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「招かれざるもの 後編」


彼らは無事、朝を迎えることが出来た。

いや、手がかりの無い彼らにとって『夜中の襲撃』が唯一の手がかりの手段と成り得た為、
無事に朝を迎える事は“お手上げ”状態という事であった。

朝日が山々を白い輪郭で染め上げる中、とりあえず体を動かしてから今後の動向を決める
って事でクラーク達はいつもよりやや遅めの朝の鍛錬を始めたのだった。

クラークとロカルノ、キルケとクローディア、セシルはまだ床の中・・・ との感じで
鍛錬を始めたのだった。

とりあえずヴァンはすることがない為、エヌマにある解析を頼んでから彼らの鍛錬の見学としゃれ込んでいた。

クラークの鋭い一閃を、手にした槍で弾きその動作すら攻撃の布石のままに反撃を転じるロカルノの一撃を、
余裕をもって回避しすぐさま次の太刀をあびせるクラーク。

ヴァンはその二人の動きに口をあんぐりと開けていた。
(強いとは思ってたけど、これは人の範疇こえてるべ。クラークさんの回避は解るけど、
鎧を脱いだロカルノさんのあの動きも反則だろ・・・。)
なまじな強さの為に二人との圧倒的な差を感じ、肩を落とすヴァン。
わずかな期待を胸に、女性陣の方を見てみるが・・・
(あの眼帯の人は解る。妹さんらしいから其れ位の強さだとは予想できる。だけど、
なんであんな少女まであそこまでの身体能力なのよ・・。しかも皆絶対本気の動きじゃないし)
普段はメイドのコスプレなどをしているキルケではあるが彼女もユトレヒト隊の一員。
周りが半端ではない為に格闘が専門でなくとも一緒に訓練すれば腕は上がるというもの。(それ
以外の要素“ソードマスアリー”が発動中だが・・・)

お互い攻撃を回避し、一旦距離を置いたとき ぼけ〜っとしてるヴァンにクラークが気付いた。
「どうだ、ヴァン? 一緒に鍛錬するか?」クラークのその誘いに
「俺じゃとてもじゃないですがついていけません」首をぶんぶか振って拒否する。
「何、別に捕って食うわけじゃないし、お互いの実力を把握しとくのは得策だと思うが?」
その尤もな意見で強い人と手合わせをしてみたいという欲求がもたげたヴァンは
「ならば一丁揉んで下さい!」と先ほどの気分はなんのその コロッと態度を変える
「ヴァンは武器は銃以外はあるのかい?」とのクラークの問いに、スッと拳を突き出したヴァン
「へぇ・・ならばこちらも」と武器を置き拳を構えるクラーク。
「格闘モ出来ルデスカ・・・」その問いに、「苦手ではないな」ニヤリとクラーク。
「ならば遠慮なく、本気でいかせてもらいます!」
先ずは様子見のフェイントを織り交ぜたパンチの連打
「よっ」、「はっ」、「せいっ!」
難なく回避し、カウンターを織り交ぜるクラーク
「ぅおっと」
さすがにそれは読んでいたのかなんとかかわすヴァン。だが、体勢は崩れる
「まずは一本!」
その隙を逃さず一撃を入れたクラーク。
バキィィッ
綺麗に入ったが
「まだまだぁ!」
全然堪えた様子も無く反撃に転ずるヴァン
それも難なく回避するクラークだが、自分の拳をみて不思議そうな顔をする。
(おかしいな? 手加減しすぎたか?)
ヴァンの攻撃を回避するだけだったクラークだが、
「今度は俺からいくぞ!」
軽くラッシュを入れてから・・・
「お?おおお?のぉぉぉ」
全部受け止められると思ってたが、ヴァンの反応はあまり宜しい方ではないようで
全段ヒットしてしまった。おかげで次に用意してた攻撃を思わず中断してしまう。
攻撃が止まったのを好機とみてか、すぐさまワンツーパンチ、裏拳、回し蹴りの連続攻撃を放つヴァン
ソレを弾こうと構えたクラークだが、
ズシッ 「!?」
一撃が思いのほか重く、弾けずに全弾をガードすることになった。
自分の攻撃が全部防がれたのと、攻撃を防いだ場所がジンジンするのとでお互い距離を取る二人。

「いっつ〜、ヴァンの反応って一般人並だが、一撃の威力と打たれ強さは半端じゃないな」
ほんの数度打ち合うだけで相手の技量を見破るクラーク

「格闘戦ではなかなかな物という所か。だが武器を持った相手は厳しいな」
二人の打ち合いを見て冷静に意見を述べるロカルノ

「兄上相手にそこまで出来るなんて」「すごいことですよね〜」
女性陣はやんわりとした意見を述べる。

だが、ヴァンにとってはショックだった。
自分の一撃には自信が有った為、攻撃が当たりさえすれば相手のガードなど突き破れると思ってたのだ
だが現実には相手には簡単に防がれただけだった。

此れはヴァンの星の住人の特有の傲慢であった。
彼ら“惑星探査官”は彼らの星ではエリートの象徴であり、厳しい肉体訓練、過酷な肉体条件によって
選定される為にその称号を享けた者は『自分が強くなった』と勘違いしてしまうのだった。
彼らは『過酷な環境でも通常どうり戦える』だけであり、戦闘の技術については一般兵とさして変わらないのだ。
そして彼らは銀河をほぼ掌握しており、戦闘と無縁な日々を送ってきてる所為でヴァン達の世代は慢性的な
『経験不足』でもあるのだ。
ヴァンが思い上がるのも無理は無い話しである。
(俺って実はすっげ〜弱かったんだなぁぁぁー。 あっ! てことはもしあの化物が出ても別に俺が
クラークさん達を守る必要ないじゃん! ってか、逆に守ってもらえるかも〜)

ヴァンは彼らの星の人特有のエリート意識はあるくせに“楽観的な事なかれ主義”な為、落ち込むのも束の間に
無責任な前向きの考え方に至ったりしている・・・。
それが救いなのかどうなのかはともかく、

落ち込んだ様子を見せ、すぐに何かに思いつき元気を取り戻してるヴァンを見て「思ったほどショックは受けてない」
と判断するクラーク達であった。

「さて、これからどーすんべ?」
その後、何事も無く朝食を済まして片付けが終わったところでクラークが皆に問う。
「この辺りをしらみつぶしに探すしかあるまい」
と尤もな意見を述べるロカルノに「めんどくさ〜い」と不満たれるセシルに「まあまあ」と宥めるキルケ。
その様子を何故か頼もしそ〜に眺めていたヴァンに、エヌマから連絡が入ったのだった。

