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「彼と彼女と妾龍と・・」 第一話


・・・カリカリカリカリ
「これは思った以上の力を持ったものだ。正に『夢幻』の名に相応しい。
・・・しかし、力を発揮するためには蟲の状態でなければならない模様。
しかも、蟲の時は狂暴きまわりなく私の手にあまる・・・一層、壊」
カリカリカリ・・・、ガチャンッ!!!
「ぬっ!!? 檻が・・・何処だ・・・」
・・・・・・・
「私に作られた分際で逃げられると・・・逃がすか!!」
・・・カサカサカサ
「おのれ、ちょこまかとぉっ。・・・『魔矢』っ!!!」
ブゥゥゥゥン ざくっ!!!
「ぐっ!!? ・・・・・・・」
・・・・・・、カサカサカサ・・・パリーン
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・

商業都市ルザリア、その通りを闊歩するのは粋な遊人(誤)クロムウェルさん。
容姿端麗・豪力無双・才色兼備と3拍子そろったナイスガイで
何でも屋である彼は街の平和の為に事件を求め街を散策するのだが
「へいっネエちゃん、俺とデートし へボァっ!!?」
 「近寄るなっ、変態っ!!!」
「・・・お、おのれ、こんなイイ男の誘いを断るとは・・・醜男好きなのかっ」
街娘から金的への一撃にヘタれこんだ彼は、
それでも通行人の邪魔にならぬよう無様に転がり道端へ。 手馴れたものである。
因みにクロムウェルさんの勝率0%に、もはやそのことが街中の年頃の娘に知れ渡り
これからもそれが決して上がることが無い事を当人は知る由もない。
しかも、そんな彼が若くも真の意味で有能で凛々しいルザリア騎士団団長タイムの
彼氏であると嘘みたいな噂が流れていれば、それは変態男(?)の自作自演と・・・
兎も角、道端で先ほどの名誉の負傷を癒しつつ街を見守り
もとい、若い女の子を物色していると人波に紛れ一瞬視界に入るのは
旅マントで体は覆いつつも素顔を曝している黒髪の女。
高身の割にマントの上からでも華奢な身体で、優しげな感に御誉言抜きで美女と言える。
その姿を、格闘家の鋭い視力は一瞬であっても決して逃すことはなかった。
キュピーンッ!!!
「目標発見。これより追跡を開始するっ!!」
先の失敗を糧に、敵を知れば百戦危うからずと
即突撃をすることなく偵察を始めるのは流石、変態でも「不死身」と呼ばれた面々の一人。
・・・ならば懲りてさっさと諦めろ、以前に失敗などしないという意見もあるが。
ともあれ、その美女の好みを調査するため見つからぬよう尾行
正しくは、ストーキングを開始した・・・
彼女は旅人の格好なだけに、ルザリアの街並を興味深げに見つつ露天商では物色に
売人,品物を見て楽しみ、食物屋台では店主との猛攻で勝星にオマケ獲得したり・・・
「うむ、敵は散歩の達人と見た。ここで取るべき戦法は・・・」
物陰に隠れ周囲の通行人がビビるほど考え込み始めたクロムウェル。
思いつく戦法など毎度通りに真正面玉砕突撃のみ。
と、クロムウェルが突撃をかけようとしたその前に、
何に気付いたか美女はUターンにクロムウェルの方へ。
そして物陰から飛び出そうと硬直に変な格好にままの彼の前に立つ。
 「・・・何やってるんだ? マヌケだぞ、クロムウェル。」
「な、何故俺の名を!!? 初対面の美女に名を知られているなんて
もしかしなくても俺ってモテモテだったのかぁっ!!!」
 「んなワケあるか、バカたれ」
苦笑にクロムウェルの頭を優しく小突く美女に、ドキッと高鳴る鼓動。
「・・・(こ、これは・・・惚れたのか? 俺というものが初対面の相手に?)」
 「まぁ、ココで出会ったのも丁度いい。 人手も欲しかったし。
差し当たっては・・・何処かで時間潰しに適当な処、紹介してくれ」
「え? ああ、それなら・・・」
主導権を奪われクロムウェルは美女の弟分と化し、街の案内を。
その美女を知らずとも何処か覚えある雰囲気と姐御な感に言われるまま・・・

騎士等の通常任務の一つに市街巡回というものがある。
住民との交流や犯罪の抑止として意外に重要であり侮れないのだが、
ルザリア騎士スクイードもまた深夜の街を
同僚と共にいつも通り巡回していた。今夜も大した事件も無く過ぎるな 
と、その時裏通りから響く野良犬の吠声。
普段なら捨てておくのだが、それは直感であり予感だったのかもしれない。
だから、生ゴミ臭い薄汚れた裏路地へ。
二人の騎士の気配に先ほど吠えていた犬は一目散に退散。
 そして、二人の視界に入ってきたのは酔い潰れた一組の男女。
女は、年頃より遥かにあどけない寝顔の頬を酒気で朱に染め、男を抱枕代わりに抱擁。
「・・・何であれ、被害にあう前に保護出来てよかった。」
「不埒者が災難にあったところで因果応報。何故、我々が・・・」
「気持ちは分かるが、そういうな。今更捨てて置けないだろ?」
「全く。 ・・・って、この男は」
「変態!!? そんな、まさか・・・(ガーン」
顔を乳間に埋められ一体どんな夢を見ているのか魘されていたのはクロムウェル。
ある意味ルザリア騎士団にとって彼は宿敵であり、
その彼のナンパ もとい、浮気していた事は驚愕に値する。
そして二人の心に沸々と沸きあがる怒りの感情。
もはや、これから彼の身へ確実に起こるであろう悲劇に、一片の同情すらわかず・・・

