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番外2  「僕の守るべき者」


ルザリア騎士団寮
街の騎士団に隣接する寮で男性寮、女性寮と別れている・・。
この間の団長豹変事件も収まりを見せいつもの生活が戻ってきたようだ。
「よしっ、それじゃあいってくるか!」
自室で旅支度をしたスクイードが気合い十分に立ちあがる
どうやら仕事ではない様子でラフな旅人姿だ
「やはり行くのか、クラークはツワモノだ。気を引き締めたほうがいい」
「わかってるって!あの変態が勝てなかった男だ、・・・この目で確かめてやる!」
「・・・そんなことで休暇を潰すか、お前も好きだな」
「これも修行だ!じゃあいってくる!!」
意気揚々と出発するスクイード君
やはり以前言われたクロムウェルとシトゥラの言葉にショックを受けたようだ・・
「・・・旅から帰ってきてまた旅か・・。忙しい男だな」
家主に少し苦笑いし、部屋の掃除を始めた・・・







それから数日、スクイードは気合いが失せることなく
タイムに教えてもらった剣聖帝クラークが住む教会へ辿りついた
すでに愛用のハルバート『旋空』を用意しており
気合い十分!
「たのもーーーー!!!」
教会の扉を開けて中にいざ進軍!!
「は〜い」
しかし出てきたのは黒ケープの少女。
祈祷をしていたのか手には聖書らしき本を持っている
「あっ、あのクラークという男に会いたいのだが・・」
「あっ、クラークさんですか。今隣の館でチェスをしてますよ♪」
「チェ、チェスを・・かい?」
「ええっ、またお金を賭けているみたいで真剣ですからあまり
刺激しないほうがいいですよ♪」
「そうか、ありがとう、お嬢さん」
急いで隣に建てられた木造の館へ走る・・
「たのもぉぉぉぉぉ!!」
気合い上乗せで館の扉を叩く・・
「はい・・、おやっ、スクイードさん・・」
出てきたのは着物姿の女性・・、彼にとっては見覚えがある女性だった
「ク、クローディアじゃないか!」
「ご無沙汰で・・」
この二人、以前手合わせをした事があるのだ(月華美人 参照)
「ああっ、確か旅していたんだよね?」
「ええっ、今はここで厄介になっています」
「そうなんだ・・、ああっ、ここにクラークって奴はいるかな?」
「兄上ですね、少し待ってください・・」
静かに奥へ消えるクローディア
「兄上・・・?クローディアの身内だったのか・・」
・・・・・・・
しばらくして奥から出てきたのはやたらと鬱そうな顔の青年・・
長めの茶色髪で目には小さな丸眼鏡をしている・・
動きやすいシャツとズボンだがなぜかシャツには「MY LOVER BY きるけ♪」
と刺繍されている
「兄上、この方です・・」
「・・ああっ・・」
「またロカルノさんに負けたのですか?」
「有り金全部・・、おかしい!!なんでだ!」
「兄上に賭け事は似合いませんよ。この方です」
「お前がクラークか?」
「・・ああっ、そうだよ。なんか用か?」
「僕はルザリア騎士団のスクイード!一つ手合わせ願いたい!!」
「ルザリア騎士団・・?ああっ、タイムさんの処か。よく俺に挑もうとしたもんだな」
「変態に触発されてな!さぁ、いざ!!」
早速ハルバートを構えるスクイード
「変態・・、クロムウェルか。あいつは・・、変に俺の噂を広めて・・・」
「さあ!早く!!」
「わかったわかった。庭で待ってろ・・」
館庭を指差し奥へ消えて行った・・
・・・・・・
・・・・
・・・
・・

庭でウォームアップしクラークを待つスクイード・・
荷物も隅に置きいつでもOKといった様子だ
「おまたせさん。」
ゆっくりと庭に入ってくるクラーク
「・・?おい!得物がないじゃないか?」
「ああっ、これだよ。中々見つからなくってな」
とりだしたのは爪楊枝・・・
「・・・馬鹿にしているのか!!」
「いやっ、これでもお前の身体を心配してるんだけど・・」
「くそっ!甘く見て!!!勝負だ!!」
「熱いな・・、じゃあかかってきなさい」
軽く爪楊枝をつまみ構えるクラーク
「いくぞ!!」
一気に突っ込むスクイード!
ハルバート「旋空」を振りかざし一気に振り下ろす・・!!!
「ふぅん。並よりかは上だな」
呑気にしゃべり避けようともしない

そして・・・


キィン!!!

