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デス&ユト隊01 「ミッション オブ ラビリンス」


陽下の街中、瞬間 巨大な影が走る。それに天を見上げた街人達が捉えるのは
陽輪から姿を現した影二つ。それは恰も鳥の如く・・・しかし、高度から考えて
そのサイズが鳥よりも遥かに巨大な巨鳥の類であることが街人達に分った。
本来なら、その時点で街人達は未知の恐怖に逃げ戸惑うのだが彼等は異なり
その意図を測ろうと観察し続けるもの半数 我関せずと日常に戻るもの半数。
兎も角、陽輪から姿を現したソレは羽ばたく事無く十字のままに滑空し、
次第にその姿を明白にしていく。それは巨鳥の類ではなく竜・・・飛竜。
その狂暴さ故に災獣以上の存在が目指す先は、その街が構成する都市
ではなく、正しくはその都外れの屋敷であった。 とれなれば
街人達が気にすることではなくソレを見守っていた人々も日常へ戻った・・・

当の飛竜二体が降り立った屋敷では、その二体を出迎える者がいた。
その者の姿は恰も田舎兄貴な庭師みたく、現にその手には鞘に納まった鉈が。
真逆その鉈 銘刀「日暮」と言えども一介の散枝用鉈で飛竜と渡り合えるだけの御技が
その庭師風の青年に無きにしもあらず、てか
「よう、いらっしゃい」
「おう、招かれたぜ」
友好の笑みで片手あげる庭師な青年に応えるのは飛竜 ではなく、その背から顔を出した
眼鏡の青年。続き侍風隻眼娘と金髪令嬢,黒猫少女がひょこっと顔を出し同様に挨拶する。
もう一体の飛竜から顔を出すのは銀髪の仮面青年。
「丁寧な御招き、感謝する」
「いやいや、こちらこそ遠い処から御足労、感謝する」
銀髪の仮面青年と庭師な青年の間で交わされるのは紳士な気配と挨拶。それを撃破り
 「・・・おええっ」
嘔吐なそれでバッチィとばかりにみじろいた飛竜から投げ出される一つの塊。
金髪美女にも関らず己の所へ落ちて来たそれを、庭師な青年は態々数歩歩いて避け
瞬後その場所へ
 「へぶぎゃ!!」
奇声上げて潰れるその物体。庭師な青年がそれをみる眼は、汚物を見る眼そものも。
その視界で閃光が弾けた時には、その場には飛竜二体の変わりに更に二人の
妖艶な衣装でも清楚な気配の娘と巫女衣装と変わった井出達でも活発そうな少女。
「まぁ、外で立ち話も何だし中で落ち着こうか」
庭師風青年に促され、一行は己の旅荷物をもって屋敷に入っていく。
その穏かな光景で彼等の正体を見抜けるものなど存在しないだろう。
庭師風の青年は、この希望都市の王たる者 真龍騎公ライ。そして、彼とその四姫,配下達
無敵の刃「極星騎士団」の居城たる屋敷へ主直々に招かれる一行は不死身を継ぐ無敵の
冒険者パーティ「ユトレヒト隊」。何故彼等が知り合ったかは別話にあるので省略。
兎も角、挨拶もソコソコに居間のテーブルに並座るのは、主らしく小奇麗にサッパリとした
ライを始めにその愛人(?)である四姫のルー&レイハ&シエル&アルシアと
ユト隊のリーダーであるクラークとその彼女であるキルケ&クローディアに
参謀(ライ感?)のロカルノとその使役獣(ライ談)で丸でボロクズに屍のようなセシル。
因みに「極星騎士団」のそれ以外の面々リオ,アレス,ディは客室の準備で
客人にも関らず淑女なアミルはその手伝い。ルナ,ミィ,メルフィの子供組はいずれ分る
ということで・・・麗かな陽射しの外とは違い爽やかな風が吹込む室内にも関らず
珍しく真剣なライが口火を切る。
「単刀直入に、今回は休暇と称して依頼の為に態々来てもらったわけだが・・・」
「・・・それで態々人払いしたのは?」
「今回のミッションに加わるこの10人以外の身の安全を確保するため。
ソチラの居残組まで招待したのも、強いては非戦闘員以外の安全を確保するため。
万が一人質に取られたりしたら厄介だしな。その点ココなら害意ある者は除けるし
それでも侵入してきても十二分に迎撃できる。これでも謀戦は苦手でね・・・」
希望都市、このマチは万人を受入れ恩恵を齎す。しかし、その住人をも一部としている
生きた『守護結界』は都市へ害意持つ者を退け、侵入を守護者達に逸早く知らせる。
「それだけヤバいミッションって事か?」
「俺の予想では・・・な。 断ってくれても構わない。その時は俺達五人で出る」
「・・・・・・聞かせてくれ。」
「・・・、・・・依頼の内容を話す前に予備知識として『迷宮』は知ってるな?」
「「「「「それは一応・・・」」」」」
『迷宮』、それは一般的に旧文明の巨大宝物庫と言われている。宝物庫である以上は
其処にあるのは宝物様々なだけではなく泥棒対策のモンスターまで蔓延っている。
それ故に其処を探索する冒険者たちは命をかけてでも一攫千金を狙うのだが・・・
 『迷宮』と呼ばれるモノには一種の巨大な創造装置であるものも存在する。元々は
神器を創造することを目的とされたのだろうが思惑と異なり結果、今そこは人の欲望を
吸収して財宝やモンスターを生み出す迷宮と化してしまった。前線基地である村の住人達を
糧として「餌」を生出し、それでより人を集めた都市の欲望は更に「餌」を生出す。
それは恰も無限の蛇の環のように・・・
「普通、都市の住人数・探索行方不明者数と迷宮から得られた財宝の利益の間には
一定の法則が存在する。まぁ当然だな、人のエネルギーで財宝を造ってるんだから。
迷宮都市パンドラ、ここも創造型迷宮の上に出来た都市なわけなんだが・・・
・・・人のエネルギーである収入と出てきた財宝の支出が極端に合わない。ここは な。
丸で何かが正々堂々と横領しているかのように。でもコレだけなら人の手及ばぬ奥深くに
未だ見ぬ神器・魔剣クラスの財宝が眠る可能性が考えられる。現にそれが広告ネタだ。
でもな、迷宮パンドラの収入支出レポート報告者が各国諜報部へ極秘裏に発表した後で
怪死して、慌てたように未だ見ぬ神器の広告が出されれば・・・・」
「・・・何者かの意図を感じる。 奇特でなければ一笑に付してしまう警鐘だからな」
ライの言葉を繋げるのは仮面の貴公子ロカルノ。実家のツテで関してのレポートは
眼に通しているのだろう。なんせ神器・魔剣クラスの物を持つものなら身分問わず
宮仕えを許す国などざらにある。宮仕えを許すと偽り神器・魔剣を奪う貴族も・・・
その点、ロカルノの実家 もとい弟でライの盟友(?)である彼の王夫婦は極めて真当だが。
「それで依頼というのは?」
「俺達十人で迷宮パンドラの最下層まで潜り、未だ見ぬ神器とやらを丸ごと頂くっ!!!