・・・・・・・・・

目覚めれば其処は水中だった。
正しくは、腕をワイヤーで束縛されて深桶に放り込まれたのだが。
 何であれ「ガボボボ・・・ブハッ、ゲホッゲホッ・・・な、何だ?」
立ち、水面から顔をだせば其処は良く知る光景。騎士団屋敷の中庭であった。
そして人の気配に見てみれば緋髪にスーツ姿の美女 ルザリア騎士団団長タイム。
クロムウェルは昨日の出来事を思い出し・・・
ならば目の前の女性が激怒していて当然なのだが、その無表情がより一層の・・・
「た、タイム、その、あの、あれは・・・」
 「・・・クロ、浮気したの?」
瞬間、その表情が丸で見捨てられた幼子のように哀しみに崩れ
「ち、違うっ!!!」
疑問は確信へ。 それも一転無表情、
パチンとならす指にタイムの背後へ集結整列する完全武装のルザリア騎士達。 
ひょっとして、騎士全員そろってますか?
そしてタイムが抜き放ち揮うレイピアに、深桶は水を熱湯化に撒き散らしつつ崩壊。
「待ってくれっ!! 話をっ!! 本当に俺は・・・」
己の運命を察し慌てふためくクロムウェルに対し、タイムはもはや一言も発せず
ただ、拳の立てた親指で首を斬り、それを下に向けて落とす仕草。 
つまり
 「・・・・・・」
弁解無用。地獄へ堕ちろ。
騎士達は一糸乱れぬ動きでジャキッと得物を抜き放ち、そして雄叫びを上げて突撃。
「せめて口で言ってくれえええええええっ!!!」
クロムウェル絶体絶命。命を賭けたゲームの開始であった・・・・合唱(チーン♪

