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chapter 11 「sword dancing」



ウルムナフが屋上ヘリポートで襲撃者を迎え撃った時、本社ビル1Fにはファルガン率いるルドラ防護隊が待機していた

部隊は5人程度、一企業の防衛部隊とは思えない装備で全身黒いプロテクターに頭部は防護メットをつけている

対しファルガンは軽い白の作業着にウルムナフと同じプロテクターを装着し

自作のサムライソード『キサラギ』を飾り気のない金属ケースの鞘に収めそれを軽く持っていた

「ファルガン主任、銃器を持たなくて大丈夫なのですか?」

防護隊の一人は心配そうにファルガンに尋ねる、

彼らの武装は短機関銃であるMP5をベースにルドラ社が改造したカスタムカービン、標準的な装備だが安定性は高い

その他の電子攪乱用のチャフグレネードや非殺傷兵器のスタングレネード、

ルドラ製のブラックモデル35口径オートマチック『コルムナ』

そしてファルガンが暇な時に作ったコンバットナイフと軍属の兵士が持つ物に比べても遜色はない

それに対しファルガンは持つは一本の刃のみ、これでは不安がるのも無理はない

「ご安心を、これが僕なりのスタイルですので・・」

「は、はぁ・・」

「それよりも敵集団との戦闘、気を引き締めてくださいよ。親玉の相手は僕が引き受けます・・

敵の詳細な数はわかりませんがクリーチャーであることは間違いありません、遠慮なく発砲を」

「了解です、ここは死守してみせます!」

「その意気です、敵戦力の詳細は未確認・・故に冷静な対処が求められます。

ですが・・日頃の訓練を応用すれば問題はないでしょう。皆さんの無事と奮闘を祈ります」

「「「「「了解!」」」」」

まるで軍隊の教官のようなファルガンの言葉だが防護隊はそれを信じきっているようで敬礼して応える

「・・では、作戦開始ですね」

軽く息をついた瞬間・・・

張り裂けんばかり破裂音とともにロビーのガラス壁が割れそこからクリーチャー達が転がり込んでくる

屋上でウルムナフと交戦したのと同タイプの茶色いマネキンのようなのだがこちらは左手が特に奇形化しており

人の手の形はしておらずマシンガンの半身を飲み込んだような異様な形をしている

「一斉掃射!」

一人が叫んだとともに編隊を組み防護隊がトリガーを引く!

五人一斉に放たれる銃声は凄まじく硝煙が吹き荒れ先制攻撃とばかりに使役者に弾丸の嵐をお見舞いする

しかしそれらは使役者達の肉体を貫通させるまでには至らず体内に入っていない

それはまるでノンリーサルウェポンのように衝撃のみを与えているよう・・しかしそれでも相手にダメージは与えている

「敵の体は強固です、急所を集中して攻撃してください!」

その様子を冷静に分析するファルガン、一匹狼丸出しなウルムナフとは違い他の戦士に対する心配りは忘れていない

その時一人の使役者がおもむろに銃口を彼に向けた!

「主任!」

「ご安心を・・!」

叫ぶ防護隊に軽く笑いかけるや否や流れるようにその体は動きマシンガンを放つ使役者の動きを見切りながら肉薄する!


斬!


鋭く放たれるは銀色の閃光、吹き飛ぶは使役者の左腕・・マシンガンもろとも下からの切り上げで切断したのだ

「・・スゥ・・」

さらに追撃、切り上げた刃を今度は使役者の脳天目掛けて振り下ろす

緩やかそうに見え音もなく動くそれだが威力は絶大、何の抵抗もなく相手の体を真っ二つに切り裂いた

「マ・・マシンガンの射撃を避けながら仕留めるとは・・」

被弾を避け連携しながら使役者の攻撃をやりすごす防護隊だが、そんな事もせずに突っ込んだファルガンに驚きを隠せないようだ

「この程度の弾速ならば見切る事は容易です。・・しかし・・(ソードタイプと違って銃への耐久度が高い・・対銃器用に改造されたと見たほうがいいですね)」

「よし!これを機に撃て!撃て!」

軽々と使役者を倒した事に防護隊の士気も上がる、戦場での戦意というのは重要であり

それにより彼らの射撃はより正確になり遮蔽物に身を隠しながらも火線を集中させる

耐久性が強い使役者もこれには溜まったものではなく弾丸の荒らしに体に穴を開けられ倒される

「よし、殲滅完了、主任・・大丈夫ですか?」

「・・いや、まだです!」

彼が気迫の篭った叫びをするとともに割られたガラス壁から第二波が飛び込んでくる

こちらは屋上でティーゲル達が相手にした右腕が剣化したタイプ

しかしその数は多く勢いをつけてファルガンに襲い掛かる・・

「第二波・・それなりな指揮があると見たほうが良いですかね・・」

呟くように剣を握り再び切り裂く・・!

