”神よ・・、この迷える子羊に貴方の慈悲を・・”

先生・・私・・・

”普通の娘として生きなさい・・マリア・・”

ですが、みんなの事が・・



「く・・うっ!」
先生の声に導かれるようにマリアは目が醒めた
・・しかしそこは崖下の山林ではなくどこかの客部屋のようなところ
「ここは?・・あ・・・傷が・・?」
見れば服も質素なものに着替えさせられており脇腹の傷も嘘のように消えている
治癒魔法を行ったとしてもあれほどまで深ければ痕が残るものなのだが・・
「保護されて・・治療してもらったのかしら・・?」
崖から落ちるところから記憶がないマリア、あるのは優しい光に包まれたような感覚がしただけだ・・
どうなっているのか錯乱している中、客室の扉のノブが回り一人の男が入ってくる
「やあ、気分はどうだい?」
入ってきたのは長めの白髪の青年、物腰穏やかで手にはスープをのっけた盆を持っている
「貴方は・・?それにここは・・?」
「僕はドラクロワ、ここは僕の屋敷さ」
優しい笑顔で盆を置くドラクロワ・・
「私は・・どうなったのですか?それに・・」
「君は山林に血まみれで倒れていたんだ。
偶然通りかかった僕がそれを見つけてここまで運んだというわけ」
「・・・、そうですか・・。しかし、あんな人里離れたところにどうして?」
夜の山、それも山道から離れた崖の下にいる事自体おかしいことだ
「孤児院の事が気になったからね。
様子を見に行ったら血の匂いがしたからなんとか見つけれたんだよ」
「そうでしか、・・助けていただきありがとうございます」
静かに頭を下げる。謎は残るがとりあえずは感謝の気持ちで一杯のようだ
「・・あ・・ああ・・」
それに対しドラクロワはどこか申し訳なさそうだ
「ですが孤児院の様子・・ですか。町の人間にはあの孤児院の存在はあまり知られていないのに・・」
「僕はミュン先生とは顔見知りだったからね。さぁ、少し休んで・・まだ動いちゃ駄目だ」
「は・・はい。すみません・・」
言われるままにベットに寝かされるマリア、何故だか彼の言う言葉に安らぎが憶える
ともあれ、青年ドラクロワはマリアの隣に座りスープを彼女に渡す・・
「しかし・・、この回転拳銃・・力天使ミカエルのエンブレムがされているところを見ると
ミュン先生のものか・・」
食事をとるマリアを余所にドラクロワは懐からあの銀の銃を取り出す
「そ・・それは!」
「ああっ、気絶している君の近くに落ちていてね。見覚えがあったからついつい修理させてもらったよ」
「・・、貴方は・・先生の過去について何か知っているのですか?」
「・・・・・、そうか・・、君にも言ってなかったか。
・・・彼女は昔、有名なヴァンパイアハンターだったんだよ。
それも聖教会最強と言われたまでのね」
「・・先生が・・?」
「そう、この銃は教会に属する退魔士の中でも選ばれた者にしか譲られなかった破魔の銃だ。
このグリップに埋められた力天使の紋章がそれを表しているよ」
「その銃・・そんなにすごいものだったのですか・・」
綺麗な装飾がされていたからてっきり売って暮らしてくれと思っていたマリア・・
なんだか少し申し訳なさそう
「もちろん、普通の弾丸でも加護を受けて不浄を払うよ、銀弾ならばなおさら・・だ
まぁ、ヴァンパイアなんてもの自体そうそう姿を現すモノじゃなかったから
大抵下級魔族を仕留めていたんだけどね」
「・・、で・・でも、貴方はなぜそんな事を・・」
「ミュン先生とは色々あったからね。それよりも君はこれからどうする?
孤児院は綺麗に焼け落ちた・・。近くに村があるけれども、安全じゃない。
君もその類でここにいるのだろうが・・」
急に深刻そうな顔をするドラクロワ
「安全じゃない・・?村で何かあるのですか?」
「正確には国全体・・さ。最もまだ誰にも気付いていないだろうけどね」
「???」
「君は、ブラド=ツェペッシュ公の話・・、おかしいとは思わないかい?」
「えっ?”串刺し公”ですか?この国を治める立派な方だと言う事以外はあまり知らないので・・」
「そうか・・、あれだけ人里離れていたんだ、無理もないか。
以前侵略に合いこの国が滅亡の危機に瀕した時、
海外に留学していたブラド公は従者数人で奇襲をかけて見事侵略者を追い払った・・っというのが
この国の英雄憚だ。
・・しかし、統治して日が浅い状態とはいえたった数人の奇襲で国が揺らぐと思うかい?」
「・・・何が言いたいのですか?」
「結論から言おう、ブラド公は人間じゃない。
いや、人間じゃなくなってしまった。そして従者もね・・。」
「・・・・・・」
「・・、驚かないね?」
落ちついて話を聞いているマリアにドラクロワも驚いている
「孤児院の出来事を考えたら頷けます。先生はヴァンパイアの仕業と言ってました」
「僕もそう思うよ。今国を取り巻く様に血の結界がなされている。
・・これは普段は何も感じないが時間が経つにつれてその中にいた者は狂気にさらされる。
・・それができるのはヴァンパイアと言われている『夜の一族』だけだ」
「では、串刺し公がヴァンパイアになって先生を・・」
「そう考えるのが妥当だね。従者とともに契約を交わし変貌を遂げた。
そして国の中で唯一自分達を滅することのできる人物
・・ミュン先生の殺害をいち早く実行したんだろう」
「・・・・、そう・・ですか。じゃあもうこの国は・・」
「もちろん、何もしなければ魔族の天国になるだろうね。しかしそうはさせない・・僕がね」
静かに立ちあがり窓を見つめるドラクロワ
「貴方が・・?一人で立ち向かうのですか!」
「まぁ、そういう事になるかな?ともあれ、君は君の意思で動くといい。
この銃も君に託されたのならばどう使っても先生は怒りはしない・・。
なんなら国外に脱出するのもいいだろう。
できる事は協力するよ」
「・・・、少し、考えさせてもらえませんか?」
「ああっ・・、しかし、この屋敷も使い魔達に見られている・・。
おそらくは君のことをまだ諦めていないようだね。ロビーで待っている。
もう傷も治っているはずだ、決心がついたら降りてきてくれ」
「・・はい・・」
ドラクロワはマリアに銃を渡し、静かに部屋を出ていった

