一万HIT記念小説「BLOODY TEARS」



神よ・・私はどうすればいいのでしょうか?
家族を魔によって滅ぼされともこのまま普通に生き
、貴方の子らに貴方の教えを説くのが修道士としての使命
ですが私はそれを選ばなかった・・。
このままではいけないと思い退魔士でもないのに破魔の銃を持ち戦う道を選びました
それが復讐かどうかわかりません、・・答えが見えないのです
ただ・・このままではいけないと思って・・
ですが神よ、私はこの銃を持ちこの国に少しでも光がさせばそれでいいと思います
・・それが正しいのかわかりませんが、願わくば・・貴方の加護を・・

山奥に建てられた屋敷、外界と遮断するとなれば
これほど最適な場所はないほどその屋敷は街から離れていた。
周りは森が支配しているが如くでありそこに辿り着くまでの道ですら所によってはよくわからない
屋敷前に無造作に置かれている岩もコケが生えているのだが
不思議と屋敷には植物が寄りついていなく新築の物のように色あせていない
その中、質素な一室にて小さな聖母像に祈祷する女性が一人
部屋は窓からの日の光が満たされておりベットと机、
そして手を組む聖母像しかない部屋は神々しい雰囲気を出している
祈祷している女性は修道士の黒い服装・・、
丈夫な革のブーツを履き通常の修道士が身につけるものよりも短めで動きやすいものになっている。髪はスラッと綺麗な銀髪、顔つきも絶世の美女だが彼女の顔は決して明るくはない
「・・・神よ・・・」

「・・また、お祈りかい?」

祈る女性に声をかけながら部屋にはいる青年
・・長い白髪の優男で彼女をこの屋敷にかくまっている主でもある。
それなりに気品のある服を着ているが屋敷の主というほどのものではなく
軽い黒ズボンと白いシャツぐらいだ
「はい、この世が少しでも良い方向へと・・っと思いまして・・」
「神か・・、本当に存在して人を見守っているのなら・・悲劇などは何故起こるのだろう・・」
「ドラクロワさん・・?」
「いやっ、何でもない。
それよりも日増しに国を囲む血の結界が濃くなっている・・準備もできたことだ。
そろそろ動いた方がいいだろう」
「・・はい、ですがブラド公を殺せばそれで済むのでしょうか?」
「そうだな、面倒な後始末はかもしれないけど・・とりあえずは大丈夫だと思うよ。
大丈夫、マリアさん・・君は僕が護る」
「ありがとうございます・・」
静かに見つめ合う修道士マリアと屋敷の主ドラクロワ・・、
だがそうこうしている間にも事態は悪化する

二人はそれよりすぐ準備をして屋敷の前に・・
「トランシルバニアまでは道中馬で行こう、・・道中は街には寄らない。
・・ブラド公の血の結界にて国民はすでに暴徒化している。
いらない騒動に捲きこまれるわけにもいかないからね」
屋敷の前に立つドラクロワ、黒い貴族服に着替え丈夫そうな革の鎧
そして肩には長方形の罪人処刑用の斬首剣
ひ弱そうな彼だが楽々と担ぎ荷物袋も持っている
「そのために食料を集めていたのですね・・、わかりました。ここからはどれほど・・」
マリアはあの修道服姿・・ただ腰にはポーチがかけておりそこに収まるは
銀製の『力天使の破魔銃』・・大陸聖教会の選ばれた退魔士にしか渡されない魔銃だ
彼女にはそれを持つ資格を聖教会で受けたわけではなく本来の持ち主、
彼女の恩師であるミュンの遺品として持っているだけである
「そうだね・・山を降りて4,5日・・かな?おそらくトランシルバニアは魔都化している・・
それまでにも向こうには僕達の存在は知られているから・・もっと遅くなるだろう」
「わかりました。辛い戦いになるでしょうが・・・それさえ乗りきれれば・・」
「・・・・・」
マリアの決意にドラクロワは少し顔を曇らす・・
「・・どうしました?」
「いやっ、すまない。・・行こうか」
ドラクロワはマリアと顔を合わさず獣道を進み出した・・
マリアもそれを不思議そうに見ながらも後をついて行った
・・・・・
彼らが屋敷を後にして数分後

