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第一節  「交わる三本の糸」


傭兵公社が崩壊して数年が経った・・。
それ以降は物騒な事件もなく、穏やかに周辺諸国の時は流れていた
所々魔物の発生や疫病などの報告もあるのだが
それでも『戦争』というものがないだけ人々は安心はできる

・・しかし・・

ハイデルベルク国にある小さな村・・
王都からかなり離れており自衛の騎士も頼りないくらいの村だ。

時は新月の夜・・、静まりかえった村の通りを一人の女性が走っている
「はぁはぁ・・、た・・たすけ・・」
何かから逃げるような女性・・見れば片腕がブランとぶら下がって生気がない・・
・・・その腕の部分だけ石になっているのだ
「誰か・・い・・やぁ!」
道の小石に躓く女性・・、振りかえった時には彼女はすでに人ではなくただの石像となった
すぐそこに民家があるのに彼女の悲鳴を聞こえたものは誰もいなかった

翌日

「・・・これでもう14人か・・。どうなっているんだ?」
「今回は食堂でウェイトレスしていた子だろ?あんな子が行方不明になるってあるのかね・・」
酒場にたむろう男達が気味の悪そうに口々呟いている
「でも忽然と消えたんだろ?荒らされたわけでもないんだし・・」
「騎士は頼りにならないし・・・物騒だな・・」
話題は行方不明になった女性に事で持ちきりだ
そんな中、酒場に一人の男が入ってきた・・、
薄碧のロングコートに男性にしては長めの茶髪
目元には小さな丸眼鏡をしており全体を通して優男といえる
気味の悪い話題にオロオロする客をよそにその男はテーブルに腰掛けて静かに荷物を下ろす
マスターも話題にばかり気をとられてもいられないので
とりあえず話を区切り男の方へ足を運んだ
「お客さん、酒かい?」
「いやっ、昼間っから酒を飲む習慣ってないな。珈琲かなんかあるか?」
気さくに笑う男、マスターは瞬時に好感が持てた
「・・変わっているね。まぁそもそもこんな寂れた村にくること自体が普通じゃないか」
「違いない。なんか騒いでいたけど何かあったのか?」
「まぁ、奇妙な事件がな・・ちょっと待ってくれ」
静かにカウンターに戻り珈琲を入れるマスター
その間に男はコートを脱ぎラフな格好に・・
そこには服の上からではわからない引き締まった筋肉があり客も目を丸くしている
「なぁ、あんた冒険者か何かか?」
「えっ・・?ああ・・、そうだ・・な。まぁ冒険初心者ってやつ?」
「そんだけ鍛えた体で冒険者に成り立てなのか?・・変わっているな・・」
「前まで傭兵だっただけさ。それよりも難儀な事件なのか?
・・金になるなら引き受けてやってもいいぜ?」
「そうだ・・な。こうなったらワラにもすがるってやつだ。
とりあえずは騎士団に行くと詳しい事情も聞けるだろう・・あんた、名前は?」
「クラーク、クラーク=ユトレヒトだ。じゃあ一休みしたら騎士団に行こうかね・・。
やれやれ・・ようやく初仕事か・・」
「傭兵から冒険者ねぇ。
まぁ騎士団連中よりかはマシになるか、無事解決したら俺達も何かやるよ!」
「ははっ、それはありがたい。そっちのほうが報酬になるかもな!」


