終節  「人化の法」


「やれやれ、これであの街も安心だね」
そういいながら紅茶を飲むアル・・
カストロスを少し離れた小さな村。そこに彼らはいた。
亜種リザートを倒して後、しばらくリザートマンの気配を探したがそれらしいものは
なかったのだ
それで一行はどこか別の町を探すということでこの村に着ている・・
「さようですね。後は自衛団がなんとかするでしょう」
・・猟犬姿に戻ったサブノック。
しゃべる犬、肩にぬいぐるみ乗せた優男、棍をもつ女性・・
かなり異色な光景だが店には彼ら以外誰もいなく、店のマスターも
奥で植物をいじっている・・
「そうですね、自衛団も今回のことで魔物に対する警戒が強まったでしょう
後は彼らの正義に任せましょう」
「そうそう、でっ、次はどこに行こうか?」
窓から外を見てアルが呟く、本日も晴天。
所々の家を除けばここも草原の一部分のようだ・・
「また、風のむくまま・・でしょう?あの事の情報もさっぱりですし・・」
呆れ口調のレイブン・・
「そういえばアルさん達はどうして旅をしているんですか?」
紅茶片手に質問するセリア、街を捨てたのに
全然落ちこんでいない
「ああっ、僕達は『人化の法』っていうのを探しているんだ。
まぁ手がかりがま〜〜〜〜〜ったくないから半分諦めかかっているけど・・」
「・・・なるほど、レイブン殿を人にさせようと言うわけですか・・」
「うん、死んだ親友の頼みでね。彼もレイブンを人間にしようとしていたんだ」
「まぁ、あの人が死んでしまった以上、人になる意味も半減してしまいましたから・・・
あまりその事については重視はしてませんよ」
レイブンも諦めモード・・っというか人間になるのは恋人であったアレスのためだったから
無理もない
「『人化の法』・・・・聞いたことがあるかもしれません」
ふぃにサブノックが呟く
「「ええっ!!?」」
驚くアル&セリア
「・・本当ですか・・?」
「噂ですけど・・、ここより東に数日行った山奥に『パンデモニウム』という
神殿があるようです。そこでそのような法が行われている・・と」
「『パンデモニウム』・・・・、地獄の都の名前では?」
レイブンが答える
「さよう、それをもじったのかは小生にはわかりませぬが
天使がそこに住まい、人化を希望するものを待っている・・・そうです」
「・・・・・・・、うさんくさいけど、行ってみる?」
「そうですね、せっかくの情報を無駄にはできません。」
「その山奥には危険な魔物も多数いるようです。行くとするなら気をつけないと
いけませんね」
「なんとかなるんじゃないですか?サブノック様もいるわけだし・・」
正義の悪魔を崇拝するかの如くなセリア、まぁ命の恩人だから当然といえば当然か
「とにかく、行ってみよう。それとセリアさん、残念だけど君とはここで別れようと思う」
「・・えっ?」
目を丸くして驚くセリア・・
「この先は本当に危険なとこだろうしね。女性にはハードだ。
それにこれは僕とレイブンの問題だ。他人に迷惑はかけられないよ」
「そんな・・・」
「でも君にお願いしたいことがあるんだ。ここから海を一つ渡って大陸に
ニース村って森に囲まれた村がある。そこに行ってほしいんだ」
「ニース・・村?」
「うん、僕も以前そこで世話になってね。きっと君の力になってもらえると思うよ。
それに・・できれば自衛団の手伝いもしてほしいんだ。女の子が一人、がんばっていると
思うから・・」
説明しながら以前世話になった自衛団の女マリーのことを思い出す
「・・・、わかりました。でもっ、また・・、会いに来てくださいよ?」
「もちろん、さっさとレイブンを人間にして会いに行くよ」
笑いながらアル、レイブンの人化をまるでおつかいに行くかのような
表現で言う・・
「これがニース村への地図、手紙も書いてるから村長さんに見せればわかってくれると
思うよ。後、サブノック・・」
「セリア殿の護衛・・ですね?」
「・・わかった?」
「十二分に、承知しました。セリア殿は責任をもって守りましょう」
「頼むよ、よしっ!そうと決まれば出発しますか・・・」
勘定を済ませて店を出る・・・・

村の中央通り、
セリアとサブノックはアル達の目的地と正反対の方向を進むことになる
だからここでお別れ・・っということだ
「アルさん、レイブンさん、お世話になりました」
ペコリとおじきするセリア・・
「いやいや、それよりも気をつけて。結構な長旅にあると思うから」
「はい!」
「レイブン殿・・・」
「?、何です?」
「万が一のことも考えてこれを渡しておきましょう」
そういうと突如サブノックの目の前に蒼い宝玉が現れた・・
「・・・これは?」
レイブンにもはじめて見る代物のようだ・・
「再来の輝石・・、一度だけ精神体を具現化できるモノです。
ただ使用した後精神が崩壊することがあるようです。」
「・・つまり、消滅する危険性があるけれど実体になれる石・・ですか」
「・・危険な物だね」
深く済んだ蒼色の玉を見てアルとレイブンが呟く
「これから貴方達の行くところはそういうところです。ではっ、御武運を・・」
「ああっ、サブノック達も気をつけて!!」
そういうとアルは背を向き進みだした・・
しばらくセリアはそれを見ていたがやがて静かに背を向き、ニースへの旅路に着いた・・・・

・・・・・・・・
「『人化の法』・・ですか・・、いまさらながらとは思いますが・・」
「おいおい、当の本人がそんなこと言ってたら僕の苦労が報われないよ・・」
「・・そうですね、ではっ、行ってみましょう・・『パンデモニウム』へ・・・・」
・・・・・・・・

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