飛びかかる使役者よりも速くファルガンの一刀はその肉体を切り裂き吹き飛ばす・・

「・・!!」

相手の攻撃は余裕で回避できたのだがファルガンの顔色が変わった

先ほどは余裕で切り払った使役者、しかし今度はそうはいかず相手の皮膚を軽く切った程度しか傷を与えていない

「・・・なるほど、自分の装備と同じ属性を持つ武器に耐性を持っているわけですか・・

皆さん、このタイプはどうやら僕には都合が悪い相手のようです、

しかし先ほどと違って銃器は有効のはず!接近されないように間合いを取って応戦を!」

「了解!」

信頼できる指示に返事をし戦闘開始、ファルガンの読みは正しく防護隊のカービンの弾は易々と使役者を射抜く

しかし先ほどのガンタイプとは違いこちらはかなり俊敏に動くために狙いがつきにくく

また接近されては彼らが不利ために距離を縮めさせずに打ち続ける激しい戦闘へと変化をした

「・・・・っ!この気配・・、皆さん、僕は出元を断ちます!皆さんはここで待機して敵の殲滅を頼みます!」

「了解です!この場は任せてください!」

近接攻撃を得意とする相手に普段にはない戦いを強要される防護隊だがファルガンの提案を快く受け入れこの場の死守を請け負う

その態度にファルガンは軽く笑い勢い良くビルの外へと飛び出すのであった


・・・・・・・・


銃器製造メーカーの本社ビルが襲撃されているはずなのだがルドラ社前は人気はまるでない

時間的にそれもおかしくはないのだが銃声に治安警察がやってきてもおかしくない

「・・・、おかしい。奇形ES者に関わる事件では例外なく警察は動こうとしない・・これは一体・・」

ビルより少し離れた道路に立ち呟く

・・時は深夜、不気味は程周辺は静まり街灯が道を照らしており音と言えばビル内での戦闘音ぐらい



「かかわりたくはないんじゃろうて・・警察もな」


そんな中彼の疑問に答えるように老人の声が響いた

見れば何時の間にか彼の目の前に小柄な老人が立っていた

ニホンの民族衣装である中羽織を着込み、顔は立派な白髭と伸びた白い眉で表情が殆ど見えない。

やや長く伸びた白髪も後ろに垂らし軽く括っており手には身長代の木杖を持っていた

一見するとニホン好きな老人かと思うのだがその場の環境に合わない違和感にファルガンが気付いた

「この気配・・なるほど、襲撃部隊の指揮を執ったのは貴方でしたか」

「指揮と言えるほどあやつらには知能は残されておらぬよ、わしは頃合を見て檻から出しただけじゃ」

「そうですか・・、それでこうなる事は予想済みだと・・」

「結果の一つに過ぎん、ルドラが奇形者に勝つかどうか・・試してみなければわからぬからの」

「そうは思えませんね。それに・・使役者のデータ採集も目的とみました」

「・・ほぉ、その理由は?」

「これまでのデータとさっきの戦闘で使役者は自分の得物と同じ武器には耐性がある

これは同じタイプ同士で戦わせるのが目的・・

刃物にも銃器にも優れた存在を作り出すために同属性同士で殺し合いをしてデータを取りより強い使役者を作らせる・・。

