番外2 「事後報告INユトレヒト隊」
「ふ〜ん・・でっ、上手く行ったってわけか・・」
「ああっ、双方思うように収まったってところかな。まぁ・・スクイードの方は前途多難だけどな」
「はははっ、まぁ・・異文化同士のカップリングじゃな」
シトゥラを巡る一件の報告という事でその数日後に再びユトレヒト隊館に足を運んだ
まっ、今度は俺一人でのんびりと・・。
スクイードも大変そうなので代わりに礼を言ってくれと頼まれた程度だ
「でもよかったですね〜♪もう孕んじゃったのですか!!?」
いつもの如くな談笑室で満面の笑みを浮かべるキルケ、この結果に満足しているみたいだなぁ・・
「まぁ〜、確実に孕んだんじゃないかな?流石に子作り熱心な一族なだけに普通じゃなかったみたいだし」
「ふ・・普通じゃ・・ない・・ですか・・」
頬をカッと赤く染めながらもその先が知りたい様子のクローディアさん。
いやはや、こう見えてもスキモノなのですなぁ・・
「ああっ、獣人の性欲故にツェーラの膣に出しまくってな。腹が膨らんだところで栓をするんだとよ。
だからポッコリ膨らんだ状態で帰って行ったよ」
「それはまぁ、すごいもんだな・・」
ははは・・、そりゃな・・
「・・・・、それよりもクラークさん・・ファラとは・・ちゃんとケリをつけたんだよ・・な?」
俺の一言にクラークさんの目が細くなった
「・・ああ・・、ちゃんとな・・。だけど・・どしたんだ?いきなり・・」
「・・いや、なんでもないよ。気にしないでくれ・・」
やはりな、じゃあ他人の空似・・か。
「・・?変な奴だな・・、それよりもクローディアが驚いていたぞ?ナタリーの霊がまた出ていたって事にさ」
う〜ん、そういや俺がここにいる時にのみ怪奇現象は起こったけど・・
「おいおい、ここじゃ日常じゃないのかよ?」
「・・いえ、クロムウェルさんがここに来るまでそのような事は起こりませんでした。
てっきり、クロムウェルさんの身の回りに姉上がいるのかと思いまして・・」
「考える事は同じか、生憎ああいうのはこの間のが初めてさ・・なんでだろう?」
「簡単な事じゃ・・」
む・・!?知識をひけらかしたい欲求にうずうずしながらメルフィがやってきよった
「なんだよ?お前・・わかるのか?」
「妾を誰じゃと思っている?この程度の現象など簡単な事じゃ!!」
いつもながら偉そうですなぁ
「・・じゃ説明してくれよ。俺個人としちゃあいつが館をうろいているとうかうかクローディアを抱けないからなぁ」
ガン!!
クラークさんが言い終えた瞬間にその頭が揺れる・・。
そう、まるで・・何者かに殴られてたかのような・・
「いつつつ・・キルケ!!見えたか!?」
「・・いえ、私には何も・・。メルフィさん、今のがそうなんですか?」
退魔士が見えないなら、悪霊じゃないんだな
「うむ、そうじゃ。簡単に言えばクロムウェルについた魂とクローディアについた魂が混ざり合ったんじゃよ」
「「???」」
わかんね・・、魂が混ざり合う・・?
