第10節 セシル&ロカルノ編 「愚者狂乱」


「セシル、やる気があるのは結構だがはしゃぎすぎるなよ?」
ロカルノが私に忠告する。
「わかっているわよ!全くあいつは、いちいち挑発してくるんだから・・!」
さっきのクラークの言葉がヤケにつっかかる。後で半殺しにしてやる!!
「今はそんなこと言ってる時じゃないぞ、後にしろ、後に」
「そんなこと言ったってロカルノは腹が立たないの!?」
「ふっ、後で仕返しはしてやるさ。」
あらっ、意外に根に持つタイプなのね?
「それよりもまだ歓迎してくれるようだぞ?」
顎でクイッとやった方向に警備兵が十数人、しかも石でできたゴーレムも数体いる
「ゴーレム・・どうやら、黒魔術で作った人形のようね」
「警備兵に比べたら楽しめそうだ・・(ニッ)」
「下賎な賊めっ、正義の名の元、成敗してくれる!!」
警備兵の隊長らしきおっさんが息巻いている、はぁ・・・
「あのね〜、正義って言うのは勝者のことを言うのよ?
そういうセリフは勝ってから言いなさい!!」
そうタンカ切ってやると一気に奴等の元へ駆けこむ。
警備兵達がロングソードを構え斬りつけてくる・・が、遅い!、遅いわ!!
「甘いっ!!」
愛剣「氷狼刹」で軽くさばきまとめて氷漬けにする
この氷雪の魔剣、氷狼刹を使えばこんな芸当もラクショー♪
凍りついた奴のこの驚いた顔がまた見物なのよね〜
しばらくそうしておきなさい!
「さすがだな」
ロカルノも感心している。出番とっちゃって悪いわね〜
「だがこいつらには氷漬けは通じないぞ」
ゴーレムに指差し、丁寧に解説・・わかってるわよ・・
こいつらは少なからず魔法に耐性を持っている、一応魔法生物だしね
「なら一緒に片付けちゃいましょ!」
「ふっ、承知した!」
訳のわからない雄たけびをあげて突進してくるゴーレム
警備兵の連中よりは素早いが、かわせないほどではない・・!
「ほっ!」
突進をかわしゴーレムはロカルノの元へ・・
「ふんっ!」
真正面から槍で受け止めている・・、ロカルノって重装備だからあまり機敏に動けないのよね
それでも常人よりは素早いかな?
「ふんっ、悪いが・・、私とお前では格が違うようだな」
そう言うと真上に投げ飛ばし槍で串し刺しにした。(華麗に)
相変わらずスタイリッシュ・・・・あたしには無理ね・・
そうこう言っているうちに残りのゴーレムが一斉に向かってきた。
ちなみにロカルノの実況をしながら私は2体破壊している・・、ちゃんと戦っているのよ?
「下がれっ、セシル」
どうやら・・、アレをやる気ね・・
「了解、派手に決めちゃって!!」
ロカルノの後ろに周り、準備完了。
「いくぞっ!霧雨連天崩!見切れるか!!」
ロカルノは叫びとともに腕が無数に増えた・・

『霧雨連天崩』
ロカルノが得意とする槍技で高速で突きを繰り出す技
あまりに早いから手が増えたように見えちゃうのよ。
まっ、射程距離内だと回避はまず無理ね
でもあのバカクラークは一回全部かわしたことあったけど・・
あいつはある意味化け物だから例外よ・・・

ロカルノが繰り出す高速の突きゴーレム達は穴だらけになり動かなくなった
「やれやれ、話にならん・・」
涼しい顔でつぶやくロカルノ・・、やっぱこいつクールよね〜
「大体片付いたわね、さて、どこ探そっか?」
「こいつ等はこの奥からきたんだ、そこに何かあるだろうさ」
「おっけ〜、行きましょう!!」