それがあれば・・・だけど。 感じとしては、丸々何モノかの糧になっているっぽいな」
「・・・身もふたもないな」
「因みに報酬は、コチラで用意した装備と得た財宝の1/3ね」
「・・・ちゃっかりしてるな(汗」
「報酬の件に関して少しいいか?」
と挙手するのは仮面の貴公子ロカルノ。
「何? 勿論、其方にも成れた武具があるから押付けはしないさ。
まぁ、足りない処を補充って感じだろう。先ず・・・セシルはやりたくないので無」
 「バカ殿、コロス!!!」
「ロカルノは重装騎士型で既に装備が充実しているからなぁ・・・
皆共通してマントなり陣羽織なりでいいだろう? 勿論、特殊な素材のモノを、な」
「その辺りは信用しているさ」
「クラーク,クローディアは剣士型だからヘタに重量増すよりも軽く・・・+籠手?
クラークは格闘もいけるからナックルガード付きのヤツかな。
クローディアは投剣術がいけるんだろ? 牽制用クナイが多数収納出来るものは?」
「俺はそれでOK。 でもコレがあるから、その辺を考慮してくれ」
眼鏡青年は片手を上げて見せるのは手首に収まった数珠。
 「私も特に注文はありません。それで結構です」
「クラークは片手首に数珠装備想定・・・と(カキカキ」
 「それで、私には・・・(ワクワク」
「キルケには・・・ぶっちゃけ思いつかん。 てか、コスプレ退魔士の装備って何よ?」
うんうん。
 「・・・(が〜〜ん」
「刺し当たって、陣羽織とマントの二段構えなんぞ如何?
モノがモノだから大した重量にならない上に十二分に色々な防御力は確保出来るし。
勿論、陣羽織のデザインも単体でいけるシッカリ女性向きなもので」
 「それで、イイです・・・(しくしく」
「まぁ、細かいデザインはプロに任せるとして、マントとか白基調でいいよな。
女性用のアンダースーツ(レオタード)に関してはレイハなりに相談してくれ」
 「異議あり」
己の不幸(?)を嘆く清純金髪娘の気をそらそうとする折角のライ心使いを
一蹴してくれる一声。
「では、ソチラのマントとかは白基調ということで」
 「異議あり」
「ンだこのヤロウ、セシル邪魔するんじゃねぇよっ!!!」
 「ああ〜〜ん? 何、無視しくさってくれるんじゃオノレは?」
バンっ!!? とテーブルを御互い叩く手に、盾になるほど超頑丈に造られた天板が
ミシッと悲鳴を上げが、それでも皆は見物と止めない。
「文句あるならもらわなきゃ済む話だろーがっ」
 「はっ、なら、私の報酬は如何なるってーのよっ!!? ただ働きさせる気かぁ!!?」
「テメエはそれだけの事をしでかしてカリかかえてるだろうがっ!!
万年タダ重労働でも足りんわっ!!」
 「なら、そのカリとやらコノ美ぅすぃ〜〜身体で返しましょうか(ウッフン♪」
「・・・・・・をぇ(れろれろれろ」
 「お、オノレは私の艶姿を見てその態度を示すとは・・・(ふるふる」
「・・・よし、分った。万歩譲ってエンブレムをつけてやる」
 「Oh、バカ殿にしちゃぁ気が利くじゃなぁい♪ それで、どんなの?」
「真紅の薔薇」
 「テメエ、ヤッパリ私に喧嘩売ってやがるなっ!!? ヨシ、代金はテメエの命だぁっ!!」
「マジで一寸マテ、白地に真紅の薔薇のナニが不満だっ!!?」
 「・・・・・・。 気付いてないなら仕方ないけど、それだけは絶っ・・・対にイヤよ」
「あっ・・そういうことか・・」
 「ああっ?何よ、バカ殿」
「へっ、なんでもねぇよ、ケ・ダ・モ・ノ。 なら、緋薔薇を咥える金獅子頭は如何だ。
これなら絶対文句はいわせねーぞ」
 「・・・何よ、ソレ。」
「・・・(考。 ・・・、俺の趣味?」
 「・・・ルナちゃんとおそろい(ニヤリ」
「ルナは、黒地で三日月背景に銀狼だ。 ・・・何かヤるの惜しくなってきたな」
 「仮にも王様なら上げると言った以上寄越しなさいよっ!!」
「マントはテメエの戦闘スタイルに余りにも上品過ぎる代物だっ、勿体無いっ!!
てか、セシル如きにエンブレムをくれてやるなら皆には折入って贈呈しないと
さて、どんなエンブレムがいいか・・・・・・」
 「あっ、こら、てめぇバカ殿、散々コケ下ろして置いて私を無視するなぁっ!!!」
必要な話は終ったと思案し始めたライに皆はヤレヤレと解散し始め、飛び掛るセシルを
流石に不敬罪では済まされないのでロカルノが羽交絞め拉致って行ったのは言わずもかな。
因みに
「んで、何で俺達のマントは白が基調なんだ?」
「それは俺達の装備が黒基調だし・・・って、オセロかよっ!!?」
「作らせた御前がいうなっ!!!」
「ツッコミ、ありがとう(ペコ」
「いえいえ、とういたまして(ペコ」
と、ライとクラークの漫才も意気はバッチリ?

