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「聖魔VS妾龍」おまけ2
「留学死亡遊戯」


希望都市シウォング
ハイデルベルクから遠く離れた山間にある円形都市。
諸国を修行していたタナトスでさえ訪れていなかった処だ。
その栄えには彼も呆然と
「・・何ボゥっとしているんだよ?」
都市の大通りからのらりくらり歩く女性イリアが呆れている。
「え・・ああっ、すごいところと思って・・」
「・・まぁニースみたいな田舎じゃそうも見えるだろうが・・大げさだぜ?」
「いやっ、でも獣人と人がこうも一緒にいるのも・・」
彼が唖然とするのも当然、獣人の地位というのはこの世界では低く
人間と共存する種族というのは、人以下として差別されるところも多い
実際諸国を渡り歩いた時に彼はその現状を見てきた故にこのような光景には驚きを隠せない。
「何だお前、差別者か?」
「いえっ、ただそんな光景を良く見てきたので・・」
「ふぅん、いっぱしに世の中を見て渡ってきているわけか」
大して興味がなさそうなイリア・・まぁ実際興味がないのだが・・
「ですが・・留学と言っても・・何か指導してくれるんですかね?」
「んん〜、まぁそんなもんだな。楽しみにしておいてくれや」
ニコリと笑うイリアだが何だか怖かったり・・
それ以上詳しく聞くのも何なので会話が続かないまま都市を抜けた。
・・彼女達の居城は都市の外れにあると道中聞いたのでタナトスはあまり気にも留めない。
因みに道中二人の会話は簡単なもので、イリアのみが暢気に鼻歌っていることが多かった。
イリアは特に気にしていないのだがタナトスにしてみれば二人きりの旅というのは
刺激が多すぎるらしい。
紳士的に接する事を信条にしている青年には少々酷な状態だったり・・

・・・・・

黙り歩くこと小一時間、のっぺりした平野の先に質実剛健な屋敷が見えてきた。
「・・あれか、一国の王が住んでいるわりには・・随分・・」
「城でもあるとおもったか?」
「まぁ王の住処の定番ですからね。」
「・・まぁここの場合は機能性を重視しているわけだ。それに柄じゃないんだよな、
あいつには・・」
面白く笑うイリア・・まるで自分の事を笑っているかのようで
タナトスは首をかしげる。
「???・・あっ、犬だ」
玄関先で芝生を転げまわっている銀毛な犬・・なにやら遊んでいるようだ。
「ようルナ、今日は一人か?」
「ワン♪ワンワン♪」
イリアに気付き元気に吼えるワンコ、人懐っこく尻尾をふっている。
「ああ、ただいま♪」
「ワン〜♪」
まるで会話をしているようなイリアとワンコ。その光景がタナトスにとってはかなりホノボノに見える。
「へぇ・・人懐っこい犬ですね・・」
ルナを撫でようとするタナトス・・しかし『犬』というキーワードを聞いた途端にルナの眉間に皺が・・
「グルルルルルル・・!!!」
「え・・?」
「ガウッ!!!」
いきなり襲い掛かるルナ! 訳もわからずタナトスは飛びのき何とかそれを回避するも執拗にルナは噛み付いてくる。
「うわわっ!番犬なのか!!」
「ガウ!!ガウガウ!!」
歯をガチガチとならし怒り心頭なワンコ・・
必死に逃げるものの結局はタナトス君全身に歯型がつきブラックアウト・・

