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5万HIT記念小説  「13部隊 再び」V


黒い瘴気の壁の前に立つクラーク
右手を翳しながらジッと壁を見つめる
「・・・・むぅ・・」
「クラークさん、新しい技でも覚えたのですか?」
様子が良く分からないシグマとアル、対しクロムウェルはニンマリ笑いながら
「見ればわかるさ、俺が前挑んで負けた要因でもある」
「ってか、こいつを使わなくてもお前なんかに負けるかよ」
「ひどっ!」
集中しているのかと思いきやツッコミを入れるクラークだが彼らの方を振り向かずに
ジッと前を見つめている
「・・こいつ・・?」
「まぁ見ていな・・『九骸皇』!」
気合声とともにクラークの右手に浮かび上がる『鬼』の痣、そこから音もなく赤い炎が巻き起こり
それは刀の形を作り出す・・
禍々しい気配を放つそれに普通の剣ではない事は二人もすぐ理解する
「そ・・それは・・」
「説明は後だ!でぇやぁぁぁ!!!!」
気を鋭く練り九骸皇を高速で振り下ろす!
そして紅の刃が黒い壁に触れた瞬間・・

パァァァァァァァン!

まるでガラスが割れるように黒い障壁は一瞬で粉々に砕け光の粒子となって宙に消えていった
「す・・すごい・・」
「・・むぅ・・」
広域に広がっていた結界が見事に消え去った事にアルとシグマも唸る
「鬼神剣『九骸皇』・・魔を払う刃だ。こうした結界もんにゃもってこいな代物さ
・・にしても・・」
壁の先にある空間は今彼らがいる場所とは大違い草木は全て枯れ果て、土の色まで赤黒い変色している
放たれる空気も異様に冷たくさながら一歩先から別世界が広がっているようだ
「瘴気の影響ってここまであるのか・・」
「ふむ・・ぬっ!?気をつけろ!」
キッと顔を引き締めるシグマ、周囲を警戒するや否や

ザザザザザ・・!!

木々の陰を縫うように走る幾つもの黒い影・・
彼らを取り囲むようにではなくそれは真っ直ぐと村の方向に向かっている
「ちっ・・やっぱり村に向かっていやがるか!クラークさん!」
急いで影を追おうとするクロムウェルだが無言でシグマに押さえつけられる
「追っても意味はない。あれは狼野郎だな・・・アル」
「はい・・・・」
ゆっくりと目を閉じながら小さい声で何かを呟くアル・・
しばらくそれが続いていたのだがやがてそれが終わり
「念波でフロスさんに連絡しました。向こうもすでに迎撃体勢を取っています。
こちらはこちらで仕事をすればいい・・っとの事です」
「流石に手際はいいな、それなら大丈夫だろう・・さて、そんじゃ俺達はこの薄気味悪い状況を作った原因を探しに行こうぜ」
「これだけの事をしているんだから相当な原因なんだろうな・・まぁ、俺達がいれば問題ないか」
「浮かれぬな、何を用意しているかわからん・・」
「そうですね・・気を引き締めましょう」
各々、得物を再び握り締めながら瘴気に犯された地帯を進み出すのだった

・・・
・・


硬かった地面は少し柔らかくなっており何ともいえない不快感を与える
それでも森の中とは思えないほど殺伐として風景となった中を進む13部隊の面々
気が殆ど枯れて腐っているので見通しは良く敵の影は微塵もない
「どうやら、敵さんの大半は村のほうに向かったのかな・・」
「僕達の相手をしないでここまで無防備にするのも・・なんか不気味ですね」
「元々村が目当てだったんじゃないか?それで、この先は元々何があったんだ?」
「確か、この森一番の大樹があったはずです。その背後が崖になっているんですよ・・ほらっ、もう見えるでしょう?」
見通しが良くなった箇所だけにアルが指差す先には岩壁がそびえているのが見える
ただ高台になっている箇所の緑はまだ生い茂っているようで瘴気の影響は受けていないことがわかる
「・・その大樹ってのは臭うな。大体、それらしいのはないぜ?」
クロムウェルが周囲を見渡してみても彼が言うようにそれらしいものはない
「・・妙ですねぇ。そこらの木々も枯れていることには違いないんですが・・それらしい物がない・・」
怪訝な顔のアル、警戒を強めようとしたその瞬間

”よくぞきた・・村の者よ・・”