 「くぅぅぅぅっ、あのバカ殿はっ!! きっと差別して私には
不良品を渡したりするのよっ!! いつか絶対に泣かすっ!!!!」
「確かにライは御前の事を毛嫌いしているが、だからとそんな差別をする男じゃないぞ。
寧ろ、王の身内に手を出しておいて毛嫌い程度に済まされている事を感謝すべきだな」
 「っ!!? だぁ〜〜れが、あんなバカ殿にっ!!!」
「と言っている割には中々気があっていたじゃないか。 ・・・やけたぞ(ニヤリ」
 「ろぉ〜〜かぁ〜〜」
と、金髪美女が仮面の貴公子の腕にしがみ付き甘える様は、
大凡世間評判裏表両方と異なり晴天の霹靂,槍の雨が降る予感etc・・・
まぁ、それも何も知らない者がみればベストカップルに入るには違いないのだが。
 「それでロカ、何処行くの〜?」
「別に何処にも。後でライが仮面を見せてくれるのでな、時間潰しに屋敷の周りを散歩だ。
何でも、極東の舞踊等に用いる武神や各種人物の面だけではなく、由緒正しい鉄仮面や
旧文明のアヤしくキケンな石面もあるとか・・・(うっとり」
 「・・・・・・」
時として男同士の友情は彼女を嫉妬に燃やす。あの男はナニしてくやりやがるか と。
「・・・だからとバカな事をするんじゃないぞ。責任を問われるのは私なんだからな」
 「えぇ〜〜何のことぇ〜〜(きゃるん」
「・・・・・・」
ブリッコをしたところでその本性ど今更に今更、獲物(可愛娘ちゃん)を狙う肉食獣
(ケダモノ)を隠せるわけがない。その警告書が出回っているなど知らずに。
兎も角、二人は屋敷周辺の豊かな里山を巡り・・・不意に
 「・・・(きゅぴーん」
「ぬっ!!?」
何かに気付き駆け出すセシルをロカルノも慌て追う。二人が付かず離れず着いた先は草原。
その一歩手前の樹影に本職顔負けに隠れる女騎士。その表情は今まで類を見ないほど真剣。
 「・・・・・・」
「・・・(真坂ココに何か来ているのか?)」
ついで気配を完全に消したロカルノはセシルに聞くが返答はない。
それほどヤバイものかとセシルの視線を追った先には・・・
 「わんっ♪ わんわんっ♪」
 「みっ、みぃ〜〜♪」
 「ぬおっ!!? やるなぁ、御主たち〜〜♪」
 「とりゃっ!!!」
 「「「っ!!? 〜〜♪」」」
群れつ解れつ飛び跳ね、たわいもない追いかけっこで戯れる少女たち・・・
煌きと花を背負っているように見えるが、それは向こうにある花畑と露のせいだろう
 「・・・るなタン、みぃタン、ついでにメルフィたんとルーたん(ハァハァハァハァ」
「・・・・・・(汗」
ごちんっ!!
 「きゅぅ〜〜(絶」
「さて、戻るには丁度いい頃合だな。
セシルは悪さをしないよう特製束縛服でも借りて地下室に転がしておくか・・・」
 「〜〜〜〜〜(絶」
相方を人間扱いしていない仮面さん、中々に侮れない存在であった。
そして少女達はケダモノから視姦阻止で護られたことも知らず無邪気に戯れる・・・
ケダモノ対策万全で何事も起きる事無く数日が過ぎ、その日昼過ぎに屋敷へ届けられた
5つの荷物でライに呼び集められるユトレヒト隊。
「これだけの荷物ってことは・・・(ニヤリ」
「ザッツライト(ニヤリ」
「ふむ・・・希望都市の職人の腕、吟味させていただこうか」
クラークは、黒影に交差した紅刃刀と紫電纏う歪紅鬼紋のエンブレムの白マントと
先に決めた通り動作一つでナックルガードが展開する軽量籠手「剛護腕・拳式」。
ロカルノは、黒影に槍咥える緋眼鋼竜顎のエンブレムの白マントと
得物の槍と戦剣を連結以外にも使用できる魔導剛鎖。
セシルは、蒼影に紅薔薇を咥える金獅子頭のエンブレムの白マント。
クローディアは、緋牡丹のエンブレムの袖無し紅縁白陣羽織と
投剣用の針クナイが多数本収納出来る軽量籠手「剛護腕・投剣収式」
籠手に収められるバーストアロー(爆裂投矢)と普通の針クナイを数十本。
キルケは、悪魔翼を背に剣を掲げ黙祷する純白衣の乙女横姿のエンブレムの白マントと
戦闘用ドレスにもなる袖が取り外し可能な黒縁純白陣羽織。
マントや陣羽織に用いられている布は、極星騎士団で用いている物ほどでないとはいえ
特殊稀少金属など特殊素材をふんだんに用い、高い物理・魔法防御を誇るだけではなく
若干の体調回復効果も齎す代物。しかるべき所に持っていけば稀に見る高値になるが、
戦いを常とする者にはこういったものはお金以上に価値があり、手放せない。
まだ仕事が残っているライや早速に武具の具合を確かめる武人派の三人はその場を立ち
残されるのはセシルとキルケ。
 「はへぇ〜〜〜、意外にイイ出来よねぇ・・・」
 「そうですね。私のエンブレム、私がデザインなんですよ(キャ♪」
 「・・・。 でも、こうして見ると改めて実感するわね。
・・・ルナちゃんのエンブレムは黒地に三日月背景の銀狼かぁ。
うふふ、だったら私と同じマークに変えてあげたらペアで仲良し〜♪」
「セシルさん、マント見て何ぶつくさ言っているんですか?」
「ねぇキルケ〜、このマークと瓜二つなワッペン作って♪」
「えっ、よほど気に入ったんですね・・・」
「そうなの♪ 出来が良いからもう一つ『自分の好きなモノ』に張っておきたいの♪」
「いいですよ! 私の裁縫の腕前を披露する良い機会です♪」
そして翌日、ルナ専用のマントには黒地に三日月背景に銀狼の姿はなく
その上に丁寧に縫われた紅薔薇を咥える金獅子頭のエンブレムが・・・
 「くぅ〜〜ん、くぅ〜〜ん(泣」ルナの、変になってるの・・・
とルナが泣き付くのは主かつ父代わりのライ。となれば、全ての元凶は明らか。
「・・・ルナ、アレには俺が言っても如何しようもない。
ストーカーはルナ、当人自身がシッカリ・ハッキリ・完膚無きまでに拒絶しないと・・・」
 「くぅ〜〜ん(泣」こわいの・・・
「大丈夫だっ!!!」
 「???」
セシルは自分に与えられた客室で昼の優雅な一時を過していた・・・が、しかし
 「はっ!!? この気配は・・・」
ばんっ!!!
 「・・・あんた、人様に迷惑かけるなんて何やっているんだい」
某暗黒卿のテーマをBGMに扉を蹴破って入ってきた銀影は、セシルの顔にそれを
ビタンっと叩き付けた。それとはボロボロになったセシルのエンブレム。
そして、それを叩き付けた銀影は唯の銀狼闘姫ならぬ紫瞳で逆襲の・・・
 「なっなっなぁー――っ!!?」
銀狼闘姫(獲物)×    (超天敵)=・・・・・・
畏怖の気配纏う存在に本来の姿を見出せなかった金色のケダモノは銀のケダモノの
スペシャルコンボによって瞬殺された。その胸間に、鋼色の薔薇浮くクリスタルに
気付く前に。
「・・・ふふふ、こんな事もあろうかとケダモノ対策用にあの方から闘魂の欠片を
分けて頂いていたのだよ。 残念だったな、狼は狩人たる『怒り』を得た(ニヤリ」
怠惰に毎日を過す金色ケダモノの包囲網は着実に狭まり追い詰めつつあったっ!!!