「・・・先生・・、貴方の言い付けを・・破るかもしれません・・」

扉越しに聞こえるマリアの声
対しドラクロワは静かにそれを聞き、扉に持たれかかる
「・・・、ミュンさん・・。彼女を助けるためとは言え、僕はまた過ちを犯した。
彼女がどんな決断をしようとも・・影ながら見守ります・・」
それは懺悔の呟き・・、目を閉じしばしうつむいていたがやがて音もなく廊下を歩いていった



それより1時間後
屋敷のロビーにて静かに待っているドラクロワの前にマリアは姿をあらわした
部屋の隅に置かれていたあの黒い修道服を着て目には決意の灯火が
「・・決まった・・かな?」
「・・はい。私は・・貴方と行動を共にします」
「いいのかい?」
「先生は普通に生きろと言いましたが・・、このまま何もしないのは罪だと思います」
ゆっくりと決断を述べるマリア、一切の迷いはないようだ
「そうか、・・ありがとう」
「しかしこの屋敷、人気がないのですが・・」
綺麗に掃除こそされているが人気が全くない。
日の光が差し込んで寂しさに似た感情を彷彿させる
「ここは僕しか住んでいないよ。さて、じゃあ早速行こうか」
ドラクロワは動き安く丈夫な厚手の革の服を着ており、壁にかけていた剣を取る・・
その剣は普通の先端が細くなったものとはちがい完全に長方形・・、見るからに重量感がある
「その剣は・・」
「ああっ、処刑人が使用した斬首用の剣さ。さてっ、お出迎えも有る事だしとりあえず外に出ようか」
重そうな斬首剣を軽々と肩に担ぎドラクロワは表に出ていく
マリアも唖然としながらそれに続く

ドラクロワの屋敷は孤児院と同様にかなりの山奥にあるようで
屋敷外はゴロゴロ石が転がって周りは緑一色だ
木の種類からして孤児院付近とはかなり離れているところだとマリアは静かに感じている
「さて、昼間でも動けるとなると・・高位な者かな?出てきなよ」

”あぁら、ばれていた?”

