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「死屍」前編


「な〜、トゥクルって頑丈なんだぜ?乗ったらどうだ?」
「・・・・・」
「トゥクルも心配しているぜ、なぁ」
「・・・・・」

荒野を越え街道に出た一組みの男女+馬
その光景に周りを歩く旅人も唖然としている、
何故なら男性が乗っているのは世にも珍しい赤毛の馬、
それもかなりの立派な体躯で名馬だということが一目でわかる
男性は軽装の革製鎧を身に纏っており長めの金髪が特徴、
見た目はそれこそ騎士か貴族なのだが装備のレベルも正しく傭兵
そして一番注目を引くのが女性、長い灰色が特徴で眼には生気が篭っていない・・
着ている物は質素な町娘風だが人形のような女性にはどこか似合っていない
そして右手に握られたブロードソード、剣身を剥き出しにしてそれを引きずっており
彼女が歩いた後には延々と引きずった形跡が残っている
「まったくタフだよな、寝ず食わずで延々歩いているんだからさ」
男性の名はホクト、大草原の戦士にして流浪の傭兵
「・・・・」
女性の名はアンシャル、経歴が謎に包まれた美しい女性で人を喰らう剣「アポカリプス」を
肌身離さず持っている・・死人
ひょんなことからアンシャルに同行したホクトでありあてのない旅路を今日も進んでいる
「しかし・・、やっぱさ、剣は鞘に収めているもんだぜ?そのままだと・・」
「・・・・駄目」
「服着替えるのはよかってもか?」
以前はボロボロの服だったのだがそれでは可哀相とホクトが
道中の服屋にてアンシャルに買ってやったのだ。
ただアンシャルは全く興味なしだったのでなんだかホクトが女性服の収集をしてるように見え
店員にも白い目で見られたとか。
故にアンシャルの今の町娘の格好は男が選んだ物だけに
どこか違和感が残る代物となっている
「・・・・むやみに触ると・・喰われる・・」
「・・おおっ、怖っ」
「・・・」
「でもさ、次はちょっとでかい国に入るからさ。少し滞在したいんだ」
「・・・・・何故?」
一向に振り向かずにしゃべるアンシャル、
普通の人間なら失礼もいいところで怒りだすものだが彼は変わり者だった
「いつまでもあてのない旅をしていたらあんたも疲れるだろう?
復讐の相手の目星をつけようと思ってさ」
「・・・・・」
「なっ?今度行くヴィガルドじゃなくても希望都市のシウォングもある。
希望ってくらいだからきっと手がかりもあると思うぜ」
「・・・・・(コク)」
無言で頷くアンシャル、放っておくと一人ズルズル先に進むだけに
こうした事前の話は必要不可欠だったりする
ともあれ、奇妙な男女は王国領へと続く道を進み続けた


王都ヴィガルド
現在彼らがいるエリアでは屈指の栄えを見せる王国ヴィガルドの都
栄があれば当然人が入り混じる、人が入り混じればそれにより噂などの情報も当然・・
色々な情報を求めるには最適とも言えるが・・
「・・・・・・」
「・・・(ペロペロ)」
大きな通りに面した場所に『冒険』の看板の店の前でアンシャルとトゥクルは静かに待機
空ろなアンシャルの頬を舐めるトゥクル、
それが微笑ましく見えるがどこかまともでないので周りの人間は振り返りそれを見ていたり

「・・やぁれやれ!トゥクル!もうちょっと待ってくれ!意外にかかりそうな感じだ!」

一瞬店の扉から顔を出したホクトだがすぐに中に入った、大都市ならば情報量も多く
調べるのにも時間がかかるらしい
そんなホクトの方をちらりとトゥクルは見つめたがまたアンシャルと顔を舐めだした
すでにアンシャルの顔が唾液でベトベトなのだが一向に気にしない。
だが・・
「・・(ピク)」
ふと何かに反応するアンシャル、ゆっくりと向いた方向には・・

「お許しください!この子がうっかりして・・!」
「ああん?許すだぁ?俺のズボンを濡らしておいてなんだその態度はぁ!」
母親らしき女性が娘をかばいそれにつっかかるコワモテなヤクザ
どこにでも馬鹿はいるものでどうやら娘が持っていた飲み物が
うっかりヤクザのズボンにかかったらしくそれで難癖をつけているようだ
「お・・お許しを・・」
「駄目だ!このズボンは高いぜぇ?
てめぇ見たいな貧乏臭い女は身体で稼がなきゃ払えねぇなぁ!」
「ひっ・・」
「そういう事だ!こいよ!」
無理やり女性の腕を掴むヤクザ、
それに娘は必死にヤクザの膝にしがみつき行かさないようにがんばっている・・
「邪魔だ!ガキ!」

バキ!