不意に一同の頭に年老いた男のような声が響く・・
「念波?・・一体誰だ?」
対して動じないクラーク、それは他の面々も同じ事で周辺の警戒をしている
”この一件を起こした者・・っとでも行っておこう”
「姿見せないで余裕ぶってるってか?さっさと出て来いよ?」
拳を振り回し臨戦態勢に入っているクロムウェルだが
彼の肩をアルは軽く掴みそれを止めさせ、一歩前に出た
「どこのどなたかは存じませんがあの村の民に手を出すのは止めていただけませんか?」
”ほぉ・・御主はいつも森を巡回しているものだな・・”
「そうです。僕は村の自衛団長を勤めている者です」
”知っておる・・だからこそわしは行動を起こしたのだ”
「・・アルを知っていて・・だと?」
怪訝な顔のクラークに姿を見せぬ元凶は少しにやけるように言葉を続ける
”いかにも。その者のおかげで森の生態系も幾分安定してきた。無駄な殺生もしない・・人間にしては大したものだ”
「ならば何故こんな事を・・」
”あの村から再び繁栄の香がしてきた。以前の過ちを繰り返すわけにもいかぬ”
「以前・・?」
「かつてニースはレアメタルの産出地として栄えていたそうです。
それが枯渇してしまってからは魔物が徘徊するようになりニースは荒廃していきました」
”そうだ。加減も知らぬ馬鹿どもがやりたい放題やって残ったのは森の命を縮める異形どものみ・・
再びそれを繰り返すというならばわしも黙っているわけにもいくまい”
「今回は前回とは違います。レアメタルなどが目的ではなく純粋に自然と接したいという者があの村に住もうとしているのです」
”だが、過ちを繰り返さぬという保障はあるまい?村が大きくならばその危険は高まる・・
木々は命だ。それを狙う者などいくらでもいる・・”
静かな声は確信に満ち、一同に投げかける
「・・過ちは繰り返させません。ニース村自衛団長として・・それは必ず守りましょう」
”言葉という物は不確かなものよ。それを信じるかどうか・・力で見させてもらおう”
確かな殺気を出し声は静かに消えていく
そして

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ!!!

縦揺れの強烈な地鳴りが突如付近を覆い出す!
「!?・・地震だと!?」
「・・、地中に何かいる・・くる!」

ビシ!

地鳴りが大きくなるやいなや大きな地割れが起こる!
瘴気により柔らかくなった地はあっさりと割れ、その中から何かがゆっくりと姿を見せる
”ぬ・・おおおおおおおお!!”
地割れの中から飛びあがり一同の前に着地するは正しく竜
・・だが、体の半分は骨がむき出しで残った体も肉は腐って悪臭を放っている
「ドラゴンゾンビ・・おまけに瘴気風味か・・」
ゆっくりと構えながら不敵に笑うクロムウェル
殆ど骨の翼からは黒い瘴気が覆っており異質な翼になっている
”さぁ人間ども、この森と共存するに相応しい存在か・・見極めてやろう!”
「へっ!騎士団に入るよりも重要な試験になったようだな!アル!」
「はい!どちらにせよ退けませんよ!」
「・・、私も協力する。人の力・・見るがいい!」
「先輩としちゃ後輩の出世にゃ手を貸さないとなぁ!」
得物を構え異形なりし竜に対峙する13部隊・・
”いいだろう・・参る!”
強烈な咆哮とともに戦闘体勢に入るドラゴンゾンビ、瘴気翼を大きく広げたかと思うと・・

ドドドドドドドドドドドド!!!

翼の闇から漆黒の棘のような物体が大量に放たれる!
それは正しく凶器の雨となり一同に降り注ぎ出す!
「回避して展開する!いくぜぇ!」
クラークと気合声に同調するように一斉に飛び去る3人
猛烈な勢いで襲い掛かる棘を物ともせずに捌いていく
「ぬおおおおおおお!!!」
中でも凄いのがシグマ、気合とともに一振りするだけでその風圧が棘の勢いを殺す
”活きがいいな・・だが・・”
そんなシグマに狙いを定めたかのかドラゴンゾンビは腐肉の腕をぶっきらぼうに薙ぎ払う
それは腐肉故しなっており予想以上に速い・・
確実にシグマの体を捕え

ギィィン!!

竜の鱗とシグマの戦斧が真っ向からぶつかり鈍い金属音を放つ
だがいくら巨漢のシグマとは言えこの力勝負には分が悪かったようで

ズザザザザ・・!!

地を滑るように飛ばされる・・
「ぬぅん!」
しかしシグマも黙って地に背をつけるわけでもない見事にふんばる
”よくぞ耐えた・・”
「・・ふん、私を仕留めるには物足りん攻撃だ・・今度は、こちらから行くぞ!!」
そう言うと逞しいとしか言いようがないくらい逞しい腕に筋肉を盛り上がらせ大きく戦斧を振り上げる
「ぬぅおおおおおおおおおおおおおお!!!」
力任せにそれを投げる!

轟!

猛烈な一撃は真っ直ぐに腐食腕に向かって突き進む!
正しく猛獣の牙のように鋭い脅威となり・・

ズバッ!

深々と竜鱗を砕き肉を斬る!
”うぬっ!?”
腕を斬った戦斧は勢いを失うことなくそのまま軌道を変化させて宙を舞う!

斬!

狙いなのか偶然なのか、軌道が変わった斧はドラゴンゾンビの右翼を斬り飛ばし消えていく
”く・・ふふふ・・人間にしては骨のある奴よ。だが得物を投げ捨てるのは感心できんな”
そういうと切り口から悪臭を放つ体液を撒き散らしながら再び右腕を振り上げる
しかしシグマは微動だにせず仁王立ち、その表情からは笑みすらこぼれている
「・・・、見せてもらおうか・・クロムウェル」
ボソっと呟くシグマ、それと同時に背後からクロムウェルが飛び出す!
「おうよ!チャージ完了!!ラァァァァァイトニング!ブレイカァァァァァ!!」
四肢に雷を帯電させたクロムウェル!シグマでさえ吹き飛ばす竜の腕に真っ向から蹴りで挑む!
”ぬっ!”