訓練場へと場所を変え、繰り広げられる光景は
クロムウェルは体力差に追着いてきた騎士を倒しては逃げ、
倒された騎士も暫し休息に再び追撃の群れに参加して追い回す、
クロムウェルが諦めない限り終わらない耐久鉄人レース。
そして、観客はタイム。
文官も遠くで離れて見ているが・・・恐ろしくて近づけやしない。
否、唯一人。 逆鱗に触れることを意もせずスタスタと距離をつめる者が。
それはマントで身体を覆った美女。件の、クロムウェルの浮気相手と思われている・・・
そのままタイムの横へ
 「いやはや、あれだけの相手に・・・流石と言うべきか当然と言うべきか」
 「・・・・・・、何の用だ?」
 「あ〜〜、もうそろそろクロムウェルを許してやってくれないか?
強引に誘った俺が悪いわけで、奴は別に悪くないんだよ。」
 「・・・・・・」
向けたタイムの表情は悲しみに今にも泣きそう。
 「え〜〜〜っと、つまり偶然出会ったのを幸いと俺が時間潰しに誘って、一緒に酒を。
タイムさんも一緒に誘うべきだったな。・・・クロムウェルが純に不器用な奴で
照れ隠しに毎度バカやってるのはタイムさんが一番よく知ってると思うけど?」
美女がタイムに向ける笑みは聖女の如く優しく慈愛に溢れ、
見ているだけでタイムの心の中の何かを氷解させていく。
 「・・・・・・」
それでも、今ひとつ許すためには一歩踏み出せず。
 「・・・なら、俺に免じて。俺、今、ちょっと人手が欲しいんだ。
出来ればこんな誤解でクロムウェルをツブされると困るんで・・・」
頭を掻きつつ取り合えず許す理由を考える美女に、タイムも仕方ないと遂に苦笑を。
タイムの指示に、騎士達も心残りありながら次第に走るのをやめ撤収開始。
そして訓練場にポツンとマヌケに残されたのはクロムウェル。
解放されたにも関らず と言うか何時もよりあっさり解放されたので怪しんでいるのか
その場に立ち尽くしたまま一歩も動かない。
しょうがないので二人の方から向かう。
「何だ、その・・・」
 「今日はこの方に免じてココまでとします。」
「・・・・・・(汗」
まだクロムウェルは許されていないっぽかった。 ともあれ、一休止に
 「クロムウェル、この方を紹介していただけませんか?」
「あ、ああ。この人は・・・、・・・、・・・、・・・あ〜〜」
 「・・・如何した?」
「・・・誰? って言うか、初対面のはず、だよな?
何故、俺達の名前を・・・有名人だから分かるかも知れないけど。
それでも躊躇なく俺達の名を言ってなかったか?」
 「!!? 確かに初対面・・・でも、何処かで会った気が・・・」
クロムウェル、一緒に酒呑み潰れていたくせに
名前知らんかったんかいというツッコミはさて置き、
 「そう言えば未だ紹介していなかったな。 私の名はイリア、真龍騎公の遣い。」
真龍騎公ライとそれに関連した説明は今更なので省略。
「「道理で。でも・・・」」
 「ライの屋敷で紹介されなかったのは、俺が身内にも明かせない存在だから。
王国ヴィガルドの失姫と妾龍の逸話はこの辺りにも届いてると思うけど?
連中、はりきってバラ撒いていたから・・・(苦笑」
確かに、王国ヴィガルドの失姫と妾龍の話は図られたように有名である。
それが出奔した失姫を護るため支援者達の仕業で、
ヴィガルドが野放しにしているのは有名になりすぎた故に
もはや名乗り出ても本物と証明できないから というのは
タイムには想像に易い。 王国ヴィガルドと真龍騎公ライの関係をも考えれば
今目の前にいるイリアと名乗る者が、そのイリアである事は間違いない事になる。
すなわち、正真正銘 真龍騎公の遣い。
「で、王国ヴィガルドの失姫と妾龍の逸話って?」
 「「ヲイ」」
仕方なくタイムが説明を・・・話は凡そ、失姫と女騎士のラブロマンスだったが・・・
「・・・それが俺の力が必要とは、どんな用で?」
 「ああ、それは・・・」
イリアの話をまとめると、
希望都市シウォングで、ある魔導士が殺害されるという事件が起きた。
事件発生当時に彼が使用していたであろう音声記憶装置から事の顛末は明らかだった。
創造物(クリーチャー)が逃げ出そうとしていたのを妨害し殺されたらしい。
その創造物の正体もまた、彼が付けていた実験ノートよりハッキリしている。
「夢幻の壺」大容量魔力蓄積体として開発されたコレは、異次元の扉として機能するが
故に何処からか流れ込んだ力により半生物化に蟲となってしまった。
その蟲状態での形状は甲虫に近く壺⇔蟲の変身を行い、
壺状態では普通の頑丈な壺でしかないという。
「夢幻の壺」は人に触れられるのを嫌うため己から人を襲うことはなく、
『門』として、『媒介』として悪用すれば神格召喚も出来る。
事態を急ぐことではないのだが、モノがモノだけに捨てておく事も出来ず
他の極星騎士達は何らかの任務があったり都市から離れるわけにもいかないので
今回は隠玉であるイリアが出向き・・・
 「『探索』の結果、ルザリアにいるのは間違いないんだけどね、
どうも今は「壺」になってるらしく、再び動き出すまでは・・・
ルザリア騎士団には注意だけしていただきたい。
モノだけに普通では対処出来ない代物なので」
 「・・・、了解した。騎士達にはそう話を伝えておく。」
 「心遣い感謝する。クロムウェル達には正式に協力を依頼したい。
『夢幻の壺』の探索とその封印、もしくは破壊 を。
ウチの『魔導最高顧問』によると『夢幻の壺』を用いて神格召喚できるのは
分かるだけでも自身を含めて3人。俺「妾龍」イリア,「法王」フィート。
それは、「夢幻の壺」を魔導で如何様にも出来るということ。いれば非情に心強い。
勿論、依頼料ははずませてもらう。」
「ああ、それは問題ないが・・・」
クロムウェルが視線を向けた先には、心配げなタイム。浮気疑惑は晴れたわけではない。
 「ああ、大丈夫。俺、男に対してそういう感情持たないから。
女同士で乳繰り合う趣味もないけどね・・・と言うわけで安心してくれ」
「んー、俺が言うのも何だが安心できないと思うぞ。このボディだし」
とクロムウェルの手が空に形作るのは、正に正しくイリアのボディスタイル。
 「っ!!? クロのバカ、変態・・・」
「あっ、いやっ、そういうわけじゃなくって・・・」
 「あ〜〜、はいはい。惚気るのは二人っきりになってから楽しんでくれ」
「「ち、違うっ!!!」」
 「流石、相思相愛。息もピッタリ。焼けるねぇヒュ〜ヒュ〜♪」
「「〜〜〜」」
年上だからなのか経験の差なのか・・・手玉に取られ二人とも爆照れ。
「・・・ところで、シウォングの『魔導最高顧問』って誰?」
クロムウェルの脳裏によぎる面々は、四姫。
其処から戦士の猫娘と秘書嬢を排除に残ったのは、妖艶薬師嬢と幼娘嬢。
と言う事は、妖艶薬師嬢?
 「勿論、ルー(幼娘嬢)」
「「!!?」」
ともあれ、イリアとクロムウェルは心強い助っ人「法王」フィートの元へ向かうのだった。


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