ゴゴゴゴゴゴゴ・・・・

屋敷の周りの空気が少し歪んだと思うとそこにあるのは古ぼけた廃屋だけとなっていた





・・トランシルバニア城・・
人間が住んでいるとは思えない血生臭さが随所に漂っており城内には人もほとんどいない
その中、王の間に数人の人影がある
「い・・いやあああああ!!あ・・・・ああ・・・」
玉座に座る金髪の青年に抱き締められる栗色の髪をした少女・・絶叫とともに体を震えさせる
見れば彼女の首筋を青年が噛みついている
「・・ゲップ・・、・・ふう。街では生きの良い娘も少なくなってきたな」
虚ろな目になりピクリとも動かなくなった少女を手放し青年は小さくため息をつく
見れば玉座の後ろにはおびただしい女性の裸体が・・全員目は虚ろで首に出血した後がある
「・・ならばいよいよ他国へと・・?」
その光景を静かに見つめる仮面の男・・黒い甲冑からして騎士だというのはわかるが・・
どこか異常な雰囲気を漂わしている
「そうだな〜、とりあえず親父を殺した国を攻めるか。大義名分ってやつがある」
ニヤリと笑う青年・・ブラド公
「そんな事をせずに一気に攻め滅ぼしたほうがいいのでは・・、主の結界により国民は間もなく
我等が忠実な兵となります。・・それでなくとも小生が先陣を切れば人間如き・・」
彼に抗議するが如く言い寄るこれまた黒い鎧の男
・・っと言っても仮面の男とは違い彼はその甲冑自体が皮膚のような感じだ。
しかも顔全体も包んでおり鉾のような飾りが額にある。
そして目元から光る真紅の瞳が・・
「ロイヤルハウンド、相手がどうであれ力押しだと限界がある。
それにノッケから俺達の正体を悟られて生娘を隠されちゃ手間だからな。」
「・・なるほど・・」
「それに、聖教会の退魔士どもも動いているらしい・・うかつに突っ込むとこっちが危ないってわけだ。
・・まぁ機が熟せば押せ押せで行く。・・その時の先陣は任せるぞ?」
「御意!」
「ですがブラド公、国内にもまだ危険因子は残っていると思いますが・・」
仮面の男が静かに言う・・それにはブラド公も少し笑いながら頷く
「ああっ、最強の退魔士ミュンの所にいた娘か。
何やら変わった男にかくまっていたんだったよな?」
「・・ええ、それが先日屋敷捨ててこちらに向かっているようです・・」
「デュラハン!娘一人などに目くじらを立てる必要がどこにある!」
「必要・・か。油断はするなということだ。現にデスが殺られた」
仮面の騎士・・デュラハンが声を落として言ってのける
・・それには黒甲冑の男ロイヤルハウンドは怒り出す
「あのような娘と小生と一緒にするな!」
「おいおい、こんな所で内輪もめするな。・・じゃあロイヤルハウンド、お前やってみるか?」
「承知、この街に入れるまでに討ち取って見せます!」
そう言うと雄々しく王の間を出て行くロイヤルハウンド・・
デュラハンはそれを静かに見つめながら呆れる
「・・ブラド公、よろしいので・・?」
「ああっ?まっ、あいつで仕留めれたのならばそれでいい。
それにしてもそのかくまった男・・気になるな。ちょいと調べてくれるか?」
「いいでしょう。では・・」
フッと笑うデュラハン・・次の瞬間彼の姿は忽然と消えた
「・・・さぁ、面白くなってきたな。他国侵略の前座にはちょうどいい・・」
一人残ったブラド公・・、女の残骸に囲まれて狂喜の笑いに体を振るわせた



数日後
トランシルバニアのほど近い荒野にドラクロワとマリアはいた
都はもう肉眼で確認ができるが不自然なまでにドス黒い雲が渦巻いていた
「・・す・・すごい・・。都全体から瘴気が・・」
馬に乗りながらマリアが冷汗を流す・・都から放たれる威圧感がここまで漂っているのだ
「これ以上は馬が暴れ出すな・・マリアさん。もう馬から降りて歩いていこう」
「わ・・わかりました。でもこの様子だと街は・・」
「考えないほうがいい。それよりも・・体に異常はないかい?」
「私の・・ですか?」
「・・ああ」
深刻そうなドラクロワ、対しマリアは深く考えずに・・
「大丈夫ですよ、瘴気にさらされても私には神のご加護があります。異常はありません」
ニコリと笑って見せる・・それにドラクロワは少し微笑みながらも無言で馬から降りた
「・・ドラクロワさん・・?」
「・・いやっ、すまない。ここからが敵の本拠地だ。気を引き締めて行こう」
静かに先に進もうとしたその時・・!

”笑止!!貴様等を我が都に入れさせるわけにはいかん!!”

