chapter 10 「Mujun」
結局のところ、会長の誘いを断る事ができずイヤイヤ食事に付き合わされたウルムナフ
挙句に酒まで呼ばれてしまいすっかり酔わされたところでようやく解放された
実は煙草は好きだが酒は余り強くない彼、自分の部署に戻ってくるなり仮眠室に倒れこみ翌日まで起きる事はなかった
翌日
「・・・ったく・・あの爺・・調子乗ってしこたま酒を飲ませやがって・・」
何時にも増して不機嫌なウルムナフ、目覚めの濃い珈琲を啜りながら愚痴り出す
「まぁまぁ、中々手に入らない鮪を堪能して上機嫌だったんでしょう・・」
その隣で苦笑いするファルガン、その時の様子が容易に想像できる
「かつては絶滅危惧種も自然系統が回復して今じゃそれなりに数は増えてきているらしいが、世界一それを消費した国が滅んじゃ漁に行く奴もいねぇか」
「それをわざわざ取りに行かせる、社長も好きですね」
「ここまで来ると酔狂だぜ?あのニホン好きが・・」
「対して貴方はニホンが嫌いでしたしね」
笑いながら珈琲を啜るファルガン、同フロアのよしみなのかこうした雑談には良く付き合う
「当たり前だ・・」
「RJ、『リファイン・ジャパニーズ計画』の新生ニホン人に共通しますね・・、まぁニホンの末路を知ればニホン人ならば誰でもそうなりますか・・」
「文化については文句はねぇが政治がな・・。まぁ坊主憎けりゃ袈裟まで憎いって奴だ」
「・・それもニホンの格言ですよ?」
「っと、そうだったな・・。でっ・・まだ鮪も上に残ってっぞ?お前もあの女と一緒に食ってこいよ・・」
「遠慮しますよ、社長とのお酒の席は覚悟が必要ですしね。それに・・彼女は今旅行に出てます」
「ほぉ、そいつは気付かなかった」
「崩壊したニホン列島を見てみたいとのことで・・・」
「物好きだな・・、放射能汚染は収まったとは言え・・何もねぇんじゃないか?」
核爆弾の実験場となった列島、もはや廃墟も殆どなく上陸する者などほとんどいない
現在になってその地を蝕む放射能汚染が取り除かれたのだが、一方的な殺戮が行われた地・・寄り付く者などいるはずもない
「それでも見てみたいものなんですよ、そもそも放射能汚染を治したのもRJの人間のようです。
・・ニホン人遺伝子にヒトゲノムを加えたコーディネイターと言えども故郷を思う気持ちはあるもんですよ」
「俺達の故郷は研究所、子宮は試験官だ・・、まぁ・・あいつがいないがそれはそれでいいか・・」
「襲撃の話ですね・・一般職員に連絡をしないのは・・社長らしいものですね」
「化物の襲撃がある・・って言ってまともに作業を続けられる奴なんざそういるかよ・・、防護部隊には直接爺が喝を入れるらしい」
「ルドラ社始まって以来の戦闘になりますからね・・、カンパニーからの刺客を想定していた彼らに取っては面食らう部分はあるでしょけど・・」
「遠慮なく射殺できるんだからいいんじゃねぇか・・?それと、現場指揮は俺とお前で執れだとよ」
「そうなりますか・・」
「そうなるさ、暇なら爺も遊びにくるらしい」
「社長が出向けば一番手っ取り早い気がするんですがねぇ・・・僕は僕で職務がありますし・・」
「そう思うんなら直訴でもしてこいよ、無駄だと思うが・・」
「そうした点ではワンマンですからね。素直に諦めます」
「賢明だ・・」
ため息をついて珈琲を飲み干す、結局はこの二人、曲者社長に打ち勝つ事ができないのだ
「それで、久々に使い慣れた物をもってきたようですね」
そう言いながら目をやるとぶっきらぼうに机に置かれたのは二丁の拳銃
彼のパーソナルカラーである黄金の塗装が施されたルガーP08
アンティーク銃に加えて派手なカラーリングがさらに美しさを強調し実用品としての実感を薄れさせる
「あぁ・・マグナムの方はあのガキんちょにくれてやったからなぁ。久々にこいつを使わせてもらう」
「・・とは言え、室内でスティンガーを乱射しないでくださいよ?」
「そこまで馬鹿じゃねぇよ・・。1フロア穴だらけになっちゃ俺の悪名がさらに上がってしまうからなぁ」
「それならばいいんですがね・・」
「でっ、お前はどうするんだ?」
「一応、いつものは護身用に彼女が持っていきましたからね。これを使おうと思います」
そう言い取り出すは銀色の輝く一振りの剣
刃から握りまで全て一つの金属で出来ており握りに銃のものを流用したグリップが付けられている
「あぁ・・いつぞや俺が造った金属で作った剣か」
「えぇ、エルトニウム合金製のサムライソード『キサラギ』です」
「金属板までは良い物を・・加工するためにプレス機いじってまで造るものかよ・・?」
「刀鍛冶というのは絶滅してしまいましたからねぇ・・止むをえませんよ」
