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番外2 「愛しい人よ 安らかに眠れ」




クロムウェルさん・・貴方に神の導きを・・


「ん・・・が?」
頭の中で・・女性の声が響いた。
なんかぁどっかで聞いた事があるような・・って・・なんだ、夢か。
いつもの見慣れた俺の部屋だ
「何だ・・変に頭がさえやがる・・」
寝起きは良い方だがまだ外は真っ暗な状態に目が醒めることなんてほとんどない
っうか・・深夜ぢゃん
声が響いた途端に眠気が全て吹き飛んだ感じだな・・ったくこれじゃ眠れねぇな
・・まぁそれならそれで隣で寝ているタイムさんとニャンニャンすればいいですか♪
「タイム〜♪って・・あれ?」
隣で寝ているはずのタイムがいない・・、あっ、そうか
トイレだな・・それで足か何か滑らして変な声を出したってとこか
「やれやれ・・ドジだなぁ」
ほんと、私生活はいつもの気迫は微塵も消えているんだからのぉ
「・・クロムウェル・・」
「タイム、おいおい・・全裸で何つったんてんだ」
何時の間にかベットの隅で立っているタイム・・
ん・・
「・・クロムウェル・・」
声の調子が変だ・・。それに二人っきりの時はクロって言うはず・・
「どうした・・?タイム」
「久しぶり・・ね」
「・・何、言っているんだ・・?今の今まで一緒だっただろ?」
おかしい、とりあえず錬金灯をつけて様子を見る・・
「・・タイム・・?」
錬金灯の薄い明かりが照らすタイムの表情はとても穏やか、俺が見たことがない表情といっても過言じゃない
「全く・・、相も変わらず間抜け面は昔と一緒ね」
「お前・・誰だ?」
「・・ふふ・・」

ジャキ!

!!
ネェルブライト!?屋敷に置いているはずの得物が何故!?
「はぁ!」
全裸のまま切りかかるタイム・・って!
この太刀筋・・やっぱタイムのじゃない!
「・・!!」
横なぎの一撃を俺は咄嗟に飛びのいて回避する
・・あ・・れ・・?
予告なしに放たれる横なぎの剣・・これは・・
「ようやく気付いた?」
「あね・・ご?」
「大きくなったもんね」
二コリと笑うタイム・・だが、その口調は正しく俺が敬愛する人
・・ナタリー=グレイス・・
「ど・・したんだ?あれ・・これ夢か?」

バキ!

ふげっ!いてぇ!
夢じゃない・・、っうか・・
「いきなり殴るなよ!姉御!」
「ううん・・成長して硬くなったのかな、それともこの子の身体がヤワなのかしら・・」
「ま・・まぁ、姉御には間違いないとしてどうしたんだよ!それにタイムはどうなったんだ!?」
「慌てないの、見苦しい」
普通慌てるって・・
「わ・・わりぃ。って本当の本当に・・姉御なのか?」
「ええっ、ずっとあんたの世話をした女よ。・・久しぶり」
爽やかに笑うタイム・・いやっ、姉御
信じられないが・・やっぱり間違いない
「化けて出たってやつか?」
「私もよくわからないわ。この子の身体と私の心が重なったみたいなのよ。だからこうして話せるようになったみたい」
「じゃあ・・タイムはどうなったんだよ・・?」
「眠っているわ。貴方に優しく抱かれる夢を見ているみたいね」
・・恥ずかしい事言うな・・
「そ・・そうか、まぁ無事なら安心か。
でも・・久しぶりだな・・。また話せるなんて思ってもみなかったぜ・・」
「私もよ。不思議な感覚ね・・」
「未だに信じられないぜ・・、でっ、で・・こうなったわけだし・・どうするんだ?」
「う〜ん、せっかく生き返ったみたいだし・・あの子にちゃんとお別れを言いたいわね」
・・あの子、クローディアか
「って、やっぱ時間制限があるみたいだな」
「なきゃこの子がかわいそうでしょ?それに違和感がすごいんだものね」
・・・、そうか。姉御が甦って有頂天になったけど・・
「・・・」
「ば〜か!そんな顔しないの!いい?私はもう死んだのよ?最後の最後で貴方達と話をする機会が出来ただけよ・・。
どんな仕組みかはわかんないけどね。甦ったなんて思っていたら後が辛いだけよ」
「・・悪い」
「よろしい、それでこそ私の舎弟よ」
爽やかに笑う姉御・・・変わらないな、本当は姉御だって辛いんだろうし・・
「・・よし、いつまでタイムに憑依できるかわかんないだろう?今から馬で飛ばそう!」
急いで着替える!一秒でも長く姉御が気持ちよくこの世界にいられるように・・
「悪いわね・・この子の服はこれ?・・随分堅苦しい物着ているわね」
仕事後直接ここに着たからな。仕事中の地味なスーツのままだ
姉御、スーツ着たことないだろうな・・
「着れるか?」
「うう・・剣を振るのは癖だから大丈夫だけど手足を動かすのも大変なのよ?」
ま・・自分の身体じゃないものな
「じゃあ・・俺が着せるよ。ほらっ、ベットに座って」
「お願いするわ・・」
素直に俺の言うとおりに従う姉御・・昔は俺が手助けしようとしたら怒ったりしたもんだが・・
死んだら人って変わるのかな?

