに満員状態・・
「異例な事だからいいんじゃないか?増築するなら発展してからにしておけ
・・お前好みの城を造ってやるさ」
「クラークさん・・」
「ベットは三人ぐらい余裕で寝れる大きさにしておかないといけないなァ・・アルゥ♪」
「・・クロムウェルさん・・」
片やありがたい提言のクラーク、片やはた迷惑なクロムウェル
「・・ダブルベットで十分です」
アルに変わって冷静そのもののレイブンが突っ込む、彼女のほうが度胸があることは明白であったり・・
「その前にやることがあるだろう。前衛にはクラーク、クロムウェル、シグマなら対応できる。
アルは後方援護。ニース村の自衛団面々とタイム団長は村に待機して警戒に当たるのが妥当だな」
現時点の戦力を分析するフロス・・
だがその提案にタイムは珍しく顔を曇らせる
「フロス殿、貴方達とまではいきませんが私も戦えます。警戒に当たるよりも前衛に回るほうが・・」
「ダミーアーマーでは不安が残る、それにニース村で被害を出すわけにもいかないだろう。
・・何よりも・・」
「・・?」
「君にもしもの事があるならばクロムウェルの暴走を止める人物がいなくなるのだからな・・」
「んがっ!そんな理由でかよ!」
「それに、どうせお前の事だ。タイム団長が傷を負ったら頭に血が昇って暴れ続けるのだろう・・?」
「う・・否定は・・できない・・」
「まぁ、それは抜きにしても我らは少数とはいえいずれも精鋭だ。君が無理に矢面に立つ必要もない」
余裕があるフロスの発言にタイムも黙るしかない
そんな彼女を気遣うようにクロムウェルは彼女の頭をポンポン叩きながら
「まぁそういう事だ。もしかしたら俺達が出払った後に敵がくるかもしれないんだ・・そっちでがんばってくれよ?」
っと笑う、
「・・了解した、だが・・無事で還ってこい・・敗走も許さんぞ」
対しタイムは恨めしそうにクロムウェルを見ながらもしぶしぶ了解するのだった・・
「熱い事だなぁ・・シグマ?」
「・・良い夫婦にもなろう・・」
「「なっ!!」」
何気に周囲から嫌な笑みで見られていた事に気づくクロムウェル夫妻(?)
彼も顔を赤くするほど・・
「お・・お前が妙な事を言うからだ!この変態!(ギュ!)」
「あいた!・・ったく・・素直じゃないんだから・・」
足を踏まれても怒らないクロムウェル、それに彼が成長していることを何気に実感する元13部隊の面々であった
そこに・・