 「今度やったら容赦しないよっ!!!」
 「うそぉ〜〜ん・・・何でママが・・・ココに・・・(カクッ」
因みにその後のルナはというと、身体に嘗め回されているかのような虫唾が走るらしく
後で丹念に砂浴びをし、水浴びをし、沐浴をし、身を清めるのに余念がなかったとか。
金色ケダモノへの切り札は両刃の剣であった・・・

午後の麗かな一時、居間で優雅に茶を嗜むアルシア,セシル,リオ,キルケの金髪四人。
他愛無い世間話で時間を流す事暫し、
 「そう言えば、皆さん今回はダンジョンに潜られるんですよね。
キルケさんは如何ような衣装で行かれるんですか?」
と尋ねるのは今回は居残り組のリオ。目的までは聞いていないが何をするかぐらいは
知っている。無論、目的が聞かされていない以上は任務に関係ない自分がソレを聞かない。
それでも態々聞くのは、ジョブ:コスプレ退魔士たる彼女が如何な格好で行くか興味津々。
他三人まで聞かないのは、スタイルが確立しているので大凡毎度変わらずだからである。
 「そうよねぇ。キルケちゃんは前衛よりも私と同じ中衛向きだし・・・」
 「そう言えばキルケってそんな戦闘服はもってなかったんじゃない?」
 「そんな事はないですよ。でも、今回はライさんに戦闘用ドレスを貰いったので
レイハさんに手配してもらった戦闘用レオタードの上にそれを着ようかと思います」
と至って普通に微笑んで応える金髪嬢。しかし戦闘用ドレスは正しくは陣羽織。
レイハに手配してもらったレオタードということは、高防御力な素材黒色のハイネック
フロントファスナーでハイレグ故にパンティの横紐が見えてしまい、ガーターベルトで
同素材のストッキングを吊った上に陣羽織をシッカリ前を閉じて着るつもりなのだろう。
それで中々にスレンダーアダルトでイイ感じになる。防御力もヘタな鎧を軽く上回る。
 「キルケさん、剣が得物ですよね。私が丁度良いベルトを差し上げます。
それ、幅広でボトル(小薬瓶)ホルダーとポーチを付けても御洒落なんですよ。
幅広なだけにシッカリお腹を押さえ内臓を固定して、武具の効果も高いですし」
 「わぁ、ありがとうございます」
 「ねぇリオちゃん、キルケばっかりじゃなくて私にも何か頂戴♪」
と満面な笑みで子供みたく手を出すセシル。子供以上に性質が悪いのは言わずもかな。
 「えっと・・・」
 「何か頂戴♪」
リオが何か上げるのは既に確定のようである。仕方が無いのでアルシアに救援要請。
 「それで、セシルは何が欲しいのかしら?」
 「リオちゃんの処女〜〜♪」
 「「「・・・・・・」」」
既に前後ともに捧げて無い、以前に腐女子でもそんな趣味はない。
 「ジョウダンよ。本命はルナちゃん」
 「流石に無理です」「流石に無理よぉ〜〜」
 「ちっ!! ・・・ディ君で我慢するわ」
 「・・・・・・」
・・・実姉よ、実弟の貞操の危機に何の決断を迷う?
 「さぁっ!!!」
 「・・・プラマイドじゃだめ? 女装前後の二枚組みで」
 「よっしゃ、もらったぁっ!!!」
 「いやぁ〜〜ん、私も欲し〜〜い」
・・・てか、実姉よ、何故実弟のンな黒歴史をもっている?
 「リオ・・・怖ろしい娘っ!!!」

「・・・さて、準備は整った。 行こうか、戦場へ」
迷宮都市パンドラ、元々は遭難者が迷込み辛うじて命程度のオアシスでしかかなった。
しかし、ココで『ダンジョン』が発見された事により一攫千金を狙う冒険者や
それを相手に宿や飲食,倉庫を生業とする商人達や、更にソレ等を相手に運送,輸送の
二次三次業をも発達し、今や豪華堅牢な建物で覆ったダンジョン入口を中心に稀に見る
円形状大都市へと成っていたが・・・夢破れて何とやら、ゴロツキや乞食の数も半端でなく
『ダンジョン』へ潜る新参者は先ずこれ等の洗礼を受ける事となる。
その日、街外れに降立つ一行は方や黒、方や白のマントと揃い畏怖堂々と存在だけで
周囲を威嚇して進む。しかし、例え装備が充実しツワモノの気配を備えていようと
新参者が大きな顔をして歩くのは、何であろうと古参者にとって不愉快でしかない
しかも黒マント5人中4人,白マント5人中3人が美女(内一人、魔杖に腰掛フワフワ浮く
美幼女)となれば、それは蹴落とす「敵」である以上に獲物でしかない。
例えそれが宮仕えの者であったとしても。
・・・例え世間で聖女・戦乙女と謳われていても堕ちてしまえば単なる肉人形・・・
だから先ず狙われるのは一行の前後に立つ男三人に、
建物の屋根から性格無比集中豪雨で矢が降り注ぐっ!!!
避けられない事はないが避ければ中の娘達に当たる故、『騎士』ならば避けられない。
だから、顔までもマントで庇った彼等は瞬後、針鼠と化し・・・
「・・・天下の公道でココまで熱烈歓迎とはやってくれる」
「活性だけはあるよな、負の。 故に、お先真っ暗確定だな」
「全くだ。人事ながら先が思いやられる・・・セシル、先は長い。この程度は我慢しろ」
身震い一つで数多の矢が落ち現れるのは全く無傷で健在の男三人。
 「何で私だけっ!!?」
それはセシルのみマントの中で己の得物である氷の魔剣を解き放ち
矢を射った者達を氷の彫刻と化とさせてしまっていたから。
キルケ,クローディアはクラークを信頼しているし、
四姫に至っては端よりそのイタズラ程度の攻撃で主が傷つくとは思っていない。
奇襲されても至って平然な男達と怯え一つ見せない女達に周囲の気配が一気に変わる。
それは、闇が光に対して持つ絶対的な嫌悪。 だが、彼等はソレでも半端に過ぎない。
陽星の光は時として光一つ逃さぬ超重の深闇へと姿を変える。光(希望)一つ逃さぬ・・・
先頭を行くリーダーの男、ライの前へフラフラと迷い出てくる乞食な男。
それは止せばいいものを態々ライにぶち当たる事一瞬、道をよろけ開け
「すまんね・・・」
「そう思うなら、最初っからアホな事はしないことだな」
返ってきたライの返事にギョッと振り向く男へ投げぶつけられるのは棒状の・・・腕。
その手に握られているのは毒々しいまでに致死性の粘液が刃に纏わりついたナイフ。
それはライを一撃で即死させるはずであった。刺す前に甲手刀で落とさなければ。
「っっっっっ!!!!!????」
ようやくそれを理解し、男は膝間着き声無き悲鳴を上げるだけ。
取り合えずうるさいので一蹴で脳を揺らし黙らせる。その上で
「綺麗に切ったから全然くっ付くだろうさ。でも元通りに動くかは手前の
リハビリ次第だけどな。他の奴もこうなりたくなかったら大人しくしとけよ。
俺は、俺は兎も角、俺の女に手を出そうとする奴を野放しに出来るほど優しくない」
沈黙した通り、ライの声のみが静かに響き渡る。それは警告の意を込めて。
最早、ライ達の行く手を阻むものはいない。
「其処が十分甘いんじゃないか?」
「そうかな? 時として不殺は虐殺以上に効果がある。なんせ話を流す者が
恐怖の体験者なのだからな。 ・・・あの男、この先を考えれば死んだ方が幸せかもな」
 「それって如何いう事よ?」
 「今の人、平凡に暮す段には支障無い程度にしか戻らないということです」
 「名医が居ればそこまで戻るんでしょうけどねぇ・・・」
と態々セシルに応えるのはレイハにアルシア。一見で辺りの医療技術力など把握済。