・・・・・・・

姉御を着替えさせた後、俺はとりあえずルザリア騎士団屋敷へと向かった
タイムのスケジュールからして明日は休みではない
説明しても信じてもらえないだろうから病気だという事で仕事押し付けるつもりだ
現に今の「タイム」は自分で歩くのもおぼつかないんだからな
だから今は俺が背負って走っている
・・まだ深夜、夜通し開いている酒場の明かり以外はほとんど暗闇だ
その中騎士団屋敷は灯りがついている・・ここは年中無休だからな
確か今日はスクイードの野郎が夜勤になっているはずだ
「おい!スクイード!」
一気にテント群担当地区課の部屋に入る!
「・・な・・なんだ、変態。深夜だぞ」
キョトンとしたスクイード、部屋の隅にはカチュアが仮眠を取っている
・・二人だけのようだな・・、それよりも・・
「タイムがちょいと難儀な病気にかかったみたいだ、俺は今から馬で走る!お前は明日団長の代わりをしておけ!」
「だ・・団長が・・!?大丈夫ですか!?」
「え・・あ・・そう・・ね」
ここに来る前姉御には余りしゃべらないように指示してある・・口調、違うんだもの・・
「馬舎から一頭借りるぞ。」
「変態、クライブ先生に診てもらったほうが・・」
「それよりももっと適切な処置の仕方を知っているんだよ!んじゃな!」
これでよし・・!
「クロムウェル・・そんなに急がなくても・・」
背中で姉御が心配そうに言う・・
「何言ってんだよ・・クローディアと・・沢山話したいんだろ?」
「・・・・、もうあの子に色々言うことはないわよ。私が死んでから立派に歩いてきたんだもの・・」
・・・、魂だけになっても妹を見守ってきたんだな・・
「まっ、そうでないにしろ言いたいことあるだろうからな・・夜明けまでにはプラハに着かせる!」
馬に飛び乗り一気に駆け出す!
夜道に月明かりのみで突っ走るのは危険だが・・俺ならやれる!!