うっとうしそうに娘を蹴り飛ばすヤクザ・・もはややりたい放題
「ああっ!?何するんですか!だ・・誰か!」
「はっ!うるせぇんだよ・・・・・ああ?」
「・・・・」
不意にゆっくり近づく女性・・アンシャル、無言のままヤクザを見ている
「なんだぁ?守護騎士気取りか?俺は連中なんざ怖くねぇぜ!」
「・・・貴方を・・捧げる」
「!?」
息巻くヤクザの首が瞬時に消滅する、
見ればアンシャルの剣「アポカリプス」が不気味な生物のように変化している
「・・きゃ・・・きゃあああああああ!!」
唖然とする女性だったが首なし死体に腕を掴まれていることに絶叫をし、
周りの見物も口々に恐れの声を出している
対しアンシャルはま〜ったく動じず元いた冒険の酒場前に歩いていく
ちょうどその時に叫びに反応したホクトが飛び出てきて
「アンシャル!・・やっちゃった!?」
瞬時に状況を把握してやっちまったよ・・な顔、
彼女は悪人しか殺さないのだが事情を知らない
一般人には正しく白昼の殺人鬼登場。
不審人物は守護騎士までご一報ということで近くにいた騎士達があっと言う間に彼らを包囲する
「貴様らが殺しを働いた者か!」
凛々しき騎士の言葉、ホクトも争う気もなく手を上げる
「・・話せばわかる・・って職種じゃねぇか・・は・・・ははは」
「・・・・」
「ともあれ神妙にしろ!連行するぞ!」
そう言うと槍を突きつけられた状態で囲まれるホクトとアンシャル
しかしアンシャルの剣を押収しようとする騎士を見て・・
「待て!言う通りにするがその子の剣には触るな!!」
「はぁ?容疑者の凶器を押収するのは当然だろう?」
「そいつの武器はまともじゃねぇ!触れると喰らわれるぞ!」
「・・はははっ、面白いな。お前、剣は斬るもんだ。喰うもんじゃない」
完全に信じない騎士、まぁ普通の対応ならば当然なのだが
「だぁ!信じないのはわかるが周りの連中に聞いてみろ!
こいつの剣が変化したはずだ!」
必死なホクトの言葉に騎士も頭を軽く掻き惨状を見ていた者達に尋問をする
・・結果・・
「・・・どうやら物騒なものらしいな、そんなものを王都に持ち込んでどうするか
・・駐屯地でしっかり聞かせてもらうぞ」
信じてもらえたけれども・・良い方向に行ったとも思えない状況・・
それにホクトは軽くため息をつき
「・・あんたらが信じれば・・な」
っと呟いた