・・・・・・

しばらく野原に寝転んでいたタナトスだが・・
「・・・大丈夫ですか?」
ふと視界にスーツ姿の女性が・・
「・・え?」
「大丈夫ですか?ルナが随分とオイタをしたようですが・・」
黒い団子髪に眼鏡をかけた大人の女性・・秘書風で落ち着きのある空気を放っている。
「あ・・いえっ、俺が勝手にあのワンコを・・触ろうとしたので・・。あつつつ・・」
何とか起き上がるタナトス、しかし周りにイリアの姿はない。
「・・・、イリアさん?」
「・・・・・、ライより話は聞いています。こちらへ・・」
「あ・・あの、貴方達の家族であるイリアさんと一緒に来たんですが・・先に入ったのですか?」
「・・・こちらへ・・」
私に聞くな・・っと言ったところか。
これ以上聞けないのでタナトスは言う通り静かに屋敷の中に入った。
・・
通されたのは執務室。
なにやら書類がてんこ盛りな机の先に一人の男がだらしなく座っていた。
「・・・貴方は・・」
イリアと良く似た男性・・出している雰囲気もどこかしら同じような・・
「俺はここの主のライだ。イリアから話は聞いている・・まぁ遠路ご苦労だったな」
「えっ、イリアさんは・・」
「あいつは・・まぁ色々あって皆の前には姿を出し辛いんだよ。
お前の事をよろしく頼むって言っていたから・・勘弁してやってくれ」
「・・そうですか。」
「しかし、わざわざ俺んところまで家事手伝いしに来てくれたなんてありがたいもんだなぁ・・」
「・・・へっ?」
「給料は弾む・・まぁ、がんばってくれや。レイハ・・一通りの説明をしてやってくれ」
ライの笑みに秘書レイハは静かに一礼する
「ちょっ・・ちょっと待ってください! 俺は・・俺は・・」
「こちらです、どうぞ」
「あ・・はい・・」
レイハさんの迫力に負けるタナトス、反論もままらないままに
タナトス君のお手伝い生活が幕を落された

・・・・・・・

仕事内容は結構にハードだが、屋敷の面々も同じように作業をしているだけにキツイわけでもない。
それにタナトスも一応は旅をしてきただけに何でもこなし、それこそ立派なお手伝いさんとなった。
屋敷の面々はどれも一目でツワモノとわかりまた普通に接してくれるのが彼にはありがたかった・・・が
それでもやはり・・

「・・イリアさん・・」
屋敷一日目の仕事が終わりタナトスは真っ暗な庭で呆然と立つ。
一緒に食事まで頂き面々とは一通り話をしたのだが、イリアの姿はやはり其処になかった。
その話を出そうにもどこか言い辛い。何よりも全員が初対面の中で訳のわからないままに
雑用をされているわけで会話に参加するのも言い出しにくかった。
「・・俺は、騙されたのか?」
惚れた女の誘いという事で少しは淡い期待を持っていたのは事実。
しかし彼女や師匠であるサブノックに認められるだけの力を得るための修行として同行しようと思ったのも事実。
しかし待っていたのは・・・
「・・・・、駄目だ。迷うな・・、どうあれ俺が決めた事だ」
疑問は残るが深く考えるのを止め静かに禅を組み目を閉じる。
夜の風は冷たく彼の肌に刺さるが、そんな事は気にせず星空の下静かに精神を集中させた
彼の体の周りに赤い光が集まる。
(・・・・、あの悪魔との戦い。俺は無我夢中で『紅蓮朱雀』を発動できた・・
今迄ロクに発動できなかった術が使えるようになったんだから少しは成長したのか・・)
自分の力を確かめるように静かに力を高める。
「・・・・だが、まだだ・・」
彼女が話していたディという少年とも昼間に会った。
イリアやサブノックが褒めるだけあって素でその力がわかる・・隣にいた銀髪の少女は何故か話してくれなかったのだが・・
世の中は広い、あの若さでそれだけの才能がある。
その事が彼を焦らせた。

