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chapter 8 「a beautiful creature」



月夜に照らされた資材置き場というのは一種独特の光景と言える。

遠くには繁華街やビルの灯りなど煌々と照っているのだがこの周辺では街灯がある程度、

このコンテナ倉庫もそれらしい明かりがあるのだがここでの作業は昼間が多いのか・・至ってみすぼらしい物しかない

そんな中、ライオットとアザリアはコンテナの山の頂上を警戒しながら進む・・

途中通路で途絶えたところはライオットが先行して後でアザリアが飛び、その体をライオットが受け止める・・っといった具合にやり過ごしていく

ゴスロリドレスでの身動きは制限される物だが意外にアザリアの身のこなしは良い

しかしそれはあくまで一般レベルでありコンテナを大きく飛び越えた後に物音を立てずに着地する芸当など彼女にはできるはずもない。

それは彼女自身もわかっているのだが嫌でもライオットに体が密着してしまう事に対しては我慢できないのか

その都度、変態だのすけべだの罵っていたりする・・

彼にとっては良い災難であるのだが緊張した任務の中では良い息抜きになる・・っと強引に割り切るようになっていった


・・・・・・・・


資材置き場とは言えども何もコンテナだけが整理されて置かれているわけではない

広い敷地の中にはちゃんとした大型倉庫が幾つか建てられている。

それはコンテナの返却をすぐにしなければならず中身を保存するスペースが必要な物等が主であり

それこそ本当の一時的な置き場故に作りはお粗末、ただ盗難に合わないように入り口だけは頑丈な鉄製の大扉となっている

事前のブリーフィングでは大型倉庫は敷地内に5箇所存在するらしくそこが取引現場と予想され各個に探りを入れているのだ

彼もその内を一つを受け持ち、ブリーフィングで見た見取り図よりも運搬のためやや変化されたコンテナ群を抜けそこに辿り着いた


「・・(どうやら・・僕達のところが当たりのようだね・・)」


倉庫に一番近いコンテナに隠れて中の様子を確認するライオット、目が良い彼じゃなくても当たりなのはわかる

倉庫の窓から灯りが微かに洩れているのが見えさらには倉庫周辺を巡回するギャング達の姿も・・

「・・(見張りが倒れていない・・、皆他のところなの・・?)」

「・・(分担については聞かされてはいないよ、だがどちらにしてもこの状況で見張りを排除するのは取引している連中に気付かれる可能性がある・・むやみに発砲できないさ)」