「団長、偵察の任務終わりました」

詰め所に戻ってきた自衛団員、バンダナを巻いた黒髪おさげな女性と紅いボサボサ髪で法師風の男
そして黒い戦闘服を着たおかっぱ黒髪の少女・・
「ああっ、おつかれさま。様子はどうだったのかな・・」
「う〜んと、やっぱり瘴気があるエリア以外は魔物の気配もなかったわ。ただ・・ねぇ・・ラミアちゃん」
アルに尋ねられて顔を曇らすバンダナ女性
「ええっ、瘴気がまるで結界のような状態になっていました。それが少しずつですが広がっているようなんです」
ラミアと言われた少女が真剣な顔つきで言う。見た目とは違いかなりしっかりしている模様でハキハキしている
「やはり・・でもその領域が広がっているとなると早急な対応が必要だね・・」
「その前に・・、お客さんですか?」
紅髪の青年がいつもよりもはるかに多い人口密度についてアルに尋ねる
「ああっ、僕がお世話になった傭兵公社13部隊の皆と、ルザリア騎士団団長のタイムさんだよ。
ええっと皆さん、こちらが自衛団員のマリーとタナトスとラミアちゃんです」
双方軽く会釈をするのだが、タナトスとマリーはやや硬直しぎみ・・
「す・・すごいですね、マリーさん・・」
「ええっ、あの『不死身の13部隊』が勢ぞろいだし・・さらには『陽紅の軍女神』のタイム団長まで・・」
超有名人が勢ぞろいに田舎者二名、かなり緊張しているのだ
それに対しラミアは・・
「そんなにすごい人なんですか?」
っとタナトスの裾を引っ張り訊く・・流石に彼女にはわからない人達なのだ
「ああっ、伝説とまで言われた最強の傭兵部隊とハイデルベルク国で一番有名な女性騎士さんだ」
多少過剰な表現での説明、それに全員苦笑いをするがラミアは至ってまともに受けており
なにやら感動をしている
「そうなんですかぁ!・・うう・・父上と母上にも会わせてあげたかったです・・」
「肝心な時にカムイなんて異国に行くんだものねぇ・・。セリアさんも近くの街の伝書屋に通い詰めだし」
呆れ顔のマリー、まぁいつも懸命に働いてくれている夫婦なだけに遠出をするのを快く認めたのも当人達なのだが・・
「カムイ・・か。ラミアの親父さんはあんなところに何か用なのか?」
同じくカムイの地で産まれたクラークにとっては少し興味深いようだ
・・っと言ってもカムイという地は景色が美しいのみで他の用事で渡る者は少ない・・
「とあるおじいさんからのお願いでそのおじいさんの髪を届けて欲しいと言われました。
私も行きたかったのですが・・異国で迷子になると大変ということで・・」
「・・そりゃ正解だな。カムイってのは川やら山やらがゴロゴロあるところだからな・・」
「そうなんですか・・私も一度行きたいです・・」
幼いながらもしっかりとした口調のラミア、それを見てシグマは少しため息なつきながら
「・・しっかりとしている。私の娘も見習うべきだ・・」
っとぼやく・・。
どうやら娘の教育でかなり苦心している様子だ
「少し噂にはなっているな・・鍛冶師になりたいのだろう?」
隣でフロスが静かに笑いながら言うがシグマは顔色をさらに曇らせる
「・・うむ、女がなる職でもあるまい・・」
「へぇ・・シグマの子供って女の子だったのかぁ・・。さぞかし・・」
驚くクロムウェル・・への字仏頂面なシグマの娘を想像し言葉を失う
「・・母親似だ。私とは似ても似つかん」
どうせとんでもない顔を想像しているのだろうと先に釘を刺す
現にクロムウェルが妄想したシグマの娘はボディビル調のかなりキツイ女性であった・・
「さ・・さいですか・・」
「斧や鈍器を専門にする鍛冶師になりたいらしい。以前シグマの目を逃れローエンハイツまで来た事があってな。
親に似たジャジャ馬ぶりだった・・」
「フロス・・その節はすまん・・」
深々と謝るシグマ、この男がここまで頭を下げた事はなく一同『あんたの娘、何やらかしたんだい』っと眼差しを送る・・
「構わんさ。まぁ素質はある・・無謀な職の選択ではないと私は思うのだが・・」
「・・・・・・」
「まぁ親子の話だ、じっくりと相談するがいい。さて・・本題に戻そうか。
瘴気の結界があるエリア以外には敵はいないと見ていいのだな・・タナトス君」
「え・・あ・・はい、気配は全く感じられませんでした・・」
「なるほど・・ではっ、用意は揃い次第クラークとシグマ、クロムウェルとアルのペアで目的の結界エリアに接近。
他の面々は村に残り周囲を警戒しよう」
「あの・・、気配がないのでは私達も一緒に向かったほうがいいのではないでしょうか?」
幼いラミアが軍師に質問、自身は現場に行く気満々だったようだ
「今のところ・・だ。状況は常に変化する。それに拠点はここだ・・その瘴気の結界にばかり気を取られている間に
奇襲を受けることもありえないこともない」
「なるほどぉ・・わかりました!」
「なら・・さっさと行こうぜぇ!せっかくアルの晴れ舞台だ、血生臭い事は速いとこ済ませるもんだぜ」
得物を握り起き上がるクラーク、それに続きシグマ、クロムウェル、アルも得物を手に取り準備をすませるのであった