普通の医師なら治りリハビリ出来る傷も、隻腕にされてしまうだろう・・・・・・・
嚇しの効果絶大に、以降は妨げられる事無く一行はダンジョンの入口に辿り着く。
それは無意味に巨大なまでに門を備え、たったそれだけの建物。
「たぁ〜〜のもぉ〜〜」
間の抜けた一声に皆がコケかけるのは御約束。それでも、慌て来た門番風の下卑た男。
「はいはい、何でございましょう?」
「見ての通り、ダンジョンの挑戦者だ。門を開けてもらおうか?」
「その前に装備のチェッ・・・」
「黙 れ よ っ!! 門番風情がでしゃばるな。テメエは大人しく門を開ければいい。
それとも何だ、ココで手前を殺して入ってもいいんだぜ? 門を破壊するのもありか?」
「・・・・・・(((( ;゚Д゚)))ガクガクブルブル」
慌て従い装置を機動させる門番に、門はゆっくりと奈落の底への口を開けていく
「最初っからそうすりゃいいんだよ。ホレ、取って置け」
「へ?」
ライから門番へ投げられるのは小袋。しかしそれはズッシリとした重みを伝える。
門番がそれを確かめる前にライ達は門の中へと入り、扉は閉じられていった・・・
・・・闇が支配する其処に灯る1光、それが照らす門の中は実際のダンジョンまで幾分
石畳によって整えられている。落ち着いて準備するには丁度いい。
「んで、ライよぅ、門番に何やったんだ?」
「何、ちょっとした駄賃だ」
「・・・ああいった輩は鞭と飴次第では使える。
少なくとも私達を忘れるまでは貸切にしてくれるだろう」
「それって何時まで?」
「・・・あれだけありゃ二日三日は遊んで暮せるだろうな」
「ライ、奇特なやっちゃな・・・」
そうこうしている間に進軍の準備は完了する。元々都市へ入る前にフル装備し終わり、
此処では体が見えないようにしていたマントを動き易いように付け直し
鉢金なり頭の装備を付けただけである。それは防御から攻撃と機動力重視へ。
「前衛は、俺とレイハ,ロカルノ,セシル,中衛はルーを挟みアルシアとキルケ
後衛はクラークとクローディア,シエル、頼むぞ」
罠はレイハ,ロカルノが看破し、モンスターの接近はシエルが警告する。
直接攻撃に弱くも回復役かつ魔法攻撃主体の面々を間に挟み支援万端なこの編成で
パーティはダンジョンへと突入した。
灯満ちるダンジョン上層階、豊かに木々が茂り出鱈目な岩壁が部屋部屋を仕切っている。
「・・・さて、どちらに行こうかな、と。
キルケ、ダウジングで次階への階段を探してくれないかい」
 「はい、私クラークさんから良い物をプレゼントして頂いたんですよ・・・」
と金髪令嬢が首から外すのは菱状のクリスタルのネックレス。
それをライは良く知っている。何故なら、クラークにプレゼントさせたのはライだから。
導晶(ダウジングクリスタル)のネックレス、クリスタルは探索系の魔導回路を高密度に
組上げた魔石であり、金属部分は増幅効果の高いオリハルコン合金を使用した、
正にダウジングのためだけに洗練された魔導具である。その事を知らぬのはキルケのみ。
だから、何故か哀れそうに皆が見守る中でキルケが垂らしたクリスタルは円を描き
瞬後進むべき方向を指す。
 「先へ進む階段は向こうですね。 ?、皆さん如何したんですか?」
「んや。 上層階は大したものも無いっていうし、サクッと行きますか」
階段を探してダンジョンを彷徨うような無駄時間を使う事無く一行は
途中、吸血蝙蝠なり,魔犬なり,スライムなり低級モンスターが現れるが
ダメージ1すら与えられる事無く半ば放置・・・もとい、文字通り一蹴で葬り
罠なども皆無同然で順調に先へ進む。そうして降りること数階。
風景は一転し、植物の姿は全く消えて明らかに人為的な粗悪の岩壁になる。
「・・・雰囲気が代わったな。ルー、例の物を皆に」
 「おうヨ」
とルーがワームホールを開き皆へ配るのは
 「木の弓矢? こんなものなくったって・・・」
「この辺りから接触すると厄介なモンスターが出て来るんだよ。
血が毒の蝙蝠とか、喰らいついたら首になっても離れない魔狼とか、毒スライムとか
極めつけは何より」
 「「きゃ〜〜、可愛い猫ちゃ〜〜ん」」
「ちょっとマテ」
止める間もなくキルケとセシルが向うのは人懐っこそうな猫。そもそも、こんな所に
猫がいること自体オカシイのだが、誰なりが警報代りに持込み逃げたとも考えられる。
と、なれば保護しなければ人道に反するとキルケが猫を抱き抱えようとした瞬間
それは手をすり抜け踵を返して遁走。後を追うように地へ刺さっていく矢。
 「って、いくらライさんでも酷すぎますよっ!!! 猫ちゃんに・・・」
 「そうよそうよっ!!!」
「・・・ありゃ、普通の猫じゃない。『泥棒猫』だ」
 「・・・、んん?」
聞き捨てならぬとシエルの猫耳が反応する。それを弁解するのは怪盗の面をもつロカルノ。
「アレは何かを咥えて逃げて行った。キルケ、何かなくなっていないか探してみろ」
 「えっ!!?」
キルケがゴソゴソと自分の体を撫で弄ること暫し、
 「・・・ファーストエイドキットのポーチがありません」
ファーストエイドキット、つまり、消毒液,解毒剤,包帯諸々の消耗品セットの事
 「ロカルノ〜〜、私処女を盗まれちゃった♪」
「・・・・・・、極めてツマラン冗談だな。 ライ、話を続けてくれ」
「つまり、そ〜〜ゆ〜〜モンスターだ。位が上がると装備している武具を奪う
『怪盗猫』もいるんだと。 んで、逃げ足はごらんの通り洒落にならない。
あのファーストエイドキットは勉強代替わりにくれてやろう。取返すのも手間だし」
「そんなモンスターもいるなんて・・・」
「元々造られた場所に造られたモンスターだ。悪意に満ちた奴なんでざらにいるさ」
シビアな話をしている男達に女達はうんざり顔。悪意満ちるダンジョンという存在に。
・・・何故かシエルだけは線の猫顔で満悦に思案しているっぽいが。
 「・・・、・・・『怪盗猫』(うっとり」
兎も角、弓矢はセシル除く前衛三人と後衛はシエル除く二人が持つ事となった。
理由はいわずもかな、セシルは味方を誤射する可能性が高いため。
たかが二束三文な木の弓矢とは言え、彼等が持つ以上は一撃必殺の凶器足りえるのだ。
その布陣によって雑魚寄付けず更に降ること数階。
ダンジョンは明らかに人為的な石床,石壁の様相を見せてくると共に灯りも
壁に備えられた燈からのみ。ライ達自身が灯りを持つ必要となってきた。
「・・・ここまでくると完全にダンジョンだな」
ライの一言に皆が頷くのは、それが皆の心境代弁しているからに他ならない。
戦闘らしい戦闘を一回も行っていなくとも、その環境は否応がにも疲労を蓄積させる。
広めの部屋に入った処、ふとシエルの警告に前から歩いてくる人影。
それは鎧姿に剣と盾を備え、まるで冒険者のようであるか・・・
「お〜〜い、あんた、同業者か? ちょっくら情報交換しないか?」
「・・・・・・」
前に出て尋ねるライに、それは特に反応を示さない。
「・・・こっちには食物と飲物も沢山ある。それと情報を交換してくれ」
「・・・・・・」
話しかけながらも警戒しつつ一定の距離まで入ったライに、鎧の者の眼に当る部分が光る。
それは人間ではありえない現象。瞬間、剣を構え襲いかかってきたソレは
破っ!!