笑い声と共に女性の声が響く・・
「この声・・あの女!?」
自分の脇腹を深く切り払った魔の女デス・・その声だった
「・・もちろん、早くでてきなよ。それともコソコソするのが好きなのかな?」
見えない相手にドラクロワは余裕で言ってのける

”減らず口ねぇ、人間如きが・・。私の可愛いペットと遊んでおきなさい!”

そう言うと地面に突如魔方陣が展開し、そこからケルベロスが現れる
「眷属か。その程度の力量で・・」
「グルルルルル・・・、ガウ!!」
慌てもしないドラクロワにケルベロスが飛びかかる!!
「ドラクロワさん!」
「まぁ、見ておきなよ!」

斬!!

余裕に斬首剣を振りケルベロスを真っ二つに切り裂く!!
「す・・すごい・・」
「この程度、造作もないよ」
振り向きもせず軽く言うドラクロワ、ケルベロスは綺麗におろされ無事だった二つの顔も
小刻みに動いていたがやが生き絶え、灰となっていった

”・・ふぅん、人間にしてはやるわねぇ”

「まだ隠れているつもりかい?」

「・・あまりいい気にならないことね」

ドラクロワの挑発にのってやるように姿を見せるデス、大鎌を携えた死の少女が瞬時に現れた
「別にいい気になってないよ。人の家に押し入ろうとしていたんだし」
「人間が偉そうに・・、そこの娘は殺させてもらうわよ?
どうやら貴方もブラド様の正体に気付いているようだし・・生かしているわけにもいかないわねぇ」
ニヤリと笑い鎌を舐めるデス
「気付いているのはもうばっちりね。しかし・・君じゃ役不足だ」
「ほざけ!血祭りにしてあげる!」
そう言うとデスの下半身は黒い霧状になりドラクロワに高速で飛びかかる!

ピッ!!

「んっ!?」
思った以上の速さだったのかドラクロワも対処しきれない様で刃は頬をすこしかすめてしまった
「ちっ!仕留めそこなったわね!まぁいいわ!このまま・・!」
ドラクロワを通過したままデスはそのままマリアの元へ!
「!?マリアさん、逃げて!」
「あ・・・きゃ!!」
鎌を振り上げたまま襲いかかるデスにマリアは咄嗟に祈りを込めた手をデスに向けた・・

キィィィィィィン・・

かつてケルベロスに向かったした物とは違い白い光が大きくなりデスを覆う!
「ぎゃ・・・あああああああ!!」
光に当たったデス・・、その部分が灰となり地面に落ちてもがき苦しむ・・
「・・・・・、え・・?私・・こんなに力が・・?」
自分でも信じられないマリア、眷属でさえ歯が立たなかったのだ。
それが主を倒すほどの力となっていれば唖然としてしまう
「く・・こんな・・こんなことって!」
対し地に倒れるデス、体の左半分がほとんど灰と化しておりもはや立つこともできなようだ
「やれやれ・・、僕が思っていたよりも魔の者との契約は強かったみたいだね」
そんなデスにドラクロワが近づく
「き・・さま・・」
「マリアさん、見ないほうが良い。僕が止めを刺すよ」
「いえ・・、この人は孤児院皆の仇・・せめて見届けさせてください・・」
「・・強いね・・、じゃあいいかな?デスさん」
ドラクロワは容赦なく斬首剣を振り上げる・・
「く・・・、・・えっ?この血の匂い・・まさか・・貴様も!?・・・・ああっ!!」
何かに気付いたようなデスだったがドラクロワはそれを言うことを許さず斬首剣を振り下ろした
・・
絶命したデスは形そのままに全て灰と化したようだ

・・・・・

「ドラクロワさん、さっきのデスの言葉・・」
「・・あっ、ああっ、気にしないほうがいい。それよりもこれで従者を倒せる者が存在することがブラド公にも伝わるはずだ。しばらくはこの館で待ち構えよう」
焦るようにドラクロワは屋敷の中に入る・・、その姿にマリアは首をかしげて後についていった
こうして命の恩人と二人っきりにて人里離れた屋敷への暮らしが始まった