・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・


翌朝

夜が白みはじめた頃にプラハのユトレヒト隊館に到着した
この距離をこの時間で走破したんだ・・馬はもうヘトヘトになって座り込んだ
後で上手いニンジン食わしてやるよ・・
「馬の扱いだけは一人前ね」
尚も俺の背中の姉御・・こんな毒舌でさえ懐かしい
「まだまだ未熟さ。さぁ、対面と行くぜ!」
庭先からは既に刃がぶつかる音が聞こえてる・・クラークさんの事だからもう起きているんだろう
・・・・
いたっ、クラークさんとクローディア・・だけだ
他の面々は朝の訓練はしていないんだろうか・・?
「クラークさん!!」
「・・おえっ?・・クロムウェル?」
間抜けな声で振り向くはいつも変わらぬ顔・・全然強そうに見えないが中身はとんでもねぇ・・
「・・どうしたのですか?クロムウェルさん・・タイムさんを背負って・・」
クローディアも手を止めて俺の方を見ている・・よし
「・・姉御・・」
「・・・ええっ」
ゆっくりと姉御を降ろす・・朝の霧霞の中姉御は慣れない足つきでクローディアの元までゆっくりと歩いていく
その間二人は何があったのか理解できず動向を見守っている・・
そしてようやくクローディアの前まで辿りつき懐かしそうに笑う
「・・タイム・・さん?」
「・・大きくなったね・・クローディア・・」
懐かしむような声・・少し震えている・・
「・・え・・」
戸惑うクローディアを姉御は強く抱きしめる
「よかったね・・クラークと結ばれて」
「・・あ・・ね・・うえ・・?」
「・・うん、私よ」
呆然としているクローディア、だが・・開いている目からはすでに涙の雫が浮かんでいる
「クロムウェル、これはどういうことだ?」
クラークさんも流石に訳がわからんようだ・・・当然だけど
「ああ・・どういうわけか知らないけどタイムの身体に姉御の魂が乗り移ったんだ・・いつまでその状態でいられるかわからないから
脇目もふらずにクローディアのところまで走ってきたんだよ」
「走ってきたって・・ルザリアからここまでか?」
「・・姉御のためだ。今日の深夜からすっとんできたぜ」
我ながら無茶やったもんだ・・馬が死んだら丁寧も葬ってやらねば・・
それは置いておいて・・死別した姉妹はキツクお互いを抱きしめている
「姉上・・姉上・・!」
冷静なクローディアが大粒の涙を流している・・
「強くなった・・わね。嬉しいわ」
「・・・・」
「ずっと、見守ってきたんだから・・貴方が旅に出た時も、クラークと再開した時も・・気持ちが伝わった時も・・」
「姉上ぇ・・」
「馬鹿、泣いてどうするのよ。」
「だって・・姉上・・」
感情が溢れるクローディアの頭を優しく撫で、姉御は慈しむように妹見ている
・・そうだよな、話だと・・最後に顔を合わせたのはだいぶ前になるわけなんだし
「おめでとう、こんなバカを好きになったんだから大変だったでしょう?ついに叶ったわね」
「・・はい・・、クロムウェルさんや皆の手助けのおかげです」
「ふふふ・・影ながら手を加えた甲斐があったわ。これからは自分の剣と向き合い・・幸せに行きなさい」
「・・はい、姉上・・よろしければ・・ご一緒に・・」
「悪いわね、いつこの身体から追い出されるかわからないし・・思ったよりも時間がなさそうなのよ」
その言葉にクローディアの瞳に涙が溜まる
「ほらっ、そんな顔をしないの。最後に貴方に話がしたかったのよ。もう一人前なんだから・・しっかり歩きなさい」
「・・は・・・はい」
「よろしい。それじゃ・・残された時間は可愛い舎弟の分に使わせてもらうわ」
・・・・、そうか、自分の人生を自分の事に使っていなかったものな・・姉御は・・
「はい・・どうか・・お達者で・・」
「うん・・忘れないで。私はいつでも貴方を見守っているわ。」
「・・・」
無言で再び抱き合う二人・・、今度こそ最後のお別れ・・か
「それと・・クラーク・・」
「・・ナタリー」
クローディアの元を離れゆっくりとクラークさんの元へ歩く
「クラーク」
「何だ・・?」

バキ!!