の甲拳一発、ライに頭を撃ち抜かれ地面に崩れ落ちた勢いに砂のように崩れ散る。
「何だよ、コイツは。 魔導機兵(レギオン)か?」
 「ソイツはそんな上等なモノじゃナイ。単に補足したモノへ攻撃するだけのシロモノだ。
このダンジョンの中だからこそ剣を振るうことを許される存在というやつだナ」
 「・・・では、あれもそうなのですか?」
!!?
ルーの解説に珍しく続けたクローディアの視線の先には、ローブ姿で顔の部分が影のソレ。
ソレが揮う魔杖に魔力が集う。その勢いに誰を狙っているにしても防御は既に間合わない。
そして魔法攻撃である以上は攻撃を貰わない事にこしたことはない。
 「ならばっ!!!」
と、クローディアは手を一閃放たれた爆裂投矢と魔法攻撃が両者の中間点で相殺。
それで起る爆発を陣羽織で突破し、一気に居合いをつめた女侍の一刃で両断され
ソレは地に崩れ落ちる前に砂へとかえる。残ったのは、ソレが揮っていた魔杖のみ。
 「・・・、人を斬った感触ではありません。丸で部厚い布のような・・・」
 「大方そんなモノだろうサ。転がっているヤツ、摘んで持ってきてクレ」
ルーの指示に、クローディアはそれに触れず箸で掴み帰り渡す。
そして、皆が警戒の中でルーがそれを鑑定した結果は即席の魔杖。回数限定があるとはいえ
素人が振っても代償なしで発動するソレは脅威である。しかも火炎弾となれば尚の事。
ルーの判断は、それ以外にも混乱,眠り,空間移動等色々な効果もつものが考えられる と。
「全くとんでもない処だな、ダンジョンは・・・」
それは誰が溢した言葉であっただろうか・・・
その人型のモンスターが追加された処で、一行を行く手を阻むに至らず次階へ。
毎階通り、キルケが次の階への階段をダウジングするが・・・
 「あ、あの、これって・・・」
今までと違い、その階ではペンダントがランダムな円を描くのみ。
否、一方向を避けるような感を示している。考えられるのはその方向に障害アリ。
「如何する? 地道に次へ進む階段を探すか、脅威を除去してダウジングし直すか・・・」
皆の意思は満場一致で脅威の除去。不確定要素は少しでも省くに限ると。
ましてや此処は悪意満ちるダンジョンなのだから。
そうして幾つかの部屋と通路をへて、一行の前にその脅威がある部屋があった。
一行を残し、陣羽織を脱いで身軽になった戦忍レイハだけ、シエルが見ずとも
嫌悪示すその部屋に入り・・・返ってきた彼女は傍目で分るほど顔面蒼白。
「如何よ?」
 「・・・部屋一杯にモンスターが寝ています。今まで見たことが無い様なモノまで。
罠の数も半端ではありません。 それ以外の物も転がっていましたが・・・」
「んで、階段は?」
 「確認出来てません。何せ、モンスターの数が多すぎて・・・」
「ここに階段がある可能性はあるわけか。ちゃっちゃと片付けるか・・・」
「して、その方法は? 真坂、単騎で殴り込み?」
「それが何も考えずに済むけどな、折角殲滅に必要な能力が揃っているわけだし」
と見る先には、セシル そしてシエル。
 「「???」」
モンスタールームへ入る廊下、其処に三人が並ぶ。先頭は実際に攻撃を行うセシル。
しかし、その前にシエルがその超感覚でもってモンスターの正確な位置を把握し、
最後尾に控えるルーがそれをセシルに伝えれば
 「・・・うふふ、見えるッ!! 私にも見えるッ!!
しえるタンの見ているモノが私にも見えるわぁんっ!!!!(はぁはぁはぁはぁ」
 「タンを着けるな、キモイ。 ・・・サッサと片付けろ」
さくっ!!!
