終話 「微笑みを君に」


「まったく・・、派手に暴れたな」

騎士団の応接室、いつものようにタイムが皮肉る
あの後、近くの住民が騎士団に通報して大騒ぎになった。
俺達は事情徴収ということで騎士団屋敷に連行〜、
まぁあらかじめタイムに連絡をいれていたし全面的に俺達におとがめはない・・・
「お返しは3倍返しが男の甲斐性ってね・・・、いって〜!!!!」
ソファーに寝転びながら俺が絶叫をあげる・・。
ヴァイタルチャリオッツの後遺症ってやつだ
肉体酷使する術なので後で激しい筋肉痛に襲われている・・、
今ならフィートにも勝てないだろうな・・・・

「それで、ヤブ医者はどうなるのです?」
ソファにちょこんと座っているフィートがタイムに訪ねる。
こいつも俺に負けないくらい派手に暴れたらしくて騎士団員が到着したときには
1階部分の家具はほとんど原形をとどめてなかったそうだ。
その隣にエネ、もはやフィートの隣が定位置だな。
まだ夢でも見ているような顔をしている
「ああっ、そこのお嬢さん以外にも騙していた患者がたくさんいたようだからな。
死罪はまぬがれないだろう。っといっても・・、す
でに生き地獄を味わっているがな・・・」
あのヤブ医者は気絶しない程度に手加減しつつ殴り続けたのでタイムの言ったとおり
生き地獄を味わったわけだ。
ざま〜みろ
「まぁ、お前達のおかげでゲスな輩を捕まえることができた。感謝はしておこう」
「いいってことよ。クライブの護衛を頼んだことだしな」
タイムのその一言で上機嫌になる俺、
この女が礼を言うのは珍しいのだ!
「ふんっ、それよりもそこのお嬢さんの母親の様子を見に行かなくていいのか?」
「・・・っうか俺達って身柄を拘束されているんじゃないのか?」
「別に行っても構わんぞ?お前がどういう人物か知っている人間が多いからな」
「おっ!それって俺が有名人ってことか!?」
「ああっ、この屋敷に平気で入ってき手当たりしだい女性に声をかける変態ってことがな・・」
呆れた口調のタイム、誤解だ!俺はそんな奴じゃない!!
「・・・見事に当たってますね」
相づちを打つフィート、お前まで!!くそっ、殴ろうにも筋肉痛で動けねぇ!
覚えてやがれ!!
「ともかく、クロムウェルがいると屋敷の空気が汚れる。連れ出してくれると助かるよ」
「人をゴミ扱いするな!!」
反論するも相手にならない・・、とりあえずフィートの肩を借りて屋敷を出る・・・。
ほんと、格好悪いな〜

テントに着くとまだ医者のクライブが看病をしている。
護衛兵も敬礼をして通してくれた、こういうことされると気分がいいな
「あっ、クロムウェルさん。どうしたんです?鎧も着てないし・・、疲れているのですか?」
俺を見てクライブが驚く、まぁ魔術師に肩貸してもらっているからね・・・
「殴り込みで疲れたってことさ、それよりもエネのお袋さんは?」
「見てのとおりです。薬を投与して今、安定したとこですね」
依然、眠っているが顔色はだいぶよくなっていた・・
「クライブさん、ありがとうございます!!!」
深く礼をするエネ、またまた目に涙を浮かべている。エネは涙腺がゆるいと見た!!
「いやいや、患者を助けるのは医者として当然の勤め、気にすることはないですよ。
それよりも用がすんだのなら看病をお願いできますか?
僕もニース村経由でここにきてずっと看病してたのでいささか疲れましてね」
全然疲れてなさそうな感じでクライブが言う。疲れを顔に出さないのも
良い医者のステータスなんだろう・・
「ああっ、わかった、お疲れさん。すまないな、急に頼んだりして・・」
「いいんですよ。『仕事』ってやつですし・・、
それにあの傭兵公社出身の人と会話できることも滅多にないですからね」

・・・ひょっとして・・・ばれてる?

「えっ?どうして先輩が傭兵公社出身だって・・?」
俺より先にフィートが聞く
「ああっ、そこの護衛の方が・・ね」
振り向くと照れくさそうに頭をかく護衛兵、なんでペラペラしゃべってんだよ!!
その前にお前がなんで俺の経歴知ってるんだ・・・・・ってタイムの仕業か・・・
「ええ・・、ああ・・、おほん・・、すみませんでした!!」
言い訳も思いつかないので正直に謝ることにした・・
「いや、いいんですよ。なまじの騎士にくらべたらよほど頼りになりますし」
笑いながらクライブ・・、ええ奴やっちゃな〜!!!
「そう言ってもらえるよ助かるよ・・・」
「はははっ、じゃあ僕はこれにて。また機会があれば会うこともあるでしょう」
爽やかに出ていくクライブ、あのヤブ医者とは大違いだ・・
護衛兵もクライブについていった・・、まぁあいつの護衛が目的だからな・・
「これにて一件落着ですかね?」
「ああっ、そうだな」
俺とフィートが向かい合って呟く・・・
「あの・・・」
エネが真剣な顔つきで俺のほうを見る
「ありがとうございました!!」
これでもかってくらい深くおじぎをするエネ・・、やりすぎじゃないの・・?
「いや、いいってことよ。それよりもおふくろさん大事にしなよ?」
「はい!」
「ああっ!それと・・、もう傭兵稼業から足を洗うこと。エネの腕では荷が重過ぎる!
殴りこみかけた時、死ぬような思いをしたろ?」
まぁよほど腕に覚えがない奴じゃないとあんだけの人数は相手にできないからな・・
この際、普通の生活に戻った方が彼女のためだ
「はい・・、普通に暮らそうと思います。屋敷では・・フィートさんが守ってくれましたので・・・」
頬を染めてモジモジしながらエネが言う・・、
俺が暴れている間にポイントを稼いでいたって訳か!!?
フィートォォォォォ!!
「ははっ、君のような健気な子を守らないといられないタチでね。でもよかったね。エネ」
平気でクサイセリフを言うフィート・・、こいつ・・ひょっとして最初からエネを狙っていた・・?
「はい、ありがとうございます。あのフィートさん達はどうするのですか?」
「いつも通り町でなんでも屋・・だよ。これが僕達の日常って奴さ、ねぇ先輩」
「・・あっ?ああ・・・」
いかん・・二人の雰囲気に押されている・・、負けるなクロムウェル!
「じゃあ・・、また・・・・会えますか?」
「あ〜、でも俺達忙しいから・・」
「もちろん、あっ、ここが僕達が世話になっている宿屋の場所だよ。
落ち着いたら・・ね」
必死で話に入る俺をあっさり退けるフィート・・・、おまけに宿屋のメモまで渡している・・
「はい・・・」
エネまで無視して!もうやだ!帰る!!
「俺は帰るぞ!!後は勝手にやってろ!!」
近くにあった棒を拾いノロノロと出ていく俺・・、フィートとエネは二人の世界に入っている・・
ちくしょう!俺は主人公なんだぞ!!良いことがあんまないなんてどういうことだぁぁぁ!
俺の心の叫びも天に届かず、テントからラブラブ的オーラが漂う・・・



いいよ!!俺の恋人は酒だもんね〜〜!!!



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