CAST

シスターマリア:レイブン(sword and bow)

ミュン先生:ミュン=クレイトス(最強の夫婦)

少年:リュート=ボーマン(ガンナーズドッグ)

少女:エネ=ワイズマン(スタンピート!!)

ブラド=ツェペッシュ(ドラキュラ)伯爵:クロムウェル=ハット(スタンピード!!)

ドラクロワ:フェイト=ラインフォード=ドラクロワ(闇の領主)

デス:シャン(ガンナーズドッグ)

兵士:スクイード=キャンベル(スタンピート!!)



6000HIT記念小説 「Bloody tears」




・・プロローグ・・
今よりさかのぼる事200年、大陸の西部にあるトランシルバニアという小さな国でそれは始まる
その頃、国を治めていた王は外国よりの不意の侵略に対応できず殺害された。
国民は敬愛していた王の死に嘆き、新たなる支配者に恐怖を覚えた
そんな中に、偶然海外留学中だった王子がその訃報にいち早く対応し、
たった数人の従者とともに侵略者を追い払う・・。
それは王族を愛していた国民にとってはこれ以上ない奇跡であり喜びであった

・・しかし、全てはそこから狂い始めていた・・




国の西部にある小さな孤児院
王政などは無縁の山奥にて自給自足をしており町との距離もかなり離れている
子供たち数人と二人のシスターがそこの住人で貧しいながらもひっそりと暮らしている

「マリア、そろそろ山にキノコが生え始めているはずです。
今日の夕食に並べ様と思っているのですが・・」
子供達が畑仕事をしており、それを見ながら庭先で雑草抜きをしていた中年のシスターが
もう一人の若いシスターに言う
「そうですね、では崖は危険なので私一人で行きます」
マリアと言われたシスター、黒い礼拝服に美しい銀髪の流し髪を揺らしながら応える
足にはシスターとは思えない黒革の丈夫なブーツを履いているようで
山岳の中にあるだけにそれなりの物を用意しているらしい
ともあれ、籠を持ちマリアは静かに孤児院の裏手の山に入っていく
慣れた足取りで道なき道を登っていった

「先生!マリアお姉ちゃんはどこにいったの?」
「マリアは山にキノコを取りに行ったのよ」
「僕も行きたい!」
「ううん・・、山は危険だから大人しく帰りを待ちましょう?」
「ええ〜!」
「先生の言うこと聞かなきゃ、ブラド様に串刺しになっちゃうよ!」
ダダをこねる子供に別の少女が注意をするのだが・・
「エネちゃん、どこからそんな事を・・」
「この間町に下りた時におじさんが言っていたの!悪い人は王様が許さないって!」
「・・そう・・・」
「先生、どうしたの〜?」
「・・ううん、何でもないわ。それよりもマリアが無事に帰ってくるように祈っておきましょう?」
「「は〜い!!」」
手を上げ、元気よく応える子供達・・、シスターはそれを微笑ましく見つめる・・が
孤児院の入り口に人が立っているのに気付く
「あらっ、どちらさまですか・・」
シスターは子供を頭を撫で、入り口に向かった




1時間後
マリアは夕暮れ時の獣道をゆっくりと降りていた
籠には色んなキノコが入っておりついでに山菜も数種摘んでいたようだ
「遅くなってしまったけど・・みんな・・喜ぶでしょうね・・」
時間はかかったけれども大量の成果に微笑むマリア、
孤児院の屋根ももうすぐそこまで見えていて
この食材の調理に頭を回していた・・・
しかし
「・・・??何・・変な匂い・・」
異様な匂いが孤児院から伝ってくる・・そしてよくは見えないけれども
孤児院の菜園場に子供が転がっているようだ
「・・・!!大変!」
何かあった・・、そう思いマリアは籠を一反そこに置き、急いで斜面を下っていく・・

