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chapter 5 「murder」



男が案内したのは入り組んだ路地の中にあるマンホールでそこを開けると共に地下水路へと招いた

不信感丸出しなのだが危機が去っていない以上疑っているわけにもいかず二人は言われるままに地下へと降り立った

世界有数の都市故にここの地下設備は充実している

排水などはパイプ管で管理されているがために過去の地下水路とは違い多少パイプが多い地下道と同じ

当然異臭などはなく水の流れを利用した発電で電灯を完備されており明るい

それでも余り住みよいとは言えないのだが・・

「・・ここまでくれば安全です」

「・・加勢した事には礼を言おう。だが・・その理由がよくわからんのだがな」

「説明いたします。私は『マーター』の一員でエドと申します」

深く礼をする男・・エド、素顔を隠した状態でも礼儀正しい

「マーター・・?聞いた事ないです・・マスターはご存知ですか?」

「・・・、反ES者組織「マーター」・・元々NGOに登録された組織が分裂したモノ・・だ」

「・・ES?」

聞きなれない単語に呆然とするライオット、その手の情報には乏しいようだ

「ES細胞の事です、細胞再生治療として有効な物として広く普及しています」

「要は万能な細胞って奴だ。培養する事でどの細胞にも変化する・・それで破損した臓器の再生に役立てる物だ。

これにより不治の病って奴が激減した。

しかしその細胞を『神への冒涜』として廃止すべきと運動する団体があってな・・。

医療組織に対して圧力をかける行動をしているのが専らだったが・・

バズーカを持っているところ分派としてはテロリストと変わらないのかもしれないな」

「我々はES治療に対して敵視をしているわけではありません。その技術により生み出した悪魔の産物の排除が目的です」

「・・・まさか・・」

「奇形ES細胞・・それを根絶するのが我らの組織の最大の目標です」

「・・奇形・・?」

ティーゲルの顔が強張るのに対しライオットは何の事かわからない様子だ

「また説明してやる・・、で・・マーターの人間が何故俺達を助けた?」

「奇形ES細胞を扱う組織が貴方達を狙っている情報を手に入れましたので・・。

それに貴方なら狙われる理由はわかると思いますが・・」

「・・・・・」

「マスター?」

「何でもない、それで・・ここで解散ってわけでもなさそうだな・・」

「はい、我々の頭領に面会していただきたいと思いまして・・」

「・・助けてもらった恩義はある・・さっさと案内してくれ」

「ありがとうございます、では・・こちらです」

踵を返し早足で案内するエド・・対しティーゲルは押し黙りながらそれに続き

ライオットは異様とも言えるティーゲルの様子に何も聴く事ができないまま地下道を進むのであった・・


・・・・・・・



旧世紀から現在に至るまでこの世界では大きな戦争が起きた。

第三次世界大戦

通称『放射能戦争』と呼ばれ史上初、核の撃ち合いとなる戦争となった人類最大の汚点と呼べる争いである。

それにより世界は壊滅的な打撃を受け、生き残った国家は新たな時代として

過去の過ちを起こさないように全てをリセットし復興を続けてきた

世界大戦が勃発する直前、核武装国家の不穏な動きに民間業者や政府などが

避難核シェルターを地下に無数に設置され戦争後そのままにされている。

地下整備をするにしては数が多すぎる事とそれがあっても問題があるわけでもないので事実上放置されているのだ

それは大昔、第二次世界大戦後の諸国で見つかった防空壕にも似ているのだが

こちらは時代が進んだだけにかなり強固、武骨な物ながらもかなりの広域空間を確保できている。

その中でエドはライオット達をその内の一つに案内する・・。

この都市の地下にもシェルターが無数に存在していたのだ

最も・・その事を知る者はほとんどおらず、

都市側としても監禁事件に悪用されてはいけないとシェルターのゲートは撤去されている

そんなシェルター郡の中でエドは最も大きいと思われる物に二人を通した

地下水路から少し離れた入り組んだ路地の先にそれはあり整備が行き届いていない地域・・、

パッと見は暗くてよくわからなく中も真っ暗な空間が続いている・・、

それはかなりの広さで声が木霊する・・エドはその突き当たりの壁の一部に手を添えた