「それ以前に銃器製造会社で刃物造る自体問題じゃないのか?」
「個人趣味という事で理解は頂いてますよ、それにこのような事態のために造った様な物ですからね」
「・・やれやれ、あの爺のニホン好きならばサムライソードの一本でもくれてやれば納得はしただろうな」
「それは、彼女の方で手を打ちましたよ・・。持参の一振りを譲ったので認めてもらいましたよ」
「・・あの爺に任せてこの会社、大丈夫かよ?」
「・・さぁ、どうでしょう?一応は勢力を伸ばしているので問題はないんじゃないですか?」
「・・ったく、どいつもこいつも・・」
ふてくされて愛銃の手入れをし出すウルムナフ、対しファルガンも同じく試作品の手入れを開始した
・・・・・・・
その夜
根っからの出不精なウルムナフはあれから研究室に篭りいつもと変わらない気ままな研究についた
ファルガンも自分の仕事をこなしながらも敵の襲撃に気をかけているらしく外の様子を見回ったりしていた
だが大した異常がないまま日は沈み一般職員は帰宅、本社ビルには徹夜組と防護部隊のみが残る状況となった
「・・でっ、そろそろきそうなのか?」
研究室内で携帯食のスティックかじりながらウルムナフが言う、いつもの如くの綺麗とは言えない白衣姿
しかしその中には黒革の防刃チョッキを着用している
これがルドラ社製の防護製品で最軽量の防刃、防弾着でその性能の高さは業界に知れ渡っている
だが彼がこの防具に頼ろうとは毛頭思っていない、そもそも奇形者にこの防具が通用するかも謎だからだ
「周辺の監視モニターからそれらしい物が接近しているという事です」
同じく軽いチョッキ姿のファルガン、手にはあのサムライソード
黒いチョッキに白い作業ズボン姿は異様でもあるのだが不思議と彼に合っている
「なら間違いないか、じゃあ・・はじめるぞ?」
「いつでもどうぞ・・」
そう言うファルガンに笑いかけウルムナフは通信機を取る
『俺だ、現在本社ビルに不審武装集団が接近している。一般職員は指定された避難室に速やかに移動、防護部隊は迎撃態勢に移れ』
ぶっきらぼうな声が本社ビルに響く、しかし大した騒動もなく速やかに移動しているようだ
「さて、それじゃ・・俺達も行くか・・」
「ええっ、それでは、互いの武運を祈りますか」
「祈っても祈らなくても結果は一緒だ。折角の敵襲・・存分に楽しもうぜ?」
氷のような冷笑を浮かべながらウルムナフはゴールドルガーを懐に入れ研究室を後にした
・・・・・・・
一流企業の超高層ビルともなればその屋上にはヘリポートとなっている
ルドラ本社もその例外ではなく社長室から直結するように繋がっている屋上のヘリポート、
広大な広さを持っているのだが強風が吹き荒れヘリが一基停まっている
そこはあくまで簡易的なヘリポートらしくそれに必要な機材が何もなく一時的な使用である事がわかる
おまけにかなりの高度であるにも関わらずフェンスなどは設けていない、軽い段差こそあるのだが十分な物はないのだ
・・落ちたら当然死は免れないだろう
そして夜だと言うのに地面には幾つもライトが設置されていて異様に明るく感じる
「あの爺・・横着しやがって。ヘリを留めたままにしておくと地面が抜けるぞ・・ったく」
悪態をつきながらも風で白衣をなびかせるウルムナフ
細葉巻を吸いながらも会長が使用していると思われるヘリの状態を見ている
すると音もなく空中を飛来するはハンドグライダーが一つ
どこから飛んできたのかは謎だがかなりの高度の中優雅に飛行しながらヘリポートに着地した
「ほぉ、こちらの意図に気付く奴がいたとはな・・」
グライダーを捨てて見下したように笑うはオールバックの白髪をした軍人風の白人
その後の身のこなしからして軍関係者と思われる、装備も夜戦用の黒い軍服のような物で暗殺者のようには見えない
「気付かないと思わなかったのか・・?喧嘩するには相手の事を良く知る必要はあるぜ?」
「その必要はないな、俺達の相手になる者などいないのだ・・」
「のぼせやがって・・、まぁ御託は良い。売られた喧嘩は買うまでだ」
「上等だ!」
そう言い今度は腰より漆黒の長身銃取り出した
「モスバーグM500か、中々良い散弾銃を持ってきたじゃねぇか」
ブラックモデルのショットガン、機械的な外見は威圧感抜群であり銃口を向けられるだけですくみ上がってしまう
「へへっ、流石は武器会社だ。こんな遮蔽物がないところでこいつを使えばどうなるか・・?わかるよな?」
「・・それよりも俺はそんなもんベルトの中に突っ込んで空を飛べた事の方が気になるんだがな」
「減らず口を、その白衣毎ズタボロにしてやるぜ!」
バァン!