「・・やれやれ、夜中に何をやっている」

ふとその時後ろから少女の声が・・
「あ・・確か・・ルーさんでしたか?」
可愛らしい寝巻き姿の少女ルー。大層な物の言い方をするのが特徴なのだが・・
「うむっ、夜は確かに精神が研ぎ澄まされるが・・新しい環境では少々毒だゾ?」
「・・ありがとうございます。ただ・・色々と整理をしたかったので・・」
「・・ふん、イリアの事か」
「!?」
「すぐ顔に出るな・・ヒヨッコ」
意地の悪い笑みを浮かべるルー・・
「す・・すみません・・」
「まぁイイ。大方の事情はライより聞いた・・そもそも手伝いなど雇う必要なんぞここには必要ないのだからナ」
「・・へっ・・」
「まぁお前の人柄を確認するためにそうしたのだろう・・あまり怒るなよ」
「いやっ、それはいいんです。ルーさんはイリアさんの事を・・」
「・・・、まぁ多少はナ」
軽く言うルー・・、タナトスは精神集中もそっちのけに・・
「教えてくれませんか?あの人の事・・」
「悪いがそれはデキン。 言ったところで、御主には理解できんだろう・・」
「どうしてですか!?」
「・・まぁ事情が複雑なのダ。御主がどんなにアレへ好意を寄せていても・・
それは叶えられないだろうナ」
「・・・、普通の人ではないと思ってはいましたが・・」
「まぁ・・な。ただ悪く思ってやるナ。あいつもあいつで苦しんでいる部分もある。
・・主の誘いも断ってナ」
「???」
「ふっ、まぁ遠くまで来たんダ。力が欲しければ私が鍛えてやろう」
デーンと腕を組むルーさん・・
「は・・はぁ、でも貴方は・・」
ナニモノですか?・・何かこの質問がここに来てから多いなっとタナトスは思った。
「ディの師匠・・っと言ったところだな。聞いた話だと御主は火を扱うのが得意らしい・・
シゴキがいがあるナ・・(ニヤリ)」
悪魔な笑みを浮かべるルーさん・・
「は・・はぁ、まぁよろしくおねがいします」
「うむっ、明日から徹底的にいくぞ! 今日はもう寝ろ!!」
そう言いルーは大いばりで屋敷へと戻っていった。
「・・・、まぁ・・勉強になるならこの際だ・・」
只者ではないが教え方は普通だろう。
・・そう考えたタナトスだが、それが間違いだった。


・・・・・・・・

翌日

ドォンドォンドォンドォンドォンドォンドォンドォン!!!!

「ホラホラ!かわせんのなら障壁で防げ!!」
ルーの炎弾が唸る・・着弾と同時に大爆発を起こすその脅威は恐ろしい速さで疾駆する。
「うおおおおおおお!!!」
自慢の身のこなしでギリギリ回避しつつ、それができなければ自分の知っている魔法障壁を必死の速さで発動させる。
しかし

ドォン!

着弾とともに物凄い衝撃が身体を伝い吹き飛ばされる。
「くおっ!!・・こんなもんで防ぎきれるレベルのもんじゃない!!」
地を滑りながら体勢を整えるタナトス・・
朝からルーが相手をするということで心つもりをしていた彼だったが、予想以上のハードさに早くもバテてきている。
「どうした!!私に一矢報いてみを!!」
尚も放つ炎弾の雨・・、シゴキというよりか寧ろ彼女の憂さ晴らしに近い。
「・・ルーさん、そんなにやったら・・まずいですよ?」
その光景を見学している弟子のディ・・、逃げ回るタナトスを哀れに見ている。
「何を言う!こやつのような者はちまちま本を読むより極限状態で鍛えたほうが効果があると相場が決まっておるのダ!!」
っと言ってはいるものの、その表情は弱い者苛めを楽しむいじめっ子のソレ
飛び交う炎弾は手加減はしているものの、一般レベルでは一撃必殺だったり・・
「くっ!うわ・・!これじゃ・・何の訓練か・・」
それを感覚を研ぎ澄まして回避に専念するタナトス
それもギリギリで熱気が彼の肌を焼く。
「・・これじゃ埒があかない・・」
何とか反撃したいのだがルーの炎弾を回避できるために距離はかなり開いている。
加えてあれだけの攻撃ならば並の魔法では炎弾にかき消されてしまう。
「ならば!ガーネット!!」
一瞬で体勢を整え必殺の熱線を放とうとする・・が

ドォン!!!

