chapter 18 「chaos」


三人が飛び乗ったエレベーター、階数などは表示されず階段代わりに使われているらしく

そのまま上に昇る、万が一に備え三人とも警戒をしていたのだが特に異変もなく目的の階に到着できた

 

「・・統一感がねぇなぁ・・」

 

襲撃を警戒しながら足を踏み入れるもそこには敵の姿はなくそれ以上目に付く光景が広がっていた

先ほどまでの中華風の空間とはまるで違う近代的な危機が並んでいる

「研究室か・・。こいつらの事だから研究するのはただ一つ・・」

「奇形細胞か・・、とりあえずは収穫がないか調べて見るか?」

銃を下げ周囲を見回しながら先に進むヘンドリクセン、彼ほどにもなれば敵意などすぐに察知できる

その上でここを安全地帯と認識したのだ

「・・だな、夢幻の端末ならば有力な情報を手に入れられるだろう」

現状を把握するために三人は研究室エリアをゆっくりと進み出すのであった

 

・・・・・・・・

 

下層の戦闘もどうなったのか、もはや銃声も聞こえない研究室エリア

下に繋がるエレベーターがある部屋が中心のようで細い廊下に幾つも小さい研究室が分かれている

ウルムナフはその中で稼働している端末を触り情報を集め出した

その結果、現在三人がいるのは塔のかなり上部であり三人が通ってきたルートではここが最上階となっている

塔自体の最上階に行くにはライオット達の方が直通で上に昇るような仕組みとなっており

残る施設は塔の最上階からのみ通じるような構造となっている。

構造的には無駄がありすぎる・・が・・

「なるほどな、てっぺんに御大が居座ってそこからじゃないと他のところにはいけないって訳か。

妙なカラクリをしてやがる」

「ふん・・つまりは巣の最下層は集会場、刃がいたところが訓練場、

そして研究室。夢幻の工作員が活動する場所を昇ってきたわけか」

「・・だな。ライオットの方は御大の一歩手前まで直通のルート、

そして御大のフロアからのみ行けるのは奇形者の保管室・・

不便なことこの上ないが・・この塔を移動するには御大の目が必ずはいる訳だな」

「それで〜、さっき刃のいたフロアが夢幻の玄関ってわけか。

かなりの高さなのに良くやるぜ・・どう移動してんだ?」

「暗殺者の移動なんざ俺が知るかよ。ともあれ、おおまかなルートは把握した・・次だ」

そう言うと高速でキー入力を行い違うカテゴリーを物色し出す

ファルガンやエドほどではないがウルムナフも精密機器の扱いは長けており

軽いプロテクトなどすぐに打ち破っていく

めぼしいものはないかとファイルを開いていく内についに彼は本命に辿り着いた

「奇形ES細胞研究データ・・きたな・・!」

「連中の細胞研究か。あのカタール持った連中とかのか?」

「見ればわかる・・」

三人三様、そして研究資料のファイルがゆっくりと表示された

 