「・・(じゃあどうするのよ、見張りに気付かれないように中に入るっていうの?)」

距離的な事を言うならば現在二人がいるコンテナから倉庫の窓まで飛び移れない距離でもない

だがあくまでそれは倉庫の窓、内部構造がわからない以上飛び込むのは危険すぎる

完全に吹き抜け状態で地面に激突する可能性も決して低くはない。

「・・(侵入するには難しいね、外壁にも突起がない・・足をかけれないしすぐに見つかってしまう)」

「・・(如何する事もできないじゃない!)」

「・・(落ち着いて、取引が終わればそこから出てくるはずだ・・)」

「・・(わかったわ、それまで待つ)」

周りに聞こえないほど小さな声で行われた作戦会議は終了し、

後は事態が動き出すまでその場所に無言でじっと待ち続けるのであった・・

・・・・・

石のように気配を消しながら待つ事十数分、見張りは相も変わらず巡回している。

対し扉の前の見張りは移動せずに周辺を警戒してるのだが事態は動こうとしていた

倉庫内の灯りが消えてゆっくりと鉄の扉が開かれたのだ

それにすかさずライオットは様子を伺う・・、すると中からは6人ほど男が出てきた。

どうやら交渉をしていたのは二人のようで残りは双方の護衛らしくパッと見の時点で危険人物なのがわかる

所謂そっち系の服装をしているのだ

対し交渉していたと思われる二人は片方がきちんとしたスーツ姿の中年男性

銀色のアタッシェケースを大事そうに抱えているのだが見たところ余り気の強そうな感じではない

もう一方は同じく銀色のアタッシェケースを持った若い金髪の男、

こちらはチンピラ風の軽いシャツと破れたジーパンを着用しており見るからに悪人である・・

「では、確かに頂きましたよ」

「おおっ、金も確かにある・・」

倉庫前で再び軽く握手をしながら会話をする男達、ライオットは耳を済ませてそれを聴く事に集中した



「確認ですが・・この細胞の使用についてそちらから経過を伝える必要はないのですね?」

「あん?俺を疑うつもりか?」

「疑うわけではないです、確認といいましたよ?」

「やれやれ・・俺達は上の命令で動いているにすぎない。上で金と引き換えにくれてやればいいと言ったんだからそれでいいんじゃねぇか?」

「・・ならばいいです」

「まぁ細胞の効果には個人差があるって話だ・・お前らの目的は知らないが使用する前に実験はやっておいた方がいい・・ってよ」

「実験ですか・・」

「あぁ、そこらのガキを拉致して埋め込むのもいいだろう・・巷にゃその細胞を狙う野郎どももいる・・そいつらを返り討ちにして実験材料にするのもありだ」

「・・あなた方はそのような事をしているのですか?」

「どうせ死ぬ体の有効利用だ、・・確か・・マーターだったか。以前の頭も死体に打ち込んで今じゃ立派な化物さ・・へへっ・・」



パァン!!


男達の会話を遮るように銃声が昇った・・

それを放ったのはアザリア、コンテナから身を乗り出し狂気に満ちた表情で二人を睨みつける

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

パァンパァンパァンパァン!!!

照準などおかまいなし、怒りに任せてトリガーを引く!

必死の形相、凶弾は取引をしていたスーツの中年男に命中させ血を撒き散らした

「野郎!」

だが相手もやられっぱなしとはいかない、すぐさま遮蔽物に隠れながら応戦する

「アザリア!落ち着いて!」

「あいつが!あいつらがぁぁぁ!!!」

ライオットの言葉も届かずリロードする事も忘れトリガーを引き続ける

「アザリア!」


パン!


血気盛んなアザリアの襟を引っ張りライオットは遠慮なく平手でその頬を叩いた

「・・っ!」

「こちらスカウト11!F地区倉庫でターゲット確認!至急来援を!」

唸るアザリアなど無視してライオットは通信機で来援を要請しながらマグナムを取り出した

「このままだと囲まれる、敵を牽制しながら逃げる・・いいね!?」

「う・・ん」

見たこともないライオットの本気の表情に初めて圧されるアザリア、

だが頬を叩かれた事で我に返り状況を把握できたがために反論する事もできず彼の後をついていった


・・・・・・・・


取引現場まで接近するまでに敵の見張りは相当排除されていたはずなのだが二人を追撃する男達は多かった

それだけ倉庫周辺に待機されていたのであろう、アサルトライフルや拳銃を乱射しながらライオット達に襲い掛かる


ドォン!ドォン!


「この状況・・全員相手をするのは難しいか・・」

コンテナを巧みに使いながら迎撃するライオット、緊急の事態なのだが射撃は正確で襲い掛かる敵を排除していく

全力で逃げようにもアザリアがいる以上すぐに追いつかれてしまうが故の選択で一帯は銃声に包まれつつあった

「アザリア、靴の布を取ったら援護を!合図をしたら移動するから!」

「わ、わかった!!」

足音を立てないように足に巻かれた布ももはや意味はなくアザリアは手早くそれを取りグロックの弾を込めなおして援護を行う

その射撃は正確とまではいかないが牽制するには十二分の物、

試射を行わずに実戦投入した割にはその精度は上々で敵に命中しないのは専らアザリアの腕の悪さのみである

先ほどの怒りに任せての射撃の方がまだ命中しているのだがそれについて文句を言える状態でもない

「敵の数は・・予想よりも少ない、少しづつ減らせばなんとかなるか・・」

「大丈夫なの?」

「なんとかなる・・だけど・・(こいつらの動き、まるで僕らを誘導させているかのようだ)」

「だけどなんなの?!」

「何でもない!次の合図で一斉に撃って走るよ!・・3・・2・・1!!」

敵の射撃の切れ目を狙った瞬間に身を乗り出し二人は銃を構える!


ドォン!パァン!パァン!