それゆえに殲滅がてらガンタイプで交戦を仕掛けた」

「ほっほっほ・・左様じゃ。あの者達は所詮細胞に食われた使い捨ての駒。

剣型ならば剣、銃型なら銃で優れた能力を持つための礎・・じゃよ

当初は銃型で殲滅できるかと思ったが御主の方も中々優秀のようじゃからの。

剣型の方が機動性にすぐれ現状では有利かと判断したわけじゃ」

「確かに、遮蔽物で相手の呼吸を呼んでの打ち合いよりも耐久性はなくとも機動性で補えるソードタイプの方が防護隊には不利でしょうね。

ですが・・それだけで勝負が決まる物ではありません」

「・・そのようじゃな。御主ほどの腕が指揮を執るならばあの出来損ないどもには荷が重いわ」

「ならば潔く撤退する事を勧めますよ」

「ほっほっほ、武士に敗走などない。・・それに御主・・剣の腕に覚えがあるようじゃ・・これを目の前にして退けるはずもなかろう?」

髭に覆われた口がニヤリと笑う、それは他の奇形者にはない実に爽やかであり満足げなもの・・

「刀の扱いは奇縁で学びましたからね・・、ですが貴方の望む腕かは保障はできませんよ?」

「なんのなんの、わしも武士の端くれ・・力量なんぞすぐにわかるわい・・。一つ・・真剣での手合わせを願おう・・」

そう言いスッと杖に手をかける・・それは仕込み杖・・中より鏡のように周囲を写し濡れているような美しき日本刀の刃が姿を見せた

「・・まだ日本刀がこの世界にあるとは・・」

「長年使いこんだ相棒よ・・、刀鍛冶が滅んでよもや刀を使う者と再び刃を交えるとは・・この細胞に感謝せねばな」

「・・僕のは鍛冶匠が造ったわけでもありませんよ、まぁ実物は手元にはありませんが所有はしているんですけどね・・」

「ふっ、奇抜な形状じゃがまぎれもなくそのの刃は刀よ!わしは『翁』!狗の力を見に付けし死にぞこないよ!」

「・・ファルガン・ガーフィルズです。では・・いざ・・尋常に・・」

「勝負!」

気合声とともに二つの銀閃が走る・・

翁の身のこなしは小柄な老人以上の物を持っておりそれこそ狗が如くしなやかに切り込む

ファルガンも負けておらず瞬時に翁の軌道を見切りその動きの一歩速く踏み込む


キィン!

火花を散らさんばかりにぶつかる二つの刃・・金高い音を響かせつつもピクリとも動かない

「貴方の得物・・よほどの名刀と見受けます。現状最硬度と呼ばれるエルトリウム合金製のこの刀に刃を合わせ皹一つ入らないとは・・」

「ほっほっほ、剣気の篭った刃に皹などは入らん・・。

とは言え・・御主の刃も相当な業物のようじゃ・・わしの一撃ならばなまじの刃ならばそれごと切り払えるものを・・」

「これを造り上げるにも苦労しましたからね・・折られては製造者の文句がうるさいのでご遠慮願いますよ」

「優男に見えて中々啖呵を切るのがうまいものじゃ、結構結構」

「ふっ・・では・・参りますか・・!」

鍔競り合いの状況から瞬時に離れる二人、そしてすかさずに地を蹴り相手に向って踏み込む!