凄まじい轟音と共にショットガンが火を噴く、
しかしそれよりも速くウルムナフは飛びのきながら回避しつつルガーで照準を定める!
「遮蔽物がねぇのは同条件だ・・」
パンパン!
乾いた短い銃声、飛びのきながらも正確な射撃は男の体に直撃するのだがその体は微動だにしない
「へ・・へへへ・・。狙いはいいみたいだな」
弾丸が直撃したのに全く表情を崩さない、それどころか追撃とばかりに再びショットガンをウルムナフに向ける
バァン!
強烈な轟音、しかしウルムナフは正確にその有効範囲を知っているらしく銃口が向けられた瞬間にそれを計算し飛びのいた
「こちとら銃器開発者だ、命中がいいのは当たり前だ」
「だが、そんな玩具みたいな銃じゃ俺に傷一つつかないぜ?」
「・・のようだな、それも奇形細胞のおかげか?」
「そうだとも・・俺の名は『玄武』・・中華の事は知らないが亀に関わることらしい」
「なるほど、皮膚を硬質化して銃弾を弾くわけか・・」
「察しがいいな、その通りだ。奇形細胞のおかげで俺の皮膚は自分の意志で硬度を変える事ができる
俺はその力のおかげで悠々と戦場を渡り歩いてきたわけだ」
「相手の武装を無効化できればそうなるわな、しかし撃てばいいだけってのも・・多少姑息感はあるな・・」
「勝てばいいんだよ・・、この力があれば俺は傷付く事無く勝利できる。正に無敵に力だ!」
勝ち誇る玄武、しかしそんな彼の様子にウルムナフは見下した笑いを浮かべる
「なっちゃいねぇな・・、その程度で無敵を名乗るとは・・」
「だったらそのルガーで俺を仕留めて見ろよ・・サービスタイムだ、好きなだけ撃たせてやるぜ?」
「へっ・・」
パンパンパンパンパンパン!
遠慮なくウルムナフは二丁の連射を行う、両手から放たれる精密射撃は玄武の胸元に集中して着弾しその服に穴を開けて皮膚を露出させる
亀の細胞を変異させただけのその皮膚は甲羅のような紋様が浮かび上がっていた
だが皮膚そのものが隆起しているようではなくそれはまるで動物が擬態化するために体色を変化させたかのようだ
「痒いぜ?まぁ・・軍用の機関銃でも痛みはないんだ・・そんな銃じゃ無理もないか・・」
「・・よぉ?」
「あん?」
「矛盾って格言・・知っているか?」
ニヤリと笑いながらルガーのマガジンを取り出す
「俺はそう言うことには興味がないんでな・・ムジュンがどうかしたってのか?」
「中華系の故事成語って奴だ・・とある商人が何でも貫く矛と何でも防ぐ盾を売っていて
客がその矛で盾をつくとどうなるとツッこんだ事からつじつまが合わないって意味として扱われている」
丁寧に説明しながら懐よりマガジンを取り出しそれを装弾するウルムナフ・・
「それがどうしたってんだ?」
「その言葉が出来てから随分時が流れたが・・結論を出そうじゃないか・・矛と盾・・どちらが優れているかってな」
「はぁ?あれだけ撃ってまだわかんねぇのか?お前・・相当痛いな?」
そう言い下品に笑みを浮かべる玄武、自身の体について慢心しきっているようだ
「そうかい?・・なら遠慮なく・・」
それに対しウルムナフは悪魔のような笑みを浮かべ軽くトリガーを引いた・・
パァン!
先ほどとは違い銃声の音が大きい
「へへへへ!無駄だって・・っうぐ!?」
放たれた弾丸は勝ち誇る玄武の胸をいとも簡単に貫いた・・
「検証は真面目にやらないとなぁ・・、一発じゃまぐれかもしれねぇ・・」
パァン!パァン!パァン!パァン!