『ヴァン、大体の見当がつきました』
エヌマからの報告を皆に伝えるヴァン。
朝、彼はエヌマにこの村から人が歩ける範囲で自分達の船と同じ程度の突入角度など様々な要因をふまえて、
この村付近に落ちたという“天からの落し物”とやらの位置を計算させていたのだった。
「この村から北に行った所にあるかもしれません」とエヌマの計算結果を伝える。
「ふ〜ん、あなたのパートナーの技師って年いってないくせに頭いいのね〜」とセシルがつぶやく。
ヴァンはエヌマのことは『自分の拠点にいる古代技術を扱える技師』と説明していた。声で少女だとばれてるが
(まさか本当のことは言えないし、言っても信じてもらえるわけないし)

「うしっ! とりあえずそこ以外に行くあてもないし、その場所へいってみようか」
クラークのその号令に皆うなずくのだった。


             ***

エヌマの計算結果は数箇所あった。手分けすると合流が難しくなるとの判断で全員が一緒になっての行動となった。
一つ目の場所では何も見つからず、二つ目の予想地点への移動中にソレは難なく発見することが出来た。

穴の入り口は人どころではなく、家一軒が丸々入れそうなほど巨大であった。
それは本当に不自然な場所に、しかも綺麗な円の形をしていた為に一目で自然の洞窟でないことが解る。
「この穴で間違いないでしょうね」
「まあ、予想地点では無かった訳だが見つかってよかったよかった」
穴を見ながらつぶやくキルケとクラーク。
「各自洞窟探索の準備を怠るなよ」
皆に指示を出すロカルノ。 ・・・クラークよりリーダっぽいのはヴァンも見慣れている。

準備が出来た模様。
先頭をクラークとクローディア。間をヴァンとキルケ。後尾がロカルノとセシルという隊列となった。
「松明の本数は十分か?」と片手に松明を掲げながらクラークに問うロカルノ。
「問題ないぜ、三日三晩ぶっ通しでも大丈夫な位だ」と誇張ではなく其れ位完璧な装備を持ってきている。
「よし! 出発だ」 クラークの号令の下、洞窟へと足を踏み入れてく一行だった。

洞窟は暫くは真っ直ぐだった。しかも斜めになっている為に太陽の位置次第では最奥まで光が届く。
暫く行くと行き止まりに。いや、行き止まりと思われた場所からさらに最奥へと通じてると思われる
小さい穴などが数個ぽつぽつとあるのだった。
人が並んで歩ける大きさから這って進まなければならない位のと大小様々な穴があった。

「これはまた・・・」
「一体どれが正解でしょうか?」
「ふ・・む・・・」
一人一人別れて探索できぬほどにたくさんある穴。
皆がそれぞれ思い思いの穴の前に立ち中を覗いたり、穴を調べたりしていた。

とりあえず判断が決めかねる為に、皆その場所の真ん中付近に集まった時、ソレは起きた。
突然地面が揺れたかと思うと穴が開き、中から腕が出てきてロカルノを掴み穴の中へと引きずり落とす!。
いや、それだけでは済まず、広がった穴にセシルも、そしてヴァンまでもがその穴へと落ちてゆく。
そしてロカルノを落とした当の本人は穴から軽々とした動きで飛び出し、残ったクラーク達と相対するのだった。
「ロカルノ!? セシル、ヴァン!! くっ!」
突然の事態、敵の接近に気付けなかったことを悔やむクラーク。
そして穴から更に2匹、先ほどのモノと同様の姿をした、蟻や昆虫を彷彿させるような体躯で2足歩行、2本腕という
クラーク達の知識では全く知らない未知の化物が姿を現すのだった。

             ***

穴から飛び出たロカルノは華麗に着地する。セシルもそれに習い華麗ではないが怪我はなく着地する。
穴はスロープ状になっておりバランス感覚が少しでも覚えがあれば怪我無く着地はできるであろう。
そして最後にヴァンが飛び出し、尻から見事に地面へと。トドメとばかりに拳大ほどの落石がヴァンの頭部を
『ゴンッ』(ぷふぉっ) ・・直撃した。
 落ちたとき手放した松明は消えずに地面を仄かに照らしており、その明かりの中で見事なコンボを見せ付けるヴァン。
そのまま ぽてり と気絶する。鈍い音はしたが、元々頑丈だったお蔭か目立った外傷はないようだった。
「なにをしてんのよ・・・」仄かな明かりの中で一人コントを見せ付けたヴァンにセシルがぽつりと。
「!? 気をつけろ、セシル! 何か近づいてくる!」
ロカルノ達が落ちた場所は何気に開けた場所であり、奥のほうは暗闇が広がっていた。
そしてその暗闇の方から先ほどの騒ぎを聞きつけたのか何か“得体の知れぬモノ”が近づいてくるようだ。
咄嗟にロカルノは数本の松明を用意し、その部屋を照らせるよう数箇所に投げる。
松明の明かりに照らされ浮かび上がる姿は、先ほどロカルノ達を引きずり落としたモノと同じ体躯、同じ姿。
そして、ヴァンが惑星から逃げ帰る破目になった生物と同じ姿だった・・・。