・・それによると現在夢幻の奇形細胞はかなり改良が加えられており

自然界に存在しない全く新しい細胞へと変化を遂げており

研究者の間では『進化』と呼ばれている。

夢幻の頭である白龍により現在の夢幻の構成員は全員奇形者、

その中でも奇形細胞を植え付けられて自我を保つ者と保てなかった者に二分され、

自我を失った者を『使役者』と称して
兵卒扱いにされていた

現在使役者は三種類

自我を失っても身体能力が高い者に対してさらに機動性が高い細胞と暗殺情報を入力した上位種『リッパー』

リッパーには及ばない者の優れた身体能力を残した者を『ブレイド』

そのどちらとの適正がない最低ランクの者を『ガンナー』

とされ上位二種には近接戦闘、ガンナーは文字通り扱いやすい銃器を持たせていた

そしてリッパーこそが先ほどウルムナフが戦った相手であり親衛隊のような位置にあったようだ

対し自我を保つ者は奇形者として現場指揮などを行う、

それは元から夢幻にいた者もいれば新生夢幻になってから入って者もいる

彼らはいずれにせよ戦闘経験に長けた猛者に何かしらの要因で

奇形細胞に結びつけられただけであり奇形細胞の汚染状況は深くはない

先の件にあった『翁』や『骸』等が良い例であり二人は奇形細胞の力を付加としてしか利用していない

極端な例は『刃』申し分程度の奇形細胞しか植え付けておらずそれは右手のみだったと記録されている

それは彼が奇形細胞を嫌いそれでも夢幻を愛していたかららしいのだが

それが逆に徹底的に鉛玉を受ける結果となってしまった

そして夢幻では最高機密として新しい計画を開発していた

奇形者同士の子を作りより純度の高い奇形者を産み出そうとした計画。

白龍が主導により女性の奇形者をさらに汚染させ母胎とし交配させていた・・

その結果産まれたのがシャンファ、彼女は純粋なる奇形者として高いポテンシャルを持っており

潜在能力を含めその研究はまだ途中のようだ

 

「・・母胎のコードは『マザー』・・マーターを半壊させた化け物の製造機械って訳か」

資料に目を通し流石に冷たい汗を流すウルムナフ

彼も彼なのだがここの研究は明らかに常軌を逸している、

それは他の二人も同様で何とも言えない表情を浮かべている

「品種改良と言えば聞こえは良いが・・な」

「幸い、シャンファのような奇形者はまだ奴一人のようだ・・

そんな事を思いつくあの白龍って奴が気に掛かるが・・な」

「どのみちあの二人が一番厄介だな・・。こっちにいないとなるとライオットの方か・・」

「・・ガキんちょにはそれ用の物を渡している・・何とかあると思いたいが・・んっ?」

ライオットの心配をしながらも端末の画面に隔離されていたファイルを見つけるウルムナフ

なにげなしにそれを開いて見ると映像とともにファイルが展開された

 

『試験者の膣内、および直腸に細胞液を2時間に渡り注入。

体細胞に変異を確認するも試験者は環境変化に対する適応性が高いためか免疫力が強く汚染の度合いは未だ低い』

 

画像に写るはフォックスの姿、手術室のような個室に拘束され全裸のまま前と後ろの穴に太い管を入れられている

内容から察するに穢れた液体を注がれているらしく腹は膨れあがり目を見開きながらもがいている

体は痙攣し引き締まり整った体には汗が噴き出している

 

『第2フェーズ移行、汚染の度合いが悪い。そこで白龍様が直接試験者に体液を注ぎ込んでくださった

これによりようやく汚染状態になった事を確認・・自我は未だ保てており奇形者としての素質があるようだ

だが・・白龍様はこの試験者を第2母胎とする事に変更はないらしくさらなる汚染の命令が下った』

 

今度は白龍に犯されるフォックスの姿・・、手足を拘束されただただ乱暴に犯されその精液をぶつけられる

最初のうちは抵抗もしたのだがそれも持たず、頭を激しく横に振り許しを乞いながら涙を流し出す

それでも白龍は無表情のまま彼女を犯し挙げ句首筋を噛まれ吸血行為の真似事をしている

彼女を抉っているモノは尋常なモノではない、女性の膣に入れるモノとは思えないほどの大きさを持つ凶器

しかも彼女の膣から覗かせるその側面には触手が生えておりそれが乱暴に彼女を壊していく

余りの陵辱に最後には白目を剥き気絶するフォックス、しかし白龍はただただその膣に体液を流し込み続けていた

 

 

『第3フェーズ、土台がほぼ完成したと見なし次のフェーズに移行。24時間使役者の相手をしてもらう

臀部から特製の男性器を入れ深い処で射精を繰り返す、さらに膣にも常時汚染された精液を流し込み

全身それにまみれるようにした。

鼻や耳などにも注ぎ込み気を失う時間も増えたが確実に汚染度合いは進んでいる』

 