交互に火を噴く二人の銃、連射性能はグロックの方が上のためにアザリアが無我夢中で援護射撃をし

ライオットが止めをさしている形となっている


「うぐぅ!」
「ぎゃ!」
「ぐわぁ!」


決死の射撃は見事に成功、追撃してきた男達を体に弾丸はめり込みそのまま戦う力を奪わせる

「今だ!」

命中したのを確認するのと同時に走り出す二人!絶妙の判断で追撃をやり過ごそうと砂利地に飛び降りながら駆ける!

「追っ手がこない・・?このまま一気に・・!」

一瞬振り向きながらも通路の角に入り状態を確認するアザリア、息は切れているがまだまだ戦えそうではある

「どうやら・・他の皆が到着して殲滅してくれたのか・・な」

シンガリを担当したライオットも追撃がない事を確認し通路の角を曲がったところで息をついた

彼が言うようにそう遠くないところから銃声が響き渡る、流石に爆破音はないのだが・・

「皆が・・、じゃあ!」

「向おうとしてもダメだ、この乱戦は君が引き起こしたものなんだよ?」

「・・っ・・で・・でも・・」

「あの時の君は普通じゃなかった、奴らの会話に平静を保てなかった末の乱射だったんだと思う・・

だけど、命を粗末にしちゃいけないよ。状態を見極めないで仕掛けたら死亡する可能性は極端に高くなる」

「・・ごめん・・なさい・・」

「何、僕は他人に説教できるほど有能じゃないから・・謝るならリクセンさんに言っておくといいよ」

「・・うん・・・、じゃ・・じゃあ行きましょう!」


何ともなしに気まずいのか無理に明るく言い狭い通路を進もうとするアザリア

「それがいい・・、・・・?待って!動いたらだめだ!」

「・・え!?」

咄嗟のライオットの怒鳴り声にアザリアの体はビクっと震えて硬直した

そしてそんな彼女にライオットは近づきコンテナに囲まれた細い通路を良く見渡す

「・・・これが見えるかい・・?」

ポケットから小さなライトを取り出し通路に向けて照らす・・

すると彼女の目の前に数本の線がキラキラと反射された

「何・・これ・・?」

「・・線刃とも言われる暗器の一種だよ。

ピアノ線ほどの細さの刃物だけど威力は高い・・君が走ってここを通過しようものなら体は易々と切断されていたはずだ」

「これも・・あいつらが・・?」

「いや、違う・・。銃器を使う連中だ・・こんなトラップを仕掛けるくらいならC4に連結させて爆破させる方が効果的だ

だけどこれは刃物のみのトラップ・・こんな事をするのはプロの殺し屋しかいない・・」

青い顔をしながら説明するライオット、その様子にアザリアは思わず息を飲み込んだ

その刹那



『そう、その通りよ』



辺りに女性の声が響き渡る・・、落ち着き払った知的さを含む物なのだがそれに勝るほど冷たい声・・

「・・!?・・上か!」

気配に察知しマグナムの銃口を天に向けて構える・・、

そこにはコンテナの上に立つ一人の女性が・・女性は片目を隠すほどの黒長髪をしており瞳は血の様にくすんだ赤色をしている。

赤縁に黒いロングチャイナドレスを着ており月夜に照らされたその姿はどこか幻想的であった

「・・へぇ・・シャオロンじゃない・・。意外なところでの再会となったわね」

女性はライオットの方を見てニヤリと笑う、だが次の瞬間彼女は姿を消し二人の前の通路へと飛び降りた

「・・イーフー・・姐さん・・?」

「・・知り合いなの・・?」

「そうねぇ、彼の世話をしていた経験がある者よ・・マーターの可愛い頭領さん。

それと・・私の名前は『骸』・・イーフーって女はもういないわ」

一応は礼儀正しい女性・・骸、だが体から発せられる気配は異常そのもので対峙しているだけで体が震えてしまう

「イーフー姐さん、いや・・骸・・、壊滅しかかった夢幻を貴女が立て直したとでもいうのか?」

「何も知らないようね、まぁ・・私だけじゃないけど・・そんなところよ。