突如天に木霊する咆哮!それとともに彼らの前に飛来し姿を現す黒甲冑の戦士
大きく展開する漆黒の竜翼、禍禍しいまでの鎧、そして真紅の眼光
正しくそれは悪魔と呼ぶに相応しい姿であった
「ブラド公の者・・っと見て間違いないようだね」
「左様!小生はブラド公に仕えし騎士が一人!ロウヤルハウンド!貴様等を地獄へと招く者だ!」
「・・闘争心そのものだね。ここは僕が相手をする。マリアさんは下がっていて」
「・・わ、わかりました。ドラクロワさん」
彼に言われるままにマリアは彼の後ろへと下がる
「ふん!女を庇うとは小癪な真似を!だがそれが己が過信と知れ!」
気合いとともに構えるロイヤルハウンド・・構えからして拳法の心得があるのがわかる
「過信かどうかはやればわかるさ。だがこの瘴気・・やはり・・・」
肩の斬首剣を取り静かに正眼に構えるドラクロワ
だが敵を目の前にしても何やら考え込んでいるようだ・・それに対しロイヤルハウンド大激怒!
「小生の前にして戦いを忘れるか!愚か!!」

疾!

怒りながら翼を使っての超加速にて一気に間合いに入りそして鋭い手刀を放つ!
「それは失礼、色々と考えることがあるからね。・・それに・・!」
ドラクロワは手刀を目の前にして軽く後に飛んだと思いきや・・

ガァン!!

大ぶりに斬首剣を切り上げロイヤルハウンドの腕をカチ上げる
・・本来ならば腕ごと切断できるくらいの鋭さだが異形の腕にはそこまでは通じない・・
「ぬぅ!なかなかの腕・・だがまだだ!」
そう言い腕を弾かれた動作のまま身体を捻り強烈な回し蹴り!!

カァン!

「くっ・・、流石は従者。多少はやるようだね」
咄嗟に斬首剣でそれを防いだドラクロワ
・・多少体勢を崩したのだがそれでも猛烈な蹴りを真っ向から受けたのだ、
通常の腕力では考えられない
「貴様・・小生の蹴りをまともに受けるなどと・・、・・貴様・・」
「余計な詮索は止めてもらおうかな。時間がない・・そろそろ消えてもらうよ!」
そう言うとドラクロワは斬首剣を力強く突き出し、ロイヤルハウンドを飛ばす!
「ぬぉ!?小生が・・力負けしているだと!」
「抵抗をするな!」
圧倒されるロイヤルハウンド・・、対しドラクロワはお構い無しに斬首剣を降り下げる!

ギィン!・・・ギ・・ギギギギギ・・・!!!

ロイヤルハウンドは十字受けでそれを受け止め、すさまじい衝撃に耐えている・・
「ぬぅぅぅぅぅぅ!!人間如きに小生は負けるわけにはいかん!!」
「そのおごりが敗因だ!お前だって元は人間、違う種としての誇りを持つのは間違っている!」
「く・・お・・おのれぇぇ!!」
次第に押されるロイヤルハウンド・・そして・・

斬!

ゴリ押しの一撃がロイヤルハウンドの体を真一文字に切り裂いた
「く・・がぁ!!・・・ブラド様・・もうしわけ・・」
体を切断されたロイヤルハウンド・・静かに最後の言葉を残しその体は灰と化していった
「・・、異形になっても忠誠は忘れないか。道さえ誤らなければ名士にもなれただろうに・・」
やりきれない口調で唸るドラクロワ、そんな彼をマリアは静かに見守っている
「ドラクロワさん・・」
「・・すまない、少し取り乱したみたいだね。これからはブラド公の圏内、
まだ従者の襲撃も予想されるだろう・・気をつけていこうね」
「わかりました。
けど、あの屈強な男に力押しで勝つなんて・・・ドラクロワさんは華奢に見えて力持ちなんですね」
見たところ彼女の言う通り華奢な体付きのドラクロワだが
屈強な男でも持つのさえも大変な斬首剣をも軽々持っている。
それだけでも彼女にとっては力持ちなのだが今の戦闘はそれ以上のモノを感じる
「ははっ、そうかい?まぁ見かけにはよらないということさ・・さっ、行こう」
少し笑いながら先を進むドラクロワ・・彼女もその姿をたくましく思いながら後に続いた

・・・・・・

「・・なるほど、あのドラクロワという男・・我等と同じか・・」
二人が去った後、突如黒い霧が固まりその姿を現す黒騎士デュラハン。
ロイヤルハウンドの戦いに加勢もせず様子を観察しどうやらその分析が終わったようだ
「ふっ、舐めてかかるな・・っということだな。ならば全力で行く・・」
そう言うとデュラハンは二人が歩いていった方向を見つつ再び姿を消していった

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