キシャァァァ
威嚇のような音を立てつつ奥から数匹が明かりの中へと進み寄ってくる。
「どうやら話の通ずる相手では無い様だな」
「同感」
自分達の獲物を構えその化物達に相対するロカルノとセシル。
不用意に近づいてきた一匹に牽制を込めて鋭い突きを放つロカルノ。
ギィンッ
「!?」
ロカルノの放った突きは丸で鉄でも打ち据えたかの様な音を響かせるだけだった。
「な、何!? これは!?」
相方の在り得ない失敗に『何をやってんだか』と手本を見せるようにもう一匹を切り捨てようと一撃を与えるセシルだが
ガギィン
「え!?」
またまたロカルノと同じような事がセシルでも起きた。
驚いてる二人に攻撃を受けた化物が反撃を試みる。
ブン、ブォン
二人は余裕で回避する。
「こいつらの外皮は丸で鉄板のようだな・・・」
「ええ、その代わり攻撃の早さはてんで大したことないみたいだけど」
お互い決定打が無く数の上でロカルノ達がジリ貧のように思える状況だが、
「ならば鉄板を穿つ攻撃を放てばいいだけだ」
槍を腰溜めに構え 『轟ッ』と必殺の一撃を見舞う。
 ヴシャッ 
辺りに体液を散らせ背中から屑折れる化物。
 シュォォォォ
「どうやら中身は其れほど硬いわけではないようだな」と落ち着き払い言うロカルノだったが、
「ロカッ! それっ!」
セシルの鋭い指摘に気が付く。化物を穿った槍の先端が煙を上げているのだった。
それだけではなく体液が飛び散った地面からも、そして返り血を浴びた鎧からも煙が上がる。
「これは・・酸か!?」
すぐさま地面の土で武器を、鎧を拭き取る。
ロカルノ達の武具はそん所そこらの一般の物とは違う。一般の武具ならば先ほどの事で既に使い物には
ならなくなっていたであろう。
「今はたいしたことはないが、そう何度も穿てるものではないな・・」
相手は硬い上に体液は酸。このまま攻撃を続ければ二人の武具が参ってしまうのは目に見えたことだった。
が、
「だったら相手を触らずに倒せればいいのよね」
そう言いセシルが己の獲物『氷狼刹』をかざし
「そ〜れそれそれそれ〜〜、そんな鈍重な動きじゃ直に氷漬けよ〜〜♪」
己の魔力を消費し氷を操れるその刃で化物達をたちまちに氷漬けにしてしまう。
あっというまに氷の彫像が出来上がる。
そして近くの一体の彫像を剣の柄で叩いてみる。
 ピシ ピシピシ、バリンッ
氷が割れると中の化物まで砕け散った。
「けっこ〜疲れるのよね〜中身まで凍らすのって」
軽く腕を回しつつケロッとした顔で呟くセシル。
「ご苦労だったな」
他の彫像を壊しながらロカルノが労う。
程なく全ての彫像を壊し終え、
「さてこれで安全になったな。ヴァンを起こしてこれからどうするか考えんとな。」
命からがら逃げ帰った相手を、たった二人で容易く撃退した事を知らずにヴァンはスヤスヤと気絶してたのだった。

             ***

一方クラーク達は、
穴の中へと消えていった仲間達が気になるが、まずは目の前で敵意をむき出してる化物をどうにかせんとなるまい。
「いったい何なんだ!? こいつらは!」
「なんか台所の“黒い悪魔”にほんのりと似てますね・・」
「嫌なこと言わないで下さい、キルケ・・」
“台所の悪魔”と呼ばれたことが気に食わなかったのか、一匹がクラークへとその腕を揮い襲ってくる。
「よっ、っは!」
ヴァンにとっては必死で避けた攻撃だが、クラークにとっては何事でも無い攻撃の為に余裕のカウンターを打ち込む。
ガギィン!
「!?」
その化物の腕を狙った一撃は難なくその腕を切り飛ばすどころか、鈍い音を散らすのみだった。
ブォン!
そして化物のカウンターの攻撃が繰り出されるが、クラークは咄嗟に回避、そしてその無理な体勢のまま相手の胸部を
蹴り飛ばし自身と、相手との距離を取るのだった。
「気をつけろ! こいつら異常に硬いぞ」
それぞれが一対一の状況になった女性陣に向け、注意を促すクラーク。
「たしかにそのようですね」
相手の攻撃を避け、刀で捌き、返す刀で相手を切りつけながらクローディア
キルケは相手に触れるのが嫌なのか回避に専念していたりする。
「こんな三下程度に本気を入れなけりゃならんとはな・・・」
相手の攻撃を数度受け、実力の程を見切り、本来ならば出す必要の無い技の構えをとるクラーク。
「これが受け止められるか!? アイゼン一刀流! 『霧拍子』!!」
抜刀の必殺の技が煌く! 
斬られた化物は・・・見た目の変化が無く、切られた本人も『?』みたいな仕草をし、隙だらけでいるクラークを
攻撃しようと腕を振り上げ!!
ズルッ
その動作が命取り。斬られた場所から綺麗に、上半身が滑る様に地面へと落ちる。
返り血さえ出させぬ鋭い斬撃、地面へ二つに別れて倒れる化物。
そしてその化物の体液が地面を溶かす・・・
ジュォォォォ
その異変に、気付いたように刀を見ると
シュゥゥゥ・・
クラークの愛刀『紫電雪花』の表面が煙を発しているのだった。
「な、なにぃぃっ?」
血を払うように刀を振るクラーク、だが煙は納まらず
バチバチッ
『紫電雪花』に魔力を纏わらせみる。
すると煙は収まり見えてくる刀身には、見た目の劣化は見えなかった。
「こ、こいつ等、外皮は鉄で中身は酸かよ!?」
「そのようですね・・・」「触らなくてよかった・・」
地面から煙を上げさせている遺骸を見ながら答える二人。

「クローディアはこれを使え!」
自分が今持ってた『紫電雪花』をクローディアへと投げ渡すクラーク。
「! 兄上はどうするので?」
「俺は此れを使うさ!」と言って黒い珠の数珠をはめた右手を翳すクラーク。
そう、クラークには『九骸皇』という切り札がある。
「別に魔法なんぞつかわないだろ、こいつらは・・・九骸皇『臨』!!」
クラークの切り札は魔力さえ断ち切る“魔の刃”。今は力をセーブしており刀身のみを出現させただけ。
「クローディア、そっちは頼んだ! キルケ!もし、仕留めきれなかったときのフォローを頼む」
言い、キルケの側へ。さらに一匹と対峙する。
クローディアは先ほどクラークが放った技と同じ構えを、キルケは魔法の詠唱を始める。
クローディアはクラークと同じ流派である為に。キルケは本来、魔法での支援が主である。
化物はそれぞれ構えを取った二人に“隙あり”と攻撃を試みる。

その瞬間二人の達人は風となる。

同じ呼吸、同じ速度、同じ姿勢で構えを解くクラーク&クローディア。
斬られた化物は先ほどの化物と同じ運命を辿る。動こうとして上下二つに別れるのだった。

「ふぅ・・。こいつら大したこと無いくせに全力を出さないと倒せないのはきっついな・・・。」

化物の実力は彼らにしてみたらてんで大したことはない。だが、倒す為に一撃ごとに本気を込めねばならない。
相手が一桁台ならばなんら問題はないが、20体以上の数を相手をするとなると、
先に力尽きてしまうのはクラーク達である。