それよりも驚いたわ〜、貴方が銃を持つなんて・・暗器術も碌に使えないからって・・アサシンの誇りも忘れたようね」

「僕は無能だからね、任務を果たすためならば何だってするさ」

「・・ふふふっ、昔のシャオロンから少しだけ成長したようね」

「あんたが・・夢幻の暗殺者・・!なら奇形ES細胞の取引もあんた達が!?」

「その通り、ビジネスとしてはこれ以上ない物なのかもしれないわね」

「貴女こそアサシンの誇りを忘れているじゃないか!あんなものを世に広めてどうするつもりだ!?」

「どうするって・・?同種を増やすのよ」

静かに笑う骸・・、だがその笑みには狂気があふれ出している

「同・・種?」

「シャオロン、貴方が何故マーターにいてこいつらの手伝いをしているかは知らない・・

だから教えてあげるわ・・組織が新しく生まれ変わった事をね!」


ガァン!


軽く自分が立つ隣に置かれたコンテナを殴る骸・・しかしその拳は容易にコンテナの鉄壁を貫いた

「・・その力・・」

「貴方達の言葉でに言えば私は『奇形ES者』って事になるのかしらね・・ふふふ・・これが新生『夢幻』の力よ」

「み・・自ら人である事を捨てて組織を復活させたのか・・」

「組織復活のためじゃないわよ、私はただ力を求めただけ・・そしてあの御方に忠誠を誓ったに過ぎないわ・・フフフ・・」

「・・イーフー姐さん・・」

「わかった?貴方の記憶にいる女は死んだの。そして・・敵対する組織にいるのを見逃すわけにはいかないわ。

ここで殺してコンテナにでも詰めてあげる・・無能な貴方じゃ細胞を埋め込んでも使えなさそうだしね」


「・・ならば僕も教えてやる。僕はシャオロンじゃない!ライオットだ!」


今までにない強気な言葉を吐きライオットはマグナムを抜き骸に向ける!


ドォン!


照準もそこそこ、先制するために片手で撃ち放つ!

彼にしては上出来の速射だがそれよりも速く骸の姿が消え去えた・・

『フフフ・・、捉えられるかしら・・?私のスピードが!』

どこからともなく聞こえる骸の声、だが次の瞬間ライオットは再びコンテナの頂上に向けて銃口を向ける


ドォン!


鋭い銃声!しかしそれと同時に空を切り短剣が数本飛来してきて彼は横飛びをしてそれを回避する

「流石に・・・っ!」

体制を立て直そうとしたその瞬間、ライオットの喉元に冷たい刃が突きつけられた

「コンテナに昇ったところまでは目で追えたみたいだけど・・全然だめね・・シャオロン」

悠然と短剣を突きつける骸、余裕の表情が伺え殺意は微塵も感じさせない

「その超人的な肉体・・」

「そうよ、これが細胞の力・・、私には『豹』の細胞を変異させたものが組み込まれている・・貴方如きが捉えられるものじゃないわ」

「人を捨てたけど・・アサシンである事は捨てないようだね・・」

「銃に頼るようじゃおしまいよ。さぁ・・眠りなさい・・夢幻の彼方へ・・」

スッと骸の手が動く、その瞬間・・


パァン!


乾いた音が響いた瞬間に骸の体が再び消え、一瞬で数メートル離れた地点に現れた

音の主はアザリア・・グロックで骸を狙ったのだがそれよりも速く動かれ弾丸はコンテナにめり込まれた

「くそ・・」

「あらあら、御嬢ちゃん・・そんな下手な腕で撃っちゃって・・シャオロンに当たったらどうするつもりだったの?」

「うるさい!」

聞く耳持たず、奇形ES者に対する憎悪をむき出しにトリガーを引き続ける


パァンパァンパァン!


頭に血が昇ると乱射をする癖があるのかアザリアは碌に狙いもつけずに撃ちまくる

「ふふふ・・それじゃ何千発撃っても当たらないわよ!」

アザリアがトリガーを引くよりも速くその姿を晦ます骸、乱射などどこ吹く風といったところで反撃とばかりに軽く短剣を投げつける

「きゃ!」

それは見事銃身に直撃し衝撃でグロックは宙を舞った

「ここは子供の来るところじゃないのよ・・フフフ・・、っ!」


ドォン!