すると突如赤いレーザーが走り彼の手を通り過ぎた

「ルドラ並のセキュリティか・・」

ティーゲルがそう呟いた瞬間、壁の一部に線が走りスライドして道を作る

その先には電気の灯りとさらに広い空間が広がっていた


「・・さっきの広間はダミーか、念の言った仕組みだな・・」


腕を組み鼻で笑うティーゲル、そこには先ほどまでとは違いまるで軍事本部のような精密機器が揃っており手の込みように驚いているようだ

対しそこで作業をしていた者達は彼らの事を知っているのか特に大きなリアクションは示さない。

エドと同じ服装の男達はどこか冷静に徹しているようにも見えた

「ここが、マーターの本拠地のメインオーダールームです。軍関係の情報機器を仕入れたために都市の情報管理は万全です」

「・・まさか、地下でこれほどまでの設備を持つ組織があったなんて・・」

「秘密裏の組織が身を隠すためにはもってこいなんだよ・・」

その手の情報には同じく詳しいティーゲル、

素性を知られたくない組織ほどこうした空間を活用する、市街地のビルなどに潜伏しようにもどうしても目立ってしまうからだ


「よ〜、エド、おつかれさん・・・」


そんな中一人の男が3人に近寄ってきた。覆面をつけておらずやや伸びただらしない金髪に髭を生やした男性・・

ティーゲルほどではないのだが体は良く鍛えられているのがよくわかる

「おつかれさまです、他の同志は・・?」

「先ほどの情報で殲滅が完了したとの事だ。『トーチカ』なんて持ってきたがそれならそれでこちらも用意をすればいいだけだしな」

ニヤリと笑うティーゲル、人が良さそうな笑顔だがそれに流されていてはいけない何かがある



「・・・やれやれ・・」

「・・?マスター、どうしたんですか?」



「俺がここにいる事に驚いて、呆れているんだよ・・ライオット君」

唸るティーゲルの心情を詠む様に言ってのける男・・それにライオットは首をかしげた

「行方不明となっていてよもやこんな集団に加わっていたとは思わなかったからな・・ヘンドリクセン」

「はははっ、まぁ俺は俺なりに行動をしていたんだよ・・ティーゲル。

自己紹介させてもらおう、俺はマーターの副頭領ヘンドリクセンだ・・リクセンって言ってくれたらいい」

軽く挨拶をして一礼するヘンドリクセン、その態度は正しく伊達男・・

「あ・・、よろしくお願いします、リクセンさん。僕の方は知っているようですが・・あの、お二人はどういう仲なんですか?」

「う〜ん、戦友、腐れ縁、宿敵〜・・竹馬の友ってところかな?」

「最後のは違う・・、まぁこいつとは知り合いと言った所だ」

「はぁ・・」

「この街で動きを探っていたところにお前達が狙われているのを知ってな、まぁ援護させてもらったってわけさ」

「余計な事を・・でっ、エドが会わせたいって人物はお前か・・?」

「いいや、俺は副だからな。頭のところに案内しよう・・エド、連中の動きを確認。襲撃部隊は帰還後に休息を取らせてくれ」

「了解です」

軽く命令を言うヘンドリクセンに対しエドは礼儀正しく敬礼をして通信機器にて同志に連絡を入れ始めた

「・・道理で訓練が行き届いているわけだな。しかも・・元軍属と見た」

「まぁ・・あいつはまた特別さ。それじゃ・・案内するぜ」

手招きをして歩き出すヘンドリクセン、対しティーゲルはどこか不機嫌そうに彼の後に続いていった・・



・・・・・


マーターの本拠地としているシェルターはかなりの規模を誇っておりメインルーム以外にも蟻の巣のように幾つも部屋が分かれている。

どれも政府によりゲートが削除されているもののそれを後から木製の扉で区別しているようだ。

その数たるやマーターの全員に個室があるかと思うほどでメインルームを核としてその下に居住スペースまで存在している。

全ての入り口があの地下水路の寂れた一角にあるとは思えないこの施設にライオットは目を丸くして驚いた

おまけに軍事機器を完備しているだけでなく発電設備等も整えられており全ての通路に灯りが灯っているのである

ヘンドリクセンは軽い話をしながら数ある個室の中の一つにノックもなく入る


「入るぜ」


そこには質素な空間が・・、シェルターに使われたセメントの分厚い壁に包まれた個室、

そこにあるのは簡素なベットとやや大きめな机、後は簡易的なクローゼットがあるのみ。

「リクセン・・、ノックぐらいしてっていつも言っているでしょう?」