「・・・・・何!!」
ハルバートを爪楊枝一本で受けとめるクラーク
「気の扱いと魔力を応用すればこのくらいはできるもんだぜ!!」
「うっ、うわ!!」
そのまま少し動いたかと思うとたちまち投げ飛ばされてしまった・・
爪楊枝は亀裂一つ入っていない・・
「達人は得物を選ばない・・・ってな」
「くそっ!もう一回!」
「何回やっても一緒さ。お前には覚悟がない」
「覚悟・・?」
「そっ、戦士ってのは戻るべき場所がある。そこへ戻るがために死力を尽くして戦いにでるわけだ。帰るべき場所に戻る覚悟があるからこそ特攻もできるんだ。お前のはただがむしゃらに
突っ込んでいるにすぎない」
「う・・」
「お前には守るべきものはあるのか?それがない限り俺に勝とうとは思わないことだな」
手をヒラヒラして館へ戻るクラーク
「守るべき・・もの・・」
地面に座りこみ唖然とするスクイード
「お疲れ様です。スクイードさん・・」
そこへやってきたクローディア
「・・・また負けたよ。こんな状態では、君と手合わせ願っても結果は同じだな」
「ですが兄上は貴方に助言してくれました。貴方はまだまだ伸びますよ」
「そうか・・、ありがとう。流石は君のお兄さんだ」
「・・・まぁ兄と言っても義理なんですが・・ね」
「そうなんだ・・」
「でも・・、いっそ赤の他人なら・・私にもあの人を・・」
「・・?クローディア?」
「・・何でもないです。それよりもこれからどうするのですか?」
「帰るよ、ルザリアに。一瞬だったけど良い勉強をさせてもらった」
「そうですか・・。わかりました。では旅のご無事を祈っておきます」
「ありがとう!君もクラークに思いが通じるといいね!」
そういいつつスクイードは吹っ切れたように教会を後にした・・・

「あのスクイードって奴、帰ったのか?」
館の談笑室でくつろいでいるクラークが戻ってきたクローディアに聞く
「ええっ、良い勉強をさせてもらったと言ってました」
「スクイード・・、あの青年か。」
チェスの駒を片付けながら仮面をつけた銀髪男ロカルノが思い出す
「そういやロカルノはタイムさんのところで仕事したんだな?」
「ああっ、別件だったがな・・。何かの縁で世話になった・・」
「ふぅん・・、クロムウェルとも会ったのか?」
「ふっ、かつての部下が気になるのか・・」
「まぁ・・な」
苦笑いしながらクラーク
「安心しろ、タイムにちょっかいだしながら元気にやっているようだ。『ルザリアの恥さらし』とも
一部では言われているらしいな」
「・・・・・・・・・・・」
「大した部下だな?」
「別に世間体気にしないが・・・・、何やってんねん・・・」
かつての部下を懐かしむよりも呆れてしまうのが悲しい現実・・
「ところで・・、セシルさんはどこに行ったのでしょうか?」
「昨日、仕事がないので遊びに行くと言っていたな・・、確か・・・ルザリアだ」
相棒の行動を全て頭に叩き込んでいるロカルノ
何故って?犠牲者を出さないため・・・
「ルザリア・・、スクイードの奴と同じとこか・・。んっ!そういやあいつこの間ルザリアの騎士団に言った時、シトゥラって獣人をやたらと見ていなかったか!?」
「!!・・・まさか、遊びに行くと言ってあいつの目的は・・・!!」
急いで旅支度をし出すロカルノ・・
「町で馬を借りて行って来る!」
そのまま館を飛び出ていった・・・
・・・・・・・・
「・・・・飼い主も大変だな・・」
「・・・そうですね」
「クローディアも男探すなら大人しい奴にしとけよ・・」
「兄上・・・わっ、私は・・・・」
「んっ?どした?」
「・・いえっ、何でもないです」
言いたくても言えない彼女の想い・・、義理ではあるものの兄である彼に抱いた淡い思いを
胸に押しこめ、彼女はいつもの表情で家事を続けに立ち去った・・







一方貿易都市ルザリア
家主が旅に出たので一人自分の夕飯を買いに行くシトゥラ。
自給自足の生活がここにはないことに最初は驚きもしたが、村が発展していくとこうなるものと
学習し今ではそれにも馴染んでいる
「・・ふむ、少し掃除に気をとられすぎていたか・・」
周りは既に暗くなっており店も閉まっているところが多い・・
「最悪、どこかで馳走になろうか・・・。」
こうした事にはあまり深く考えない性格なため開いている店を探しながらブラブラする
シトゥラ・・
しかし・・
「・・・・私に何か用か?右斜め後方に隠れる女」
不意に立ち止まり振り向きもせずに言う・・
「わかっていたの・・」
建物の隙間から音もなくでてきたのは腰まで届きそうな長い金髪の女性・・セシル
「気配を消そうが違和感は残る。・・この程度ならな」
「やれやれ、獣人ってのはこうも勘が鋭いのが難儀なのよね〜」
「もう一度言う、私に何の用だ?」
「用って・・・、こういうことよ!!」
「!!」
いきなり腰の剣を地面に刺す・・っと
同時にシトゥラの足が氷で覆われる
「これで動けないでしょう・・?」
「・・ふっ、氷山育ちを甘くみないでもらいたいな!」
腰から取り出した二本の獣骨剣で氷の一点を突き刺す!
・・っと同時に氷は見事に粉砕しシトゥラの足を解放する・・
「・・・私の氷が・・?」
「氷の崩す点を私はわきまえている。私を捕らえようとは思わないことだ・・」
「・・・ふふふ・・・面白いじゃない!全力で楽しませてもらうわ!!!」
そういうと一気にディフェンダーを振りかざり突っ込んでくるセシル!
「!・・・早いな」
突っ込むと同時に後方にバックステップで間合いを外すシトゥラ・・
「あらっ、間合い外しても!!」
間合いが外れてもそのまま氷の矢を放つ!
「甘い!」
それを両手に持つ獣骨剣で巧みに捌く
「・・ちっ!せっかくの上玉を!!」
「上玉・・?スクイードが言っていた獣人狩りという奴か・・。ならば手加減はしない」
今度がシトゥラが突進!
低姿勢で突っ込む形でセシルに襲いかかる
「!!ちっ・・!」