アザリアの方を見て笑っていた骸だが突如顔色を変えて飛びのく、彼女がいたところにはライオットが放った弾丸が通過した・・

「ち・・命中できる速さじゃない!」

アザリアが骸を攻撃していた隙に狙いを定めていたのだが見事に悟られてしまったようで軽く舌打ちをする

「もっと必死にならないと当たらないわよ・・?」

「ライオット!私達だけじゃ敵わないわ・・皆の応援を・・!」

敵に背を向ける事などしたくないものなのだが余りにも戦力が違いすぎる。

逃走したいところなのだが骸の脚力からして見ればそれも敵わない

「ダメだ・・来援がきたところで捉えられなければ一緒だ・・!」

「わかっているわね、でも・・鬼ごっこをする気もないわ・・!」

ニヤリと笑い骸は両手でコンテナを掴んだかと思うと無理やりにそれを持ち上げた。

粘土を掴むかのコンテナに手は食い込みそれをいとも簡単に担ぎ上げた

華奢な体に自分の体の数倍もあるコンテナを持ち上げる姿は異様そのもの・・

「退路は塞がないとね・・」

そう言い骸はコンテナを軽く投げ捨てた


ドォォォォン・・!


軽く投げたと思われたコンテナだが流石に重量があり、ライオットとアザリアの背後に落下して振動を起こしながら地面にめり込んだ

「なんて・・力・・」

背後の通路が衝撃で拉げたコンテナに完全に遮断されアザリアは声を失った

「ふふふ・・」


ドォォォォン!


呆気に取られるアザリアを余所に骸はもう一つコンテナを投げ落としライオット達の進路を塞いだ

これで通路は断たれコンテナに囲まれた狭い空間が造られた事になる

「これで逃げられないわね、コンテナに登ろうにしても・・背中が無防備じゃ刺してくださいって言っているようなものだし・・」

「そうだね・・どの道通路を全力で走っても逃げ切れるものじゃなかった」

「ふぅん・・わかっているわね、シャオロン・・状況把握だけは一人前ね・・」

「誰にでも取り得はあるものだよ、アザリアは下がって・・グロックを持っていても骸には当てられない」

「で、でも・・あんただけに任せるなんて・・!」

「第一の狙いは僕だ。何とかしてみせる!」

そう言い銃を構え、アザリアを庇うライオット、表情には焦りが伺えるのだが勝負を捨ててはいないようだ

「引っ込み思案の貴方がそんな大口を叩くなんて・・ほんと・・昔のシャオロンとは大違いね」

「言ったはずだ・・シャオロンって男はもういないって!」

「どっちも同じよ、ここで消えるんだもの!」

ニヤリと笑い骸は腰を下げる、その瞬間・・


キィン!


まさに弓から放たれた矢のようにコンテナから飛び降り短剣を振りかぶり襲い掛かった!

予想を上回るライオットは咄嗟に銃を盾にし骸の一撃を受ける・・

「・・、この銃・・!」

自分の攻撃が受け止められた事に初めて骸が驚く・・見ればマグナムの銃身に打ちつけた短剣に皹が入っている

・・対しライオットのマグナムは傷一つついていない

「これは・・!くっ!」

ライオットもその事に驚くのだがこれを好機とし咄嗟に腰の麻酔銃を取り出し至近距離で骸に狙いをあわせる

利き腕ではないのだがこれだけ近ければ多少狙いが反れても当てる事ができる

「・・っシャオロン!」

鋭い声を放ち飛びのく骸、その瞬間に麻酔銃から弾が発射される

「ここだ!」

彼の狙いは麻酔銃を当てる事ではない、咄嗟に飛びのいたところでマグナムで掃射する事だった

それゆえに麻酔銃を撃った途端に投げ捨ててマグナムで照準を合わせる!


ドォン!ドォン!ドォン!