ファルガンが袈裟斬りを放ちそれを華麗に宙へと飛びあがり回避する翁

そのままファルガンの脳天へ刀を振り落とすがファルガンはきり払いの状態から体を反らせ一刀を回避する

大振りの一撃を放ち隙が出来た翁、そこへファルガンが距離を空けようと蹴りを放つも

それを上回る速さで翁は飛びのいた

「・・その桁外れの敏捷性・・細胞の力ですか」

「左様よ、まぁ・・『豹』に比べれば身のこなしは劣るものじゃがの」

ニヤリと笑う翁、そう言いながら再び剣を構えた

「だが、貴方は豹の力よりも狗の力を取った。・・・・なるほど・・、その長い眉で隠していますが・・目が見えないのですね」

「ほっほっほ・・」

ファルガンの指摘に不適に笑う、元より隠すつもりも偽るつもりもなく・・

ふてぶてしいがそれ以上に潔さが感じられる

「敏捷性と共に優れた嗅覚、聴覚を得て盲目にも関わらずこれだけの動きをする・・。身体能力としては脱帽モノですね」

「御主こそ、これだけの情報で言い当てるなぞ並の者ではあるまいて・・」

「敵の分析は戦闘において真っ先に済ませるべき事項、それができなければ死が待っているとある人よりいつも叱咤されていますのでね」

頭を掻きながら言うファルガン、敵を目の前にして何とも言えない顔つきになり

その変化を目が見えずとも翁が読み取った

「ほっほう、詳しい事情はわからぬが・・中々に苦労しているようじゃな?」

「実際に役に立てているので文句は言えませんよ、しかし・・翁、奇形者の力を隠しもせずにあくまで剣一本で戦う・・

そんな御方が夢幻の一員だとは思えません」

「夢幻が奇形者の集まりと言えどもその成り行きはそれぞれ違う

・・例えば、今屋上から落ちて絶命した愚か者なんぞ軍法裁判の結果奇形ES細胞の人体実験をさせられて奇形者になった経歴を持つ。

まぁ・・結局は無様に負けよったようじゃがな。細胞の力にでも溺れ攻めは火器に頼る・・下の下じゃよ」

冷たく言い放つ翁、察するに玄武の事を心底嫌っていたようでその態度は今までとはまるで違う

「屋上から落ちた・・、なるほど・・上は上で勝負がついたようですね」

「・・そのようじゃな。上にいる奴・・中々に血気盛んじゃが懐かしき匂いがするな・・目標の人物は屋上の方じゃったな」

そう言い本社ビルの屋上を見上げる、

遥か頭上・・そびえ立つ超高層ビルの屋上ヘリポートで行った戦いを匂いと耳で言い当てた事にファルガンは内心驚愕していた

「・・では、貴方はどうして夢幻・・いえ、奇形者になったのですか・・?」

「簡単な事よ、病に朽ちる体を甦らせたまでじゃ。老いても剣客・・病で死ぬわけにもいかなんだのでな」

「・・・なるほど・・」

「最も、わしは夢幻の古株じゃ。御主が思うような好々爺でもないぞ?」

「ですがなりふり構わぬ暴走者でもない。僕には貴方が暗殺者である以上に武士(もののふ)であるように見えますよ」

「はっはっは!それは御主が武士だからに他ならぬ・・刃を持たぬ者に対してわしは容赦はせんからのぉ・・」

「お気に召して幸いです。ならば・・夢幻の奇形者ではなく一人の偉大なる武士として貴方を斬ります」

スッと正眼に剣を構えるファルガン、人の良さそうな彼の顔から笑みが消えた

放たれるは冷たい剣の気、空気一つで彼の本気が見えた

「その意気、見事なり。ならば若き武士よ・・自らの剣魂にてわしを打ち負かしてみよ!」

同様に翁が構える、盲目なれど放たれる気迫はまるで獣が睨んだかのような衝撃を与える

やがてそこには鋭い剣気を放ち剣の結界とも言える研ぎ澄まされた空気が満ちあふれた

二人ともしばらくは構えたままであったが、ファルガンが意を決し流れるような軽やかな動作で結界内に踏み込む

迷いもなく勢いもない、ただゆっくりと剣を構えたままで・・

その刹那・・


キィン!


金高い音とともに翁より放たれた一閃を払う、しかし払われた動作のまま翁は刃を返しファルガンに斬撃を繰り出す


キィンキィン!キィン!!

耳鳴りを起こしそうなほどの鋭い刃音、本来刀使いというのは鍔競り合いや刃を強引にぶつける行為を嫌う

それは刀というものが見た目以上に脆い点にある、それを補うために一流の剣士は常に一撃必殺を心得え

その剣身に魂を乗せ金剛の如くの硬さと鋭さを纏わせる

しかしそれを行うには十分に気を練らなければならない・・

今の二人のように息もつかせぬ連撃を放つとなればそのような芸当など到底できるはずもない

だが魂が篭らずとも二人が持つ剣は名刀、

片や暗殺のために使われ人の血を吸い異形の力で守られている刃

片やウルムナフという天才により生み出された最高の硬さを誇る刃

刀としての力は五分と五分、魂を込める瞬間を狙いまるで演舞のようなやり取りが続く

刃の衝突はまるで音楽を奏でるかのように絶え間なく繰り広げられ壮絶な死闘に二人は汗を垂らしながら

相手の一歩先を行こうと仕掛け、受け流す

「・・・はぁぁぁぁぁぁ!」

「むぅぅぅぅぅん!!」


翁の刃が弾かれたかと思えばファルガンの刃が避けられる、双方最小限の動き・・だが攻防は正に高速

一瞬でも気を抜けば忽ちその体が切り裂かれてしまう戦闘

銃器が栄え、刃物と言うものが廃れかかっているこの世界、

そしてこんな都市の一部にて凄まじい技量の押収が繰り出されている

「・・せい!」

「うぬ!」

双方、相手の動きに目が慣れたところで再び刃が真っ向からぶつかる!