・・・・・・・・・・・

連行された先は王都守護騎士団駐屯地。 
とんでもないところに連れられたものと思いつつもホクト一人が奥へと連れられる
トゥクルは思ったよりも丁重に繋がれアンシャルは何を聞いても返答がないので
先に牢獄へ行きなさい・・っと
一番話のわかる人物がさらに連れられたのは執務室
部屋前に来てホクトが驚く
「・・なぁ、こうした事の説明って尋問用の部屋とかあるんじゃねぇか?執務室って」
「いいから入れ・・」
衛兵二人が問答無用で中に入らせる
「団長!先ほど街で発生した殺人事件の重要参考人を連行しました!」
衛兵の一人が敬礼しながら報告、その相手は机の上の書類にペンを走らせる老騎士。
老いてはいるが放つ気迫は正しく闘士、
ダンディなおじ様な容姿も団長という地位に良くあっている
「ご苦労、質問は私がする。下がりたまえ」
「「はっ!!」」
衛兵は敬礼をし出て行く・・
特に拘束もされず得物を携帯しているホクトは首をかしげる
「なぁ・・あんた、武装した凶悪犯罪者がいるのに衛兵はなしかよ?」
「何っ、君が連れられる前に情報は仕入れた。
何でもゴロツキに襲われる親子を助けるために牢にいる女性が割って入ったのだろう?
非は向こうにあったとはいえ殺しは感心できんがね」
老騎士は余裕の表情、それにホクトも頭を掻く
「そりゃ俺も殺しが良いとは思えないけどさ、
あの子にそれを言うには無理があるというか・・」
「・・どうやら訳ありのようだな。よかったら話してくれないかね?
・・私は守護騎士団長オーディスだ」
「・・俺はこの地より遥か離れた草原の戦士ホクト=ファクだ。
そしてそのゴロツキとやらを仕留めたあの子はアンシャル・・
どこの人間かは俺にもわかんね」
「・・ほう・・、ではそのアンシャル嬢について教えてくれないか?」
「ああ・・信じる信じないはともかく、いきさつを説明しようか・・」
どこから話そうか・・っと思いつつも自然と口が動きオーディスに事態を説明しだした

・・・・・・
・・・・・・

「人を喰らう剣『アポカリプス』・・か、私も初めて聞くな」
ホクトの説明を素直に信じるオーディス、その対応にホクトも感心した
「そっか、あんたらのところでも知らないか・・」
「死者を動かす剣からしてまともな世界の産物ではなかろう。」
「だろうな、まぁ他にも手がかりといえば・・」
思い出したように懐から何を取り出すホクト、それは小さなロザリオ。
それも通常の代物とは違う天使の羽のような形状をしている
「ほう・・これは・・」
「彼女の服を着せ替える時に身に付けていたんだ
少なくとも俺はこんな形のロザリオを見た事はない・・んだけど俺、宗教事に疎いからな・・」
「・・ふむっ、私もわかりかねるが・・彼女に聞けばわかるかもしれないな・・」
「彼女?」
「・・ふっ、まぁ私の知り合いだ。
連絡をつけておく・・悪いが今日は牢獄で一夜を過ごしてくれ」
「あ・・ああ、でもあんた・・何で俺達に協力してくれるんだ?」
「さてな、悪党を葬った礼か・・まぁなんともなしだ」
食えないオーディスの表情にホクトも苦笑いするしかなく・・
「・・ありがとよ、団長さん。」
「・・待て、確認しておきたい。君はあの子をどうするつもりだ?」
「・・・・・」
「すでに身体は死に心も枯れ果てた女性だ。
・・彼女の素性がわかれどもどうにもできんのではないのかね?」
「・・・、だからと言って何もしないのは御免だ。
どんな結末になるかわからないが・・俺は彼女を救いたい」
ジッとオーディスの眼を見つめるホクト
「・・・・・」
「・・・・・」
沈黙が執務室を流れる・・がオーディスがフッと微笑み
「良い顔だ。君に何ができるか・・私も見させてもらおう」
「ほんと物好きだな、団長さんよ」
「抜かせ」
ニヤリと笑いながらホクトが出て行き、
一人きりとなったオーディスは一通の手紙を書き始めた