「うぐぁ!そ・・んな!!」
全くの遠慮なし、ウルムナフは二丁のルガーのトリガーを引き続け
その弾丸の全ては玄武の皮膚を貫通し夜空へと消えていった
連射により玄武の胸板は穴だらけになり血が勢い良く噴出している・・
「・・矛の勝ちだな」
「て・・めぇぇぇぇぇ!!!」
体中を駆け回る激痛に殺意をむき出しにする玄武!よろめいた体勢のままショットガンを振り構える!
バァン!
当たればただではすまない強烈な一撃、しかしウルムナフはそれにあわせるようにルガーを引き
発射される直前のショットガンの銃口に放り込ませ暴発を起こさせた!
「ぐぅわぁぁぁ!」
それには頑丈さに自信がある玄武のたまったものではなく銃身が破裂したさいの破片が傷口を広げる
「おやおや・・、硬度が保てなくなったのかぁ?・・ほらよ!」
そんな玄武にウルムナフは遠慮なく駆けてきて飛び蹴りを放つ!
「ぐはっ!」
技術者とは思えない身のこなしで助走をつけ玄武を吹き飛ばした、
相手の体勢は整っていながためにその体は大きく吹き飛ばされ屋上フロアをとびだし空中を舞う
しかし玄武は必死に体勢を立て直しヘリポートの墨に何とか手をついてこれを堪えた
「ち・・くしょう・・!」
「どうした?ご自慢の体もここから地面に落ちたら一溜まりもないって訳か?」
駄目押しとばかりに玄武の手を踏みつける、やっている事はこちらの方が悪人気質である
「てめ・・え・・何者だ・・?」
「ここの職員だ・・ってか最初に言っただろう?喧嘩する相手を考えろってよ・・
いくら優秀なショットガン持っていても俺はその有効範囲なんかは熟知している。遮蔽物がない分身動きが取りやすいフィールドだ・・
てめぇが照準を合わせた時点でどこまでが危険区域なのか把握できるのさ」
「こんな強風が吹き荒れる中にショットガンの弾道を予測した・・だと!?」
「あぁ、それに・・てめぇが余りにもその体の自慢をするから試したくなってなぁ・・俺の弾とどちらが上かって・・」
何事もないように懐から細葉巻を取り出し火をつける、その態度に玄武は戦慄を覚えた
「じゃ・・じゃあ・・てめぇが・・RJの・・」
「さぁて、どうだろうなぁ?このぐらいその気になれば普通の人間でも出来るんじゃねぇか?」
「だったら・・てめぇは何者なんだ!?」
「・・機会があれば教えてやるよ・・亀野郎・・」
ニヤリと笑い、細葉巻を玄武の顔目掛け吹く・・
それが彼の額に当たる瞬間に・・
パァン!
ルガーが火を噴き、玄武の体を貫いた
衝撃でその体は遥か地上へと落下していきその光景をウルムナフは静かに見下ろしている
やがて・・
『・・あ〜、俺だ。下に汚い死体が落ちたから焼却処分しておけ、街の景観は美しくしねぇとな・・』
携帯通信機で無慈悲に言いながら屋上を後にしようとした時・・
けたたましい爆音とともに強烈なライトを当てながら大型のヘリが宙を待って接近してきた
「お〜お〜、亀がどこから飛んできたかと思ったら・・ヘリからグライダー飛ばしたのか・・。ご苦労な事だぜ」
戦闘ヘリではないもののただ偵察にきたのではなさそうなヘリ、ライトのおかげで操縦席は見えないのだが敵意は確かに感じられる
それとともにヘリ後部のドアが開いたかと思うと数人、高度があるのだが飛び降りてきた。
屋上に降り立ったのは異形は5匹、全裸で茶色い皮膚をしており髪はない。
その様はまるでマネキンのようにも見えるのだが体は小刻みに振動しており右手は奇形化して大型の刃となっている
「奇形ES者・・それも細胞に飲み込まれ自我を失ったクリーチャー・・通称『使役者』って奴か。
屋上からの侵入に二段構えとはな・・念の入った事だ」
ニヤリと笑い強烈なライトを当てるヘリに対してルガーの銃口を向ける・・
カチン!
「・・いっけね、調子に乗りすぎて全弾撃っちまったか」
頭を掻きながら呟く、対し使役者達はそれを理解したのか好機とばかりに飛びかかる!