四つんばにされながら使役者達に犯されるフォックス、全身緑がかった白濁液にまみれており

口からは同様のモノを吐きだしている。

もはや抵抗の素振りも見せておらず目もうつろ・・しかし口から精液を吐き出す時は苦悶の表情を浮かべている

使役者達の動きは乱暴で画像の隅には多数待機している。

後ろから貫くモノは細長く彼女の体内に深く突き刺さりそれが入れ替わり射精を繰り返す

快感をもたらす行為ではなくただ彼女を汚すための行為、射精の感覚はどれも短く内側にとにかく詰め込み続けている

全身体液まみれ、台も穢れた液体が満たされている中再びフォックスは口から精液をはき出す・・

胃液や他のモノは何もない、今彼女の体内にあるのは異形の精液のみで一度の嘔吐で信じられない量を吐きだした

・・しかし、それは夢幻に取っては違反行為。使役者の一人が彼女の口に細長い肉棒を突っ込み強引に口を塞いだ

目を見開き何とか逃れようとするも頭を押さえつけられさらに射精される・・

逃げ場のない液体は彼女の鼻から流れ出て余りの衝撃に再びその意識が失われた

 

『第4フェーズ、すでに試験者の体は細胞の影響で人ではなくなっている事を確認した。

第一マザーとは違いこちらは純粋にあらゆる痛みに耐えられ拡張に耐えられる母胎として完成された

後は徐々に慣らしマザーとして機能をする事を確認するだけだ。

ひょっとすれば今までの性交実験で第一子が受精しているかもしれない確認が急がれる』

 

もはや放置されたフォックス、

全身穢れた液体にまみれており腹部は妊婦のように膨れている

右腕には何やら英文字の入れ墨が入れられておりそこら中に注射痕が残っている

目は黒革のベルトのようなモノで隠されているが隙間から白い液体が流れており

秘部には太い管が挿入され臍にも細い管が入りこみ周囲がミミズ腫れのように浮かび上がっている

彼女が自ら動くことはない・・


だらんと手足を投げ出しているのだがそれとは別に膨れあがった腹が独りでにうごめくのが確認でき

そのたびに股体が軽く痙攣をしている

その映像に記録されているのはもはや三人の知る女性ではなく・・

 

「・・遅かったか・・・」

その映像に静かに呟くティーゲル、事細やかな映像記録そのどれもが凄惨であり見るも無惨なものとなっている

「マザーか・・、安直ながらも妥当なネーミングだな。

コードG出身の女軍人として身体を鍛えているフォックスをその母体に選んでかっさらったって訳か・・」

「趣味が悪いな・・でっ、この映像が撮影された場所はどこなんだよ?」

「重要な研究はこの階で行われているらしい・・角の実験室だな・・。最も、移された可能性もあるんだが・・」

「・・言ってみなきゃわからんだろう!ティーゲル!行くぜ?」

「・・ああっ、お前はどうする・・ウルムナフ・・」

「ここで情報を得る。最高度のセキュリティが解けていないからな・・

それさえ突破できればもうちょい有力な情報が得られる」

「やれやれ、そんな事ならファルガンを連れてこればよかったな・・」

苛立つようにヘンドリクセンが呟く・・だがウルムナフは至って冷静

「あいつは専門だが俺でもある程度ならば突破できる、それに必要とあればあいつとは無線で連絡もできる

俺の方は良いからさっさと行けよ」

そう言うと端末と向かい合う、彼にはまだまだやるべき事が残されている・・

夢幻がどのような細胞を開発してそれをどの程度使用しているか

それを調べなければ壊滅したとしても上辺だけのものとなってしまう

「じゃっ、しばらく頼むぜ・・」

軽く言い立ち上がるヘンドリクセン、ティーゲルも無言でその後に続くのだが

二人の顔に余裕の表情はなかった

 

・・・・・・・・・・・

 