素早い連撃に防戦一方になるセシル・・
対し止めの一撃を加えられないことに驚きつつも冷静に相手を攻めるシトゥラ・・
そこへ・・

キィン!

渾身の一撃に大きく仰け反ったセシル・・、なんとか得物は手放さずにいる
「・・・全く・・、手強いわね!」
「これでも負けるわけにはいかないのでな・・、覚悟!」
体勢を崩すセシルに止めを刺す!

ドス!

もろ肩に獣骨剣が突き刺さる・・だが・・
「この感触・・、氷?」
突き刺さったと同時に氷と化したセシルが崩れていった・・
「もらった!!」
背後から声がしたと同時にシトゥラの手から獣骨剣が跳ね飛ばされる・・
「・・くっ!不覚・・」
得物を弾かれて手が痺れるシトゥラ、すぐに格闘は無理そうだ
「迂闊だったわね・・、では・・いただきます!!!」
丸腰のシトゥラに飛びかかるセシル・・、彼女はそれでも構えて戦おうとする・・
しかし


グイ!!

「ぐえ!!」
不意にセシルの襟を掴む男・・
「・・・お前は・・・・」
「ロ、ロカルノ・・、態々ルザリアに何か用なの?」
「お前の事だ。以前見かけたシトゥラを襲うと思ってな・・・」
荒い息のロカルノ・・、早馬でここまで駆け、相方を必死で探したようだ・・
「ロカルノ・・、確かこの間騎士団にきた仮面の男か」
どうやら敵ではなさそうと感じ警戒を解くシトゥラ
「覚えてもらって光栄だ。すまないな、こいつが変な気を起こして」
「獣人狩りとは関心できんがな」
「獣人狩り〜?何いってるのよ?私はただ可愛い獣人っ子とイイ事したいだけよ♪」
そっちはそっちで危ないのだが・・
「そうなのか・・?ならなぜいきなり襲いかかる・・?」
「だってみんな始めはいやがるんですもの〜、貴方もそうでしょ?」
「私は別に構わないぞ?」
「「・・えっ?」」
思わぬシトゥラの発言に唖然とするカップル・・
「私の一族では女が少女に交わり方を教えるんだ。そんなことは日常茶飯事だ」
ものすごい掟の一族の生活・・・
「じゃ・・・じゃあ今からでもどう♪」
「まっ、構わないが・・。相方がそうも言わないだろう?」
「そうだ、お前はこれから帰ってお仕置きだな・・・」
襟元を引っ張りセシルを連れて行くロカルノ
「いや〜ん・・、シトゥラ!覚えてなさいよ!今度この町に来た時にぃぃぃぃ・・・・」
麻袋に詰め込まれじたばた暴れる
「ではっ、失礼・・。」
馬に乗り静かに立ち去るロカルノをシトゥラは静かに見ていた
「・・・・・変わった奴らだ・・・」
苦笑しながらその場を去るシトゥラ・・。
戦場と化した一帯は
戦いによる氷の粒が宙に舞っていた・・





「ただいま〜、帰ったよ?」
「戻ったか・・、どうだったんだ?」
「負けた・・惨敗だったよ・・。だが良い勉強させてもらった」
「そうか、ならばがんばって訓練をしないとな」
「そうだな、あいつらに勝てるようこれからも頼むよ、シトゥラ」
「・・ふっ、任せておけ」
微笑ましい会話とともに今日も彼は奇妙な同居人と暮す・・。
「あのさ・・、シトゥラ・・」
「んっ?」
「俺は・・、君を守れる人間になりたい・・」
「・・・何か学んだようだな。だがそうなるには私より強くならなければならないぞ?」
「・・ああっ!あの変態を倒し、君より強くなってやるさ」
「ふっ、そうだな。お前ならできる。・・その時を楽しみにしておこう」
華やかな会話ではないがその中に少しずつ暖かいものが芽生えていこうとしていた




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