ドォン!!

凄まじい衝突音ととも竜の腕とクロムウェルの雷脚がぶつかる!
結果はほぼ互角、若干クロムウェルのもう片足が地面にめり込んでいるが・・
”わしの一撃と互角だと・・?”
「まだだ!こいつも持ってけぇ!!」
素早く体を捻り、腕と接していた脚を引きその反動で反対の脚で横蹴りをするクロムウェル、
先のシグマの一撃と今の電撃による痺れに腐肉の腕は軽く払われる
そこに・・
「ヴァイタルチャリオッツ&スフィアストライク!」
呼吸を整え腕から放たれる光の球体!
”陽気・・?やりおるわ!”
音もなく渦巻く白き光にドラゴンゾンビの腕は覆われその瞬間に消滅していく・・
「名前が長いから『ヴァイフィアチャリライク』と略するといい・・」
ニヤリと笑うクロムウェル、見れば腐肉の腕は欠片もなく消滅している
「・・、ふん。あいつの弟分にしては上出来だ」
その光景を後ろから見つめるシグマ、成長した仲間に思わず笑みがこぼれる
「あっはっは!俺だっていつまでも置いてきぼり食らうわけにもいかないんでなぁ!」
シグマの方を向き大いばり・・
戦闘中に気が抜けてしまう節があるのはいつもの事だがそれが強敵でもおかまいないのはもはや才能と言ってもいいだろう
「戦闘中だ・・前を向け」
”その通りだ。右腕を取ったぐらいでいい気になるのではないぞ?”
多少バランスを崩しながら残った左腕を振り上げる・・
「いい気になってんじゃねぇ、俺だけで殺るつもりもないんでなぁ!派手に頼むぜ!クラークさん!」
「任せろ!」
気合声のクラーク、それは天高い太陽から響いており
次の瞬間には超高速で落下しつつ

斬!

左腕を斬り飛ばしながら着地!
「全員で蛸殴りってのもいいんだがそれじゃ俺達は納得しねぇ・・それにお前だってもっと別の戦い方をもっているんだろう?
シグマ以外に執拗に棘飛ばしているが戦闘に集中はしてないしな」
”ぐ・・ふふふ。人間風情と嘲笑っておったが他の連中とは違うようだな”
両腕を切り落とされても余裕が伺えるドラゴンゾンビ、まぁ顔半分は骨が露出しているし目玉などはないのだが・・
「それなりに違うっちゃ違うな。何故本気を出さない?」
”そのような真似をすれば森が焼き払われてしまう。・・わしが望む事ではない。
それにお前達などこの腕と翼があれば十分だからなぁ”
そう言うと黒い瘴気が両腕と右翼の根元に集まり次の瞬間に
グジュ・・グジュ・・
生々しい嫌な音を立てながら『再生』された
「まぁアンデットのお決まりだろうが・・徹底的に切り刻むしかないかぁ?」
”ふん、ただ斬るだけでは勝てん。陽気を使おうがこの体そのものを消滅するほどの力はなかろう”
「・・まぁ、そんだけ図体でかけりゃな・・」

「ならば・・全力の一撃で立ち向かうまでです」

木陰から姿を見せるアル、手に弓矢を持った状態で冷静にドラゴンゾンビを見つめている
”ほぉ・・狙撃するつもりで弓を構えていたようだが・・”
「それでは意味は薄そうだと思いまして・・ね」
「アル・・どうするつもりだ」
「僕に任せてください。その前に・・ドラゴンゾンビさん、貴方はこの森を守る守護者と見受けます
・・それも、あの大樹へと姿を変えて・・」
ドラゴンゾンビの正面に周りゆっくりとしゃべりかけるアル
”・・・・・”
「おいおい、竜が大樹?どういう事だ?」
「恐らくは太古にこの地で滅びた竜でしょう、地に埋もれながらもこの地を守るために木の苗に自身の力を宿し成長させ
この森を見守ってきた・・違いますか?」
”・・・・・・・、その通りだ。よくわかったな?”
「あの大樹からは不思議な気配が感じると僕のパートナーも言っていましたからね。
だから森の守護者として僕が・・僕達が害を成す者かどうか見極めるには全力で立ち向かうしかないでしょう」
”大口を叩く・・人間風情がわしに勝てると思うか?”
「終わってみなければ・・結果はわかりませんよ。今の僕が放てる最高の一撃でお相手します
・・貴方の全ての力で対抗してください」
そう言うとゆっくりと歩幅を上げるアル
「ちょい待て!美味しいところ持っていく気か?」
「クロムウェル、アルの言う通りにしろ・・お前の意志と力・・しかと見せてもらうぜ」
「・・存分に放て、見届けよう」
クラークやシグマは納得した様子でクロムウェルをひっぱりながら後退する
「あだだだ!引っ張らなくてもいいって!おいアル!しっかりやれよ!」
「クロムウェルさん・・はい!」
”つくづく甘く見られた者だ。よかろう・・お前の後ろにある村ごと焼き払ってくれる!”
そう言うとドラゴンゾンビは大きく口を開ける
・・っと同時に

ゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴゴ・・!!