・・・・・・・
・・・・・・・

「さて・・こうして再び並んで歩く事になるとはなぁ・・」
「・・不思議なものですね・・」
草木を掻き分け道なき道を進むクラークとシグマ、他の二名は別ルートから移動しており
瘴気があるエリアにて合流する予定となっている
林道からは離れているために足場はいいとは言えないがそれは流石に歴戦の男達だけに全くに苦にせずサクサク先に進んでいる
「それで、昔と同じで装備はまるでなしか」
シグマの姿を見てにやけるクラーク、得物といえば彼に良く似合う大型の戦斧ぐらい
後は質素なシャツにズボンのみで木でも切りに行く木こりにしか見えない
・・まぁ傭兵稼業を辞めて現在は本当に木こりとして暮らしているのだが・・
「防具があればおのずと隙も生じましょう・・。それに・・そう簡単に引けはとりません」
「まっ、なんせ『剣聖帝』の男だからな」
「それは貴方も同じでしょう・」
「俺は称号なんてもんはいらねぇから忘れたけどなぁ・・。・・でっ、ブランクはあるんじゃないのか?」
「ご心配なく。鍛錬は欠かしておりません・・・・それにニースに来るまでに少し盗賊どもで慣らしておきました」
ニヤリと笑い重そうな両刃の斧を軽く持ち上げ肩で担ぐ
背丈があり見ただけで剛健な彼だけに一度旅をすれば己ずと色々巻き込まれるもの・・
まぁそれは良くも悪くもではあるのだが・・
「お前相手か・・相手さんも悲惨だなぁ・・」
「真面目に働ける程度に加減は致しております・・っと言っても行いによっては腕の一本も落としましたが・・」
「因果応報さ、まぁお前となら楽できそうだぜ」
軽い気持ちで笑いながら道なき道を行くクラーク
それにシグマは軽くため息をつき微笑む・・、そして何気にクラークの腰に下げている刀を見て
「その刀は・・」
「ああっ”あいつ”の二振りだ。両方折っちまったから一つにしたんだよ・・『紫電雪花』ってな」
「・・そうでした・・か」
かつて生死を供にした女性剣士の事を思い出すシグマ・・
無口な自分とは対極な性格だったがために色々と世話になったりもしたのだ
「俺も色々あってな。まぁ本人にも了解得ているから気にするな」
「・・・は・・はぁ・・」
死んだかつての仲間が他人の体を借りて最後の言葉を言いにきたなど例えシグマであっても
そうそう信じてもらえないだろうと思いクラークは事の真実を伏せた
「それよりも・・見えてきたぜ・・」
木々の隙間から背筋が凍るような不気味な風が吹いてくる
その先に広がる黒い何か・・まるで壁のようにどす黒い空気がたまっている
「ぬ・・これは・・」
「まぁ天然自然で発生するもんじゃないな・・、何があるのやら・・」
ジッと漆黒の壁を見つめる二人、吹きついてくる風はまるでその壁の呼吸のようにも感じ取られる・・
「近づかなければわからんかな・・」
「・・クラークさん・・」
シグマが呼び止めるその時・・

ズル・・ベチャ・・

何やら壁からはいずり落ちる・・、何かの動物みたいにも見えるが
見る限り黒い塊に見え、感じる気配は普通ではない
「・・まぁ見た限りお友達になりに来た感じじゃないよな・・」
ゆっくりと起き上がる異形・・動きは生まれたての哺乳類が立ち上がるようで
小刻みに震えているのがわかる
「瘴気が狼でも取り込んだのかな・・」
「そのようですね」
ゆっくりと起き上がる黒い狼、っというか狼のような物体
黒い煙のようなものが体を包んでおり目は赤く口が裂けて鋭そうな牙がむき出しになっている
「来るぞ」
「承知」
臨戦態勢に入った瞬間、異形狼は二人に向かってまっすぐ走ってくる
そして獲物に向かって噛み付こうと飛びあがった瞬間!

バキィ!

こともなくクラークが鞘でたたき上げる・・
「くれてやるよ」
「・・・・」
宙に浮いた異形、クラークの一撃がよほど効いたのかもがこうともしていない
それをシグマは無言のままに斧を構え・・
斬!!
強烈な横薙ぎで切り飛ばす・・強烈極まりない一撃は異形を切り裂きその姿を塵へと返す・・
「迎撃用の駒って感じかな、まぁ俺達の相手をするにゃ物足りないけどな」
「・・ですが・・数はあるようですね・・」
ゆっくりと呟くシグマ、見れば黒い壁から幾つも膨らみが出きており
そこから異形の狼が無数に産み落とされていく
「ちょうどいい・・本番に向けて暖めておくか」
「承知です」
かつて公社最強の称号を持った二人の戦士は不適な笑みを浮かべながら迫り来る無数の敵と対峙した