このエリアは扉はどれも電子ロック、厳重に機密が守られているようなのだが

それを制御するコントロール室はさっき三人がいた研究室であり、

その端末をいじれる以上ロックに意味はなく

ウルムナフの方で全て解除され全て入室できるようにされた

その中、一番奥の研究室、黄色いバイオハザードマークが大きく描かれた分厚い扉の先がフォックスが捕られた箇所となり

二人は迷うことなくそこに足を踏み入れる・・

 

「・・なんだこりゃ・・?」

 

「見たままの事だろう」

 

室内は精密機器ばかりそこは室温が低く棚が置かれている、

規則正しく陳列されているは小さな硝子ケース、薄い緑色の液体に満たされた中には

奇妙な生物が浮いている・・それは甲殻類にも似ているが形としては人に似ている

ケースには細い管が伸びておりそれが機械に結びついている

「まるでSF映画の宇宙怪獣だな・・」

「実際それと大差ないだろう・・が、これがマザーの産物か?」

「・・・、あんまり考えたくねぇな。この奥がそうか・・いくぜ・・」

厳重に閉じられた扉が開く・・その先にあるのは映像にあったあの小部屋

こちらも温度はかなり低く冷気に包まれておりその手術台の上には拘束されている女性だったもの・・

目には黒革のベルトで眼帯をし口にはギャグボールを噛まされている、両手両足には手錠をかけられており身動きが取れていない

映像にあったのと同じ状態であるのだが腹部は元あったスレンダーな状態に戻っていた

「フォックス!おい!」

近づき声をかけるヘンドリクセン、全裸の彼女は何の反応も示さない・・が呼吸音は聞こえており生きている事は確認できた

「まずは眼帯を解くぞ・・。っ・・これは・・」

目元を覆う黒革、眉間の部分にUと描かれているそれはただの革ではなく

内側に針のような物があり頭に深く突き刺さり固定されていた

「ちっ・・下手に動かせないな・・ともかく・・」

彼女を抱きかかえようとヘンドリクセンがフォックスの体に触れた瞬間・・パァンっと金高い音が響いた

 

「ッ!伏せろ!リクセン!」

 

咄嗟に叫ぶティーゲル、その瞬間にフォックスの腕がものすごい速度で走りヘンドリクセンを襲う

元軍人故に敏捷性が優れているヘンドリクセン、

ティーゲルの叫びに体が反応して咄嗟に頭を下げ次の瞬間にフォックスの腕が通り過ぎた

見ればその腕には千切れた手錠がついている・・

「フォックス!」

「ちっ、リクセン!もうフォックスは俺達の事がわからない!下がるぞ!」

「ティーゲル!正気か!?」

「手遅れだとわかれ!死ぬ気か!」

罵声を放つティーゲル、その間にもフォックスだった物は足の手錠も引き千切りゆっくりと起き上がった

「お前・・、くそっ!」

「あの状況からしてみてもはや奇形者だ!とりあえずはここに隔離させる!」

そう言い冷たい床に裸足で立ち上がるフォックスに対しセルフィッシュを向ける・・

 

パァン!

 

凄まじい破壊音、狭い室内で銃声は反響してフォックスの体は壁まで吹き飛ぶ

放ったのは銃下部に付けられたショットガン、

至近距離で放たれたそれは彼女の体に深く食い込み内蔵をグチャグチャにした

通常の人間ならば間違いなく致命傷・・

だが旧友に対し躊躇なく彼が撃ち放ったのに応えるように焦げ吹き飛んだ腹部は見る見る内に元通りに修復されていく

「・・ちっ、一端退くぞ!」

「こうなってはもうダメか・・、ここを封鎖すれば・・!」

一瞬の判断が生死を別つ戦場で生きていた二人故に切り替えは早い

それでもフォックスを撃ちたくないがためにこの部屋に閉じこめようと一気に駆け通路まで走り出た

 

「ウルムナフ!!!聞こえているか!扉を封鎖しろぉぉぉ!!!」

 

研究室エリアに木霊する怒号、

返事はないが自動ドアは閉じられ赤いlockのランプが点灯した

「・・厳重なロックだ。開けられる事はできないだろう・・」

「くそっ!何とかならなかったのかよ!!?」

「・・・お前もわかっているだろう?