笑いながらマスターの持ってきてくれた珈琲を一気に飲み干し、
テーブルに金を置いてクラークは出ていった


村民が何故騎士団ではなく新米冒険者に期待していたかは騎士団詰め所にてすぐわかった
「あの事件〜?どうせどこかの人攫いだよ、捜査中だから協力しなくてもいいよ」
酒瓶片手に明らかに酔っている中年騎士・・、
詰め所内はさらに二人ほどいるがいずれもやる気がなしにテーブルにカードを並べている
「人攫い・・ねぇ・・」
「なんだ?文句あるんのか?俺達は捜査のための英気を養っているんだ・・
邪魔するなら豚箱にぶちこむぞ?」
「悪い悪い・・じゃあ失礼・・」
アホらしいと思い詰め所を後にするクラーク・・。
どうしたものかと思いとりあえず表の通りにでた
通りでは先行きの見えない事件に恐怖したのか村民はほとんど見当たらない
「やれやれ、金にはならないが放ってもおけないし・・な。
でもどっしよ?事件自体よくわからんし聞き込みしてもなぁ・・」
とぼとぼ歩きながらどうするか考えるクラーク、
傭兵時代ではやる事なんて上から指令としてくるゆえに自分で探す事というのがなかったのだ

そんな中・・

「突然失礼、君も町娘の失踪について捜査をしようとしているのか?」
突如後から男の声がした
「ん・・?ああっ、そのつもりなんだけど・・」
振り向いて見ればそこには目元を覆うような仮面をつけた銀髪の男が・・
動きやすいジャケット姿であるが・・結構不審人物・・
「そうか。よかったら私と手を組まないか?
ちょうど私もこの事件の依頼を受けたが人手が欲しいところなのだ」
「依頼・・?騎士団がいらないっていってる一件をわざわざ依頼する人物がいるのか?
まぁ、あいつらに頼るのみともなればそんな行動にも出るか」
「・・まぁ・・な。依頼人の名をそうそう口にできるものでもないのだが・・」
「・・・・・、まぁいいや、協力するよ。それなりに情報は持っていそうだしな」
どうせやる事がないので仮面の男のいう事に従ってみるクラークだった
「助かる。私はロカルノだ」
「俺はクラーク。でっ、この事件の経緯を教えてくれないか?」
「いいだろう。だが立ち話というのも何だ。宿で部屋をとっている・・そこで話をしよう」
返事も待たずに歩き出すロカルノ・・、クラークもおかまいなしに静かについて行った

・・・・

村に一件だけの宿屋。
よほど利用者がいないのか中々の寂れようだ
部屋もベットと簡単なクローゼットのみでテーブルすらない
「さて、ここなら気がねなく話せる。無理に村民を不安がらせずにすむだろう」
「なるほど・・な。何だが閉め切った小屋から聞き耳立てている感じだったし・・」
ぶっきらぼうそうに見えて中々考えているロカルノ
部屋の隅に置かれた荷物袋から書類をまとめてクラークに渡した
それ以上に彼が注目したのは袋のとなりにある強固な全身鎧・・、
みるからにからに業物とわかる
「・・・(かなりできるな、重戦士か・・?だがその割には身体の運びが・・)」
「??どうした、見ないのか?」
「えっ?あ・・すまない。何々〜、被害者は全員女性。
最近は若い娘が行方不明で夜忽然と消えた・・っと。
それも部屋が荒らされた云々は無しか」
「神隠し・・とでも言うところだな」
「古い言い方だな。だが、行方が不明で荒らされていない・・。ただの家出ってのは?」
「実際その家族達に聞いたがそんな素振りは全くない。
あったとしてもそんなケースは1,2件がせいぜいだ」
「・・そうだな、10件以上あるともなると攫われたと見るほうが自然ってわけか・・。
だが、それでも全く忽然と消えるってのは気に食わない。
静かな村だから叫び声の一つでも上げれば聞こえるはずだ」
「・・そうだ。だが異常に気づいた者は誰もいない。そうなると考えられるのは・・」
「叫び声を出す間も与えず脅したか・・、人外の者の仕業・・か・・だな?」
ニヤリと笑って見せるクラーク
「ふっ、意外に切れるようだな。私の結論は人外の方だ。
どんなプロでも形跡というのは必ず残る。
それが全くないという事は人の推測を超えたことをやった証拠というわけだ」
「そうだな。それで、ここいらで魔物とか住んでそうなところってのはないのか?」
「さっき仕入れた情報だと南に進んだ森に夜、何やら奇妙な明かりが見える事があるらしい。
・・調べる価値はあるだろう」
「ふぅん・・、魔物が明かり・・?まぁ何もしないよりかはマシか
じゃあ夜になったらそこに向かうってのはどうだ?」
「・・そうだな、私はそれまでもう少し情報を仕入れる。お前は適当にくつろいでいてくれ」
「まぁ、あんまりお前に頼るのはいけないから隣に部屋とっておくよ・・またな」
「・・ふん」
双方、相手の事を少なからず気に入っているようでお互い少しにやけたままその場は別れていった