「こいつ等があとどれだけいるかいるかわからんが、とにかく奥にいけばロカルノ達と合流できるだろ」
ここがこの化物達の巣ならば、最奥に女王か何らか或いは連れ去られた村人達が居るかも知れない。
そして『ロカルノ達ならば奥へ進むだろう』と、そしてロカルノ達も『クラーク達ならば奥へ進むだろう』
と互いの信頼関係があるからだ。

クラークが言ったそばから、一つの穴から化物が再び現れるのだった。
「まだ湧くんかい!」
げんなりとクラークは呟くが、今度は10匹近く現れるのだった。
「キルケ、魔力は温存しておいてくれ」後のことを考えキルケにそう指示を出し
「クローディア! 二人で片付けるぞ!!」
その言葉のあと、敵の大部分の場所へ自分を的にせんと突っ込む。それに続くクローディア。

それぞれに3〜4匹が纏わり付いた。
一度に数匹相手にしようとも、実力差により余裕でかわし隙あれば一匹ずつ切り捨てれる・・・はずだった。
一匹目が相も変わらずの大振りの攻撃をクラークへと繰り出す! 余裕で避け、
カウンターで相手を切り捨てる・・・はずが、
『ブォンッ』
間髪いれずに傍らから一匹がクラークへと攻撃を繰り出してくる!
!?
予想外の攻撃だったが横に飛び避け・・
『キシャァァァ!』
その避けた場所がわかってたかのように待ち構えてた一匹がクラークへとその腕を揮う!
ギィンッ!
咄嗟に刀で攻撃を受け止め、相手を蹴りその反動で距離を取るクラーク。

見るとクローディアも攻めあぐねているようだ。

「こいつらこんな連携できるのか!?」 
先ほどは一対一で戦ったとはいえ、そこまでの知識があるようには見受けられなかった。
化物の、突然とも思われる連携プレーに焦り、決定打が与えられなくなる。
が、その中でクラークは離れた場所で背中から触手を生やした一体が居るのに気付いた。
注意して見てるとその触手は指示を出してるかの様に蠢いているのだった。

「キルケ!! あの奥にいるやつ魔法でなんとかできないか?」
キルケは2体を相手に余裕で回避していた。
「!! あの奥の奴ですね・・・っと」
キルケは2体を手玉に取るように回避し、フェイントで距離をとる! そして素早く詠唱すると
「ペインフルスピア!!」
虹のように輝く刃が雨のように降り注ぐ! 悲鳴すらかき消し、虹色の光の中へ消えてゆく触手付き。
初めの数発は弾いたようにみえたことから低威力の魔法ですら弾くほどこいつらは硬いようだ。

そしてその触手付きが倒れると、途端に連携が取れなくなる化物達。
もうそうなるとクラーク達の敵ではない為、一匹ずつ確実に屠られてゆくのだった。

「ふぅ、かな〜り厄介だったな」 
「ええ」
「黒い悪魔に触手付き・・・」
指揮できる物がいたことに慄く、一人違うことにオノノイテイタ・・・。

「少し休憩したら出発するぞ、正解の道を教えてもらったからな」
と言うクラークの視線の先は、先ほどの一行が現れた一つの穴だった。
そう、10匹近くが“たった一つの穴”から出てきたのだ

             ***

気絶から立ち直ったヴァンは視界に化物の死骸を収める。
「!??」
「お目覚めか、ヴァン」とロカルノは声を掛けるがヴァンの驚きを見逃さなかった。
「起掛けで悪いが、どうやらこいつらを知ってるようだな?」
ロカルノが死骸を指しヴァンに問い詰める。
「あ〜、え〜っと、その〜」
「皆一応、お前が他の国から来たのは認めてるが、完全に信用してるわけではないぞ?」
ロカルノの詰問とセシルからの“ほのか〜な”殺気にヴァンは、後ろめたくて話してなかったことを語る。

「ふむ、つまりヴァンはあの化物から命からがら逃げ出してきたってことか」
「はい、そのせいでここの世界の人々に迷惑をかけてしまいました・・」
ヴァンはあの星での出来事を全て、そして自分の素性も相手に伝わることは全て伝えた。
「世界をまたに駆ける“空飛ぶ船”ねぇ・・・」
「違う世界から連れて来た異形か・・」
二人はヴァンが語る内容には半信半疑であったが、
「この化物達の話は納得の行く答えではあるし、もし全てが事実だとしても・・・ヴァンが全ての元凶ではないさ」
ヴァンは責任を感じこの件を一人で背負い込もうとしていたことを信じ、慰めをかけるロカルノ。

「ロカルノさん・・」
ロカルノのその一言にヴァンは今まで感じていた責任、悔恨が少し晴れていくのだった。
なにより、この世界の人から言われたのだから・・・
「あ〜〜、二人なに見詰め合ってるのよ! これからどうするのか早く決めないと!」
ロカルノはそのつもりはないが、ヴァンが感極まってロカルノを見つめていたことに勘違いしてセシルが言う。
「ふむ このまま先へ、奥へ進むべきだろうな」
「え!? この穴登っ戻らないの?」
上へ戻るものだと思ってたセシルは意外な答えに驚く。
「ここはこの化物の巣になってるかもしれん。もしそうだとするならば捕らわれた村人達は奥にいるだろうからな。」
その答えにセシルはぶーたれるが、
「クラーク達ならば奥へすすむだろう。それにこの穴を登ってる最中に襲われる可能性も無きにしも非ずだ」
とピシャリと抑えられた。
「さ、とにかく先へ進むぞ」
ロカルノが二人を促す。

奥へ暫く進む。すると道は二手に分かれてるのだった。
「う〜ん、いったいどっちに進めばいいのでしょう?」
そのヴァンの問いに答えるかのようにロカルノはしゃがみ込み、二つの道の地面を調べ始めた。
そして、
「右のようだな」と確信をもって答える。
「え? 何故ですか?」ヴァンが即、質問する。
「右の方が地面がより多く踏み固められてるからだ。」
そう、地面が硬ければその道はより多く使われたという証明。つまりその道は古いということだ。
ヴァンは感嘆するが、『冒険者の基本だぞ』との答えに肩を落とす。隣でセシルは視線を外していた。

それからロカルノ達は幾度か化物達と遭遇するが、ヴァンの射撃、セシルの魔剣で容易く撃退し、
分かれ道はロカルノの見識と、エヌマの成分分析によって奥へ奥へと進んでいくのだった。