「んげっ!!」
鞘で・・殴っちゃったよ・・
「人の刀を二本も壊してんじゃないわよ!このバカ!」
「・・な・・何しやがる!?」
「それはこっちの台詞よ!人の断りもなく私の愛しい雪月花ちゃんや可愛い紫電ちゃんを改造しやがって!!」
「死んだ人間に会話なんてできるか!墓前に花添えたのでチャラにしろ!!」
・・始まったよ・・この二人・・そういやいつもこんなんだったな・・
「花ぐらいで治まるもんですか!それ潰したら井戸から這い出て祟り殺すわよ!」
・・・マジだ・・あの眼・・
「上等だ!塩で清めてやる!」
「何を!」
「「む〜!!!」」
睨み合う二人、おいおい・・身体はタイムなんだから殴ってくれるなよ
クローディアもオロオロしているじゃないか・・
「・・・ふっ」
「・・・ははっ・・あ〜!すっきりした!ありがと・・クラーク」
「いいって事よ。言いたいことはあったんだろうからな」
・・そう言う事か・・
「ふぅん、ちょっとは察しが良くなったもんね」
「うるせー」
「まぁいいわ。・・クローディアを頼むわね・・ちゃんと幸せにしないと7日後に呪い殺すわよ?」
「何時を基準にだ?・・任せておけ。俺はクローディアを大切にする」
「・・信じてあげるわ。まぁもうドップリ交わっているみたいだけど♪」

「なっ!!?」
「あ・・ああああ・・あああああ・・姉上!!」

見てたのかよ!
「プライバシーの侵害だぞ!覗き悪霊!」
「やかましい!妹に変な事仕込もうってんなら正当な行為よ!」
「普通だろ!?」
「ギリギリね・・痛がっていたなら即効で災い吹っかけてやるところよ」
「これ以上変なことはしねぇよ・・ったく・・」
「・・よろしい。そんじゃあそろそろ行くわ・・そういやセシルも一緒なのよね?」
「ん・・ああ、そういや顔見知りだったんだな。今は外出中だ」
・・ん?なんだよ、姉御とセシルって知り合いだったんだ・・世の中・・狭いな・・
「そうっ、一緒に飲みに行く約束・・守れなくて御免なさいって伝えておいて」
「・・信じるかどうかわからんが確かに伝えておくよ」
「・・ありがと。そんじゃ・・最後の時間は自分のために使わせてもらうわ。・・二人とも、仲良くね」
二コリと笑う姉御・・ずっと待ち望んだクラークさんとクローディアのカップリングを見れたんだ・・
上機嫌だろうな
「・・ああ、達者でな」
「姉上・・ありがとう・・ございました・・」
「はいよ、そんじゃ・・さよなら・・。ほれっ、クロムウェル!おぶってちょうだい!」
「へいへい・・そんじゃ・・行くな。クラークさん」
「ああっ、天下のナタリー様からのご指名だ。・・・しっかりお祓いしてやってくれ」
最後まで憎まれ口だな・・おい。まぁそうした友情、なんだろうけど
放っておいたら喧嘩しかねないのでさっさとおぶって逃げますか・・