瘴気があつまってきており黒い球体を作り出す
「・・レイブン、マリー・・僕に力を・・」
対するアルはゆっくりと弓を構え、矢を引く・・。
銀色の弓の中心にある紅い宝石が光るや否や矢は炎に包まれていった

「・・どう見ます?」
「さぁな・・」
「クラークさん!下手すりゃニース村まで被害が出るぜ?」
「そうならないためにアルがふんばる。そうだろ?」
「・・・・うむ」
「よく落ち着いていられるなぁ!」
「お前が落ち着きがないだけだ。・・信じろよ、成長したアルを・・」
「・・・・うむ」
「わかったよ!・・ったく・・」
「・・・・うむ」
「・・シグマ・・適当に返事するな・・」

外野が騒がしい状況なのだが当のアルは真っ直ぐドラゴンゾンビを見つめながら
集中している・・こうなると周りは何も見えずただ獲物を仕留める事のみが頭にある
・・それが狩人という者・・
”ふ・・我が力を見ても逃げ出さないか・・”
「・・当然です。僕は退きません・・。皆のために・・」
”ならば見よ!我が竜波を!”
腐肉の腕で地面をしっかりと踏みしめ大きく口を広げる!
刹那

カッ!

黒く巨大な瘴気は一瞬で白く代わり巨光となってアルに迫り来る
「いきます!カストロススター!!」
目を見開き力を解放させる!その瞬間弓の紅の宝石は音もなく割れ・・

轟!

放たれる矢は黄金に輝く彗星の如く巨光に立ち向かっていく!
光と炎は高速でぶつかり・・

!!!!!!!!!!!!!!!

周囲に鋭い閃光が走る!
まるで世界が白一色になったかと思いきや
”うぬっ!?”
次の瞬間黄金の炎が白い巨光を貫きそれを拡散させながらドラゴンゾンビに腹に深々と突き刺さる!
そのまま矢は腐った体を貫通するかと思ったが勢いを失いそのままただの矢として止まってしまった
拡散された竜の光は周囲の木を消滅されていったがそれも一瞬、一点集中していないがためにすぐに消え去っていった
「・・やれやれ、竜波を打ち破った時点で力を使い切りましたか・・」
苦笑いするしかないアル・・だがそれに呼応するようにドラゴンゾンビからも不敵な笑い声が響く
”・・ふ・・ふふふ・・見事だ!わしの一撃をかき消すどころか体に傷を負わすとはな!”
「貴方に取っては傷にもならないでしょう・・」
”手傷の大小など関係ないこと・・。アルと言ったか・・このわしの負けだ”
「え・・?」
”あの竜波に立ち向かうにはただ力で対抗すれば言いだけではない。意志の力があってはじめて穿つことができるもの・・
それをやってのけた者を信じぬわけにもいくまい”
「それでは・・」
”うむ、人間の村もこの地の一部とし発展する事を認めよう・・お前のような人間がいるならば過ちを繰り返すこともあるまい”
「ありがとうございます・・」
”よい・・そして・・”

グジャ・・

不意に腕の肉がずり落ちる
”流石にこの体では無理はできぬか・・”
「どうなさるのですか?」
”再び眠りにつく・・木となりこの森を見守ろうぞ。楽しかったぞ・・人間ども・・”
心底楽しそうに言うドラゴンゾンビ
その態度に外野の三人も怪訝な顔をしている
「ご苦労様です。僕達も及ばずながら・・この村を見守っていきましょう」
”ふ・・。おっと・・そうだ。褒美をくれてやろう・・”
そう言うとドラゴンゾンビは口の中から何かを吐き出す
・・到底褒美とはいえない渡し方なのだがアルは大して気にしていない様子でそれを拾う
「これは・・金属片?刃の一部かな・・」
手に持つ物は何かの剣の一部のような金属片、黒鉄に似ており真っ黒なのだが不思議と軽く
どことなく違和感がわく代物だ
”その金属の力でわしは今まで力を温存できた。魔物がでるようになり荒れても消滅することなくな”
「これは一体・・」
”詳しい事はわからん・・では・・さらばだ。勇猛たる者達よ”
ふと笑ったかと思うとドラゴンゾンビの体は地へと倒れこみ静かに塵と化していった
「・・ありがとうございます」
そんな古の守護者にアルは静かに頭を下げる・・
「よくやったな、アル・・」
「クラークさん・・」
「まぁ暴れたりなかったが結果はよしとするか」
「クロムウェルさん、すみません」
「・・・、進むがいい。お前はもはや勇者とも言える器を持った」
「シグマさん・・ありがとうございます」
かつての仲間にも深々と頭を下げるアル、礼儀の良さは部隊一である・・
「さぁ、帰ろうぜ・・この地もいずれよくなるさ・・」
大きく伸びをしながら歩き出すクラーク、瘴気により荒れた地は守護者の地として静かな時が流れるだろう