「はぁ・・肉弾戦はファルガンや爺の専売特許なんだがなぁ・・」
ため息を付きながらルガーのグリップを握り構えるウルムナフ・・
その時・・
『だったら・・手伝いましょうか?』
ふと女の声が聞こえたかと思いきや・・
パン!
短い銃声とともに使役者の一体が吹き飛んだ!
ウルムナフはそれにタイミングを合わして大きく飛びのいた
「フォックス・・それにティーゲルか、ここは関係者以外立ち入り禁止だぜ?」
見ればエレベータの前に悠然と姿を見せるティーゲルとフォックスの姿が・・
両方とも武装完了で先ほどの射撃はフォックスの南部式で行ったものらしい
「お前のところの親玉からお誘いがきたんでな・・、時間制限で撃ち放題とか言っていたら・・こういう事か」
「あの爺・・」
襲撃をここまで舐めた経営者も珍しいものである
「とりあえず片付けるか・・、下は下で騒がしいようだからな」
軽くため息を付きアサルトカービンであるセルフィッシュをヘリに向けて構える
銃下部にあるは筒状の発射口を持つパーツが・・
それは投擲発射器、そしてティーゲルがトリガーを引くとともに軽く硝煙を上げてそこから素早く尖った物が射出された
彼の狙いは完璧、ヘリの下腹に深々と命中させた
それは・・
「何あれ・・矢?」
突き刺さる物にフォックスも意外そうに言う
彼女が言うようにヘリに刺さったのは小型の矢で底部は赤く光っている・・
すると・・
ドォォォン!
急に爆破、矢は大きく爆ぜ衝撃がヘリを揺らす
「アローグレネードか、試作品の割にはうまくいったようだな・・」
その様子をウルムナフはニヤリと笑う、これも彼が開発したらしい
対しヘリは制御が難しくなったのか不安定な飛行をしながら急速に屋上から撤退をしだす
使役者は使い捨てらしくどうでもいいらしい
「ふん、M203を改造した割には中々だな・・、扱いやすさは対戦車装甲弾よりも高い」
「グレネード発射器に矢型の爆弾を仕込んだの?・・いつもながら奇抜ね」
「結果は上々だ、いずれはリモコン式にするのも悪くねぇな・・」
「だな、しかし今はこの出来損ないの始末だ」
「そうねぇ・・ウル、ルガーの弾はないの?」
「手持ちのはねぇなぁ、まぁなければないでやるさ」
「呆れた・・まぁご自由にどうぞ」
ニヤリと笑い弾の入っていない銃を握り締めてウルムナフは突っ込む
使役者は異様な雰囲気を放つこの三人に中々攻めあぐねていて
警戒していたのだが突然ウルムナフが突っ込んできた事に本能的に迎撃に移る!
「弾がなくても使い道ってのはあるんだぜ!」
そう言いながら刃と化した右腕を振りかぶる使役者の懐に飛びいり・・
バキィ!
右手で握ったルガーのグリップの底で相手の顔を思いっきり叩き飛ばす!
「もういっちょ!」
そのまま勢いつけて廻し蹴りで使役者を吹き飛ばした、回転を上手く利用した攻撃は威力があり強固そうな使役者に確実にダメージを与える
そこに合わすようにフォックスが南部式で止めを刺す
「二丁拳銃と足技を駆使した護身術・・『銃風(ガンフー)』だっけ、よくよく銃器製造の責任者には思えないわね・・」
「ふん、だがこいつらに打撃はそうは効かん。さっさと仕留めるぞ」
奮闘するウルムナフに加勢すべくおのおのの武器を持ち二人は突撃をした
・・・・・
結果は見えていた、ティーゲルのセルフィッシュ、フォックスの南部式の掃射は実に見事であり
狂戦士として変貌した使役者達の体に鉛弾を埋め込んでいき瞬く間に殲滅完了となった
「・・やれやれ、俺の出番はそうはなかったか・・」
「奇形者で満足したんじゃないの?大体・・増援わかっていて弾撃っていたんでしょうに・・」
「おいおい、それはそこまで計算していないぜ?」
「ふん、怪しいものだ。コードGの生き残りがこれだけ顔を合わして銃を撃つ機会も久しいが・・下の様子も見たほうがいい」
「別にファルガンの事だ、心配しなくてもいいと思うんだがな」
「それについては同感ね、まぁとりあえずは行きましょう?血生臭くて嫌になるわ」
「狙撃兵は血になれてないからな」
嫌味を言いながらヘリポートを後にする三人、残った肉塊は処理班が到着するまでしばし強風に吹かれ続けるのであった
<<back | top | next>> |