・・・・・・
・・・・・・

翌日、結局アンシャルとは別の牢屋にて一夜を過ごしこそしたがあっさりと釈放・・
衛兵を通じて神殿へ向かえと言われたのを機に後は全く相手にせず
「なんというか・・型破りな連中だな。
騎士団なんて規則の固まりかと思っていたんだが・・」
駐屯地先で建物を振り返りながら頭を掻くホクト、
牢屋にこそいたのだが結構食事も良い物を配給されていたり。
まぁ隣を歩くアンシャルは当然食べなかったのだが
「・・?なんだトゥクル、・・干草がうまかった?・・そこまで世話していたのかよ」
トゥクルもなんだか機嫌が良くホクトを乗せて朝の街を歩く。
目標は王都内にある神殿、それもかなりの大きさで朝だというのに女性神官がきびきび動いていた
「・・あ〜、こっちはこっちで俺が苦手な空気っぽいな」
敷地から見える光景はまるで別世界、規則正しき聖人な習慣が行われている
やがてその中で神官が数名ホクト達に気付きこちらにやってきた
「何用か?」
「あ・・いや、ここの騎士達に神殿に向かえって言われてさ。・・ホクトってもんだけど、
何か連絡があった?」
「・・ホクト殿、ですね。どうぞこちらへ・・」
途端に態度を変える女性神官達、それだけの連絡が行き届いていたらしくトゥクルを預け
神殿内に連れられた
・・・・・
「うおっ!すげっ!床が反射しているよ」
神殿内の廊下、ピカピカに磨かれているだけに天上が写っている・・それにホクトは大いに驚く
「・・・、そんなに珍しいことでしょうか?」
そんな光景に案内をする女性神官も怪訝な顔つき・・
思えば今朝方急に大事な客を案内しろと言われた時から普通の客ではないとは
直感していた彼女なのだが赤い馬に奇妙な女、
そして田舎臭いわりに貴族顔の傭兵ときた
どんな用事なのかは彼女にとっても気になる様子だ
「ああっ、すまね。こんな徳の高い場所は産まれてこの方ないもんだからな。」
「は・・はぁ。神への祈りも行わないのですか」
「・・んにゃ、俺達の神は母なる大地、そして父なる天空。
それだけだからな・・狩りや獲物を殺した時に冥福を祈るための祈りは腐るほどやったぜ
・・っとだからと言ってあんた達の信仰を
否定するわけじゃないから・・」
宗教に関わる揉め事などはどの世界でもよくあることで
ホクトも旅先でそのような事態を何度となく見てきた
・・それ故に面倒なことにならないようにすぐに謝罪をする
「いえ・・、こちらです」
通されたのは礼拝堂を越えた先にある小部屋、
小さな祭壇が置かれ軽いテーブルがあり
神官達の休憩所のような造りになっている
そしてその中、祈りを捧げていた初老の女性
・・っと思われるだが年齢が全くわからず不思議な雰囲気を出している
「あらあら、貴方がオーディスの言っていたナントさんね」
「ホクトです。」
天然系な女性にホクトも圧され気味・・
「フェフ様、案内を致しましたので私はこれで」
「はい、ごくろうさま」
微笑みながら神官をねぎらうフェフと呼ばれた女性、
感じからしてかなり身位の高い人のようだが全然そんな感じがしなく
「あっ、適当につくろいで」
「は・・はぁ」
テーブルに招きだす、完全にペースを握られたような感じにホクトは言うがままに・・
「さて・・私はフェフと言います。オーディスから話は聞いていますけど・・
そこの彼女を救いたいのですね?」
「ええ・・、手がかりをこの子に聞こうにも応えないので・・。
手がかりは人を喰う剣『アポカリプス』と彼女がつけていたこのロザリオだけです」
昨日オーディスに見せたロザリオをフェフに渡す・・、
それを見たフェフは首をかしげ
「あらあら〜、珍しい物ねぇ・・」
「・・わかりますか?」
鑑定・・っと言うよりかはチラチラと軽く見るフェフにホクトもあまり期待せずにいたのだが
「『パルマゼウスのロザリオ』」
「・・パ・・パル?」
「うう〜ん・・っと、パルマゼウスっていうのは
ヴィガルドを出て北に進んだところにある遺跡の名前よ」
「・・その遺跡が・・どうしたんです?」
「そこから発掘された巨人像がこの形のロザリオを持っていた・・んだったかしらね?たぶん」
「・・たぶんって・・」
「この歳になるとすんなり思い出すのも難しいのかしらねぇ」
「・・(・・・その割にはすぐに遺跡名が出たじゃん)」
そう突っ込みたいホクトだがこの聖母にはどこか接しにくいところがある
元々傭兵生活が長い彼だけにこうした場所自体が苦手、そして目の前の女性に対しては
何ともなしにどう接していいのかわからず敬語まで使う始末
「・・そんなに堅くならなくてもいいですよ?ホクト君」
「うえっ!?あ・・ああ・・すいません・・」
微笑むフェフに心の内を見透かされたようで慌てるホクトだったり・・
「だけど、そのパルマゼウスのロザリオ・・ですか?
これを何故アンシャルが・・」
「ううん・・、そこまではわからないですが・・
当時は遺跡発掘のために小さな町が出来ていましたからね。
採掘者達はその巨人像の秘密を探り富を得たそうです、
そしてきっかけとなった巨人のロザリオを町の象徴としても掲げていたようです」
「・・でも、それじゃその遺跡の町が出所として手がかりともなりにくいですね・・」
「いいえ、ロザリオは聖具。
そんなアクセサリーのような使い方をするのは不謹慎と神殿から大反発を招いていましたからね、
その町以外には殆ど出回らなかったようです」
「では・・その町が目的地・・」
隣で座るアンシェルを見る、いつも通りの生気のない顔だが身体は少し震えている
「・・、反応を示している・・?フェフさん、その町の詳しい位置は!?」
「地図を渡しましょう・・ですがもう町は存在しませんよ」
「ええっ!!?」
持ち上げるだけ持ち上げておいてそりゃないよ〜っと肩を落とすホクト
それにフェフは微笑みながらも
「ある日を境にゴーストタウンと化しました、
何があったかはわからずヴィガルド内でも
立ち入りの禁止されている危険区域にも指定されています。
・・が、彼女やその話を聞く限りつながりはあるようですね」
「なるほど・・、ではそこで手がかりはある・・っと思っていいか・・」
「ですが危険です、それでも貴方は行くと言うのですか?」
会ってから初めて真剣な口調になるフェフ、その眼差しは全てを見抜くが如く
しかしホクトは臆せず
「ええっ、行きます」
「・・・・、そうですか」
「団長さんにも言われたんですがね、彼女を救ってやりたいと思って・・」
「・・ふふっ、真っ直ぐな方ですね。がんばりなさい、
何事にも動じず自分を貫けば・・奇跡は起きますよ」
そう言うと静かに席を立ち本棚にあった小さな地図をホクトに渡す・・
「はははっ、貴方が言うとそれらしく聞こえますね。では・・失礼します」
一礼して出て行くホクト、アンシャルもそれに続きフラフラと部屋を出て行った
「・・・さて、貴方の進む道に待ち受けるのは神の微笑みか悪魔の冷笑か・・
がんばるのですよ」
一人残ったフェフはわが道を行く青年のために静かに祈りを始めた