・・・・・・・
・・・・・
・・・
・・


一同がニース村に到着した時には村を襲った異形狼達は全て切り払われていたらしく
村民の避難も解除されていた
「・・タイム〜、帰ったぜ?」
「ふん・・生き残ったか・・」
まずクロムウェルがタイムへと寄りかかりスキンシップ、対し憎まれ口を叩くタイムだが目は嬉しそう
これがいつもの光景なのだ
「お疲れ様です、アル・・」
「お帰り!アル!」
対しレイブンとマリーは帰還したアルを優しくねぎらう
「ああっ、出迎えありがとう・・被害は・・」
「全くない。レイブン殿とタイム殿の働きの甲斐あって村に侵入させる前に全て排除できた」
現場指揮を行ったフロスが自信満々に言う
「流石だな、まぁこっちも予定外の事もあったけど万事OKだったよ」
「そうでなくてはな・・とにかく、詰め所で話を聞こう。クロムウェル、お前達は宿で報告のし合いでもしているか?」
「「なっ!?」」
何気なく茶化すフロスの言葉に大きく動揺する若い二人であった・・
・・・・
詰め所に戻り一同報告をしあうとしたのだが村人の拍手喝采によりそれを行うまでしばらく時間がかかった
特に村人を何度も守ってきたアルに対しては声援が一際強くあるも照れに照れていたとか
「・・・・・、この金属片が・・ですか」
報告が一通り終わった後、問題の金属片にレイブンがジッと見つめている
「・・レイブンは何だかわかる?何かの剣の一部のような気がするんだけど・・」
「・・・・、いえ・・残念ながら・・しかしこの力をもってしてその竜は瘴気を操って村を襲うことができたのでしょう
・・どちらにせよ、魔が関わった物ではないかと思います」
「持っていて物騒な事が起こりそうな気がする代物だなぁ・・。まぁアル、しっかりと管理してくれや」
「はい、皆さんお疲れ様でした!」
「いいって事よ?それよりも無事仕事が終わったんだ!ゆっくり行こうじゃないか!」
「そうだな、アルの出世とこの村の繁栄を願って宴会と行こうか」
「かしこまりました。それでは料理に取り掛かりましょう。マリーさん」
「はい!村を救った英雄にご馳走しなきゃね♪」
元気に腕まくりしながら調理に取り掛かるレイブンとマリー、自衛団員だけではなく家事もきちんとこなすようで
てきぱきと作業に取り掛かる
「う〜む、二人の仲も良いようだしぃ〜、こりゃアルの心一つだな」
「・・・、うむ」
「団長、そういうの苦手ですからねぇ・・セリアさんも色々企んでいるのに全部空振りだし・・」
「タ・・タナトス君!それは・・」
タナトスの呆れた様子に流石のアルも焦りに焦る
「おいおい、第三者の協力仰いでどうするんだよ、アル・・」
「クロムウェルさん!別に頼んでいませんよ!寧ろ退路を断たれているというかなんというか・・」
シドロモドロなアル、その光景に一同苦笑いをしながら酒を取り出し宴をはじめるのだった

・・・・・・・

その夜
村の危機を救った英雄達を祝福しつつ村では大宴会が行われた
当の英雄達も軽くそれに参加して後は詰め所にて懐かしい面々との杯を交わす事に・・
「まぁまぁ、傭兵時代にゃこんなに大騒ぎで酒を飲む事なんてほとんどなかったなぁ」
葡萄酒が注がれたグラス片手にクラークが懐かしむように言う
「ああっ、姉御が騒いでばかりだったし俺もそれに付き合わされたもんなぁ・・」
「確か協調性を養うとい名目で腹芸をやらされていたな。
どこに出しても大丈夫な腕前にまで鍛えたとあいつも自慢していたぞ?」
たしなむ程度に酒を飲んでいるフロスだが開放的な空気のためか
いきなり昔の事を暴露し出す
「クロ〜、そんな事していたのぉ?」
フロスの言葉に酔いのせいでトロンと目が潤んでいるタイムが彼に問いかける
すでに完全に出来上がっている様子で人前であるのにも関わらず自分の素顔を全開している
「お・・おお、拒否する事は血を流す事を一緒だったからな・・ってタイム・・」
「なぁにぃ?」
クロムウェルにもたれこみながら葡萄酒の瓶を握るタイム、もはやグラスは不要、直でやっている
鎧を脱ぎ捨て黒いレオタード調の戦闘服に流石に恥ずかしいと適当な長さの布を腰巻している
「飲みすぎだ・・」
「このくらい平気よぉ・・。うふふ〜・・クロが無事還って来たからもっと飲むのぉ〜
ん〜♪」
いきなり口に葡萄酒を含み、口移ししようするタイム!
「のわぁ!待て!タイム!」
「ん〜?」
「皆見ている!誰がどう見ても飲みすぎだ!」
「ん〜」
首を横に振りながらおかまいなし、訳すれば「私は酔っていないし誰も宴会で見ていない」・・っと言ったところか
しかしすでに二人の世界に入っているタイムの思惑とは大きく違って
全員の眼差しが二人に集まっていた
「・・あの凛々しい団長が・・・ねぇ・・」
「別におかしい事はない。団長職というのはストレスがたまるものだ。普段無理しているのさ」
「そうなんですかぁ・・。僕も気をつけないと・・。でも、仲が良いですね、クロムウェルさん」