発動するよりも早くルーの炎弾が直撃・・タナトスは悲鳴もあげる暇もなく意識をもぎ取られた

・・・・・・・・

「・・あ・・つっ!」
「こぉら、暴れないのぉ」
彼が目が醒めたらそこは屋敷の居間・・・ソファに寝かされていたようだ。
どうやら治療してくれたようで身体に目立った外傷はないが、流石に完治というわけもなく痛みが走る。
「・・アルシアさん・・俺は・・」
ソファと隣で看病してくれいたと思われる金髪の大人な雰囲気を出す女性アルシア
チャイナ服こそ着ているがその上に白衣を羽織っているので医者関係と彼は思っていた。
「ルーの炎弾の直撃を受けて重傷、全く少しは手加減すればいいのにねぇ・・治すのも一苦労よぉ」
「・・すみません・・」
自分の不甲斐無さが原因・・っと深く反省するタナトス
「ああっ、貴方のせいじゃないわよぉ。あんなのほとんど処刑だもの・・ライレベルじゃないと反撃もできないわよぉ」
「・・そういえば皆さんは?」
見回して見るとこの屋敷の面々の姿はいなく広めの居間にいるのは自分とアルシアのみ。
いつもここで寛いでいるライでさえいない。
「ああ、皆どっか行っているわぁ。厨房でリオが夕食の準備をしているみたいねぇ」
優しく接してくれるアルシア・・
「そうですか・・、ありがとうございます・・治療をしてくれて・・」
「いいのよぉ・それよりも・・少し聞きたい事があるんだけどぉ」
途端にキリッと表情が引き締まる。
「・・は・・はい」
「貴方、イリアの事が好きなのぉ?」
「へっ!?」
真剣な顔つきからは程遠い恋愛の質問、タナトスも間が抜けた声が出てしまう。
「だから、イリアの事が好きなのっ!?」
「え・・ええ・・まぁそう・・ですが・・」
「ふぅん・・わかったわぁ」
二コリと笑うアルシア・・しかしそれはどこか恐ろしい。
「あの、手当てありがとうございます。何か手伝うことがあるなら・・」
「手伝い・・あるわぁ・・手伝ってくれるぅ?」
「あっ、はい・・是非・・」
「じゃあ来て頂戴」
手で招くアルシア・・タナトスは窓拭きなどの軽い仕事かと思っていたのだが・・

ぎゃああああああああああああああああああああ!!!!!

そう考えた自分を呪った。

・・・・・・・・・・

アルシアの凄惨な実験(?)により翌日は手伝いの仕事はお預け
まぁ彼がいなくても十分に仕事は回っているのだが・・
「・・お〜い、大丈夫かぁ?」
居間にてうなだれるタナトスにライが声をかける。
「・・は・・はい・・、何とか生きています・・」
「ったくルーもアルシアも無茶やり過ぎだっての・・」
「・・ルーさんはわかりますが・・アルシアさんの方がよくわかりません」
あの拷問のどこが手伝いなのか・・、そして何故あんなに素でソレをできるのか
タナトスには訳がわからなかった。
「あいつか・・まぁ・・嫉妬・・?」
「???・・わかりません」
「まぁ許してやってくれ。二人ともしっかりオシオキしたから・・ほらっ?」
爽やかな笑みのライ・・隣にいるは完全にイッちゃっているルーさんが涎をたらして放心している。
「何やったんですか?」
「だから、オシオキだ♪」
これ以上は聞かないほうがいい・・タナトスは直感でそう思った。
「・・ですが、タナトスさんも随分がんばってますね」
そんな光景を見ていたディが静かに言う、隣にはルナがゴロゴロ寝ているのだが全く興味なし。
「え・・ああっ、俺も未熟だからな。皆の足を引っ張らないようにがんばりたいんだよ」
「・・そうですかぁ・・」
「っうかお前・・確かアルマティって処の魔法学校中退だっけ? それならそこを出ていたほうがよかったんじゃないか?」
イリアから大抵の事は聞いていたライ、その質問にタナトスは顔を曇らせる。
「・・・、あそこはよどんでいますからね。 俺はそんな魔術の闇に恐れてあの都市を後にしたんです・・」
「ほう・・、それでも魔術士やっているのか?」
「ええっ、俺が求める力は権力や地位のために振るうモノじゃない。あの学校での高みはそれに染まっていましたからね。
それに嫌気がさしたので探してみたかったんです。・・人は魔をどう扱うべきなのか・・」
「その答えがあの村での自衛か」
「・・そうです。他人を守るための力・・外道の法とはいえ、それこそが正しい使い方と思っているんですよ」
やや自嘲気味のタナトス・・それでも一度逃げた事を恥じているようだ。
「・・・ライさん、アルマティって何ですか?」
「・・んっ?俺も詳しい事は知らないな・・」
「ああっ、ハイデルベルクを少し離れたところにある魔法都市だよ。魔法の発展のみに執着する異常都市でね・・
あそこら一体の魔術に関する最高峰だけど・・かなり澱んだところさ」
「・・へぇ、中々に面白そうですね」
「君だったら・・アルマティ最高法師の証である『法王』の称号を取れるだろう」
「そうですか?・・まぁ肩書きにはこだわるつもりはないんですがねぇ」
「・・っうか聞いた感じだとすげぇ処だな。何かこっちからもいかなきゃならないこととかありそうな・・」
危険な香りを感じつつもライは隣で崩壊しているルーと地下室でテンタクス君に嬲られているアルシアさんの事のほうが
今は重要だった・・