そこには部屋の主と思われる少女が一人

美しき銀髪のボブカットに黒いゴスロリドレスを着用しており見た目は一般の少女となんら変わりは無い

だが目つきや口調からしてかなり気が強いのが見受けられた

「そんなデリカシーないだろう?それよりも・・例の連中だ」

「・・こいつらが・・?」

ブスッと鋭い目つきでライオットに接近する少女

「あ・・あの・・何か・・?」

「隣のデカブツならわかるけど・・・こっちはひょろっちいわね・・」

ズバっと思ったことを言う少女、事実なだけにライオットは言い返す事もできず呆気に取られている

「客人の非難してどうすんだよ・・ったく・・・」

「こいつに俺達を会わせたのか?リクセン・・」

ティーゲルも無表情ながら平静ではなさそうでヘンドリクセンを頭を掻きながら苦笑いをしてる

「まぁ・・な。こいつがマーターの頭領、アザリアだ。ほれっ、挨拶ぐらいしろよ」

「・・・、アザリア=ガーディアンよ。リクセンが勧める人間だから会ってあげたけど・・少々期待外れね」

「・・やれやれ、精密機器を取り入れてゲリラ活動をする団体の頭が乳臭い子供とはな・・」

呆れ果てて煙草を咥えるティーゲル、ライオットとしてもどう言っていいかわからないようで対応に困っている

「なんですって!白髪の無愛想サングラスに言われたくないわよ!」

「おいおい、そうカッカすんなよ・・、まぁ予想できてきたけど・・」

ヘンドリクセンは頭の中で予想していたのと全く同じ光景が繰り広げられた事に笑いを抑えきれないようだ

「笑っている場合か?俺もこいつも暇じゃないんだ・・」

「あ〜、マスター。リクセンさんもただ遊びで呼んだわけでもなさそうですし・・」

「その通りだ。まぁ、実力が伴っている訳でもないんだがアザリアが頭領である事には違いない。それなりの訳ってのがあるんだよ」

「・・ふん!」

ふくれっ面でそっぽを向くアザリア、人に文句を言っておきながら自分の非難には我慢ならないようだ

「それで・・?」

「まぁお前も知っているように俺達マーターは奇形ES者の追跡と暗殺を目的としている。だが戦力的には十分とは言いにくいんだ」

「手を貸せ・・っというつもりか?」

「あぁ、お前なら心強いしライオット君の方も筋が悪くはない。連中相手にリボルバー一丁で持ちこたえたのだからな」

「はぁ・・、あの・・それよりも僕にはさっきの奇形ES細胞あたりから話が飲み込めないんですが・・」

情報の偏っているライオット、それだけにこの状況で知らない単語が出てくるとこんがらがって来た

「あんた・・そんな事も知らないの!?」

呆れ顔のアザリア、彼女にしてみれば二人は事情を知った上で面会に来たものと思っているらしい

「あぁ・・そうなんだよ・・」

同じくらいの歳と思われるアザリアに対して圧されるライオット

彼にしてみれば彼女のような人とは初めて接触するのかもしれない

何ともなしに説明を求め苦笑いをしたその時・・


「奇形ES細胞・・、簡単に言えばES細胞を作り出す上で誕生した偶然の産物ってやつね」


不意に部屋の入り口から女性の声が・・

見れば黒スーツ姿のフォックスが麗華を連れて遠慮なく入ってきた

「お嬢さん、それに・・フォックスさん・・」

「フォックスか・・。よくここがわかったな」

「まぁねぇ・・。貴方と同じくガンショップの方もあの男達に襲撃が合ってね。

応戦している時にここの面々に援護してもらって〜・・後は一緒かな」

「お嬢さん・・無事ですか?」

襲撃が合った事に顔色を悪くするライオットだが麗華は無表情のまま首をゆっくりと縦に振った

「心配無用よ、私だけだと対処しきれない数だったけど、麗華ちゃんが加勢してくれたから・・

流石はアサシン、心は砕けていても技術は体に染み付いていたみたいね・・

それよりも・・リクセン、生きているくせに何で私達に連絡入れなかったの?」

「まぁ、俺としても中々連絡が入れにくい生活をしていたからな・・勘弁してくれ。それよりもライオット君に説明してやれよ」

「・・貴方の仕事だと思うんだけどね。じゃ、ライオット君・・説明するけどいいかしら?」

「はい、お願いします・・」

「・・コホン、まずES細胞というのは細胞の元、そこから色んな細胞に変異して再生治療に役立てる超技術といえばいいのかしら。

でもその技術を完成させるまで夥しい失敗があったの・・確かその当時中華系の国で偽造騒ぎもあったらしいわ」