・・・・

異常が起きている・・
彼女にもそれは予想できていたが孤児院の風景はそれを遥かに上回っていた・・
菜園場の土は赤く染まっておりそこにうつぶせになる子供・・
昼間ははしゃいでいたのに今はピクリとも動かない・・
首元を深く損傷しているようだ
中も同じように家族達が物言わぬ肉塊と化していた・・。
「み・・・んな・・」
その惨状に嗚咽するマリア・・
現実味は涌かないがこらえきらない悲しみが奥底から噴き上がりそうなのは確かだ
「・・・!先生!先生は!」
死体の中には先生の姿はない・・、淡い希望を持ちながら彼女の場所を探す・・
見れば自分達の寝室に向かって伸びる血の跡が・・。
この惨状を産んだ物か、先生のものか。
もし前者ならば間違いなく命はない・・、しかしマリアに選択の余地はない。
家族を捨てて逃げるわけにもいかない・・。それにもう日が暮れてしまう・・

恐る恐る血の跡にたどり壁に手をつけながら歩くマリア・・・
血は細い廊下を抜け先生の部屋に続いており、そこで止まっている
「・・・、先生!!」
もはや彼女も迷いはなくその扉を開ける・・!!
「マ・・マリア・・」
先生は部屋の床に横たわっていた・・。
腕を深く斬られており首からも出血している、もはや虫の息だ
「先生!大丈夫ですか!一体何が・・!!」
「ヴァンパイアの仕業です、突然ここに襲いかかり・・ううっ・・」
「い・・今、治療します!」
「私はもう助かりません、それよりも・・この聖母様の絵の裏にある物を持ってお逃げなさい
・・あいつはまだ近くにいます」
「い・・嫌です!みんなを置いて・・」
「マリア、貴方ももう一人の女性です・・私達の分まで生き延びるのです」
「先生・・」
「ここに火を放ち逃げるのです。
私が死ねば埋められた呪詛が動き始め・・眷属にされてしまいます・・」
そう言うと先生は首筋を見せる・・、そこには噛みつかれたように二つの傷が・・
「そ・・んな・・」
「血を吸われ、呪われました・・。私のことはいいです。
安全なところで・・普通の娘として生きなさい・・いいですね!」
「先生・・、はい・・」
「よろしい。神よ・・この迷える子羊に貴方の慈悲を・・・・・」
祈りを込めて先生は静かに目を閉じガクッとうなだれる
「せ・・先生・・?先生!しっかりしてください!!先生!先生!!」
涙を流し必死に声を出すマリア・・しかしその言葉に先生が応えることはなかった・・

・・・・・・・

しばらくは泣きながらうなだれていたマリアだったが冷たくなった子供達を
教室に集め先生の遺体といっしょにまとめた
・・、せめて一緒に天国へ行けるように・・。
先生は眷属にされると言われたがすぐにそうなるわけではないらしい・・、
その代わり段々と皮膚の色がどす黒い青色へと変化していっているのだが・・
用が済めば火を放ち、孤児院を後にするつもりなのだが
その前に死ぬ前に先生が言った物を取るため聖母の描かれた絵を取る・・
そこには壁をくりぬいたような物置となっており、綺麗な木箱が置かれている
「これは・・」
フタを開けてみるとその中には綺麗な銀でできた銃と小さな瓶
そして同じく銀の弾丸がいくつも詰められている
「銃・・?こんなものなんで先生が・・」
驚きながらも銀の銃を取るマリア
鏡のように綺麗な銃身に目を奪われたがその銃の下に隠すように置かれていた手記に気がつく

”願わくば、この銃を再び手にすることがなきよう・・。そして魔を断つことのなき世がくるよう・・
ミュン=クレイトス”

「先生の名前・・、これ・・先生の物だったの・・?」
尊敬する先生であるミュンなのだがその過去をまるで知らなかったマリア。
扱い方こそよくわからないのだが大切な物だったと言う事がわかり
それを懐に締まって外にでる

そして・・

「先生・・みんな・・。天国にいけるように明かりを灯します・・。・・ごめんなさい・・」
覚悟を決めたかのように目を閉じ、住み慣れた孤児院に火をつける
火は暗くなった空を照らし文字通り天まで続く道しるべとなった


しかし、それに合わすように狼の遠吠えが幾つも重なっていた




時はすでに深夜・・、孤児院の火がまだ見えるがそれもだいぶ小さくなってきた
マリアはとりあえず孤児院で起こった悲劇を伝えようと山の下の町へと向かっている
闇の山道は危険極まりないものだが、松明片手になんとか降りている
・・しかし、その火は周りに自分の存在を伝えるものでもあった
「・・・、魔の者・・?・・・神よ・・」
暗い山道の中、突如マリアが立ち止まりロザリオを握り締める
周囲にはガサガサとうごめくものがあり・・突如それは襲ってくる!!