・・・・・・・
・・・・・・・


数日後
ヴィガルド領の北端にある山脈、
交通路はもはやかつて使用していた山道と思われる草まみれの道のみ
街道から大きく外れ人を連想する物が全くなくなるほど
山奥へと入っていきもはや自然の支配下となっている
街道から外れることもう幾つ目かの山頂に辿り着いた時
ついに目的と思われる町が遥か眼下の谷間に見えた
「・・おいおい、これじゃ秘境じゃねぇか」
地図通りに目標の町が見えたが良くこんな所記した地図があったと
そっちのほうが感心するホクト
山に入ってもう数日経ち冒険者でもそろそろ気が滅入ってくるのが普通なのだが
彼の場合は自然と慣れ親しんでいるために一向に平気であったり
「・・・あ・・・ああ・・」
隣で町を見下ろすアンシャルがかすかにうめく
「・・・、見覚えがあるのか?」
「・・・・・」

ズズ・・ズズ・・

ホクトの問いかけに応えず先を行くアンシェル、
いつもの超マイペースとは違い幾分早く歩いている
「・・・当たりか、人喰い剣と死人・・そして滅んだ町か・・トゥクル、気をつけろよ」
愛馬に声をかけゆっくりと山を降り始めるホクト
その山を降りれば滅んだ町はもうすぐそこだった

