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第一話  「異世界の風」


その日、俺はどうにも嫌な予感がしていた

なんというか戦場を経験しているためにそういう野戦の勘ってのは鋭いほうなんだろうと思う

まぁ内容がわからないのに気分が優れないってのは・・あまり得なスキルじゃないよな

そんな状態で問題のある女が来たわけだからまぁこれは何かあると直感した





「それで・・、訳の分からん古い魔導書が出てきたから実験をする・・っと」



大国ハイデルベルクの中でも貿易の名所として名を馳せている都市ルザリア

その片隅のぼろっちい宿に住む華麗な好青年こと俺、クロムウェル

今日はやる事もないのでご〜ろごろしていたのだが下の階に住んでいるアンジェリカが実験をするんだとかで

しばらく出て行ってほしいと言いにきたのでその現場に赴いた

因みに他に客がいるわけでもなく貸し切って住んでいる。

住民もいないので実験なんぞあいつはいつもやっているらしい

・・1階丸まる貸しきっているわけだしな


「ええっ、露天商が売り出していた処を何故だか眼についたのでね・・特殊な魔方陣を作り出すものよ」


部屋一面何もない一室で黒ミニスカ魔女法衣が美味しそうな美女アンジェリカが言う

ここは一階の一番奥の部屋で通称”儀式室”広いスペースと密閉した空間が必要ということで内装は全てとっぱらったらしい。

まぁ何度か使用しているらしくて蝋燭の蝋がいたるところにこびりついている

・・SM部屋みたいだね♪

「何妄想しているの?」

「いやっ、別に・・そんで何の効果があるのかもわからずに発動させるわけか」

いつもながら突拍子もない事をやりだす女だぜ・・

「ページも破れていて全部解読できないみたいなんだけど・・空間転移に関する書物ね」

空間転移ね、確かこいつの前の職場にもそんなのがあったなぁ・・

遥か南の空の向こうの島からここまで一瞬で来れたし

「それで、空間転移するんだったらわざわざ俺が出て行かなくてもいいんじゃないの?」

「言ったでしょう?解読できていないって。詳しいことはわからないし術式に失敗したら
その空間にあるエネルギーは暴走するのよ?」



・・・・・



とどのつまり

「宿ドッカーン?」

「そう」

「んなもんこんな住宅地区の中でやるなや!!」

「1地区丸ごと包み込むような代物でもないわよ。最悪で2階が吹っ飛ぶだけ」

サラッと言った、2階って俺の居城だし!

ってかそういう問題なのか!?