「ジロジロ見るんじゃねぇ!んぉ・・こらっ、タイム、口移しはまずいって!」
「クロぉ〜」

「・・宿の部屋を取っています。そこで休まれたほうがよろしいのでは?」
昼間とは別人なタイムを見ても動揺せずにレイブンがクロムウェルに静かに言う
「あ・・ああ、ありがとよ。そんじゃちょっと寝かしつけてくる・・ほらっ、タイム!」
「ん〜?いやぁだぁ・・、酔いに任せて襲わないでぇ・・♪えっち♪」
「襲わないっての!全く・・」
惚けているタイムをお姫様抱っこしながら詰め所を後にするクロムウェル、
しかしタイムは酒瓶を決して離さすことはなかった
「・・・、良い夫婦なろう」
酒を飲んでも無口なシグマ・・そんな光景も静かに意見を呟くのだが
だが一口飲んだ時点で顔は真っ赤になっている
「シグマさん、お顔が真っ赤です!」
そんなシグマの隣に寄るは未成年もいいところなラミア、ミルクを片手に持ってグビグビ飲んでいる
「・・、昔からだ。それよりもがんばったようだな」
「はい!タナトスさん達と一緒にがんばりました!」
「・・、うん。その若さで大したものだ」
まるで我が子を慈しむようにラミアの頭を撫でるシグマ、それとは打って変わって・・
「あれもお前ほど素直だと言いのだが・・」
思わず本音をこぼす、苦労の多い父親そのものな困惑顔・・
「???」
「シグマさん・・どうかしたんですか?」
ラミアの半保護者なタナトスが酒を片手に近づく、彼も顔に出るのかもう真っ赤になっている
「うむ・・、娘の事だ。鍛冶師になりたいと言ってきかなくてな・・」
「なるほどぉ・・。シグマさん自身は反対・・っと」
「・・・、親が子の生きる道など決め付けなくていい。あれも成人しているのだからな・・ただ・・」
「ただ?」
「誰に似たのか後先考えない節があってな。それを治さんとロクな目にあわん」
仏頂面をさらにしかめるシグマ・・親が言う限りかなり酷いようだ
「な・・なるほど・・。ですけど、やってみなければ結果はわからないんじゃないですか?」
「ぬっ?」
「まぁ、若いうちは色々と失敗や無茶をして色々学ぶと俺は思うんですよ。まぁ俺も色々と無茶してますが・・」
「ぬ・・それは・・」
「まぁいつでもフォローできるようにするとかはやってみるとかいいんじゃないですか?」
「・・それもそうだな。タナトス君だったか・・すまぬな」
そう言うと一気に葡萄酒を飲み干すシグマ、同世代ほどのタナトスの助言に少し気が和らいだようだ
一方その隣では・・
「フロスも出世しているよなぁ〜・・ったく、俺とシグマだけか?一般市民はよぉ」
フロスとクラークとアルが仲良く杯を交わしている
「そうでもない。お前とて有名人だぞ?ユトレヒト隊の名は今や国中に知れ渡っている」
「はっは!どうせロクでもない噂だろうな!愚連隊だし」
「そうですか?結構な武勇伝を聞きますけど・・。王都襲撃の際に活躍したのは有名ですし」
フロスの杯に酒を注ぎながらアルが首をかしげる
「その割にゃ依頼は少ないんだけどなぁ・・。まぁクセが強いから依頼人も覚悟が必要なのかもな」
「そうなのか?」
「まぁ・・な。色々いるんだよ・・」
自身もまともな人間ではないのだが本人自覚はなく非難の矛先はもっぱら某パツキンケダモノに対して
「でもクラークさん、ナタリーさんの妹さんとその・・」
「ああっ、恋仲だぜ?まぁあいつとは全然違うし俺達の中では一番まともだ
それよりもお前もしっかりしろよなぁ・・。フロスも仕事の虫か?」
相談に乗っているが結果が出せていないアルに先輩一喝
そしてフロスにもふるのだが
「何、私はすでに妻がいる」
「「ええっ!?」」
「・・・おっと、クロムウェルにしか言っていなかったか」
「全然知らないぜ!?そうだったら式ぐらい呼べよ!?」
「そ・・そうですよ、大事な事ですし・・」
「ああっ、妻が猛反対してな。あいつらに花嫁衣裳見せたら笑い転げるに違いないってな」
ニヤリと笑うフロス、その時の光景を思い出しているようで彼にしては珍しく愉快そうだ
「・・んっ?俺達が見たら問題ある相手か?すっごいごつい体型とか?」
「亜人とか・・ですか?」
「違うな、顔見知りだからだ。」
「俺達の・・?公社関係者?」
「いや、ジャンヌだ。」
「「!!!!!!!!」」
クラークとアル、硬直・・空になりかけのグラスが床にすべり落ちる
「・・まぁ妥当な反応だ」
「いあ、妥当じゃなくて・・あの・・ジャンヌか?」
「フロスさんとは260度ぐらい反対の人じゃないですか!?」
「だからこそ・・か。今ではローエンハイツの影としてジャンヌ盗賊団の連中も治安維持に協力してくれている」
「ほぇ・・」
事もなく言ってのけるフロスにクラークは圧倒されている
「そこまで驚くほどではあるまい、私としてはナタリーの妹に手を出したお前のほうが驚く」