・・・・・

一方
クロムウェルとアルの二人も同じ状況下にあり群と化した異形狼の集団に囲まれていた
「狼は元々この地に生息している種類ですが・・」
「まぁあの黒い壁の中で変異したって事かな」
全く動揺しない二人に警戒する狼達
だが二人ともすでに臨戦態勢に入っており得物をしっかりと装備している
「うし、慣らしておくか・・アル、下がって援護を・・って・・」
クロムウェルが静止する前にアルが走り出す!
「心配は無用ですよ!はぁ!」
向かってくるアルに異形狼は咄嗟の踏み込みに一瞬怯んだがすぐに大口を開けて飛びかかる
アルはそれを俊敏に回避し、その脇腹に鋭い蹴りを放つ!
「キャイン!」
深く腹に入った蹴りは狼の悲鳴と骨を砕いた音を奏でる
だがそれだけでは終わらさずアルは手甲を握りしめる、瞬間キンっと乾いた金属音が響いたかと思うと篭手の先から刃が飛び出てきて
アルは手刀を放つが如く横薙ぎに切り払う!
まともに入った斬撃は狼の体を切り裂き止めをさした・・
「ヒュ〜♪接近戦を学んだか、オマケにそのモーションは・・俺の?」
「僕だって今までただ援護をしているだけじゃありませんでしたからね」
弓を背負った状態でゆっくりと構えるアル
まるで弓士とは思えない気迫にクロムウェルは彼が正しく自衛団長に相応しい人物に成長したんだと嬉しく感じながら
「うし!そんじゃさらなるレベルアップに俺がデモンストレーションを見せてやらぁ!」
っと気合一発駆け出す!

バキ!ボコ!ドコ!メキャ!!

狼達に悪あがきすらさせないクロムウェルの乱撃!瘴気に包まれた肉体も気合の篭った一撃にはなす術もなく
一撃一撃がまるで鋼の如く深々と突き刺さっていく!
その破壊力は見るまでもなく一発で狼を絶命させていく
「・・あはは・・やはり格が違いますね・・」
「ったりめぇだ!こちとらこれしか能がないからなぁ!」
一撃必殺の拳を振り上げ笑うクロムウェル、それにアルも微笑みで返すのだが
戦闘はしっかりとこなす
十数匹いた異形の狼達は瞬く間に倒され二人としては丁度準備大層程度の運動になったようだ
「ちったぁ暖まったが・・クラークさんの方にも襲撃があったと見ていいな」
「それよりもこの狼達が村に向かっていないか心配ですね・・」
「まぁ、フロスさんが言ったように自衛団員とタイムを残しているんだ・・この程度なら大丈夫さ」
ニヤリと笑うクロムウェル、先を読むフロスの指示に感服している
「そうですよね。村民が非難する必要があるならフロスさんが的確に指示を出してくれるでしょうし・・」
「そうそう・・そんでぇ・・アルゥ・・♪」
周囲の狼の死骸が消滅していくのを余所に急にクロムウェルの顔がくだける
「な・・何嫌な笑みを浮かべているんですか?」
「嫌な笑みとは心外だなぁ・・さっきの自衛団員からして言い寄られている女のもう一人はあのマリーちゃんか」
「え・・ええ、そうです。元々彼女との縁でこの村で厄介に・・」
「ふ・・ふふふふ・・二人ともすげぇ美人じゃねぇかぁ!そりゃ迷うよなぁ〜アルゥ!」
「クロムウェルさん!ま・・まだ事件は解決してないですよ!」
女性事になるとタジタジになるアルにクロムウェルは彼の弱さを見た・・
「まぁいいや・・。事件が終わったら俺がお前に女の愛し方ってのをレクチャーしてやる!」
「・・ボソ(クロムウェルさんも十分にタイムさんの尻に引かれている気がするんですけどね・・)」
「・・なんか言ったか?アル?」
「いえっ!・・あ・・」
「・・ん・・」
妙な気配に二人の雑談は中断する・・見れば黒い壁から再び何かが生まれだそうとしていた
「次はもう少し骨があるのを出すかなぁ(ゴキゴキ)」
「・・っというよりかは打ち止めにしてもらいたいですけどね・・合流するのに支障がでますよ」
ぼやく二人の前にそれは生まれだされる
一体だけなのだが・・それはクロムウェルの背丈を大きく上回るクマの異形
狼に比べてさらに禍々しくなっており肉は腐食、両腕に大きな目玉までつけられている
「まぁ・・なんというか・・18才未満ご遠慮くださいって外見だな」
「瘴気の影響か元々熊の死骸を使用したか・・素体の性能からして結構厄介ですね」
「倒せりゃ一緒さ・・それに流石に量産できないみたいだな。うし!行くぜ!」
一気に駆け出すクロムウェル、高速の踏み込みに対し生まれたばかりの熊の異形は
ボーっと突っ立ったままで動こうとしない
が・・

バシュ!