「いやいや!爆発することに問題があるんだろうが!」

「細かい事を気にしないの」

細かい事かい、まったく・・

「まぁいいや・・面白そうだから俺も見学させてもらうぜ」

「貴方が・・?今日はタイムさんの処に行かなくてもいいの?」

「あいつは今日から出張だ。ハイデルベルク全騎士団を招集して合同の訓練を行うんだってよ。」

騎士ってのは日頃担当している地以外に出張ることがないから連携力を強めるために

こうして実力がある奴が年に何度か集まって訓練とかするんだとよ

俺も一応騎士な扱いになるんだけど・・まぁレベルが違うから来るなってバッサリと

・・どうせ堅苦しい儀式だろうから行きたくもないんだけどな

「呑気なお祭りね・・、まぁいいわ。そんじゃ始めましょう」

「何か手伝おうか♪」

「要らないわよ、寸分の狂いもなく描かないといけないから・・ほらっ、隅に座っていなさい」

「・・・へいへい」


どうせそっち系は疎いですよ〜



・・・・・



隅に座りながら10分ほど経過



そういう魔方陣を描くというのは時間がかかるらしい。

アンジェリカさんはズレがないように何度も確認をしている

しゃべりかけると怒るのでジーって彼女を観賞中。

ウェーブかかったオレンジ色の髪は手入れが行き届いておりスラスラしている

まぁ半分は魔法使いが愛用するあの黒いトンガリ型の唾広帽のせいで隠れているんだがな

そしてぴっちりとした漆黒の法衣、飾り気がない分豊満な胸が強調されて卑猥さ満点

おまけが対照的な白い素足を除かせるミニスカート

『魔女は男を誘惑するもの』っといつしか言っていたことがあるんだが〜、・・こりゃ犯罪ですぜ


「・・卑猥な視線を投げかけないでよ」

「そんな格好をしているアンジェリカが悪い(ハァハァ)」

「そこまで発情するのはクロムウェルぐらいね・・よし、これで完成」

軽いため息をつきながらアンジェリカさんが首を回す

白い砂のような物で作られた方陣は実に緻密、三重の円に魔術文字がびっしりとあり

何かの芸術みたいにも見える・・まぁ内容は当然の事ながら不明です

しかし、密閉した空間が必要なのも頷けるな、風吹けば一瞬で崩れ去ってしまう

「発動さえすればどういうものかはわかるんだろう?」

「まぁね、何の準備もないまま飛ばされるのは御免だし・・さて、仕上げるわ」

取り出したのは拳大の透明な宝石・・ってか魔石か

結構な大きさだな

「その大きさの魔石だとかなりの価値じゃないのか?それを触媒にするとか?」

「まぁ間違っていないわ。アルマティの転移装置部屋でもあったでしょう?

空気中の魔素濃度を増やすのよ。・・こうやってね」

軽く上に投げたかと思うと



パァァァァ・・ン



魔石はかすかに音を立てて砕け散りきらきらと粒子状になる

形は見えないが風の刃で砕いたんだろう。

これがこいつの武器『風』の力

「法王」と呼ばれる超一流の魔導師の候補に選ばれるほどの力量を持ち

風圧などをも扱うクレバーウイザードってやつだな

っと魔素解放と同時に魔方陣が淡く輝き出した

ただの白い砂ってわけじゃないらしい

「流石に儀式の手際もいいなぁ・・」

「まぁね、どうやら空間転移に違いないみたいだけど・・行き先不明ね。選択もできないみたい」

魔方陣の中央に立ち床に手をつけながら解読しているアンジェリカさん

「・・なんでわかるんだよ?」

「特殊魔方陣はつまるところ情報の結晶体よ?

魔素に反応して魔方陣が輝き出したのと同時に完成するの

だからこの状態になって初めてどのような効果があるモノなのか完全に把握できるわけ」

「ふぅん〜、よくわからん」

「貴方の頭じゃ無理でしょうね・・とにかく、儀式は中断したほうがいいわね。

リスクが高すぎ・・」




カッ!



!!


魔方陣の光が急激に増している!?

「おい・・まずくないか?」

「・・、暴走?そんなはずは・・」

「ともかく今すぐ中断させろよ!ドッカンはごめんだぜ!?」

強引だが方陣の砂を崩せばなんとかなるか!?

まぁともかく爆発してもいいようにアンジェリカをつれて安全なところへ・・

「いえ・・これは・・自動で発動している!?クロムウェル、こっちにこないで!」

んげっ!?来ちゃまずかった!?

「・・あはは・・人って急に止まれないのね♪」

「馬鹿!・・うっ・・」

「予感的中だな・・こりゃ・・っ!!・・」

瞬間、魔方陣から凄まじい閃光が放たれる

・・・強烈な白の中、俺の意識は気絶するが如くもぎ取られていった




・・・・・・・・・
・・・・・・・・
・・・・・・・
・・・・・・
・・・・・
・・・・
・・・
・・




ほの明るい日差しに当たり俺は次第に意識がはっきりとしてきた・・。

なんというか・・眼を閉じていてもここがあの部屋じゃないのがわかる

何故って?・・風が体に当たっているんだもの・・

爆発したのかどこかに飛ばされたのか、どっちにしてもロクでもない結果には違いないが・・

「っう・・、正解はどこかに飛ばされた・・ですか・・」

半身を起こして周囲を見渡す

俺がいた貿易都市とはかけ離れた光景・・どこかの山脈のど真ん中って感じだ

周囲の木々が生い茂っているが見る限り俺の知っている種じゃない

ん・・おっ、よかった。

すぐそこでアンジェリカがうつぶせになっている

どうやら同じ場所に飛ばされたらしいな

「おい、アンジェリカ。起きろ」

こいつにも外傷はない。ほんとに飛ばされたみたいだな

「ん・・クロム・・ウェル・・」

ゆっくりと起き上がるアンジェリカ、ミニスカゆえ黒い下着が見えているのはご愛嬌


ううむ〜、デリシャス♪


「起きたか?大変なことになっているぞ・・」

「まだ・・フラフラするけど・・大丈夫。ここは・・」

「わからん。俺も目が覚めたばかりだ。見渡す限りの山々・・こりゃ現在地掴むのすら困難だぜ?」

「そうみたいね・・おまけに・・」

周囲を見渡し深く眼を瞑るアンジェリカ、どうしたんだ?