「・・そうかぁ?でも・・あれが・・お前の趣味か」
「何、お前達が知っているあいつの姿はあいつの一部に過ぎない。女は見た目が全てではないだろう?」
「「確かに・・」」
妙に納得する二人、そこに・・
「アルゥ、ミルクおかわりする?」
エプロン姿のマリーが近づく、グラスが床に倒れたのに気づき新しく入れてやろうとやってきたのだ
「あっ、そうだね・・もらうよ」
「はい♪どうぞ♪」
満面の笑みを浮かべるマリーに対してアルは何だか申し訳なさそうに一礼をしている
「未だに酒は飲まないか、アル」
「え・・・ええ・・」
「まぁ自分じゃわからんだろうけど酒癖の悪さは凄まじかったからなぁ・・」
「えっ!?皆さんと一緒に飲んだ事ありましたっけ?二日酔いが苦手でほとんど飲んでなかったはずですが・・」
「ああっ、記憶が飛んでいるんだよ。クロムウェルとナタリーの野郎がお前と晩酌してな。
飲むのを拒んでいたお前の口に葡萄酒突っ込んで一本一気飲みさせたんだよ」
「そ・・そんなことを・・」
ワルノリした二人の餌食に良くなっていたアルだが、そんな記憶が全くなく今更ながら驚愕している
「そっから今度はお前が暴れ出してなぁ・・『この兵舎にある酒全部飲み干してやる!』って言いながらほんとに
飲み干したから・・」
「え・・・そんなことを・・」
「ああっ、それで飲み干した直後にお前昏倒。余計な出費にファラが大激怒にクロムウェル血祭りになって
任務続行不可能にまでなったんだよ。お前、2,3日寝ていたしな」
「あ〜!なんかよくわからないですけど日付の感覚がおかしくなっていた時がありましたね!
僕が聞いても何も応えてくれなかったですし・・」
「言っても思い出せないだろうからな・・。まぁ相変わらず控えているのはいいことだ」
「あ・・はぁ・・。二日酔いは生半可な手傷よりも辛いですしね・・」
苦笑いなアル、っというのも何故か彼の場合二日酔いの状態が長引いている。
酒に対する免疫のなさが相当あるらしい
「まぁ結構な事だ。それよりも昼間のあの一撃・・弓のカラクリのおかげもあっただろうけど凄まじい物だな」
「それは・・」「アル自身の力も増幅されている結果です」
アルの言葉を挟むようにレイブンが近づく、どうやらお仕事は一段落したらしく彼の隣に寄り添ってきた
「おう、レイブンさん。料理もうまいんだなぁ・・良い肴だ」
「ありがとうございます。まだまだありますのでどうぞ召し上がってください」
葡萄酒をすでに少し飲んでいるらしいのだが態度に変化はなく黒銀の美女はクラーク達をあくまで客人としてもてなしている
「それで、あの芸当はアル自身の力・・っと言うわけかな?」
「それでもあり私の影響でもあるとおもいます・・」
「・・っというと?」
「天使と身を重ねた者はその影響を受けると言われます。アルは私の守護魔法の影響や体を重ねた影響もあり
常人に比べて不浄を払う力は格段に強くなっているのです」
堂々と身を重ねたと言ってのけるレイブン、まったく顔色を変えないその様にアルはふと不審そうに彼女の顔を覗き込む
「レイブン・・酔ってない?」
「ええっ、酔っていませんとも」
「そ・・そうなの?」
「しつこいですよ?アル、そんなことだから『甲斐性なし』だの『ヘタレ』などといわれるのです
そのしつこさを何故私に向けてくれないのですか?」
よぉ〜く見るとレイブンさん、少し目が据わっているようで何気に愚痴り出す・・
「あ・・いや、ちょっと、レイブン・・」
「大体ですね、生か死かの戦場は決断力が必要不可欠です。そこを切り抜けてきている貴方に何故決断力がないのですか?」
「ク・・クラークさん・・」
『隊長、至急来援を!』っとでも言いたいアルの眼差し
静かな顔してやたらとネチっこく攻めてくるレイブンに悪戦している・・
それを見た先輩二人はあっさりとアルに背を向き
「いやぁ・・にしてもジャンヌがお前の妻とは驚いたぜ。今度からかいに行かせてもらおうかな」
「見つからないように身を隠すに違いないがな・・。私としてはお前のような朴念仁を好いた女に興味がある」
話題を変更、隊長と軍師が部下を見捨てた瞬間だ
・・まぁ夫婦喧嘩は犬でも食わぬ・・っとあるように恋人同士の喧嘩などは退くが吉
そして全てはアルのヘタレを治すため・・
クラークとフロスは心を鬼にしつつ波乱に巻き込まれるアルに乾杯するのであった
「良い機会です。今宵はじ・・・・っくりとお話しましょう。なんならマリーさんとセットでも構いません」
「あ・・ははは・・」
「では、皆さん、私は説教に入るので後はご自由に・・」
スクッと起き上がるレイブン、アルに絡んでいるわりには何事もないようにアルの耳をひっぱりながら詰め所を後にする
そこにいた一同は異様なレイブンの様子にただ黙っていることしかできなかったとか・・

