第0節 「丸眼鏡の男」


とある村の外れにある酒場・・・
閑散とした店の中に一人の男がテーブルに足を乗せて暇そうにしている。
「ふぁ〜・・、仕事もないしなんだか暇だなぁ」
冒険者クラーク=ユトレヒトが天井を見てそう呟く
小さな丸眼鏡をつけ薄い碧色のロングコートを羽織った格好の彼なのだが腕は確か。
現にここいら一帯では彼が一番腕の立つ冒険者である
「仕事がないんじゃなくて仕事をする気がないんじゃないか?クラーク」
カウンターでグラスを磨いているマスターが無愛想につぶやいた
「仕事〜?今ある仕事って迷子の猫探しや寝たきりのじいさんの介護とかしかないんだろ?
そういうのはちょっと・・・ね」
「一流の冒険者は仕事なんぞ選ばないものさ。
 それにお前、ツケがいくらになっていると思ってるんだ?」
「うっ・・、マスター、ツケの話は勘弁・・」
「金の話はシビアなもんだぞ、もう少し待ってやるが払えなかったら
王国騎士団に突き出してやるからな・・」
マスターが鋭い目つきでクラークに言う。どうやら本気のようだ・・。
「・・・とりあえず何か仕事ある?」

こうした冒険者が集まる酒場にはよく彼等に協力をもとめるため、仕事の話が集まる。
マスターはそれを冒険者に紹介して依頼者から紹介料を取るサイドビジネスもしているのだ

「さっき言ってた猫探しとじいさんの介護はもう他のやつが引き受けたよ。今仕事はないな・・」
「おーまいが・・・」
額に手を当てるクラーク。
「まぁ店の食材切らしているからそいつを買ってきてくれたら多少ツケを引いてやってもいいぞ」
「行かせてもらいます!」
椅子から飛び上がりすでに準備万端!ツケの話には弱い男である・・
「そうか、じゃあ・・(カキカキ)・・これだけかな?夕暮れまでには帰ってこいよ」
「子供扱いするなよ・・、じゃあちょっくら行ってくるぜ」
マスターのメモを受け取ると駆け足で店を飛び出した。

「やれやれ、他の連中はしっかりしてるのになんであいつはああも呑気なのか・・」
そういうとマスターはため息をつき、またグラスを磨き始めた・・

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