 「っっんぎゃ〜〜〜っ!!?」
セシルの脳天に刺さる剣爪で出た悲鳴はモンスター達の目を覚まさせる。
が、しかし既に時は遅し。瞬後地から生えた数多の氷槍がモンスターを貫通に瞬殺。
そして、殲滅完了。残されるのはモンスターが持っていた数多のアイテムと
 「んふっ、しえるタン、照れ屋さんなんだから・・・(だくだくだく・・・」
己の血の池に伏すセシルはそれでも満面の笑みで、新境地を開拓したようであった・・・
先に進む前に、一行は部屋にあったアイテムを一応回収する。
平凡な武具に様々な効果がある魔杖、怪しい薬草各種、そして財宝なアイテム。
しかし装備が充実している一行に、それらの殆どが無用ゆえに捨てて先へ進む。
 「・・・これは使えるわね(ニヤソ」
「おい、セシル、行くぞ」
 「あっ、は〜〜い♪」
思惑と野望と共に・・・
次のキリの10階、面々を待ち受けていたのは空施設を思わせる平坦なフロア。
 「これは一体・・・」
 「やっぱり、このダンジョン自体が大きな装置なんだろうサ。
コレだけ大きいけりゃ何階か置きに調整池な空の階が必要だからナ」
「って事は、此処にはモンスターが出てこない?」
 「もしくは、中ボスだナ」
「ったく、悪趣味な『ゲーム』だぜ・・・」
ダンジョンの探索者は単なる駒でしかない。
ゲームマスターが確実に勝利する悪質なゲームの・・・
結局そのフロアにモンスターは存在せず、一行は一休みして次のフロアへと出発した。
突入した一行はすぐ様に知る。今までが訓練みたいなものでしかなかったことに。
部屋の出入り口、最短コース上など要所にある罠。
地雷,召喚陣,転移陣,落穴、毒沼,毒ガス,トラバサミ。
宝箱と思い接近すれば牙むくミミック。遠距離攻撃を仕掛ける弓士,俊足の忍,
増幅するスライム,他モンスターを召喚したり攻撃した者を瞬間移動させたりする魔導士,姿見えない戦士。
悪意溢れるモンスター。
しかし、それとてドリームチームの一行の前では物の数ではなく寧ろそれまでが緩湯と
11〜19階を制覇し20階、待受けるのは黄金の鎧纏う迷宮の邪騎士団『ゴールデンナイツ』。
「皆でかかるには陳腐な相手。ここは私だけに任せて頂こう」
皆より一歩前に進むのは重装の鎧を纏った仮面の貴公子ロカルノ。
その手に携えるのは柄で連結されツインランサーとなった『真戦女』『ディ・ヴァイン』
その場しのぎな仮初の生命であってもその脅威と分るのか構え受身の邪騎士団を意もせず
ロカルノが回転させるツインランサーの刃に生じた焔は紅の軌跡を描き始める。それが
最高速に達し軌跡が円ととなった瞬間
「これぞ戦女の紅舞『フロミネンスワルツ』ッ!!!」
その回転を止め揮う刃より放たれた焔輪は、弧の軌跡を描いて避けさせる間も無く
全ての邪騎士達を薙ぎ消滅。それに邪騎士達は一瞬硬直するも、何事も起きない自身に
刃を揮って突撃を始める が
っ!!?
焔輪に薙がれた場所を境に上下泣き別れ、瞬後それは砂へ朽ちるよりも早く業火に散る。
 「ヒュゥ♪ 流石、私のロカルノ♪」
「ふむ、・・・イイ感じだ。」
魔導剛鎖で連結させることで刃等にかかる負担を分散させ、高威力の攻撃も容易に可能。
勿論とサムズアップのライへニヒルな笑みで応えるロカルノ。二人の間に言葉は要らない?
 「私は無視っ!!?(が〜〜ん」
結局、20階は10階と変わらず小部屋,大部屋,小部屋とそれを繋ぐ通路のみの単純な構造で
一行は暫しの休憩を得て出発した。
21階からはそれまでのダンジョンな雰囲気から打って変わり、
灯満ちる箱庭な感で部屋と部屋を隔てるのは壁のみならず水路や池までも。
そして迷宮池を横切る通路の中間には島までもあった。
その優美な光景と異なり現れるモンスターはより強力に、ドラゴンなどまでも降臨する。
 「これで皆、ドラゴンキラーですね♪」
「モノホンならな」
 「ふえっ!!? ロカルノさん、アレはニセモノなんですか?」
「闘争本能しか持ち得ず生物の謙虚さを有してない造りモノなんて、ハリボテと変わらん」
 「ふえ〜〜ん(泣」
 「バカ殿、キルケ苛めてるんじゃないわよっ!!」
「・・・ほほ〜〜、セシルさんはもしかしてあんなニセモノ如きで
ドラゴンキラーになれたとでも思っていらっしゃったのかなぁ?」
 「くっ・・・」
「「「「「「・・・・・・・・・・」」」」」」
 「ちょっと、何みてるのよぉぉぉぉっ!!!」
その程度の強力なモンスターも逆切れのセシルの露払いで済む存在でしかなかった。
そうやって易々と29階まで走破し、30階。
部屋中央で一行を待ち受けていたのは金色のローブを纏った一人の魔術士。
「・・・魔術士だな」
「・・・魔術士だろう」
「・・・魔導士風情」
 「そこっ、魔導士風情っていうナァっ!!!」
極めて緊迫感の無い一行に憤慨したのか、金色ローブの魔術士 幻魔魔術師は
手に持った魔杖を揮って更に無数の魔術士を召喚する。そのローブの色は朱に碧に蒼。
「まぁ、魔術士もコレだけ揃えば厄介だな。っと言う訳で、クラーク先生どうぞ!!」
「俺、指名かよっ!! ぶっちゃけ、これだけ数がそろうと手間なんだが・・・」
「しゃあねえから俺も手伝ってやるよ」
パーティのリーダーたるライの指名に仕方無しと最後尾から前にでた隣に並ぶのは
メガネ侍ことクラーク。
その二人を残して下がるパーティに、ナラバ最初ノ生贄ニシテクレルワ と
魔術士達が揮う魔杖に無数の火炎弾,雷撃弾,衝撃弾,魔法弾が放たれる!!
それらは必殺の勢いで二人に殺到し、完全に爆発で包み込んでしまった。 が、
「・・・我が剣は神殺す破壊神の牙」
「・・・我が刀は神を喰らう鬼の爪」
その爆発が逆戻しされるかのように収縮していくのは、
陽炎纏う二人が前へ差し向ける剣と刀 『神狼刃』と『九骸皇』の切っ先、その中間。
二つの得物が放つ力場が一帯のエネルギーを其処へ凝縮させ光球と成す。
その内包しているエネルギーの量を推測しやすければ、その不安定さも想像に易い。
ならば今度こそ完全に葬去ってくれると追撃に魔術士達が二度行うとする魔法攻撃に
光球を残して切先を上げて上段に 切先を下げて下段に構えるライとクラーク二人。
「断てよ驚刃」
「唸れよ斬撃」
二度放たれる集中豪撃。しかし、それは二度二人に達することはない。
揮下ろされる斬撃、揮上げられる斬撃。
真空刃となるソレは、光球を起点に前へ昇る竜巻となる。 禍龍の如く、猛虎の如く
「「我等が前に敵は無しっ!!!」」
迫る魔法攻撃の集中豪撃を吸寄せ巻込むだけではなく、
魔術士達をも耐える事許さず吸寄せ粉砕するだけではなくエネルギーとして吸収し、
幻魔魔術師の真芯へ螺旋の先端が突き刺さり飲込み、存在を許さず無に帰す!!