「・・それだけの細胞、完成させたとなれば巨万の富が舞い込みそうですしね」

「まぁ、偽造の件もそんなところかしら?最も・・嘘をつくのはそこの国の人柄みたいだったしね。

脱線しちゃったかしら・・えっと・・ES細胞が出来上がるまでの過程の中で失敗作が沢山出たの・・。

細胞のクズと言えばいいのかしらね、それ偶然が動物実験での細胞と組み合わさって全く別物の細胞ができてしまったの。

・・それが奇形ES細胞ね」

「動物と人の細胞が・・融合?」

「そう、人であって人でない細胞。それを見つけてしまった科学者は興味本位でそれを被験者に打ち込んだらしいわ。

人のDNAを持つ以上拒絶反応は他の細胞移植よりも大幅に少ないと睨んだようね

結果は・・被験者は人ではなくなってしまった」

「・・・・・・」

「クリーチャーって奴ね。その被験者は未完成な奇形ES細胞の影響で大暴れして施設を破壊しつくした後に絶命した・・

だけど、それは出発点に過ぎなかったの・・。奇形ES細胞の軍事利用の・・ね」

「軍事・・利用!?」

「その事件、被験者一人で施設を完全に破壊したという事実は政府に黒い願いを沸き立たせた・・

奇形ES細胞を制御をして最強の兵を造り上げる・・っというな・・」

突如ティーゲルが口を挟む、常人ならば知ろうはずもない知識にライオットは言葉もでない

「結果、様々な動物と細胞融合させ次々とサンプルが造られて、失敗作はゴロゴロ死んでいく事態になったの

でも、成功例もあるわ。細胞を完全に支配して自分の力として扱う者から細胞の侵蝕に負けてクリーチャーに成り下がりつつも

生命活動を維持できているものとか・・それを総じて奇形ES者と言うの・・」

「で・・ですが、そんな話題・・世間には・・」

「当然、人道に背ききった存在など表沙汰にはできん。だが・・先の戦争で奇形ES者は実戦投入された。

その相手が・・俺達だった・・」

「・・マスター達が・・?」

「俺やティーゲル、フォックスは同じ部隊だったんだよ。そして奇形ES者の襲撃から生き残った数少ない戦友さ」

「奇形ES者の開発側にとっては自分達の自信作がショボイ部隊すら全滅させられなかった事に驚いたみたいね・・

だから私達をマークする輩がいるの・・。

まぁそんな訳では私達はそれぞれ、戦友達の命を奪った化物が何なのか調べたのよ」

「そうだったのですか・・」

「まぁ、戦争時の奇形ES者は試作品だったのかもしれないな。

その後・・戦争が終わって今の状態になると奇形ES細胞は闇に潜みながらも繁殖を続けた。

影の組織に行き渡って独自に奇形ES者を作り始めたんだよ。俺達マーターはそいつらをぶっ潰すのが仕事さ」

「私は係わり合い持ちたくなかったんだけどね。

そして・・貴方が所属していた暗殺組織『夢幻』にも奇形ES細胞の噂が昇っていたってわけ」

「夢幻が・・」

「崩壊寸前の組織が盛り返したのならばそれなりの隠し玉はあるはずだ・・・。まぁ決定ではないがその可能性はかなり高いな」

周辺を探らせているヘンドリクセンなだけにその言葉には信憑性が高い

「じゃあ、夢幻が奇形ES細胞を使用してマスター達やお嬢さんを狙っているわけですか・・」

「そう考えるのが妥当だな。奇形ES者から生き延びた俺達を倒したならそれを扱う業界に一目をおかれるわけだ。

最も・・麗華嬢が狙われる理由はこちらで調べても今のところは不明なんだがね」

「そうですか・・」

「それよりもどうするの?私達と手を組むの?組まないの?早く決めてよ」

苛立った様子のアザリア・・、対しヘンドリクセンはティーゲルやフォックスに目で謝罪している

「話を聞いた以上、共闘した方がいいだろう。俺達の拠点は奴らに襲撃された事だしな・・ライオットはどうする?」

「僕もそうした方がいいと思います、相手が数で圧してきたら僕達だけでは対処しきれないと思いますし・・」

「私はティーゲルと同じねぇ・・、まぁ、勝手に動かせてもらうかもしれないけど」

麗華の頭をポンポン撫でながらフォックスは静かに笑う・・結構失礼な事をしているのだが麗華の方は無反応。

敵としては認識されていないらしい

「助かる、じゃあ個室を用意しておくから案内するよ・・後で現状を教えるから集まってくれ」

そう言い4人を案内しだすヘンドリクセン、アザリアは最後まで不機嫌そうであった・・


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