激しく火を上げるマグナム、強力な弾丸は体勢の整い切れていない骸に容赦なく襲い掛かり

その内の一発が彼女の肩にめり込み血と肉を撒き散らした

「うぐ・・シ・・シャオロン!!!」

奇形ES者と言えども痛覚はあるらしく凄まじい形相でライオットを睨みながら骸はコンテナに飛び昇った

「くそ・・仕留め切れなかった!」

「小ざかしい・・・、小ざかしいわ!コンテナに押しつぶされて圧死するがいい!」

先ほどまでと打って変わって殺意をむき出しにする骸

肩が破壊されているにもかかわらず近くコンテナを無理やり持ち上げる

それにより傷口から夥しく血が吹き出るのだが本人は全く平気のようだ

「あれは僕達に向けて投げる気か・・!冗談じゃない!」

身動きがそう取れないこの状況でコンテナ一つ投げつけられたら考えられる結果はただ一つ・・

「ライオット!速く撃たないと!」

「あ・・ああ・・!!」

もはやアサシンの攻撃ではない骸の行動に一瞬対応が遅れたライオット・・

「遅いわよ!!ぶっつぶれろぉぉぉぉ!!!」

狂気に満ちた笑みで銃口が向けられるように速くコンテナを投げつけようとする!

しかしその瞬間に・・

・・・・・・・・・・・パァン・・!

「ひ・・ぐぅあ・・・!!」

遠くで銃声がしたかと思うと骸の右足の肉が激しく飛び散った

それでバランスを崩した骸はコンテナを持ち上げたまま封鎖された通路の先に落下し重い音を上げてその下敷きとなった

「何が・・起こったの・・?」

呆気に取られるアザリア、だがライオットにはそれが何なのかわかるようだ

「・・狙撃だよ、それも銃声がするよりも速く着弾する・・超遠距離からの精密射撃だ。でも一体誰が・・?」

素早く動き回っていた骸の細い足を狙うのは相当な腕でなければ無理だ

狙撃の主を思い巡らしていた瞬間に、彼の腰にある通信機が音を鳴らす

「こちらスカウト11」

『え〜、こちらスナイプ1・・命中したみたいね』

通信機の向こうから聞こえるは聞きなれた女性のもの・・

「狙撃をしたのは貴女でしたか・・フォックスさん」

『本来の得物で援護させてもらったわ、それよりも気をつけて・・コンテナの下敷きになった程度じゃくたばらないわよ・・

隙間の通路にいられたらこちらからも狙撃できない・・後は任せるわよ』

「・・ありがとうございます」

返事を待たずに通信を切りライオットは懐のシガーレットケースから特殊弾スティンガーを取り出し手早く装弾させる

「倒したんじゃないの・・?」

「フォックスさんが言ったよ・・あの程度じゃくたばらないって・・」

そう言い前方、通路を塞いだコンテナの先にある骸の落下地点目掛け銃口を向ける・・

次の瞬間、コンテナの一つが激しい音を立て宙に向って飛びあがった・・

それが何なのか今の二人ならば容易に想像がつく

「シャオロォン!!」

コンテナの向こうから聞こえる狂気に見た声・・ライオットはそれを正確に聞き取り・・

「そこだ・・・いけぇ!」


ドォォン!!


通常弾とはまるで違う強烈な反動とともにスティンガーを撃ち放つ!

それはコンテナの鉄板を容易に貫通させ見えない相手目掛け突き進み・・

「・・・ぎゃあああ!!!」

見事に相手を射抜いた・・

「・・イーフー姐さん!」

止めとばかりにライオットは絶叫を聞きながら走り通路を塞ぐコンテナに飛び乗る!

「シャオロン!」

対し獣染みた咆哮を上げコンテナの向こうから骸が飛びかかる!

二人の体は崩れかかり通路を塞いだコンテナの上で止まる・・

ライオットはマグナムを骸の額に突きつけ、骸は短剣をライオットの首に押し付けた

良く見れば骸の足や肩は見るも無残、そして胸には大きな風穴が開いており心臓を打ち抜いているのがわかる

彼女の瞳は真っ赤に光っており傷口はボコボコと蠢いている

満身創痍と思いきやそれでもその動きは常人以上でライオットの殺そうとしている


「シャオロン・・私を・・越えるつもり・・!」

「・・・姐さん・・ごめんなさい・・!」

零距離で対峙する二人・・だがライオットは泣き出しそうな表情を浮かべ、静かにトリガーを引く・・



ドォォン!


至近距離で放たれたスティンガーは骸の頭を貫通させ無情にも彼女の全てを奪い吹き飛ばすのであった・・



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