その日の夜
村から離れた森の中にクラークとロカルノは散策をしている
月は出ていたが木々に遮られて真っ暗であり、一応クラークが松明をもっている
「ふぅん・・、確かに何か出てきてもおかしくない雰囲気だな」
松明でそこらを照らすクラーク。
彼の言う通りで枯れてしな垂れており不気味な空気が漂っているのだ
「まっ、そんなところでなければ獲物も狩れないさ・・。しかし・・刀使い・・か」
ロカルノの関心はむしろクラークが下げている刀に向けられてる
黒鞘に綺麗な刺繍がされている一振りの刀、腰に大事そうに下げているのがよく見える
「ああっ、珍しいか?」
「滅多にはお目にかけないだがな・・しかもかなりの腕と見た」
「そう言うお前も結構な腕じゃないのか?重そうな鎧着ているわりには軽快な動きだし」
「・・ふっ、見た目ほど重くはないさ・・・んっ?」
ふと前方に明かりが見える
「・・・・、こんな寂れた森に灯る明かり・・、情報通り怪しいな」
「ああっ、魔物かどうかわからんが・・行ってみようか」
二人は暗闇の中に浮ぶ淡い光に歩んでいった
・・・・・・

その明かりの正体は焚き木によるものであり誰かが夜営していたようだ
ただし、張っていたテントの中には誰もいなくどこかへ行った後らしい
「・・・・・、こんなところで夜営か。魔物でなかったのは残念だが・・、」
「それでも怪しいもんだぜ、脱獄者でもいるのか?」
「脱獄者にしては立派なテントだ・・。生活道具も置きっぱなしだな」
テントのすぐ傍に小さな袋がある
「ふぅん・・じゃあちょっと失敬・・・あれ・・・?これ・・」
袋からまず見えたのは女性物の・・・

「あーーーー!!」

驚くクラークより先に森から叫び声が響く
そして矢よりも速く飛びこんでくる人影・・
「ちょっと!何私の下着漁っているの!?こんな所で下着ドロ!?このケダモノ!!」
激しく怒っている金髪の女性、腰に届くくらいの長いストレートが特徴であり、
着ているものはヘソ丸だしなシャツと太もも丸だしなパンツっという格好だ
「いやっ、そんなつもりじゃないって!」
「とかいいながら何しっかり握っているの!離しなさい!それ大事なんだから!」
「うわっ、悪い!!」
驚いて手に持ちっぱなしの下着を女性に向かって投げ渡すクラーク・・
しかしそれは女性の顔に辺り、渡すというよりもぶつけたような構図だ
「・・・お〜の〜れ・・・、私の下着は汚物か!この丸眼鏡!」
「んなつもりじゃないって!」
胸座を掴む女性にクラークもどうすればいいのか・・っと