・・・・・・

獣道を降り町であった中に入る二人と一匹・・、
しかしフェフが言った通りのゴーストタウンが広がり異様な空気を出している
山を幾つも越え秘境とも思われる個所にある町故そう感じるのかもしれないが
「・・・・、人が住まなくなれば自然が再び支配し地から草が生えてくる・・だが・・」
町の建造物は全くのそのまま・・、
木造の家などは朽ちる事なる今でも人が住んでいそうなくらいだ
話やかつて使用していた道のありさまから考えてかなり年月が経っているはずなのだが
そんな事を忘れさせるほどだ
「・・・?トゥクル・・怯えている?」
町に入ってからトゥクルがどこかしら警戒しているところを見ると
何かあることは間違いなさそででホクトも腰に下げたクックリ刀に手をかけている
だが
「・・・・あ・・・・」
しばし呆然としていたアンシャルだったが突如走り出す
「あ・・おい!」
今まで見せた事のない動きにホクトも戸惑いながら彼女の後に続いた
「・・・・・」
彼女が立ち止まったのは町中の小さな家、
周りに同じような家があるなかで迷う事なくそこに辿り着いた
「・・・アンシャル、ここに見覚えがあるのか?」
「・・・・私・・・ここに・・・いた」
「大当たり・・か。ここで何があったかわかるか?」
「・・・・わから・・ない・・」
呟きながら家の中に入るアンシャル、ホクトも戸惑いながらも中に入っていく
・・・・・
屋内も全くの異常がなくそこが異常に思えるくらい・・そう、ベットも机も何も変わっていない
どれも質素な物で女性が住んでいたとは連想しにくい・・が
「・・・・」
机の前に立ち止まりアンシャルは静かに机の上に置いてある水晶を取り出した
「・・何だ、記憶球・・?」
それは透明な水晶に映像を刷り込ませる画像の保存法・・、
魔力に反応して画像が浮き上がるもので昔より裕福な貴族が愛用してきた物だ
ただアンシャルが触れても反応しないのでホクトが変わりに持って映像を映し出す
「・・・!」
「・・これは」
移されたのは一組の男女、何やらゴロゴロした岩の前で撮ったらしい。
一人は青く長い髪の美男子、一人は黒くスラッとした流髪の女性。
二人とも同じ薄茶色の動きやすい服装を着ている
・・そして女性は・・
「・・アンシャル!?」
髪の色こそ変わっているがまぎれもなくアンシャル、満面の笑みを浮かべ男性に抱きついている
「おい、これ・・お前だよな!?」
記憶球の映像をアンシャルに見せる・・アンシャルは生気のない目を大きく見開き・・
「・・あ・・・・あああああああああ!!!」

バシュ!!

突如叫んだかと思えばアポカリプスが生物のようになり剣身が幾つもの棘のように
いたるところを突き刺していく!
「うわっ!・・落ち着け!!」
棘はホクトにも襲い掛かるが咄嗟に手に持つ剣で何とか捌く・・!
それでも棘は執拗にホクトに襲い掛かる!
「アンシャル!落ち着け!!」
まるで動く物を全て殺そうとするアポカリプスを掻い潜りホクトはアンシャルに抱きついた・・
「あ・・・・あ・・・・」
「大丈夫か?・・おい」
「・・・・・ごめん・・な・・さい」
ホクトの胸の中でアンシャルは我に返ったようでアポカリプスは元の形へと戻っていく・・
「何か思い出したのか?」
「・・・・・私は・・ここで・・遺跡の発掘をして・・いた」
「映像通りか、それで・・」
「遺跡から・・目覚めさせては・・いけない物を・・・私は・・反対したけど・・・彼が・・」
アンシャルが口早に話出した、必死の声にホクトも息を飲む
「彼・・この映像に写る男か・・」
「・・・・その・・夜に・・・突如・・わ・・私・・を・・」
「もういい、止めろ」
「誰かが・・・私の・・胸に・・剣を・・あ・・・ああああ!!」
「止めろ!!」
アンシャルを強く抱きしめ無理やり話すのを止めさせる
「・・・・あ・・・」
「わかったから・・もうしゃべらなくていい。・・つらいだろう?自分が殺される瞬間を話すなんて」
「・・・・・」
生気のない瞳から涙が伝い、アンシャルは無言のまま静かに頷いた
「・・・じゃあこの遺跡に行こう。そこに何かあるはずだ」
「・・・危険・・行くなら・・私・・が・」
「ここまで来て帰れってのか?安心しろ、自分の世話は自分でできる」
「・・・・・」
「さぁ、いくぞ」
「・・ありが・・とう」
静かに礼を言いホクトの後に続くアンシャル、
ホクトはそんな彼女の頭を軽く叩きつつも記憶球に写る男の事を考えていた

・・・・・・・・


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