・・・・薄暗い廊下の突き当たり、なんかいかにも妖しい扉がある・・
「・・とりあえず入ってみる?」
「入らなければ始まらないだろうが・・」
さっさと扉を開けるロカルノ、警戒って言葉を知らないんだな〜。
扉を開けると金切り声をあげながらナイフを投げる男がいた・・、セルバンテスだ
ナイフを事もなくかわして奴に近づく・・
「あれれ〜、隠し部屋にいるんじゃなかったの?ロカルノ・・?」
ちょいと嫌味を言ってやった
「まっ、読みが外れることもあるさ」
あらら、こたえてないよこの人・・・
「き、き、き、貴様等〜!!何故ここを襲撃する!!」
早くも錯乱状態のセルバンテス・・
落ち着け、ボンボン
「何故って?なんだっていいじゃないの?」
「ふん、お前が気に入らなかった・・っというとこかな?」
「きっ、貴様等〜!!」
「言いたいことはそれだけ?それが遺言になっちゃうわよ?(チャ・・)」
「まぁ、待てセシル。おいっ、お前何故悪魔降ろしをしようとしている?」
「!!?っ、何故そのことを!!?」
「そんなこと調べたらわかる、洗いざらい答えてもらおうか・・」
槍の切っ先をセルバンテスの喉に突きつけ凄む
やっぱこういう役ってロカルノが適役だわ。
「・・わかった、・・・・グラファイスという男が全ての始まりだ・・。
奴が私に黒魔術を教え、サルトル家の聖具のこともしゃべった・・」
「お前がサルトル家を異端扱いとし、キルケゴールを襲わせたのは
聖具が目的だったのか・・?」
「それもあるがあの小娘自体も欲しかった・・」
「生贄・・ね」
吐き捨てるように私が言う・・、嫌なことを思い出したわ・・・・
「そうだ、サルトル家は聖なる家系、しかも処女ともなれば高ランクの悪魔を召還できる・・、
奴はそう言った」
「ふんっ、だがそれもこれまでの様だな・・、グラファイスはどこにいる?」
「奴は、おそらく地下の儀式の部屋にいる。」
「どこから入るのだ?」
「・・・書斎だ・・」
「お約束・・だな。もうお前に用はない。事が終わるまでここで大人しくしているんだな・・、
行くぞセシル」
「わかった、書斎ね」
ゲス野郎はこの部屋に軟禁して先を急ぐことにした、・・何故って?
後でじっくり料理してあ・げ・る♪・・からよ
窓などを開かないように氷漬けにして扉を出ようとしたその瞬間・・
「待てっ、下賎な賊め・・!」
振り返るとセルバンテスがこっちを睨んでいる・・、何?私達とやる気かしら・・?
「さっさと殺さなかったことを後悔するがいい、ふ・・ふははははははは!!」
「ねぇ、こいつどうしちゃったの?」
「腕を見てみろ、なにかを注射したようだな」
「なにかって何よ?」
「何か、だ」
なんて話してるうちにいつのまにかセルバンテスが奇形化、
長い爪をもつクリーチャーに変形した・・うわっ、グロ・・・
「ひひひひひ、よくもコケにしてくれたな〜?ばらばらに引き裂いてくれる!!」
「・・・どうやら、化け物になるお薬みたいね」
「・・みたいだな、だがこれで心置きなく殺れそうだ。怖気づくなよ?セシル」
「愚問ね、行くわよ!!」
先手必勝!皮膚の表裏がひっくり返った元セルバンテスに斬りかかる・・がっ
「がぁぁぁぁ」
予想より早い!?
クリーチャーの爪が私を襲う、・・・避けきれない!
「きゃあ!」
氷狼刹で受け止めたがそれでも少し飛ばされた・・、大したバカ力だわ・・・
「ほう、お前もたまには女らしい声を出すんだな」
なーに感心しているのよ!?
「感心してないでなんとかしなさいよ!?」
「落ち着け、今見た限りでは力が強いし敏捷性もかなりあるようだ。
だから私が先に仕掛けて動きを止める、お前は・・」
「時間差で飛び掛り一気に仕留めるってことね?」
「そういうことだ、いくぞ!」
ロカルノが駆けだし距離を詰める
「キェッヘー!!」
クリーチャーがすかさず爪の攻撃を出す!
「おおおおっ!」
回避は不可能と直感したのかわざと鎧で受け、槍を突き刺し奴の動きを止めた。
・・ごり押しね〜
「今だ!セシル!」
「わかった!」
ロカルノの肩を借りて空中に跳ぶ!・・ありたったけの魔力を込めて!
「これで決める!はぁぁぁぁぁ!」
絶体零度の冷気をまとわせた必殺の剣がクリーチャーを引き裂く!
「おごぁぁっぁぁぁぁ・・・」
耳障りな断末魔の叫びをあげながらクリーチャーがばらばらになっていく・・、
急激な温度変化に細胞が次々壊死していっているみたいね・・、やった・・
「ふへ〜、終わったわね・・」
「そのようだな、まさか化け物に変態するとはな・・・」
「・・変身じゃないの?」
「・・・同じようなもんだ、痛っ・・・」
「ロカルノ?・・怪我してるじゃない!?」
さっきの爪を受け止めた時の!?鎧まで裂いていたんだ・・・
「なに、大したことない」
「大したことないわけないじゃないの、ほらっ、傷口見せなさい!!」
「なっ!?バカ!鎧を脱がせるな!」
問答無用で鎧を脱がせる・・!あ〜!複雑な作りな鎧!!
「ほらほら、大人しくする!まだ事は終わってないのよ!?」
慌てるロカルノを無視して傷口を見る・・、何よ、結構深手じゃない・・・
「治療するわ、そのままじっとしていて・・!」
「・・・・」

数分後、簡単な治癒魔法と応急処置でとりあえず傷をふさいだ・・
「これでよし、と。とりあえずは大丈夫よ」
「ああっ、すまんな。」
珍しく礼を言っている・・、明日は槍が降るわね・・・
「別に礼はいいわよ、それより書斎に急ぎましょう!!」
「ああっ、わかった」
私とロカルノは書斎を探すため再び走り出した・・


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