自我が残っているならまだしもああまでむき出しの敵意を見せられてはどうすることもできん

治療法もわからん以上は殺すかそれが見つかるまで動きを封じるしかない」

「ショットガンを至近距離から受けてもすぐに立ち上がるような状態じゃ・・無理なのか・・」

「通常兵器では話にはならん。大人しく中でいてもらうしかない・・」

忌々しげに呟くティーゲル、

ともあれここより出てこれる可能性がないと確信しウルムナフの元へ合流しようとした瞬間・・

 

ギ・・ギギギ・・

 

鈍い金属音が・・、それは目の前に封じられた巨大な自動ドアから響いており扉が小刻みに震えている

「嘘・・だろ・・?」

「・・・奇形者と考えれば不思議ではない・・か。

この様子だとすぐにこじ開けられる、このエリアを放棄して動きを止めるぞ!」

「くそ・・格好がつかねぇな!」

苛立ちながら走り出すティーゲルとヘンドリクセン、

扉は小刻みに震え続けその形は徐々に歪にひしゃげていくのであった

 

・・・・・・・・

 

「ウルムナフ!」

 

「わかっている、ファイルからしてみればフォックスだったものはもう人の手に負えない

・・手持ちの武器じゃどうしようもないからな。とっとと逃げるぞ!」

 

研究室に駆け込む二人、すでにウルムナフは端末から離れ何時でも動ける状態にあった

通路から聞こえる罵声を聞いている彼は事態を十分に理解しているのだ

 

「待て、あの重厚なドアをこじ開ける怪力だ、他階に逃げたとしても

どんな手を使ってでも追ってくる・・一発目をここで放つぞ」

 

「・・バーストグレネードか・・。研究室ごと纏めて吹っ飛ばしこのエリアを隔離する・・悪くはないが・・」

 

「ウルムナフ、ここの研究データはどこまで見た?」

 

「おおよそ半分ってところだが・・この都市にあの女を野放しはできない・・

エレベーターまで移動してそこでぶっ放し隔離するぞ・・

下の階に移動次第エレベータも破壊させる、いいな」

 

「それしかないか・・」

 

唸るヘンドリクセン・・その時、エリア内で派手な破壊音が響いた。

今の状態でそれが起こった理由はただ一つ・・

「あの扉を吹き飛ばしたのか・・?くそっ!急ぐぞ!」

その返事はなく三人は一斉に研究室を後にする・・

・・だが、廊下にはすでにフォックスの姿が・・。全裸で目元が隠された金髪の女性だったモノ・・

すでに動きが人間のモノではなく四つんばになり獣のような歩き方をしている

「・・力も力なら速さもあるか・・!くそっ!」

咄嗟にウルムナフがルガーで撃ち放つ、破壊音ともにスティンガー弾が放たれ

その弾丸はフォックスの体を破壊させながら貫通させる・・、

しかしそれも一瞬・・貫通された箇所は秒単位で修復され何事もなかったように元通りになる

そして驚くウルムナフに対し四肢で駆け飛びつこうとするフォックス・・!

金属の扉を安々とこじ開ける力を持つ化け物、

噛みつかれただけでも常人ならば肉を千切られるのは明白・・

 

「ちっ・・!ハンドガンでどうこうできるものではないか・・!」

 

ウルムナフを庇うように前に出て飛びかかるフォックスの口にセルフィッシュを突きつける

 

パァン!