・・・・・・・・・・

姉御を背負って移動しようとしたんだが馬が流石にヘロヘロだったのであまり遠くには
行けずプラハの町外れの森の中で一休みすることにした
人など誰もこず小鳥のさえずりがこだまする澄んだ空間・・まぁ何と言うか、深夜からドタバタしてきた俺にとっちゃ
少々毒かも・・
「・・眠いんでしょ?」
「・・んあ?」
木の根に腰掛けた姉御が面白そうに俺を見ている・・
「貴方って朝早く起こされていたから昼間になると寝てばっかりだったからねぇ」
「うっせ〜、今回は別だよ・・こんだけ静かだったら普通でも眠くなるって」
「・・そうね・・、静かな処・・」
木々がそれほど多くはなく視界は広い・・俺が乗ってきた馬も遠くで座って休んでいるのも見えるくらいだ
「いいのか?はしゃぐのが好きな姉御なんだから最後くらい王都とかで楽しんだほうが・・」
その機になれば馬を買って走ってやる心つもりだったが姉御がここでいいって言った・・
昔では考えられないな
「ば〜か、最後は・・静かな処にいたいもんよ」
「・・姉御・・」
「それよりも、貴方に伝承しておいてもらいたいものがあるのよ」
・・??
「私が何故雷の刀を使用してきたか・・わかる?」
「・・いや・・、考えた事もなかったな」
元々授かった物・・っとは聞いていたが、姉御がそれを選んでいたのか
「私とクローディアはね。とある小さな寺院の子供だったのよ・・あの子は物心ついていなかったからわからなかったけどね・・
その寺院にはある「法」が治められていたの」
「・・法?」
「そっ、東国の小さな小さな村にある寺院に封印されていた・・言うところの最強の力・・ってやつね」
「・・・なんでそんなもんが?」
「まっ、世間を欺くためでしょう。悪用されちゃ危ないみたいだからね・・結局、飢饉の前には寺院も法もクソもないからその書物も売りさばかれたけど」
・・おいおい・・
「・・なんかめちゃくちゃ危ない話じゃないか?」
「そんな簡単に行使できるもんじゃないのよ、これが・・。私はそれを体得したかった・・クローディアを守るためにね」
「そのために雷の力が必要だったのか・・」
「その通り。その力は『天』・・貴方だったら使える技よ」
俺・・が?
「おいおいおいおい、俺が頭が弱いのはわかっているだろう?」
「ば〜か、偶然とは言え貴方はその資質を持っているのよ」
「・・へっ?」
「『天』を発動させるに必要な物・・それは天より降り注ぐ二つの力、即ち『雷』と『陽』よ」
・・・・・、確かに二つとも使用はできるが・・この二つってそんなに凄いのか?
「もちろん、ただで発動できるわけじゃないわよ・・双方全く同じ量にして莫大な力が必要なの」
「あ・・へ?」
「つまり、雷と陽気をめちゃくちゃ多く、かつ同じにしてぶつかり合い融合させるの。両方の力を熟知しておかなければ発動できないわ」
「・・そ、それで無事発動できたら・・どうなるんだよ」
陽気だけでも体力の消費は激しい・・んなもん発動するなんて・・死ぬ気でやらないとな
「全てを破壊できる閃光が放たれるわ・・実際見たことないけど・・ファラの『極光』と同じ性質かもね」
!!
・・あいつのアホみたいに凶悪な魔法と同じ!?・・切り札どころじゃないな・・
「胸に刻んでおきなさい・・いずれ、貴方は『天』を扱える・・この子を守るためにもね」
「姉御・・」
「自分を信じて限界に挑めばきっと作り出せるわ・・なんてったって貴方は私の可愛い舎弟だものね」
二コリと笑う姉御・・なんだか・・それがすごく悲しい
「わかったよ・・それが必要になった時、必ず成功させてやる。天才剣士ナタリーの舎弟としてな」
「・・よろしい♪・・ふぅ・・」
「姉御・・苦しいのか?」
「うん・・もう・・限界みたいね」
・・くっ・・・そ・・
「俺に・・できることはないのか?」
「ふふ・・もっと身体を上手に動かせれば貴方を鍛えてあげたのにね
・・そうね・・抱きしめて・・キスしてくれる?」
「・・お安い御用だ」
嬉しそうに笑う姉御を抱き寄せて静かに口を重ねる
野暮ったいことはしない・・いや、しちゃいけない
「ん・・・」