時間は少し戻りクラーク達は・・・

道を奥へ、奥へと進んでいた。
先ほどの連戦で弾切れなのか、それからは化物に一向に遭遇することはなかった。
「こうも何もないと道があってるか心配になってくるな〜」
クラーク達も分かれ道と遭遇するがロカルノ達と同様の判断で進んでいる。
「大丈夫ですよ、私はクラークさんを信じます!」
「兄上の選ぶ道ならば構いませんよ」
と二人はクラークを信じているのか惚気ているのか・・・

それからしばらく進むと何故か奥から微かな光が漏れてるのが見える。
「・・? こんな洞窟の奥に光?」
その方向に進むにつれ、それは確かに光であることが確認できる。

そこは開けた場所であった。
光の発生源はその空間の隅に配置されている卵形の物体であった。
『!!』
“あること”に気が付いたクラークは松明を数本用意し、その物体を照らしてみる。
キルケが“ひっ”と悲鳴をあげる。
その卵型の物体の中には“人”が入ってるのだった。
その物体から伸びるように、管みたいのが部屋の中央へと続いている。
明かりのおかげで見える部屋の中央付近には完全に“卵”と判る物体が、部屋の隅の卵型とほぼ同数あるようだ。
そしてその中央付近の地面にはクラークでさえ息を呑む光景が広がっていた。

人が転がっているのだった。

確かめるまでも無く絶命しているだろう。
何故なら男が妊婦のように腹が膨らむだろうか?
女性は腹だけではなく背中が異様に盛り上がっていたりする人もいる。
そして彼らが見覚えの有る、“口からミミズが生えた”ような人までもいた。
「クラークさん、これって・・・」
「ああ、ポーターさんの村の人達だろうな・・・」
「むごい・・」

彼らの助けるべき人々は地獄絵図の惨劇となっていた。

その光景に慄いてる時間は与えられないのか、部屋の奥から聞き覚えのある奇声が響く。
「くっ、やはりまだ居たか!?」
クラークは奥へ松明を放る、そして浮かび上がる化物は・・・
今までより二回りは大きいのでは?というほどの体躯、そしてより一層硬そうな印象のゴツゴツとした表面、その為
より一層凶悪な外見を持つ化物が現れるのだった。

「ついにボスのおでましか?」
つい軽口を叩くがこの部屋の状況の為に、手に滲んだ汗はなかなか引かない。
現れたソイツは今までの化物とは全く違う瞬発力とスピードを有していた。
一跳でクラークへと肉薄する! 
「!?」
今までの化物は硬いだけで、能力はそこいらの一般兵と大差無かった。そう、人並みだったのだ。
だが、こいつは正に見た目どうりの化物となっていた。
そのぶちかましを『九骸皇』でうけとめ・・・れずに壁まで吹き飛ばされるクラーク。
「兄上!!」 「クラークさん!?」
そのまま壁に激突するかと思われた刹那、くるりと転身し、その威力を利用して壁を蹴り『霧拍子』の構えを取り、
化物へ向って逆に突撃する!

化物でなくともそれに反応するのは難しかったであろう。
化物の背後に着地するクラーク。そして化物は上下が泣き別れ・・・せずに、その外皮に大きな傷をつけたのみだった。
そして傷口から体液が勢いよく吹き・・出すことはなく、血のように流れるのみだった。
垂れ落ちた体液はやはり地面を焼いている。
 
斬った当人であるクラークは手ごたえが今までの化物とは大違いなのを悟る。今までのは外が硬いだけで中は空洞という
印象だったが、こいつは違った。いままで以上に硬い外皮に中身は筋肉が詰まってるという感じであった。
「気をつけろ!こいつの硬さは段違いだ、そして中身もぎっしり詰まってやがる!」
合流してきた二人に注意を促す、そして痛みのせいか暫し硬直していた化物はゆっくりと振り返り、怒りの矛先を
クラーク達へと向けるのだった。

怒涛の攻撃だった。
キルケは回避に専念することしかできず、魔法を唱える隙が生まれない。
クラークとクローディアは隙あらば反撃をするが、外皮に傷を刻むのみで相手にダメージを与えること出来ない。
化物の動きによって傷から飛び散る体液がさらに攻撃手段やチャンスを、詠唱の妨害の要因となっていた。
「くっ、埒があかないな。なんとかキルケをフリーにしたいが・・・」
足場も悪いその部屋ではそれがなかなか難しい。
流石に3対1の為に疲れるのか、化物は動きが鈍くなると3人から距離を取るのだった。
「!? なんだか解らないが、今がチャンスだキルケ!」
そのクラークの言葉が始まる前に詠唱を開始していたキルケだったが、
化物が一つ咆哮を上げる。すると地面に転がっている遺体に変化がおきる!
バリッ! ベリベリッィィ
惨劇のオブジェとなってた遺体から生まれてくるモノがあった。
それはクラークたちが先ほどから見慣れてしまった化物だった。
「イヤァァァァ!!」
さすがにその光景に呪文の詠唱を中断してしまうキルケ。
赤い血を羊水のごとく纏い、立ち上がる化物共。その数は20を超えるだろう。
そしてさらに惨劇は襲ってくる。卵型に捕らわれていた人が叫びだすのだ。
正に断末魔の叫びを上げるその卵型をみると、管が不気味な流動を中央の卵へ向けて蠢く。
中の人は見る間にミイラのようにしわがれていく。
流動が収まると卵は ビクッ と震えて割れだした。中から産まれてくるのは、背中に触手を生やした化物であった。

「最悪な事態か・・・」
クラーク達は先ほどの戦闘でこの部屋に入ってきた穴と離れた場所に居るのだった。
「キルケ、走れるか?・・・入り口まで突っ切るぞ!」
一時撤退するしかないと判断したクラーク達は入り口へと突っ込む。
進路を妨害してくるのを全力で切り捨てる!
「生まれたてなのに硬さは同じかよ!」
化物が上で戦ったのと全く同じ硬さだったのに愚痴を漏らす。
数匹は切り捨てれたが、彼らは四方を囲まれた状態へと追い込まれる。触手付きが的確な指示を与えた為だ。
「くっ、まずいな・・・。二人とも、俺が突っ込んで道をつくるからその隙に」
「兄上私が道を切り開きます!」
「クラークさん、私がおとりになった隙に・・」
互いが我が身を犠牲に仲間を救おうとする。
取り囲む化物達は勝利を確信したのか嬉しそうに叫び・・・