 

凄まじい銃声、飛び散る肉片・・喉を撃ち首を破壊しながらその股体は吹き飛び床に倒れた

体を激しく痙攣させるフォックス・・だがその傷もすぐ治まっていく

「振り向くな、一気にエレベーターまで行くぞ!」

もはや目の前に居るのは化け物以外の何物でもない。

怒号が混じりながら三人はエレベータに滑り込んだ

しかしその頃にはフォックスの体は起き上がっていた・・

「換装している暇はない!リクセン!お前が撃て!」

「ああっ・・!」

姿勢を安定させるとともにセルフィッシュのパーツを分解していくヘンドリクセン

エレベーターはすぐにでも稼働できるのだがこの階事焼き払わなければ意味はない

だが・・

フォックスは不意に通路の壁に手をつける・・するとその指がまるで粘土を触るかのように沈んでいき

しっかりと掴んだ・・

その瞬間・・、凄まじい轟音とともに壁面が剥がれる

内側に埋め込まれたコンクリと壁面の金属板ごとそれを引きはがしそれをそのままおもむろにエレベーター目掛けぶん投げる

なにげない造作なのだがまともに当たれば圧死は確実なほど放たれた物は恐ろしい速度を誇っている

「っ!?マジかよ!あんなのまともに食らったら圧死するぞ!!?」

「それ以前にエレベーターも故障する!打ち落とすぞ!」

豪速で迫り来る金属片、それにティーゲルとウルムナフが全力で迎撃する

あり得ない速度で駆ける凶器に対し弾丸は打ち落とすには威力が小さすぎる

「くそっ・・!」

咄嗟にティーゲルは懐から手榴弾を取り出してそれを投げつけた・・

放物線を描くその爆弾のみでは迫り来る金属片ははたき落とせない

だが・・

「ナイス!ティーゲル!」

手榴弾と金属片が重なった瞬間に、黄金のルガーが火を噴いた・・

それは手榴弾を金属片を貫通させ、誘爆

短い爆音、巻き起こる爆風とともに迫り来る塊を吹き飛ばした!

「よし、組み立て終わりだ!ウルムナフ・・ボタンを押せ!締まり際にぶっぱなす!」

「応よ!」

「急げ!来るぞ!」

咄嗟の怒号、仕留め損なった事にフォックスはまるで獣のように四つ足でこちらに駆けだした

怪力からしてみればエレベーターに触れさせただけでもアウト・・

だがその動きは実に俊敏でまるで狩猟犬のように距離を詰めて飛びかかってくる

 

「フォックス・・寝てろよ・・!」

 

エレベーターまで肉薄する女性の形をした化け物・・

しかしそれよりも早くヘンドリクセンは引き金を引いた。

 

ドン!!

 

「!!!!」

凄まじい反動、しっかり構えていてもヘンドリクセンの体は後ろに吹き飛ばされてエレベーターの壁に激突する

そしてそれと同時にエレベーターの扉が閉まり下へと移動を開始した

次の瞬間に頭上で激しい激突音が響く・・締まりきったエレベーターに対しフォックスが追突したのだろう

「・・3・・2・・1・・・・さらばだ・・女狐・・」

小さくティーゲルが呟いた瞬間、頭上から凄まじい衝撃と爆破音が鳴り響く

それは研究室エリア全てを破壊の炎が包み込んだ事に対する証であった

「・・なんとかなった・・が、後味が悪いな・・」

「・・割り切るしかない。覚悟の上だったんだろう?

・・なんとかこのエレベーターの空間は稼働している・・

おそらくは扉に激突したフォックスが盾の役割として爆破を受け止めたんだろうさ」

「俺達を送り出すためか?よせよ・・」

「どう捉えようとも事実には変わりはない。ともあれ・・下の階に移動できるならば後はライオット達の援護だ。

フォックスが救えなかった分あの白龍に落とし前はつけさせないとな」

殺意をむき出しにするティーゲル、危機的状況を切り抜けた三人であったが

それは同時に戦友を殺した事を意味している

その後、エレベーターが下の階に到着をしても三人の口から言葉が放たれる事はなかった


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