キィィン・・!


猛烈な勢いで衝突する剣・・しかしその瞬間に翁の刀が真っ二つに折れる

だが翁はそんな事などお構いなし、傷の度合いなど確認もせずに刃を砕いたために体の力が流れたファルガンに向けて深く踏み込み・・


斬!


折れた剣で脇腹を切り裂いた!

「・・っ!」

きられてから咄嗟に飛びのき傷口を確認するファルガン、対し翁は追撃せずに折れた自分の刀をジッと見つめた

「・・防弾、防刃に優れた強化プロテクターをいとも簡単に切り裂くとは・・」

ニヤリと笑うファルガン、脇腹には防具としてルドラ特製のプロテクターを着用していたのだが

それは鋭く切り裂かれ脇腹を斬っている。

血がじわりとあふれ出しているのだが重傷とまでは言えない

「ほっほっほ・・中々に頑丈な物を着ておるのぉ・・半歩分止められてしもうたわ」

「それでも切り裂けるのは流石・・っと言うべきでしょうね」

「何を言う・・、御主こそ我が刃の『脈』を詠み、その一点に打ち込んでこいつを砕いた。見事な手腕よ!」

得物が半分ほどまでに短くなったが翁の表情は満足そうである

「ですが、それでは得物としての機能は果たせないでしょう・・貴方の負けです」

「なんのなんの・・。これでも御主の首を刎ねる事なぞ容易い

・・それに御主の手傷からして満足には動けまい。雌雄を決しようぞ」

「・・やはり、退くという選択肢はありませんか・・」

「御主もしつこいのぉ・・」

はんば呆れるような翁の口調、刀を振るう事により悦びを感じているかのようである

それに対しファルガンは老人剣士のその心意気に軽くため息をつき・・

「ならば何も言いませんよ、・・参りましょう」

無感情に言い放った・・

「応よ!」

気合い声が響き、再び構えるファルガンと翁・・

本社ビル内からはいまだ銃声が響いているのだが二人の耳にはそれは届かない

ただ相手を斬る、それだけに精神を研ぎ澄ます

「・・・・・」

「・・・・・」

先ほどと違い今度はファルガンも動こうとはしない、その間にも脇腹からは血が少しずつ溢れてきた

これぞ剣士の戦い、・・守りを考えずに相手を仕留める一閃の攻防

次の瞬間・・

「・・おおおおおおお!!!」

「・・・はぁぁぁぁぁ!!!」

キッと鋭い剣気を放ち翁は地を跳ね今までで一番の速度でファルガンに迫る

それは正しく狗の足、豹にも負けぬ鋭い踏み込みに対しファルガンは真っ向から向かえ討ち二つの稲妻が駆け抜ける!!

「・・・・・・」

「・・・・・・」

その技、電光石火・・一瞬にして二人は刀を振るいその体がすれ違った・・

振るった刃には血はついてはおらずまるで白い煙のような物が静かに昇り消えうせた

それこそが剣魂、必殺の一撃を放つために剣士が剣に込めた気の姿・・

「・・見事・・!」

すれ違ったまま身動き一つしなかった二人だが翁が突如そう言い体を崩した

「・・僕の傷が浅かった事は肉を切る時の感覚、そして音でわかっていたはずです。

何故それでも打ち合いを挑んだのですか・・?」

対しファルガンは勝負は決したと確信し脇腹を抑え翁の元へ近寄る

「ふふふふ・・・、わからぬか?武士よ・・」

翁は膝をつきながらもファルガンの方を向く、その体はファルガンの一撃に深く切り払われており血が噴出している

致命傷なのは一目瞭然、だが翁の表情に苦悶を感じる事はできない

それどころかとても満足そうに笑っているようにも見える

「一度立ち会えば退く事はできない、ですか?」

「そのとおりじゃ、わしに後退はない・・打ち合い相手を切り伏せるか、その身を裂かれて死に絶えるか・・じゃ」

「・・・・」

「じゃが・・病を治したのはいいんじゃが・・この細胞はちと厄介での・・」

「・・翁?」

ニヤリと笑い刀を逆手に持ち替える・・、その事にファルガンが疑問に思った瞬間



ドス・・!


折れた刃が翁の胸元に深く突き刺さった!