これぞ、超竜巻真空刃『神鬼滅閃』
「どうよ、手前自身が放った魔法攻撃の味は?」
「一撃必殺で敵を葬れず、反撃される事を想定してないから『魔導士風情』なんだよ」
「いや〜〜、それは相手によると思うぞ。」
 「そうダ、メガネ侍風情がッ!! あんな三流魔術士モドキと魔導士を一緒にするナっ!!!」
「っ!!?」
・・・魔導士の力量によっては相手の抵抗を許さず
一撃必殺も、生殺しでネチネチ弄り続ける事も出来るという御話。
幼魔女な魔導師のプッツンが治まるまで、暫し休題。
暫しの急速を得て出発した31階からは、更に強力で特殊な敵
見えない透明戦士や体力を奪う浮遊邪眼,攻撃力高い赤竜,生命力高い屍竜が
数頻繁に現れるが、それとて闘争本能のみ真の野生を持たぬ怪物は数撃で朽ち
パーティを足止めするには至らない。
しかし数階降ったその階は闇が支配していた。しかもそれだけではなく
 「モンスターの気配を感じる・・・数え切れないくらい・・・」
シエルの警告と共に一行を襲う殺気と言うなの気配。灯される魔導の明りは直に闇へ
吸い込まれ部屋の隅どころか数歩先、未だモンスターの姿も捉えていない。
接近は感じるというのに・・・
それほどに広い部屋 否、1フロア丸々1部屋の可能性もあるが、早急に次の階へ
 「ダメです、ダウジング出来ませんっ!!」
キルケの悲鳴が、一行がモンスタールームにいる事を如実に語る。兎も角、戦闘能力が
低いキルケ,ルー,アルシアを中心に円陣を組みモンスターの襲来に備える一方で
 「一気に敵を片付けるゾ。キルケ、手伝えっ!!」
 「ええぇっ如何するんですか、ルーさん!!?」
 「キルケ、御前は私に合わせて言霊を唱えるだけでいいっ!!」
 「はいっ!!」
 「「・・・世に現る数多の精霊よ、我等が呪に従いて天地の門をより敵を葬れ」」
ルーとキルケ二人の霊詞にパーティを包んでしまう規模で展開する多重層魔方陣。
 「「開けっ『天獄葬門』っ!!」」
それがロックを開けるかのように下から順に回転を止め全ての錠が開く時、何処かで
扉が開く感触と共に次から次へとパーティの側からモンスターの気配が消えていく。
そして何処かで扉が閉まる音が響く時、一行が感じ得る全ての敵の気配が消去していた。
そう、全ての敵の気配が完全に。
 「ふっふん、流石に超々一流と一流半が揃っていれば発動が早いナ(フンっ!!」
「ほう、凄まじい威力だな・・・」
 「あれは限定空間の敵を煉獄から極凍獄まで一瞬に召環する超奥義魔法なんです。
威力に関しては、全ての地獄に耐切るか自身で逆召喚出来ない限り生還は・・・。
術式自体は召喚の応用なので簡単なのですが、全ての『門』開くので時間が要ります」
 「その点、今回は私とキルケが居るから相乗の能力で短時間発動が出来たワケだナ」
「ホウホウ、それで何でキルケは今まで知らなかった術に詳しいんだ?」
 「それはですね、並列処理を行うと言う事は私とルーさんが一時的とはいえ
精神を共有することになるんです。そうなれば当然関連の知識は私にも・・・」
ぴっぴっと指を振って説明しているキルケが、戦闘服姿なのにスーツな女教師姿が
重なって見えるのは皆の幻視ではないはず。 流石、コスプレ退魔士(違?。
「解説はそれくらいにして、ちゃっちゃとダウジングしてくれないか?」
「あっ、はいはいっ!! ・・・、えっと、階段は向こうです。
それと1フロア丸々1部屋みたいです。出鱈目な広さですね」
 「・・・手、抜きやがった?」
いや、違うだろ と、セシルのボケに皆で突っ込んでみたり。
敵は全滅させたとはいえ、罠の排除,解除までも成されるわけではないので
パーティーは再び編成を組んで進む・・・が、数歩進んだ処で反応するシエルの猫耳。
 「気配が現れた・・・これは、敵? 凄い勢いで増殖しているっ!!!」
 「ふむ、キツイがまた『天獄葬門』を使うか・・・」
 「でも後の事を考えると、使ってしまうのは・・・」
「なら、取るべき道は唯一つだな」
「三六計逃げるが勝ち」
 「はっしれぇっ!!!」
ぬおおおおおおおっ!!!
セシルの何故か嬉々とした叫びを引金に遁走するパーティ。突出先行するのは戦忍レイハ。
レンジャーとして彼女の役割は罠を看破して、あるものはクナイ投擲で作動させ無力化し、
作動させると周囲へ被害が及ぶ代物はスイッチ前へ目印に。
そうやってパーティが安全を確保し、増え迫るモンスターの気配に危々としつつ駆ける事
暫し、流石に脚の速さで各々の間に数歩分の距離が生じてきてしまう。
先ずは、レイハ。それに続くのはライ,セシル,ロカルノ。
一番鈍足(それでも常人より速)グループのアルシア,ルー,キルケに遮られ
クラーク,シエル,クローディア。それも突撃編成であるを考えれば
ダメージに弱い面子に護衛がついているので何の問題もないのだが、不意に
 「ういっ!!?」
消えるセシル。正しくは、落穴をストレートに踏み抜いてしまい堕ちたのだが
溺れる者は藁をも掴む ならぬ堕ちる者は何でも手を伸ばす。ってなわけで
「ぬおっ!!?」
セシルが掴んだのはライの足首に、ホラー映画みたく穴に引き摺り込む。
気付いたロカルノが伸ばした手をすり抜け
 「のいてっ!!!」
と、瞬間ロカルノが手を引いた其処をアルシアの鋼茨鞭が貫いていく・・・が
妖艶嬢の引く腕にそれは何も捕らえる事無く空振りで戻ってきてしまう。
そして、それに合わせたかのように皆の目の前で閉じた落穴の扉は
そのまま砂塵に描消えてしまった。
 「こんな所に落とし穴はなかったのに・・・」
 「・・・ああ、見た通り存在せんヨ。アレは簡易魔方陣でこさえたモノ。
簡易故に反応が微小だったとはいえ、こいつぁ私の落ち度だナ。全く全く・・・」
己のせいでないとはブービートラップを見破れなかったレイハ,プライド砕かれたルーに
仕方なかったとはいえ目の前で手及ばすだったアルシアまでも完全意気消沈。
関して関係ないシエルは表情変化なく平然そうだが、猫耳がへなってコレも意気消沈。
普段は見た目と違い歴戦の風をもつ四姫、現に彼の妾だけではなく各々長として活躍する
彼女達が主がいないだけで脆くなるとは。 となれば、リーダーシップを取るのは当然
「・・・、先へ進もう。」
!!?
「二人とも落穴で参るタマじゃない。先に進んでしまったと考えるべきだろう。
なら、俺たちも進むべきだ。そうすれば必ず二人と合流できる。
・・・以前に、移動しないと俺達の方がヤバイ気がする」
!!?
「走れっ!!!」
モンスターに包囲されつつあることを察知したロカルノの叫びに、皆は次階への残り僅かを
必死に走りだす。パーティの最期の一人が階段へ転がり込んだ時闇の薄明かりの中でも既に
目視で無数のモンスターの姿が確認出来ていた。
クラークの言う通り今は迷うのではなく行動する時。生きている限りは必ず会える。
彼女達は既にそれを体験しているのだから・・・・・・


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