「・・・・おまけに、大気の成分が微妙に違う。ここは私達のいた場所とは根本的に違うのかもしれないわ」

「センセー、全然わかりませ〜ん♪」

「馬鹿、ようはどこか別の大陸に飛ばされたんじゃなくて全く別の世界にきた可能性があるわけよ」

・・遠くにきたってことにゃ違いないだろうが・・

「なるほどな、ともあれジッとしていても仕方ないかな。どうする?」

「人と接触するのが一番だと思うけど・・言葉の問題があるわね」

ああっ、そうか。言語ってのは色々あるからな・・

「ボディランゲッジで何とかなる?」

「・・なら『私はどこからきたのでしょう?』って体で表現できる?」


・・・・、いきなり上級者な問いを!?

・・こう?クイッと・・

気合を込めて・・フォォォォ!!

「腰を振っても理解してもらえないわよ。こうなったら・・


『言霊よ 言語を越えその意志こそ其の声と化せ・・トランスレーション』」


ふと印を切り魔術を詠唱するアンジェリカ・・だが、何も変化はない

「・・何やったん?」

「言葉の問題に関する解決策よ。言葉が通じない相手でも会話ができるようになるわ」

「・・どういうカラクリですか?」

「つまりは魔術で相手の言いたい事を自動的に翻訳して聞こえるわけよ。

私達も同様に言葉を自動翻訳してくれるわ。

相手も同じ人間ならば伝えたいという気持ちがあるでしょう?

それと言葉の配列を自動的に記憶して伝える・・そういう術よ」

「便利なモノだな・・」

「元々は秘境などの原住民との会話を目的に開発された術よ。

もっともかなり高度な物だから扱える術師も極少数なんだけどね

・・まぁ、こんな術がなくても会話ができる事を望むわ」

そりゃな・・面倒なことは御免だし

「ともかく行こうぜ、どこか人のいそうなところを探すんだ」

「わかったわ・・でも・・その前に・・」

んっ?