ルーがイッちゃって使いモノにならない以上は訓練もできない。
何とか身体を動かせるようになったタナトスは、今日は何もしなくていいということで
急にやることがなくなってしまった。
「・・そういえば・・、書庫があったよな」
掃除の際に見つけた書庫、魔術に関する資料があるはずと思いそこに向かうことにした。
ディやルナはそのまま居間で仲良くしている。
ルナは何故か自分の事は嫌いなようで相手にしてくれないので邪魔だと思い身を引いたのだ。
「これは・・すごいな」
たどり着いた書庫、規模はそれほど大きくはないのだがその内容に驚く・・
かなりレベルの高い書物ばかり、さらには貴重な魔導書もチラホラと
退屈しのぎにはちょうどよくタナトスはいつしか夢中に本を読みふけっていった。
・・・・
書物の中には基礎的な魔法や炎術などが沢山あり
これを取り入れてみてはどうかとかあれを工夫してみれはどうかとか頭の中が技術向上の一心となっていた。
そこへ
「・・あの・・?」
「・・・」
「あの?」
「あっ!?すみません・・」
見ればメイド服の金髪女性・・整ったスタイル、間違いなく美人であり、なにやらタナトスを見つめている。
「いえ、もうそろそろ夕食ですよ?」
「ああっ、すみません・・リオさん。」
家事の手伝いの際に一番親身になってくれる女性リオ、彼女のおかげでここの仕事もすぐになじめたのだ。
「いえいえ、何だか夢中で読んでいましたけど・・そんなに面白いのですか?」
「え・・ああっ、面白いと言えば・・面白いですかね。 色々と試せる資料ですし・・」
「ふぅん、私達は結構苦労したのに・・タナトスさんも流石は魔術師ですね♪」
二コリと微笑むリオ、純な青年ならばイチコロなのだがそれ以上にタナトスにはリオの言葉にハッとした。
「・・やはり、・・ふふっ・・」
「??どうしたんですか?」
「いやっ、俺は自分からこうした書物を遠ざけていたのですが・・結局は頼りにしていると思いまして・・」
「???」
「まぁ、つまらないこだわりを捨てようと思ったんですよ」
「はぁ・・ともかくご飯ですし・・片付けて行きましょう♪」
爽やかに笑うリオ・・それにタナトスは安らぎを覚えつつもいつの間にか盛大にちらかした本の片付けに取り掛かった。
・・結局、飯は冷めていたとか・・



さらに翌日
「・・ふっふっふ! 昨日は向こうの世界に行っていたがようやく帰ってキタ!
今日も激しくイくぞ!」
日が昇った庭先にて対峙するルーとタナトス
今日は見学者にディとライもいる。
「ったく、無茶するなって言っているのに・・後でオシオキだな」
っと言いつつも止めないのはオシオキをしたいのか・・
「まぁルーさんも・・、わかってやっているんでしょうねぇ」
いざとなったら仲裁に入る役なディ君、静観しながらもなにやら胸騒ぎが・・
「よろしく・・おねがいします!」
「うむ!それが御主の遺言ダ!!」
殺る気満々? 魔方陣を展開し、炎の雨が再び降り始める。

ドォンドォンドォンドォンドォンドォンドォンドォンドォン!!!!!!!!