「ともかく、女性の下着を触った無礼は詫びている。許してやってくれないか?」
「ああん?(・・あらやだ、良い男)・・しょっ、しょうがないわねぇ。
今度やったら首ちぎるわよ?」
「不可抗力だっての・・」
「それはそうと、君はこんな森で何をやっていた?怪しまれてもおかしくないぞ?」
「何って・・夜営よ。テント張っていただけでいちゃもんつけられちゃたまんないわね」
「っうか、村がそんな遠くにないのに・・・か?
こんな薄気味悪い森で夜営しているのも普通じゃないぞ?」
「うるせぇ!下着盗りが!」
「・・盗ってないやん・・」
どうやらロカルノにのみ会話します・・みたいな感じだ。それにクラーク凹みまくる
「・・、だがクラークの言う事ももっともだ。わざわざこんなところに泊まる必要があるのか?」
「・・・・・・、まっ、色々あるのよ。あんた達は何なの?見たところ・・変質者?」
「お前に言われたくねぇ。俺達はだな・・」
仕方なく説明をする・・、女性は耳をほじりながら「へ〜、そ〜」ってたいして興味がなさそう
・・・・・
「村の娘が失踪ねぇ・・。私としてはそこの騎士団の怠惰が許せないけど・・」
「ほぅ、お前みたいな輩でも騎士団の状態に気を悪くするのか」
「輩って何よ、輩って!私は元ハイデルベルク騎士団の騎士だったんだからね!
そんくらい気にして当然よ!」
「騎士・・?そんな性格で?」
「うるせぇ!」
「ヘブッ!!」
間髪入れずな裏拳がクラークに直撃!
「・・・・、確かに元騎士と言われても信じがたいな・・」
「あ〜!何よそれ!じゃあこれ見せてあげるわ!!」
いきり立ち荷物袋を漁る女性
取り出したのは文字が刻まれた騎士勲章。
模様はハイデルベルク国の国旗として掲げられている槍が
交差し中央に日が差しているものでその勲章の下に
”栄光なりし騎士に選ばれし者の名をここに刻む・・セシル=ローズ”
っと彫られている
「・・つまり、お前、セシル=ローズって人からこの勲章ふんだくったわけだな?」
「なんでやねん!私がセシル=ローズよ!!」
「・・、なるほど。それならば合点が行くな・・」
もめる二人に対しあっさり納得しているロカルノ
「合点って何が?」
「ハイデルベルク騎士団に所属していた女聖騎士セシル=ローズという名は知れ渡っているのだよ。
『金獅子』の異名をもち、その戦いぶりは豪快にして鮮烈。
長い金髪が特徴な彼女は国を代表する騎士の一人だと・・」
「いやぁ・・それほどでも・・」
やたらめったら照れる金髪女性・・セシル
「ふぅん・・、そうなんだ。じゃっ、そうとわかったらさっさと他の所探そうぜ?
いつまでも○チガイ相手にしていたら・・さ」
「・・、まっ、○チガイかどうかわからんが無駄話もしていられないか・・では私達はこれで失礼・・」
事件とは関わりがないのでさっさと立ち去ろうとする二人
しかし
「ちょっい待ち!」
「ああっ。なんだよ?別に下着クスねてないぞ?」
「そういう事じゃなくて、失踪の原因探しているなら協力しよっか?」
「お前が・・?」
「そっ、私も旅費が心もとなくなってきたからね〜」
「・・・・・、報酬は当てにしないほうがいい」
依頼人の素性を明かさないロカルノ、成功報酬さえ伝えていないのだ
「え゛!?・・あんた、クラーク・・だっけ?んな条件でよく協力しているわね?」
「俺は金は二の次だ。最初はそうだったけど騎士団は当てにはならない。
そのうえ村民は困っている・・放っておけないだろ?」
「・・・・ふぅん・・、ただの下着馬鹿じゃないってことね」
「いい加減下着から離れろ!!」
「・・・、でっ?どうするんだ?私は別にどちらでもいいが・・」
クラークとセシルの衝突に飽きれながらロカルノ
「協力するわ。騎士団辞めたけど・・、騎士を辞めた覚えはないしね」
「・・・ちっ・・」
「舌打ちするな!こらっ!!」
「・・少しは静かにしろ・・。では次にどう出るか考えないとな・・」
とりあえずは三人だけ揃った・・、後はどうこの事件を解決していくか。
クラークとセシルが睨み合う中、ロカルノは思考に暮れていた


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