足元から氷ついていくのだった。


セシルが『氷狼刹』でクラーク達を取り囲む化物達の足元を凍らせる。
「私達の分を残してくれてたのね♪」
「無事だな? クラーク」
正にドンピシャなタイミングで現れるロカルノ達。クラーク達にはマスクがきらりんと輝いて見えるだろう。
「ロカルノさん、奥! またデカブツが!」
ヴァンの指摘にロカルノは確認し、
「セシル! ヴァン! 用意はいいか?」
「おっけぃですとも!」
「アレをやるのね?」
ロカルノ達は足元が凍って動けぬ化物達を踏み台にし、奥で高みの見物と洒落込んでいたボス級に迫る!
踏まれた化物達は『俺を踏み台にした!?』という感情を表しいきり立つが、
足元が地面に張り付いていては何もできまい。 何もできないままクラーク達に切り捨てられるのだった。

ロカルノの裂帛の気合の乗った槍による衝撃波がボス級を包む。だがそれは全くのノーダメージだったが、足が止まる。
そこにセシルの『氷狼刹』で化物の四肢を凍らし、動きを止める。
トドメのヴァンによるブラスターガンの一撃が、
「マキシマム、シューーー!!」 エネルギーを圧縮した一撃を、つまり“溜め撃ち”を放つ!
ブラスターガンによる光が収まると、ボス級は“バストアップ部”がぽっかりとなくなってるのだった。

全てを斬り終わったクラーク達が合流する。
「あ〜〜!! 何よ、私の分残してくれなかったの!? ・・・って、それより何?この部屋?」
自分の分を残さなかったクラーク達に文句を言おうとして、この部屋の惨状に気付いたセシル。
クラーク達はこの部屋で起こったことをロカルノ達に説明する。ヴァンは見る間に顔色が青くなっていく。
そのことはロカルノがクラークに説明した。
「ヴァン、自分を責めるなよ?」クラーク達の気遣いが、何よりヴァンの心の負担を軽くする。
「それより何時の間にあんな連携編み出したんだ?」
話を変えるかのような、そして当たり前の疑問をぶつける。
「何、ここにくる前に既に同じ奴と出会ったからだ。」
ロカルノが簡単に説明する。

「まだ全員ではないようだな」 ロカルノがあることに気付く
「え? 何がです?」キルケが問う。
「村人の数さ。あの村の規模からいうとここまでで、まだ半数の人達だろう。」
そう、連れ去られた人の数はおよそでしか解らないが、これで全員ではないだろう。
「この奥にまだこんなのがあるのでしょうか・・?」 げんなりしてクローディアが言う。
そう、ここの化物達は人を利用して数を増やしているようなのだ。利用された人の末路は悲惨の一言だろう。
この奥には“ここと同じ事がまたある”可能性が高いのだ。しかし、“まだ生きている人がいる”
その可能性も捨てきれないことはここにいる全員が思ってることである。
「可能性があるんだ、奥に進もう」クラークのその判断に異を唱えるものは一人もいなかった。

奥に進んだクラーク達は驚くべき光景にでくわすのだった。
道を抜け、目にするその部屋は今までのどの部屋よりも巨大な空間。
部屋の隅は先ほどの部屋と同じような光景が存在している。が、中央にあるのは卵ではなく
“玉座”と名した方がしっくりくるであろう物が存在していた。
何より特筆すべきはその“玉座”から生えてる、今までの化物に似たボス級よりも大きい上半身であろう。
「なんだ、こりゃ・・・」
あまりの不気味さにやっと言葉が紡げたクラーク。
だが、さらに驚愕すべき出来事が起こる。

化物がクラーク達に気付き、そのなかのヴァンを見て口を『ニィィィィ』と吊り上げると
{ほう、弱き惑星探査官殿がここまでこれるとはな・・・}とヴァンの星の言葉を話すのだった。
『!?』
「な、い、今?」「ヴァンの国の言葉か!?」「何故俺の言語を!? いや、それより俺の立場を知ってる!?」
{あの調査団の船長は『エイブラム』と言うのだよ。その者の知識は全て取り込んだのだよ探査官殿・・・}
流暢にヴァンの星の言葉を喋る化物、そして腕を両側に“ばっ”っと広げ
{このようにな!!}
部屋のすみにびっしりとならんでいる卵型。その中身は例外なく先ほどと同じ状況になっている。
化物が合図のように叫び、腕を広げると、卵の中の人々が断末魔の叫びを上げるのだった。
全ての流動が中央の玉座へと吸い込まれ、その中央にある上半身の化物は丸で甘美な密を吸ってるかのよう・・
ビクリ と震え、口を開きクラーク達を見据える。
「探査官よ貴様のおかげでここへ連れてこられ、我は体を著しく欠損した。が、ここへ連れてこられたお蔭で更なる力を
手に入れることが出来た・・・」
驚くべきことに、今度はクラーク達の言葉で話すのだった。
一同が慄いてるなか、ヴァンは動かずにいた。
「我が子等を倒してきたようだが、最早関係ない。」
玉座の中央に開いていた穴から“ズルリッ”とボス級が2体産まれ出でるのだった。
「また増やせばよいだけのことだ。さらに貴様らに卵を産み付ければよいしな。」
そして愉快そうに笑う化物。
その中、ヴァンは拳を握り締めワナワナと震えていた。
“恐怖”で、ではなく“怒り”でだ。
「クラークさん、あの外道、俺に殺らせて下さい。」
怒りに震える声でヴァンが呟く。
『!?』 
この中で一番弱いはずのヴァンが今迄で一番強い相手を一人で受け持つと言うのだ。
だが、
「取り巻きは俺達に任せろ!」なぜかヴァンを信じるクラーク。
野生の勘か、クラークは任せても大丈夫と思えたからだ。

その言葉が聞こえたのかボス級は二手に分かれ右と左からクラーク達へと向う格好に。

「エヌマ! コール“SSS”だ!!」
『ラジャ! コール“トリプルエ・・ぇぇえ!?』
「エヌマ! 復唱は!?」『よ、よろしいので?』「くどい!」『ラジャ! コール“SSS” ・・・承!認!!』
エヌマより解除コードが転送される。それを確かめたヴァンは、

「“ヴァレルター・スーツ” 転・装!!」

右手でバイザーを投げ捨て、左手を掲げ叫ぶ!
たちまちヴァンの周囲を銀色の光が覆い、ヴァンを覆い尽くす。
銀色の光の中から現れるその姿は

全身をメタルカラーで染め上げた戦士。
全身鎧の如く全身を覆うそのスーツは鎧のような無骨さはなく、すっきりとしたラインに要所要所が機械的なデザインが
施されており、フルフェイスなマスクの奥に燈る光は彼の怒りを表すかのような赤。
味方を鼓舞し、敵を威圧するその姿!