「自分で・・自分の胸を・・」

「こうしないと止まらないんじゃよ・・・わしの体はの・・」

ニヤリと笑ってみせる翁だが口から血を吹き出し咳きごみだす

「貴方は強者とめぐり合うために病より生き延びたのではないのですか?それなのに・・」

「ふふふ・・敗者は死するのみ。じゃが病により命を落とすのはわしは納得がいかなかった・・それだけじゃよ」

「強者に巡りあいそれに挑んで破れるがために生き続けたのですか」

「破れるためではない、破れるまで己の剣を極めたかった・・

己の限界を知り、己よりも強者に打ち負かされたのであるならば・・それもまた一興よ」

「美学・・っという物ですか、理解はできません・・」

「これぞ真の武士道よ、御主もわかる時が来るだろう・・剣術の深みに足を踏み入れているのであるならばな・・」

静かに笑う翁、心臓を貫かれているのにその表情からは死が伺えない

「そうじゃ・・・・ファルガン殿であったか・・、一つ頼まれてくれんかの?」

「僕でよろしければなんなりと・・」

「かたじけない、簡単なことじゃ・・わしの刀・・受け取って欲しい」

「・・その刀をですか?」

「左様、折れはしたがまだ生きている剣よ・・。虎は死して皮を残し剣士は死して刃を残す・・わしが歩んだ証じゃ」

「わかりました、貴方の剣・・大切に譲り受けます」

「・・そう・・か。それで残す物は何もあるまい・・満足のいく勝負じゃったぞ!若き武士よ!」

そう言い翁は最後の力を引き出しその刃を引き降ろす・・それにより心臓を完全に切り裂き夥しい血が吹き出る・・

血まみれの剣士は最後まで満足そうな笑みを浮かべ動かなくなった・・

「・・・・、貴方とは・・もっと違う出会い方をしたかったですね」

自分の道を貫いた老剣士に一礼をしてファルガンはその体に深く突き刺さった剣を抜き取る

血で塗れた木柄とは違い折れた刃に血がこびり付くことなく美しき輝きを見せていた

そのまましばし翁の姿を見つめるファルガン

そこへ・・


「終わったようだな・・」


ふらりと姿を見せる割腹の良い老人・・

「社長、どちらに行かれていたのですか?」

心底意外そうな顔をするファルガンに対しみすぼらしいスーツを着た老人社長は楽しそうに笑う

「ちょいと・・な。秘書に連絡を取らせた・・屋上ヘリポートの襲撃はウルムナフとゲスト二人で撃破、

防護隊の方も一名傷を負ったが使役者達を全滅させたようだ。上々の結果だな」

「それを見越しての別行動なのでしょう?」

「お前もウルムナフもわしの動きを見透かしたようで好かん・・面白みもないわ」

「社長の行動パターンはウルムナフに教えられていますので」

「・・あ奴・・。でっ、こやつが奇形者か」

急にシリアスな顔つきになる社長、翁の死に様は常人ならば目を覆うほどのものだが社長は軽く目を細める程度だ

「奇形者である以上に武士である御方でした」

「そうか、それでそのような物を持っているのか」

「・・頼まれましてね、貰ってくれと・・。・・これは上げませんよ?」

「・・ちっ、わしの考えを読んだな?」

「目を見ればわかりますよ・・。それよりも、この翁殿の遺体・・手厚く葬っても良いでしょうか?」

「構わん、サンプルは一つ手に入っておるしな。お前の好きなようにすればいい」

「ありがとうございます、では・・そのように手はずを整えておきますので。それで・・何を調べていたのですか?」

「警察の動きとその他もろもろだ、予想通り・・こちらに向っている警察は一人もおらん」

「・・何者かの手が回っている・・そういう事ですか?」

「そう考えるのが妥当か、それについては仮説を説明しよう。一度全員を集めてくれ・・後はビルの被害状況だな・・」

「了解です、速くしないと夜が明けてしまいます」

「・・だな、防護隊の戦闘による物品の損害状況などを確認させる、すでに秘書が手はずをしているだろうがな」

「流石はルドラを支えるエリート達・・っと言ったところですか?」

「奴らよりもお前達に期待をしているんだがな・・」

「ご冗談を・・」

そう言いファルガンは翁の亡骸をためらいもなく抱き上げて社長とともに本社ビルへと戻っていった


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