・・・トランシルバニア城・・

王の間にたたずむ金髪の青年・・、高貴そうな貴族服を着ているがそれを血で汚している
そして周りには無数の若い女性が・・
全て裸体で首筋に噛みつかれた後がありピクリとも動かない
「ふぅ・・、腹の足しにもならん・・」
また一人女性の首筋を噛みつき血を吸い上げる青年・・ブラド=ツェペッシュ・・
女性も抵抗しようともせずどうやら操られているようだ

「報告します・・」
そんな中突如声が・・、兵の一人が女性達の惨状に気にしていないようだ

「おう、なんだ?」
「デスが死亡しました」
「・・・・、ふぅん・・。確かあいつはミュンとか言う退魔士を殺しにいったのじゃなかったか?」
「ミュン殺害は実行しましたが目撃者がいまして・・その者を狩る途中に・・」
「なるほど、ミュンって奴の関係者か何かか・・」
「いかがなされます?」
「とりあえずは放っておけ。今は土台を作ることが重要だ・・だがミュンは眷属にできたのか?」
「火を放たれましたが回収しました。さらに血を与えて調教します」
「頼むぜ?じゃあ下がれ」
「はっ・・」

音もなく退室する兵士
一人になったブラドは裸体の首に再び噛みつきながら狂気じみた笑みを浮かべていた・・



・・物語は続く・・










レ:後書きのコーナーです

ク:おっ、さすがは主役、仕切るじゃないか!

レ:これは特権・・でしょうね。しかしまだまだ続きそうな展開・・

フ:そうだね〜。あんまり長いと記念じゃなくなるよ〜

ク:・・あんた、多重人格か?

フ:まぁ〜、こっちのほうが落ちつくから安心して〜

ミ:呑気ねぇ、それよりもクロムウェル!あんた最後に少ししか出なかったんだから
ここでそんなでかい顔しちゃ駄目よ!

ス:そうだそうだ!しかも裸の女性に囲まれてハーレム気付いていやがって!!

ク:スクイード君、これは役得だ。まぁエキストラの皆さんは全員フィートの『お友達』だからご安心を・・まぁ直接抱いていたのは違うけど・・

ミ:ああっ、あの赤い毛の子ね。なんか絶対に私達に顔を見せようとしなかったけど・・

ス:赤い毛・・き・・・貴様!!まさか!!

ク:おっと、深追いは禁物だぜ?お前の日常が崩壊する危険がある♪

エ:ですけど〜、なんだか今回は血なまぐさいですよ、私やリュートさんもすぐ殺されちゃったし

リ:そうだよね、登場人物が殺させ過ぎだよ・・。シャンも大丈夫?

シ:大丈夫だけどなんだか後ろめたいわ、こんなのこそあの狂暴女が適任じゃないの

レ:セシルさん・・ですか。それもはまり役過ぎてどうかとは思いますが・・。
それに、義母がいる手前、やりにくいんでしょうね

ミ:ロカルノもほんと、女の趣味が悪いからね〜。育て方が悪かったのかしら?
私みたいな女に惚れろって言って来たのに

ク:・・・それが過ちだ・・

ミ:何か言った〜?クロ公〜?

ク:なんでもねぇよ!!でもこれ、ほんと長編だぜ?
この主人公のマリアの体の変化とかも気になるし・・

フ:ネタとしてはベタだよ〜、まぁ、いいんじゃないかな〜、こんな形も〜

リ:まぁ形式に囚われるのもいけないということで・・

エ:続きはまたいつかですね、でも6000HIT、あっと言う間でしたね!

シ:ありがたいことね。私達の出番はあんまなかったけど

ク:ああっ、エピソード系が最近の主流だからな・・それももう終わるだろっ・・

ミ:それよりも5000はヒーロー、6000はシリアスってきているんだから7000は
もっとお笑いなことにしないと重苦しくなるわよ?

レ:ですが、ここでのお笑いというと何故か必ず血が流れるのですが・・

フ:流れた血の分、感謝の念になるよ〜、ともあれみんなありがと〜!!

ク:マイペースな・・。ともあれ、いつも来てくれている奴、ありがとよ!

レ:これからも精進いたしますのでよろしくおねがいします(ぺコリ)

・・・thank you for your reading♪・・・


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