・・・・・・・・・・・

静寂・・小鳥のさえずりのみが辺りに響き、俺と姉御の気持ちが・・重なった
「・・ありがとう、クロムウェル・・あんたみたいなバカと出会えて・・私は幸せよ」
「姉御・・」
「ふふ・・男に自分から身を任せたのはあんただけだしね・・ほんと・・ありがとう・・」
・・・えっ?
「姉御、それは・・」
「ば〜か、そろそろお別れよ・・でも、私の心はいつも貴方と共にある。そして貴方を見守っている・・覚えておいて」
「姉御!」
「・・さようなら・・」
・・フッ・・
二コリと笑う姉御・・瞳からは一筋の涙がこぼれたかと思うと・・何かが・・消えていった
「・・・・・・・」
「・・クロ・・」
そしてそこにいて俺に抱かれているのは姉御ではなく、タイムだ・・
「・・タイム・・」
「泣いて・・いるの?」
「・・えっ?」
急いで確認する・・どうも目が熱いと思ったら・・涙がこぼれていた・・
「あの人もすごく悲しかったけど・・貴方と再び会えたことに凄く嬉しかった」
「・・記憶があったのか?」
「うん・・、私の意識にあの人が何度も謝ってくれて・・」
・・そうか・・
「・・姉御は、最後に幸せだったんだな・・なら・・俺がやったことは間違いじゃなかったか・・」
「うん・・クロ・・」
「悪いな、変な事に付き合わせてしまって」
「いいのよ・・私は、構わないわ・・」
「タイム・・」
再び抱き合う俺達・・またも訪れた静寂の中、俺は姉御の冥福を祈り
タイムを守ることを堅く誓った・・


・・・・・・・・
・・・・・・・・

数日後
あの後はタイムも詳しい状況はわかっていたらしく一芝居打って無事ことなきを得た・・
真実は関係者以外には伝えていない・・言っても誰も信じないだろうしな

そして俺は再びプラハを訪れた

・・どうしても気になることがあったからな
「・・よう、やはり来たな」
プラハの小さな店で落ち合ったのはクラークさん
館では色々と問題があるからな・・小さだが洒落た店を見つけたのでそこまで呼び出したんだ
「ああ・・」
「あの後は・・手紙の内容通りか?」
呼び出した手紙にはあの後の事を手短に書いた・・
「ああっ、喜んで・・逝ってくれたよ」
「そうか・・」
ゆっくりと座り眼鏡をテーブルに置くクラークさん。この人にとっても普通ではいられないことだ
「でも気になったことがあるんだ・・姉御は・・自分から身を任せた男は俺だけ・・って言った
・・どういうことなんだ?」
「・・・・、お前になら・・言っておいたほうがいいか」
深く息をつくクラークさん・・・やはり・・
「・・クローディアには絶対言うなよ・・もし知られたら・・たとえお前でも本気で消すぞ」
「・・わかっているよ」
「・・・・あいつはな、孤児で諸国を渡り歩いていた時・・身体を売っていたんだ」
!!
「・・姉御・・が?」
「子供二人が食っていくにはそんな手を使わないといけなかったんだよ・・あの頃の国は・・それが日常だ」
「・・その事を・・打ち明けたのか?」
「まさか、お師さんの家で厄介になってからあいつは病気に倒れてな・・そこで身売りして病気になったってことがわかったんだ
・・クローディアを守れなかったのは自分も病で苦しんでいたからなんだよ」
「・・・」
姉御が・・そんなことを・・
「だから最初はかなり荒んでいたな・・あいつ・・。必死の治療で何とか完治したんだがな」
「・・・そうだったんだ・・」
「それ以来あいつに男の影はなかった・・お前を除いてな」
「・・・・」
「だからこそ、お前はあいつにとって特別な存在だったんだよ」
「・・これで・・よかったのかな?」
「ああ・・あいつは幸せだろうさ・・バカな舎弟に好かれたんだからな」
「・・うるせぇ。でも・・何で姉御は甦ったんだろうな?」
「さぁな〜、神様のおかげなんじゃないか?」
・・はぁ?
「あんたらしくない答えだな・・」
「俺達では到底わからんことだってあるさ、それに人が行うにしては有り得ないだろう?」
「・・そんなもんかな・・でも・・そうだとしてもどうしようもない根性悪だぜ?神様ってのはさ」
中途半端に甦らすなっての・・泣いちゃったじゃねぇか
「そんなもんさ・・とにかく、今日は一杯付き合えよ・・あいつの冥福を祈ってやろうぜ」
「・・ああ、わかった・・」
・・その日、俺とクラークさんは静かに杯を交わした
姉御の新しき道を祝うために・・


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