「ごめんなさい、私のせいでとんでもないことに巻き込まれてしまって・・」

「起こった事はしょうがないさ。まぁ半分は魔方陣に突っ込んだ俺の責任・・なんだろうし」

考えて見たら間抜けだよな・・

「それでも・・」

「じゃあ詫びとして何か考えていろよ。ウジウジしているのはお前らしくないぜ・・ほらっ、シャンとしろ」

「・・まったく・・。貴方って人は・・」

・・ふん、傭兵時代にゃ色々と面倒な事に巻き込まれたもんだからな

たとえ世界隔てて飛ばされたってそうそう動じるかい・・



・・・・・・・・・



山の中で人がいそうなところ・・まぁ探すのは至極困難ですな

こういう場合は何か川があれば探しやすい、下流に集落がある場合が多いってなサバイバル情報があるからだ

しかし、ここら一帯には生憎そんなもんはなさそうだ。

まぁ体力的に山の3,4つ越えるぐらい大したことないんだがアンジェリカはそうはいかない

魔導師が山越えなんてそうそうしないものな

「・・にしても、本当に異世界にきたって感じだな・・」

俺の知らない木の実があるとはな・・、周辺の自然を見る限り唖然とする

これでも食べられる木の実とかの知識は多分にある。

・・それだけじゃない。

かつて食料持ってくるの忘れた姉御が空腹紛らわすために無理やり木の枝をかじることを

命令したことがあるためにその任務中で「利き木の枝」なんて狂気の業を覚えれたほどだ

「アンジェリカ、大丈夫か?」

「・・流石に少し休憩したいところね」

かれこれ1時間以上歩いている。慣れないアンジェリカにはかなり辛いらしいな

冷静装っているが肩で息をしている・・まぁ元々肉体労働は苦手だろうな

「そんじゃ手ごろな場所を探して・・っと、丁度あそこに洞窟があるな。あそこで休むか」

「そうね、そこまでならなんとか持つわ」

「なんならおぶってやろうか?」

「それに乗じてお尻でも触る気でしょう?結構よ」

ばれちゃった♪

まぁいいや。このまま山中で二人っきりになるのなら・・そのまま体を温めあってくれようぞ♪



・・・・・



洞窟内は意外にすっきりとしており涼しい。

どうやら奥が枝分かれになっており下手に入ると迷うことは確実だ

その代わりといっちゃなんだが外の景色は絶景。

こうして覗き上げる景色というのは気持ちがいい

「自然豊かなのは結構だがなぁ・・場所が掴めないことにはこの景色も心の底から楽しめないや」

「それ以前にこの状況で少しでも楽しめる貴方の楽観さに感服するわ」

「悲観的になっちゃあいけないんだよ。それでなければ俺はタイムの私刑に精神崩壊していらぁ・・」

まぁなんというか、我が恋人ながら手加減を知らない。

その反動もまたすごいんだけどな・・

「そういえば・・彼女は事情知らないんだからクロムウェルが消えたらさぞショックよね」

・・待てよ・・

誰も知らない状況で俺とアンジェリカがいなくなった

それって・・

「・・・・・駆け落ちと・・・思われる?」

「・・可能性はあるかもね、彼女の事だから私を指名手配するかも・・」

あり得る!あり得るだが・・

「それは非常にまずい!!!急いで帰らないと!!」

「騒いでも仕方ないわ・・幸い、本は手元にあるから術はもう一度できないこともないけど・・」

「けど!?」

「改良を加えないと元いた場所には戻れないでしょう?それに術の行使には多大なエネルギーが必要。

魔石がここにあればいいんだけど・・まず人との接触がないとね」

・・ううむ・・うまく行きそうで意外に手間だな

とりあえずどうするか・・それに東西南北まるでわからん

ん・・?

なんだ・・洞窟の奥から足音が・・

「・・どうしたの?」

「・・誰か来る・・足音だ」

「足音・・?私には何も聞こえないけど・・」

「俺だからわかるのさ・・これは靴の音だな・・」

徐々にこっちに向かってきている。

俺達の存在に気づいているらしいが・・殺気はない

やがて暗闇の中から人がでてきた

白いローブを纏った女性、美しく長い白髪に緋色の瞳が特徴でまちがいなく美女だが・・

なんだ?この違和感・・

「どちら様でしょうか?」

透きとおり落ち着いた女性の声、とりあえず敵意はないらしい

「・・悪い、旅の者・・になるのかな?道に迷って人がいるところを探しているんだ」

「このような処に・・ですか」

驚いている女性、その様子だと何もないんだな・・ここら・・

にしても彼女の口の動きからしてやっぱ俺達の知らない言語だ。

・・それでもちゃんと通じているのって何だかすごいよな・・

まぁ口の動きと聞こえる声が違うのは少し違和感がある

あれ?声が・・遅れて・・聞こえてくるよ?・・みたいな

「ま、まぁな・・邪魔しているのなら立ち去るよ。最寄りの街を教えてくれないかな?」

「それはかまわないのですが・・、見たところかなり道具なども不足しているようです

そのまま旅をするのは危険を伴うと思うのですが・・」

そりゃそうだ、旅に出る気がなかったんだし。

俺の手持ちっていえばズボンにつっこんだ金貨数枚と愛用のグローブ『崩天』ぐらい

・・アンジェリカは腰にポーチ巻いていたからその中の道具はみたいだけどな

「まぁ、その場合はやむおえず・・ね。」

「・・わかりました。奥にどうぞ・・旅に必要な物ぐらいでしたら用意もできます」

「ほんとか!?いやぁ・・悪いなぁ・・」

「いえ、・・ああ、自己紹介がまだでしたね。

私はイオ。・・スピリットです」

・・スピリット?なんだ・・職業か?

熱血スピリット、スピリット職人とか・・

う〜む・・わからん・・

表立って聞くのもなんだからアンジェリカに目で合図するがどうやらアンジェリカですらわからないらしい

「俺はクロムウェル、クロムウェル=ハットだ。こっちはアンジェリカ=メールキャデラック」

「よろしくお願いするわ、イオさん」

「クロムウェルさんにアンジェリカさんですね。かしこまりました・・どうぞこちらへ・・」

ゆっくりと奥へ招くイオ

・・こんな美女が住んでいるのが洞窟ってなぁ・・

いや、奥には絢爛豪華な洋室でもあると見た!

それにしてもスピリット・・ねぇ・・ほんと、ここってどこなんだ?


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