『惑星探査官・ジークヴァン、見参!!』

ザシッ ザシッ 
一歩一歩相手に歩み寄りながら

「惑星探査官が掟。 一つ、“惑星探査官はむやみに現地民と接触してはならない”」
「惑星探査官が掟。 一つ、“惑星探査官はいかなる場合も生殺与奪は禁じられる”」
「惑星探査官が掟。 一つ、 外道を行うものには・・・・・その限りではない!!」

ヴァンが、いや、ジークヴァンが発するその気合で巨大化物、化物の女王は臆したかのように身を縮めた。

ヴァンが叫びその後、光の中から現れた銀色の戦士にクラーク達は驚いた。いや、その場にいた全員が驚いた。
だが、クラーク達はその戦士を見るなり『もう大丈夫』との安心感が生まれ、化物達は『もう終わった』との
絶望感が生まれるのだった。

クラーク&キルケ&クローディアとロカルノ&セシルの二手に彼らは相談なく分かれ、それぞれがボス級へと向う。
ボス級は絶望感を味わい焦り、攻撃が先ほどの奴とは比べるべくもない大振りばかりになってしまっている。
だが一撃の威力は変わらないので当れば大変なことになる為、クラーク、クローディアは手が出せないでいる。
大振りの攻撃ばかりしてる為に態勢を崩した。 そこへ、その隙を逃さぬかの様にクラークとクローディアは突っ込み
お互いが繰り出す技は『霧拍子』!  化物の胸板はXの字に切り裂かれる。そこへ、
詠唱を終えたキルケが呪文を紡ぐ! 
『ブラッディーハウリング!!』
ボス級の胸から滴る血液が、今正に流れ出てきた場所を逆流するかのように傷口の中へ襲い掛かる!
ズブシュ!グシュグシュ ズシャァ!
「うぇ、あいからわずエグィな その魔法・・・」
自慢の装甲の内側から肉を食い尽くされ崩れ落ちる化物・・・







ロカルノは槍での衝撃波を放ち相手との距離を保つと槍を置き腰に下げてた魔剣『ディ・ヴァイン』を取り出す。
セシルの魔剣とは対照的にこの剣は炎を操る。
セシルが『氷狼刹』でボス級を凍りつかせるとロカルノがすぐ『ディ・ヴァイン』にて解凍する。
動けなかったところを動けるようにしてくれたお礼にとロカルノへその豪腕を揮う!
が、ロカルノはその攻撃を読んでいた為、重装甲の鎧姿なのに華麗に回避しその剣を相手に突き刺す!
化物は自分の硬さを理解しているのか特に回避行動をとることはなかった。
そう、本来ならロカルノの攻撃は弾かれる・・・はずだった。
『ドスッ』ボス級の体内へ刀身は沈みゆく、そしてセシルもロカルノの行動に続いていたのか剣を相手に突き刺す。
『ズススッ』刀身が体内へ沈んだと同時に二人は剣の力を解放した
体内を凍て付き焼かれた化物はそのまま動かなくなり、その場に屑折れるのだった。
「どんな物質でも“急激な温度の変化”には脆くなるものだ。どんなに硬かろうがな・・・」
ロカルノがボス級が最後に抱いていたであろう疑問に答えた。





ザシッ ザシッ 
一歩一歩近寄ってくる“ジークヴァン”に恐れるままに背中に触手を生やし四方八方から襲い掛かる!
触手が銀色のボディーを打ち据える! 
バァン 
一撃毎に火花を散らしその衝撃でよろける銀の戦士。
『!!?』
さらに追撃をかけると全段命中し、相手は吹っ飛んだ。
「ふっ、ふははっ!! 何が“ジークヴァン”だ!? 驚かしおって!」
自分の攻撃が相手に通用することが解り余裕を出す女王。
「『船長』の知識には無い事だったが、どうやらただのこけおどしのようだな!」
全身から煙を出しながら起き上がった銀の戦士に侮蔑をぶつける。
しかし、煙の消えたボディーには“傷一つ付いてなかった”
「なっ!?、無傷だと!?・・・えぇぇい!」
全くの無傷だった相手を小癪とばかりに触手を先ほどより本数を増やし攻撃する!
『!?』
今度は回避された。 されたどころか一本ずつ捕まれ、千切っては投げ、千切っては投げられた。
触手が半分まで千切られたところで攻撃の手止めた。
「何故だ!? 何故今度は当らんのだ!?」ヒステリックに叫ぶ。

ヴァンはこのスーツを装着すれば『エヌマ』とよりシンクロすることが出来る。
エヌマの人間では反応しきれぬ計算結果を受け、それを行動に移すことが出来る為、達人並の反応速度となる。
そしてスーツ表面は“ナノマシン”と“フィールド”が幾層にも重なっており、
外部からの攻撃はナノマシンが爆発することによって殆ど霧散させてしまう。そしてその爆発から守る為の
フィールドなのだ。
だが、ゼロ距離から爆発を受けてはスーツが無傷でも中の人間が参ってしまう。そう、惑星探査官の厳しい肉体条件は
この爆発に何度も耐えれることが一番問われるのだ。
そしてヴァンの異常さは、“普通の探査官の3倍も耐えれる”という所だろう。

「たった一つ、たった一つの簡単な答えだ・・・」銀の戦士が声を出す。
「な、なにがだ!?」
「お前は俺を・・・・怒らせた!!」瞬時に女王に肉薄し、
ドゴォォッ!!
強烈なボディブローを相手に叩き込んだ。
逆流する唾が銀のボディーに降りかかるが、表面に煙を上げるだけだった。
ドガァッッ!!!
煙に包まれる中、降りてきた顎にアッパーフックを叩きつける!
そして相手から距離をとると、
『ヴァン、“ラグナロック・ボルト”転送準備完了です!!』
とエヌマから必殺の重火器が準備出来たとの報告が来る。が、
「いや、いい。こいつは俺が自らで倒す!」
そう答え相手を見据える。相手は未だ仰け反ったままの姿勢でいた。
(カウンターが効き過ぎたか・・・?)
そう思い、一瞬油断したその時に! 反動をつけて姿勢を戻しその勢いを利用し口から『何か』を吐き出した!
それは彼らの『体液』だった。ソレを圧縮し、ブラスターの様に吐き出す。
直撃を受けてしまった銀の戦士は堪らず横に逸れ、そのブラスターから回避する。