・・・・・・・・

その後も宴は盛り上がりつつ何時しか全員眠りへとついた
すぐに戻ってくると言ったクロムウェルもタイムを寝かしつけに行ったまま帰ってこなかったのだがそこらを訊くのは
野暮ということで全員黙秘することにしたらしい
そしてアルとレイブンが愛の説教をしている間にいつの間にかマリーも姿を見せなくなったのもこれまた黙秘
男と女の関係は当事者のみが関わるものである
そんなこんなで騒がしい夜が明け再び新しい一日が始まる
村人はまだドンチャン騒ぎの反動で眠りこけているのだが13部隊の面々はすでに身支度を整えて
森の入り口まで移動していた
「・・見送りなんていいのによ」
申し訳なさそうにクロムウェルが言う、っというのも見送りにきたアルとレイブン、マリーの三人はどうやら徹夜の様子で
特に被害者のアルは一晩でげっそりとしている
「いえっ、客人を見送るのも大切な事です。・・それに今日は気が晴れておりますので」
事も無げに言うレイブン・・
「アル・・途中で寝ちゃったけど・・まさか・・朝まで?」
「え・・はは・・記憶が・・曖昧で・・」
疲れ切ったアル、ここまで衰弱しては徹夜で行った愛の説教も効果があるのかないのか・・
「まぁそれは言いとして・・書類はすぐに本部に送る。時期に王都への招待状が届くだろう」
こちらはこちらで不機嫌そうなタイムさん、仕事はキチッとやっているが本当は今すぐ横になりたいほどの2日酔いだったり・・
「ご苦労様です。あの・・何か体の加減でも悪いのですか?タイムさん」
「・・・なんでもない・・」
仕事とあればそれも堪える事ができる。・・後の事は別として
彼女の強さはここにあり
「まっ、ともあれがんばれよ。これからは森の巡回だけじゃなくて村内の治安も大事になってくるだろうからな」
「・・ああっ、騎士団になればそれだけ治安が安定したと様々なところから移住者もこよう。
それを上手く纏めるのもお前の仕事になる」
「クラークさん、フロスさん・・」
「・・、迷わず進め。壁など壊せばいい」
「シグマさん」
「何かあったら俺達に相談すればいいさ。女性関係はパスだろうけどな♪」
「ク・・クロムウェルさん・・。ありがとうございます・・」
クロムウェルにだけは少し苦笑しつつも先輩達の意見を静かに受け止め、礼を言うアル
何気ない言葉だが彼にとっては心強い支えとなることはまちがいない
「そんじゃ、俺達は帰るぜ。後始末大変だろうがまぁ・・がんばってくれ♪」
「はい、皆さん、今回はありがとうございます!」
改めて深く頭を下げるアル、疲労困憊の体に鞭打ち、一同が地平線に消えるまでその姿を見送った

・・・・・・・・・・・・・

「大丈夫か?タイム・・」
「き・・気持ち悪い・・」
ルザリアに向けてまっすぐ伸びる街道をゆっくりと歩くクロムウェルとタイム。フロスとは元々逆方向ですぐにわかれ、クラークはさっさと先に行き
シグマは王都に用事があるということで来た時と同じ二人でゆっくりと帰路についている
「あんなに飲むからだよ・・ったく」
「私・・そんなに飲んでいたの?」
「二日酔いになっているんだからよほどなんだろうな・・。ってか覚えてないんかい」
「う・・ごめんなさい・・」
正直覚えていないほうがいい。一組織の長が人前で酔いつぶれ恋人に甘えている姿など・・
「まぁいいや。報告書の提出も急いだほうがいいだろうけど・・まぁ俺達は俺達でのんびり帰ろうぜ?
それとも馬でも借りて帰るか?」
「クロの・・意地悪・・(ギュ)」
今この状況で馬になんて乗ろうものなら、待っているは壮絶な結末のみ
それをわかっていながら言うクロムウェルに二日酔いながらもタイムは顔を曇らせる
「なはは、まっ二日酔い治るの待ちながらゆっくりと帰るか。・・戻ったらまた忙しいからなぁ・・」
「そうね。二人旅って言うのも悪くないし・・ね」
そう言うとタイムはごつごつした鎧姿のままでクロムウェルの腕を組み仲良く街道を歩き出した

・・・・一週間後、

大国ハイデルベルクに新たな騎士団が設立された。
小規模ながらも優れた能力者が集う処と話題になり
「森林の騎士団」としてその存在は国内に知れ渡っていく事となったのだ

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