「マヌケな顔をしよって!とどのつまり!そのナタリーという女は二人にその魂の欠片を授けた、
それが二人が会う事で共鳴して大きな魂へとなったのじゃ」
「・・つまりは、生霊みたいなモノになったという事ですか?」
生霊・・確か人の強い思いが一つの精神体となる現象だったか・・
「そんなものじゃな、明確な意思を持つ存在でもないがナタリーの人格というのは現れそれを行動に移している」
「なるほど・・私達に託された姉上の想いが形になった・・そういうわけですね」
「うむ。最も・・これだけ躊躇に反応を示すとなると二人に込められた魂は相当大きなものなんじゃろう。
捻くれ者が多い人間では珍しいケースじゃな」
・・お前が言うな、捻くれ小娘・・
「・・姉御は俺達の事をそこまで想っていてくれてたんだなぁ・・。・・因みに・・クラークさんは・・?」
一応は義理の家族に当たる分それなりの想いがあるかも・・
「こいつか・・?・・・・・、全くないの・・。クラーク・・嫌われていたか?」
「・・あんにゃろう・・・」
一応は喧嘩仲間って感じだったからな
「まぁそれ以上に支えになっている存在もいるようじゃ。これは誰しも同じ・・よほど周辺に牙を向けてなければ何らかの魂の加護があるもんじゃて」
「つまりは守護霊ですね、いいですね〜♪そういうの♪」
かなりオカルティな話だけどメルフィとキルケが言うと凄まじくその通りに思えてしまうなぁ
「・・因みにクロムウェル、御主にはナタリー以外にも強い生霊がついておるぞ?」
「えっ!?うそ!・・キルケ・・見えないのか!?」
「う〜ん、私は基本的には悪意がある物しか見えないようなので・・まぁ見えないとなると悪い人ではないんじゃないですか?」
そ、それならいいんだけど・・
あっ、いや別に霊が怖いとかじゃなくてさ、気味が悪いというかなんというか・・
「ふむ、赤毛の女じゃの。御主の事をよほど好いておるのじゃろう・・」
・・タイムですか・・
「なるほど・・女性の甘いお誘いの時に感じるあの緊張感と罪悪感はタイムの生霊が関係していたのな・・」
「いいじゃないですか♪それほど想われているって事ですよ♪」
ま・・浮気はしないんだけどなぁ・・
ん・・?
「ただ〜ま〜。あら・・クロムウェル、来てたの?」
大きく欠伸をしながら金髪美女セシルが来た・・、美女・・?まぁ見た目だけ美女・・
「よぉ、相変わらず勝手気ままに生きてそうだなぁ・・」
「うるさいわね、で・・どしたの?あっ!?ついにタイムに愛想尽かされたんだ!やーい!!」
んが・・
「セシル・・断言しよう・・」
「あん?」
「タイムが俺に愛想を尽かす事があるのならばそれより先にまずお前がロカルノに捨てられている事は間違いないだろう!!」
「な・・何ですって!!」
お前が窮地に陥っているのはすでにわかっている・・、そして四面楚歌なのもな・・
「あ〜、それ、ありえますねぇ」
「キルケまで!?」
「素行の悪さが影響しているもんだからなぁ・・」
・・まぁ・・そうだよなぁ・・
「皆・・しどい・・」
「っうか強力な恋のライバルが登場したんだろ?少しは精進しなきゃいけないんじゃないか〜?」
「私はいつでも『く〜る』にロカをメロメロよん♪」
「あ〜、妄想事言っちゃって・・。可哀相に・・」
「大丈夫ですか・・?セシルさん・・」
おおう、クローディアの一つしかない瞳に哀愁の色が!
「クローディアまで!?お・・おのれ・・幸せな人間が憎い!!」
憎しみのオーラ力が出てますな・・ハイパー化しそう?
まぁこいつの場合は完全な自業自得なんだろうけど・・
「っうかさ、ロカルノならそのライバルとセシル両方愛せるんじゃないのか?クラークさんでもできているんだし」
何でもできる天才肌、それだったら・・
「クロムウェルさん、私達はクラークさんの度量の広さも大事ですけど私とクローディアさんの了解で成り立っているのですから・・
ロカルノさんの才能だけでどうこうならないと思いますよ?」
キルケ・・中々に鋭い事を言うな・・この中じゃ最年少なのに・・
「ふぅん・・じゃ、セシルがそのライバルを認めたらいいのか?」
「う゛・・わ・・私は・・」
「無理なんじゃねぇの?そもそも独占欲の塊のような女なんだし・・」
「うるさいわね!・・アミルならそれでもいいって思うけど・・そうなると私が忘れ去られるような気がして怖いのよ・・」
・・・ふぅん、がさつでもロカルノに対しては一途な訳か。
いやいや、女というものはわからぬものよ
「あのパツキンケダモノが今や愛する男のために歯牙なき飼い犬になったか♪」
「・・言わせておけば・・大体!クロムウェルは私に協力してしかるべきじゃないの!?」「何故に!?」
追っかけてきやがったくせに!
根に持つぞ!あれは絶対根に持つぞ!
「クロムウェル、今のタイムにすごく満足しているんじゃない?」
「・・ん・・?そりゃ・・まぁな」
嫉妬深いところとか手加減知らないところはあるけど基本的には良い女♪
仕事もできるし意外に家庭的で料理も良くする。そして夜の方も非常によろしい・・
「ふっふ〜ん♪タイムがあれだけ感じやすい体になったのは私のおかげよ?