『ヴァン!今のはまずいです! 今また同じ攻撃を受けては、ナノマシンの再生が間に合いません!』
ほんの一瞬の油断で自らを窮地に追い詰めたことに舌打ちをする。
女王はその攻撃が有効打を与えたことに口元を吊上げる。
「エヌマ! 残エネルギーは!?」 
『まだ70%以上ありますが、ナノマシンによる再生完了後は40%代です!』
「それだけあれば十分!」
そう答え、再び女王の吐き出した“アシッドブラスター”から回避する。
「えぇぇい! ちょこまかと!!」
当らぬ相手に癇癪を起こし、触手を再生させ相手を捕らえようと伸ばす!
「ジョルト・スパーク!!」 銀の戦士が叫ぶと全身が雷で包まれる!
迫る触手は銀の戦士の表面を触れることすらできず、焼け崩れていく。
それに業を煮やし“アシッドブラスター”を自分の触手が溶けるのを構わず繰り出す!
その攻撃を上空にジャンプすることで避ける銀の戦士。 だが、女王はわざと其処に逃げれるように
触手を手薄にしていた。
「ふはは、空中に逃れては避けれまい!! 死ネェェェェェ!!!」
絶対の勝利を確信して必殺の一撃を見舞う!!

銀の戦士は其処に回避したのではなく、其処へ舞ったのだった!
「スラッシュ・ボルトスパーク!!」
空中で雷を纏いながらドラゴンキックの態勢をとると、正に雷の如き蹴りを放つ!!
それは女王の放った“アシッドブラスター”の射線上であった。
必殺の技を放ったであろうが、自ら攻撃の中へ飛び込んで来た銀の戦士に(莫迦め)とほくそ笑む。

直撃!! そのまま空中で溶け、現れるであろう無残な姿を楽しみにする女王

しかし、そのブラスターを掻き分けて現れる銀の戦士に驚愕する
「くゥらァえーーーーー!!!」 裂帛の気合が上がる!

!!!

ズダッ・・
地面に膝を着きつつ着地し、 すっくと立ち上がるその背後には女王が
腹から見事に穴を穿たれ佇む。そして

「成敗!!」

ズドォォォォォォン!!

と爆発、炎上する女王





離れてその様子を窺ってたクラークたちは銀の戦士の一言の後、爆発する女王に
「ずどぉぉぉぉん・・・って おぃ!!」

飛散してくる女王の欠片を一生懸命避けるのだった・・・


             ***

あの戦いから一週間が過ぎた。村人達を弔い、穴を埋めたりで大変だった。
そして一息つけると思った矢先にヴァンは帰ると言い出したのだった。
クラーク達が『せめて自分達の所で休んではどうだ?』と誘うが、、
『これ以上此処に留まってはまた、何か問題が私のせいで起きそうですし』との一言で断った。
ならば見送るとの言葉にも断るが、強引だったので場所だけ教えてひっそりと帰ることにした。
クラーク達は自分達の住処へ、ヴァンは自分の船へとそれぞれ別れた。

「ふぅ、エヌマもご苦労だったね」と連日連夜稼動し続けた為スリープモードに入ったエヌマに、聞こえてないが
ヴァンは労いの言葉をかける。
「クラークさん達には悪いけど、やっぱ此処に留まるのはよくないからな。」
ヴァンは船を発進する為の準備を始めた。
「クラークさん達でもあと1週間はかけないと此処にはこれないだろうけど・・・」
ヴァンは何故か急がないとクラーク達が追いつけそうな気がしていた。それと同時にやっぱり最後にもう一度会いたいと
いう言葉表面上は強がってるが、内心は淋しかった。
その内心を表すかのように準備は非常にゆっくりとしたものになっていた。
だが、それでも半日もつぶせるはずもなく、準備は整った。
「ぃよっし! 準備完了〜。 それでは出発進行と行きますか!」
そう言った矢先、船内にアラームが響き渡る。
修理の終わったレーダーがこちらに向ってくる二つの物体を感知したのだった。

クラーク達がドラゴンに乗ってやってきた。

目の前で人に変身するドラゴンを見てもヴァンはもう、驚くのを辞めた。(なんでもアリだもん)
と表面上では毒づくが、内心は喜んでいる。

「どうやら間に合ったようだな」してやったり顔のクラーク
「なんでそこまでしてくれるのですか・・?」内心を隠し、ヴァンは問う
「ふっ。戦友(とも)を見送るのに理由は必要か?」
その言葉にヴァンは“はっ”として顔を上げる
うなづくクラーク達。
目頭が熱くなるが、無理やり笑顔をつくりハッチに戻り、
「ありがとう! 皆さん! あなた方に出会えて本当によかった!!」
「おう!俺達も貴重な体験をしたぜ!」 一同ヴァンを見送る。

ハッチが閉じ、ゆっくりと上昇を始める宇宙船。
クラーク達はそれを眺める。

眼下に見えるクラーク達に手を振ってると何時の間に復活したのか、エヌマが声をかけて来た。
「あの〜ヴァン?」「なんだい?エヌマ」「大変申し上げ難いのですが・・・」「ワープするまで待ってくれ」
「そのワープのことですが・・・」
エヌマのその言葉が終わるよりも先に

プスンッ

気の抜けた音がしたと同時に上昇は止まる。いや、それどころかゆっくりと下降してゆく・・・


クラーク達は、ゆっくりと上昇し遥か上空まで昇る船を見送ってると
「あれ?なんだかまた姿が大きくなってきてません?」
「ってか、近づいてきてる?」
クラーク達が見てる目の前で再びゆっくりと地面へと着地する。
ハッチが開き、先ほど見送った人物が出てきて

「ガス欠でまだしばらく帰れませんでした(てへっ)」

クラーク達は全員コケたのだった・・・


それから暫くヴァンはこの世界でやっかいになったとさ。(めでたしめでたし?)

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