不意に腕に出来た目玉から細い光線が放たれる、瞬時にクロムウェルを捉え地を削りながら走る!
「クロムウェルさん!」
「わ〜ってる!おらぁ!」
近くの木を蹴り体を捻りながら宙を舞う!
光線はそのまま何もない空間を裂きながら進みある程度進んで消える
中距離程度で消え去ってしまうらしい
「こいつはお返しだ!!」
もう一度木の側面を蹴り加速を付けて突っ込む・・、野生児ばりの身のこなしだが本人、一応海の近辺育ち・・
そのまま熊の顔目掛け強烈な飛び蹴りを放つ!
「グゥ!!」
勢いのついた蹴りは顔面に食い込みながらよろめきながらも堪える
「もいっちょ!」
よろめいた熊の前に降り立ちそのまま拳を握りしめ・・
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ
オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!!!」
怒涛の拳の乱撃(ラッシュ)!!
手が増えているようにすら見える強烈な攻撃に体を宙に浮かせる熊・・・
だが
「グォォォォ!」
不安定な状態のまま右腕を振りかざしクロムウェルを薙ぎ払おうと暴れる
「ぬおっ!・・っと!無理やり反撃すんじゃねぇ!」
風を切る危険な一撃を身をかがめ回避するクロムウェル、さすがの彼も思わぬ一撃に回避しきれなかったのか
チッと鋭い音がし、髪が数本舞い落ちる
「クロムウェルさん!下がって!」
「おうよ!」
咄嗟のアルの声に飛びのくクロムウェル、流石に元同僚なだけに息はピッタリとあっており
彼が飛びのいた瞬間・・

ドォン!

炎を纏った矢が熊の体に突き刺さり爆発を起こす・・
それは正しく必殺の一矢で熊の上半身丸々を吹き飛ばした
「物騒な武器持っているなぁ・・」
粉々に砕けた熊を見ながら唖然とするクロムウェル
「オリジナルのカスタマイズ品なので威力だけは申し分ありませんよ」
苦笑いなアル、刃を篭手にしまい銀色の弓を取り出してこの一瞬を狙っていたのだ
それをクロムウェルは見ずとも理解し、時間を稼いでいたようで
自分で仕留められなかったのに全く気にもしていない
「・・にしても、加減はしたとはいえ俺の攻撃に耐え抜いたのは意外だな・・」
「ええっ僕も本気の一撃でなければまだ動いていたでしょうね」
緑色の泡を立てながら消滅していく熊の下半身を見つめながら二人は気持ちを引き締める
だがそれを打ち砕くように

”遅いぞ〜、お前ら〜”

間が抜けた声が二人に投げかけられる
見ればクラークとシグマが草木を掻き分けながら登場、二人とも傷一つ負っていなく
返り血もゼロ・・
「色々湧いてきたんだよ!・・って・・そっちには異常はなかったのか?」
「ああっ、狼みたいなのと熊みたいのが出たけど・・」
「・・・・・・、物足りん」
軽く息をつきシグマが簡単に言ってのける
「「流石は・・」」
「まっ、相手のタフさは見謝らないことだな・・ともあれ、どうやら巨大な球形をのようだな・・この障壁は・・」
上を見上げながらクラークが呟く、見れば壁はカーブを描いており巨大な球形をしているのがわかる
「だが、化け物生み出す壁ってのも珍しいな・・第一どうやってこん中入るんだよ?」
「そうですね・・、僕達を敵として見ているなら中に入れるかどうか・・」
「アルは仕方ないにしてもクロムウェル、お前馬鹿だろう?」
「なぬ!?」
突然に非難にクロムウェル、ショック!
「前に俺と戦ったんなら”アレ”も見ただろう?」
「ああっ!・・”アレ”かぁ!なるほどぉ・・」
「あ・・あの、お二人とも、アレって・・なんですか?」
「まぁ見せてやるよ・・下がっていろ」
ニヤリと笑いながら瘴気の壁の前に立つクラーク、ゆっくりと話に出た秘策を披露するのだった・・


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