ならばそれで満足しているクロムウェルは私に恩義があるわけよ!!」
「・・うわぁ・・無理やりな理屈・・」
まぁ一部の人間には知れ渡った事だけどタイムの初めての相手はセシルだものな・・。
無理やり押し倒されて後は快楽の流れるままに・・禁断の愛ですな
その時の事はタイム本人語ろうとしないんだけど、まぁ快楽に溺れていたのは間違いない。
「へぇ・・タイムさんって感じやすいんですかぁ・・」
「キルケ、何故そこで関心を持つ・・?」
「そりゃ女なら誰だってタイムさんみたいな凛々しい人に憧れたりするものですよ♪
因みにタイムさんはハイデルベルクウォーカーの『王都20代女性に聞く恋人にしたいキャリア女性』第一位を7度防衛しているんですよ!?」
・・また怪しい雑誌の怪しい企画だな・・
「・・レズレズな人達に対する企画?」
「企画は自由かつグローバル、ダイナミックにマニアック・・が信条の雑誌ですので♪」
嫌な雑誌だ・・
「って事は〜、そんなタイムの初めてを頂いた私って幸せ者〜♪」
もぎ取った・・の間違いだろうが・・
「はいはい・・とにかくタイムの事じゃ満足しているけどお前の恋路を協力するつもりはないよ」
「うわっ、ひど・・。あんたの血は何味よ!?」
「っうかさ、最初からロカルノのパートナーはお前なんだろう?
お前がしっかりしていたら正妻の座は不動の物だったのに余計な事していたから
とられそうになっているんじゃないか・・どう協力しろってんだ?」
「う゛・・」
別に争奪戦が繰り広げられたわけでもないものなぁ・・
「まぁ以前に比べたら素行の悪さは改善されたけどなぁ・・」
「ですが・・アミルさんの良妻的ポテンシャルの高さからすればきついでしょうねぇ」
・・相当良い女のようですね・・
「そのアミルって子、メルフィの目付け役なんだろう?どんなの?」
「む・・妾に聞くか・・。
アミルはそうじゃのぉ・・怖い女じゃ・・妾が嫌いな食べ物を残そうとすると食べるまで拘束しよる。血も涙もありゃしない」
やれやれ・・っと両手を広げるメルフィだが・・それは普通ぢゃん
「女性としてはステキだと思いますよ♪
家庭的で献身的、その上豊満なボディでロカルノさんにモジモジ迫っているわけなんですから・・」
・・ええなぁ・・
「・・クロムウェル、生唾飲むなよ・・」
「クラークさん・・悪い・・」
「とにかく〜!何とかしてアミルに勝ちたいの〜!」
地団駄を踏むセシル・・相当焦っているな・・こいつ・・
ん・・?
「セシル・・、ここにいたか?」
おおっ、今度はロカルノも談笑室に来たか。流石はユトレヒト隊の憩いの場所だ・・
「ロカ、どしたの?」
「試作で新しい料理を作った、すまないが試食してくれないか?」
「わたしでいいの?」
「・・だから呼びに来た・・嫌ならいいが・・」
「もちろん美味しく頂くわよ♪」
スキップしながらロカルノについていく・・コロコロ態度が変わる奴なんだが・・
「・・本人が思っているより・・安定してないか?」
「・・だな・・。まぁそれを自覚したらまた悪さに走るだろう・・良い薬さ」
違いない
「まぁ、騒がしいのもいなくなったところで俺もそろそろ帰るよ。
邪魔したな・・」
「ん・・?そうか・・。スクイードに激励の言葉でも言っておいてくれよ・・異種族の恋に乾杯・・ってな」
「ははは・・ガムシャラに働いているから聞く耳あるかどうかわからんが言っておくよ。
結婚適齢期逃す前に白狐族をひれ伏すんだとさ・・」
「またいらしてくださいね♪」
「いつでも歓迎したします」
「ああっ、まぁ俺とクローディアがいる時には姉御の話題はタブーだけどな・・」
謎が一つ解けたのはいいんだがそれはそれで不可思議現象だ
「今度来る時は茶菓子の一つでも用意せいよ!」
「・・ははは・・了解だ・・」
精神年齢低い割には言ってくれるぜ・・
まぁ、報告も終わったしあのファラもどきの事もわからず終いだ・・
そろそろルザリアに帰って休むとしよう・・・
・・・長居すると後のフォロー、大変ですからねぇ・・はぁ・・
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