「ガウ!!」

三つの頭を持つ魔犬、ケルベロスだ。それも一頭ではなく何頭も・・
「くっ・・、こいつらが・・先生達を・・」
何とか回避し、松明の火が消えないように警戒する
ケルベロスはヴァンパイアの眷属・・、つまり近くに恩師を殺した奴がいるということだ
「グルルルル・・・!!」
現れたのは三頭・・、九つの顔がマリアを睨む
「神よ、不浄なりしものを払う力を・・」
ロザリオを握りながら咄嗟にマリアが祈る・・
それと同時にロザリオを握った手が白く光り包みだす
神聖魔法の一種であり、軽い邪気を払うマジナイのようだ
「ガァァ!!」
「てい!」
遠慮なく襲いかかるケルベロスに対しマリアはその脇腹を叩くように光った手を突き出す!

ジジジ・・!!

「キャン!!」
光に当たった部分が黒く焦げたが致命傷には程遠く軽く飛びのいて再び彼女を睨みだす
「・・、時間の・・無駄です・・!」
大した攻撃手段もなく逃げだすマリア・・。
相手は足の速い魔犬だがそれらはまるで彼女を誘う様に散らばって追い詰める
しかしマリアにはそんな事には気付かずロザリオを握り締めて必死に逃げている
松明の明かりが自分の位置を知らしているのだがそんな事を気にしてもいられない

・・・・・・・

しばらく走っていたのだがやがて道の先はなくなり絶壁が姿を現す
「はぁはぁ・・・、えっ・・。そんな・・」
本来、山道を歩けば街道へと出るはず・・
しかしケルベロスから逃げることに必死になりそこからだいぶ外れてしまったようだ

”あらあら・・、がんばったけどそこまでのようね”

不意に山道の方から女の声が・・
「!!・・誰です!」
吹きさらしの風で弱くなった松明の火を声のしたほうに向ける・・が・・

フッ・・

風にも耐えていた火が不意に消える
「そんな火なんか近づけなくても月明かりで見えるでしょう・・」
小ばかにした口調で姿を現すは黒髪の女性・・
胸元と股間を隠す以外は長いブーツを履いている、そして背中には蝙蝠のような翼が・・
「あ・・貴方は!」
「伯爵の配下のデスよ♪よろしくね・・。っと言ってももう食べちゃうんだけど」
笑いながら大鎌を取り出すデス。さらには彼女の後ろに姿を見せるケルベロス達
「デス・・、貴方達が孤児院の皆を・・!!」
「ああっ、ガキはこの子達に食べさせたんだけど・・、なんか肉が固くって美味しくなかったらしく
少し食べて捨てちゃったわ。やっぱ、人間は力仕事もロクにしない都会の人間に限るわねぇ!」
「じゃあ貴方が先生を・・!許せない・・!!」
「別に許してもらわなくってもいいわよ、貴方、ここで死ぬんだから」
「く・・・、こうなったら・・」
先生の遺品である銀の銃を思い出し、デスに向けて構える
中に弾が入っていることは孤児院を出る時に確認した・・
銃を撃った事はないけれど何度か書物で見た事があるので扱いはわかっている
「魔銃!?あの女のか!」
その銃を見た途端デスの表情が一変する
「ええい!」

ドォン!!

鋭い銃声とともに弾が発射されそれが見事デスの肩に命中!
「ああっ・・!くっ・・この・・ゲスが!!」
命中した肩は瞬時に消滅したがそんなことお構いなしにデスは大鎌を振るう!!

ザクッ・・

自分の肉が切られる感覚を覚えたマリア
見れば自分の脇腹が深く切り裂かれ自分もその衝撃で崖を飛ばされている
「あ・・・せんせ・・」
激痛を感じる事もなくマリアは気を失いながら崖の下へ・・
・・
「ちっ、あの女の後継者だと言う事!?・・まぁ、この高さじゃ助からないでしょう・・
確認は使い魔にやらせて・・帰るわよ!」
崖の上で忌々しげに吐き捨てるデス・・やがて肩を押さえながら姿を消した。

それよりすぐ、綺麗だった満月が突如赤く変色していく・・・
何かの再来を祝う様に・・




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