相変わらず驚異的な威力・・しかしタナトスは緩やかにそれを回避する。
「むっ?流石に眼が慣れてきたカ?ならばレベルを上げるゾ!」
さらに魔方陣が展開し炎弾の数が増える!
「くっ・・、貴方に一矢・・いれさせてもらいます!!」
対しタナトスは手のひらに小さく紅い魔方陣が展開する!
それとともにルーのものとは二周りほど小さな炎弾を放つ・・
「そんな小さな火の弾なんぞ・・私の炎でかき消されるゾ!」
「わかっています・・!砕け!!」
走るタナトスの炎弾・・ルーの炎弾とぶつかり消滅するかと思いきや

カッ!

炎が幾つもの小さな物に分裂・・ルーの炎弾を避けるように蛇腹を描き彼女へと進む!
「むっ・・なるほど!」
ニヤリと笑うルー・・軽く手を振ると命中しそうな炎達はフッと消えてしまった。
「くっ!分散すれば威力が・・」
「ふふふ・・私の炎を掻い潜りよくやった! まぁ・・御主如きが私に傷をつけるという事自体がありえない話ダ。
及第点はくれてやろう!!」
「・・へっ?」
何だかよくわからないが、どうやらルー先生に認められた様子・・
っうか、そもそも傷つけること自体不可能なのは明白であったようだ。
「まぁこれだけ痛めつければ実戦では飛躍的にセンスが磨かれたはず! 後は自分で学べ!」
「・・は・・・はぁ」
一人満足するルーに何だか歯切れの悪いタナトス
「むっ、納得できんか・・では・・ディ!」
「・・? 僕ですか?」
「お前以外誰がいる! コヤツの相手をしてやれ!」
そう言うとルーはさっさと退場、どこまでも大物な御方です。
とはいえディ少年も最初から拒否権はなく・・
「・・得物持って来いって、こういうことだったのですね」
しぶしぶ立ち上がったのだ。

「・・・ディ君か。すまないな、俺のために・・」
「いえっ、まぁあの人は突拍子のないことをするのが大好きですから・・
まぁ、適当に・・」

「ディ! 負けたら丸一日『ディアナ』ダ!」

ルーさんの非常な一言がディの発言を遮る。
「・・・・、タナトスさん、僕のために死んでください」
途端に本気モード、どうやら相当辛い罰らしい。
「あ・・ああ、俺も本気でいく!」
相手はイリアやサブノックが認めた魔術師、自分の力量を試すにはもってこいだ。
「・・行くぞ!ガァァァネットブラスタァァァ!!」
最初から大技発動!光の熱線を放ちタナトスが先制を取る。
「熱線!?速い!」
適当にやっていたなら直撃なところだったがディも本気・・バックステップでうまく熱線を回避しつつ魔弾を連射する!
「・・流石に良い反応・・! だが退けない!」
遅い来る魔弾に真っ向から駆けるタナトス
保険である魔法障壁を発動するもそれは気休めとしてギリギリまで引き付けて回避を繰り返し接近する。
「僕の魔法を・・、魔術士だけで見るのは危険ですか!」
今度は氷の矢を発動し数本連続で放つ・・魔弾に比べたらかなりの速さだ
「ちぃ!」
一本肩に突き刺さるが残りは回避しつつ紅の魔杖から展開する炎の刃にてさらに突っ込む!
「うおおおおっ!」
「くっ・・この気迫・・、ですが!」
対しディも魔刃を展開し真っ向から迎え討つ!

ゴゴゴ・・・!!

炎と光が激しくぶつかる!渦巻く力の波動の中でそれを制したのは
「くわっ!・・流石に力がありますね!」
タナトス・・、よろめくディに彼は勝負にでる!
「負けたくないからな!勝負!!」
接近戦で切り札である『ガーネットブラスター』を発動させる!
この距離ならば回避はできない。

カッ!!

光る閃光!しかし次の瞬間にはディの姿は消えてしまい。
熱線は空を切った・・
「ふぅ・・危ないところでしたね!」
空中より聞こえるディの声・・
「なっ!」
見ればディの背中からは光輝く翼が・・そして宙を浮きながらも魔方陣を展開している。
「見事ですよ、ですが僕もアレは嫌なので・・覚悟!!」
放たれる魔弾の嵐・・タナトスはソレをまともに受け、またしても気絶するのだった。

・・・・・・
・・・・・・


「・・うう・・」
身体に伝わる暖かい感触にタナトスは目を醒ました。
見ればすでに日は暮れており部屋は暗闇が立ち込めている。
それでも自分が使用している部屋だということはわかるのだが・・
「よう・・がんばったみたいだな」
「・・イリア・・さん・・」
目の前にはイリアが笑みを浮かべている・・
「えっ!?あっ!」
「暴れるな、ディの奴も女装が嫌だから思わず本気を出したんだ・・ったく、ガキだから・・」
彼が慌てるのも無理もなく膝枕をしている状態なのだ。
「そうだったんですか。く・・結局は負けたのか・・」
「前進はあったんだ。 そう落ち込むなよ・・それよりも悪かったな・・」
「・・いえ、ここの人達と接していて何となく貴方の事がわかりました」
「・・・・・」
何ともいえないイリアの表情、しかしタナトスは続ける・・
「貴方は・・相当特別な事情を持っているみたいですね、それこそ・・周りと共にいられない・・」
「・・・・・、ああ」
「すみません、そんな事情も知らないで・・付いてきて」
「いやっ、俺の方こそ騙したみたいで悪かったな・・」
「「・・・・・・」」
しばし無言が続く二人・・
時間としては深夜なのか辺りからは音らしい音が全くない。
「明日・・、村に帰ります」
「・・・そうか」
「ですが、俺が貴方に好意を持っていることには変わりはありません」
「・・、俺は人に愛されても応えられるような存在じゃない」
「それでも俺は貴方のことが好きです」
「・・・・」
「・・、この言葉が言えただけでも・・、わざわざここまで来た甲斐がありましたよ」
「・・・・」
無言のままのイリア、タナトスもそれ以上は何も言わずに
いつしか眠りについていった
イリアは、最後まで話してくれなかった。


・・留学生タナトスの短期集中型な留学もそろそろ幕引きといき
その日は用意をすぐ整えて帰り支度をした。
まぁ一部の人間としか交友がなかったに加え昼間に出発となったので見送りは数人だけ・・
「ふっ、まぁまた虐められたくなったら来るがイイ! もっといたぶってやるゾ!」
違う意味でタナトスを気に入っているルーさん、珍しく見送りにきているのだ。
「いや・・遠慮します」
「ナゼダ!? こちらから出向くぞ!!」
「止めて下さいよ。・・すみませんね、タナトスさん。まともに入っちゃって・・」
「いやっ、それも俺の未熟さが生んだ失敗だ。すまないな」
ディも見送りにきてくれている後は・・
「仕事ご苦労だったな。ほれ・・報酬だ」
ライ、いつものだらしない服装のままで、これが一張羅かと思ってしまう。
そして報酬に出されたのは綺麗な銀の杖・・先端には菱形の紅い宝石が付いている。
「これは・・」
「私が褒美で造った魔杖ダ! 炎の力を付加できる・・御主にはちょうどよかろう」
「・・現金じゃないんですね」
「何を! これだけでも市場価格で恐ろしい値段になるゾ! いらんのか!?」
「いや・・ありがたくいただきますよ。」
苦笑いで受け取るタナトス・・それでもとても嬉しかったりするのだが・・
「そんじゃ道中気をつけてな、サブノック達によろしく行っておいてくれ」
「ええっ、俺も・・イリアさんによろしく行っておいてください」
「・・・、ああ」
「・・ふん」
「それじゃ、お世話になりました!失礼します!」
深く礼をしてタナトスは元来た道を歩き出す。行きとは違い今度は一人で・・
「・・やれやれ、茶化さずにココに連れてこんかったほうが良かったんじゃないか?」
彼の後ろ姿を見ながらルーがつぶやく。
「あいつも後悔している・・だが、タナトスにとってはマイナスにはならないだろうさ」
「・・何の話ですか?」
イリアの存在についてはよくわからないディなだけに困惑顔・・
「まぁ色々あるんダ。」
軽くため息をつきながらルーが静かにつぶやいた。


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